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異世界からやってきた妹(自称)が、僕に甘々してくる話。  作者: 茉莉鵶
第一章 異世界からやってきた戸籍上は妹(自称)編
6/21

第六話 二日目の妹(自称)との高校生活①


四月八日、七時三十分頃────


 ──ピンッ…ポーンッ…


 まさにこれから、英莉菜と学校へ向かう為に玄関から出ようと、二人で通学用のローファーを土間で履いていた時だった。突然、玄関のインターホンが鳴った。この時間帯、我が家に尋ねてくる人はほぼ皆無だった。


 ──ピッ!!


 「はーい?何のご用でしょうか?」


 居間の壁に設置されているインターホンの子機で、結以さんが出てくれたようだ。


 ──「賎宮高校1-Aの副担任の影山ですっ!!英莉菜さんをお迎えに上がりましたっ!!」


 「あらぁ…?!影山先生、少しお待ちくださいねー?」


 ──ピッ!!


 居間にあるインターホンのスピーカー越しの結以さんと影山先生とのやり取りと、結以さんがインターホンの通話を切った音もハッキリと聞こえている。


 「英莉菜ちゃーん?影山先生よー?」


 「はーいっ!!」


 ──ギュッ…


 「ねぇ…?お兄ちゃんも…私と一緒に行こう?」


 結以さんの呼び掛けに英莉菜は返事をすると、僕の手を握ってそう言った。先週の影山先生の僕を見る時の鋭い視線は、今だから言うが…死さえ覚悟したくらいだ。


 ──ガチンッ…ガチンッ…

 ──ガチャッ!!


 僕は玄関のドアの鍵を解除すると、恐る恐るドアを開いた。玄関のインターホンの近くに、影山先生は腕を組んで仁王立ちで立っていた。服装はパンツスーツ姿なのだが、凛々しくも美しかった。

 顔立ちはどう見てもハーフ顔で、髪の色は腰丈まである銀色に輝くロングヘアで、肌は透き通る程に青白く、目の色も蒼かった。背は女性にしては高身長で細身のモデル体型、出るところは英莉菜に負けず劣らず出ている。


 あ…れ…?!長い銀髪…蒼い目!?まさかな…?

 そう思った僕は、影山先生を頭の先からつま先まで、記憶を思い起こしつつ気にしながら見始めた。


 「藤邑くん!!さっきから…私のこと、犯すような目で見ているだろ!!」


 「い…いえ…っ!!か、影山先生のこと…僕が視姦してるだなんて…。め、滅相もございません!!ただ…。」


 影山先生が、あの女の子かも知れないと思えば、それはじっくり観察したくもなる。


 「ただ?ただ、何だと言うんだ!!ハッキリ言いなさい!!」


 「ぼ、僕が、幼い頃出逢ったんです!!か、影山先生みたいな、銀色の輝く長い髪で肌の真っ白な蒼い目の女の子に…。でも…それっきり、その女の子とは逢えてないんですけどね?大きくなっていたら、影山先生みたいな女性になってるのかな…なんて思って。」


 でも僕は、不思議な場所に行ったとは、一言も言わなかった。だって誰も信じてくれる筈がないから。英莉菜の事だって、異世界からやってきたなんて誰も信じないだろう。


 「ほぉ…?なるほどなぁ…?初恋の女の子に、この私が似ていると言いたいのだな?さて、藤邑くんの妹さんである英莉菜さんは、お兄さんの発言にどう思われましたか?」


 「はい、芽莉沙…先生。お兄ちゃんは嘘はつけない人なので、本当の事言ってると思いました。」


 「そうですか。分かりました。それはそうと、英莉菜さん!!早く行きましょう!!」


 ──グイッ!!


 英莉菜からの答えを聞いた影山先生は、思い出したかのように英莉菜の手を引いた。


 「め、芽莉沙っ…先生っ?!私、お兄ちゃんも一緒じゃないとぉ…嫌ですっ!!」


 「はぁ…っ。そうですか。分かりました。では、藤邑くんも同行すること許可します。ついてきて!!」


 一瞬、僕に向けて影山先生は鋭い目線を送ったあと、深くため息をついて僕への許可を出した。影山先生の後について家の敷地から出ると、一台の凛とした影山先生には似つかない、可愛らしいデザインと色の車が停められていた。


 「わ、私の私用車だ。」


 ──ピピッ!!

 ──ガチャッ…


 「英莉菜さんは、こちらへどうぞ?藤邑くんは、適当に乗ってくれたまえ!!」


 英莉菜は運転席の後部へ、影山先生にエスコートされ乗車した。僕も後部座席へと思ったが、助手席の後部は先生の荷物が置かれていた。そうなると残るは…助手席しかなかった。


 ──バタンッ…


 「シートベルトは必ず頼むよ?私が捕まってしまうからね?」


 ついつい影山先生の顔を、気になって眺めてしまう。もしも、本当にあの女の子だったら?という思いが強くなってきているようだ。


 「お兄ちゃん…?芽莉沙先生ばっかり見ちゃダメ!!」


 「おいおい…藤邑くん。言っておくが私は教師だぞ?在学中の生徒と関係を持とうなんて考えは、さらさらないからな?いくら私の特徴が初恋の相手と同じだからって、変な考え起こすんじゃないぞ?」


 いきなり釘を刺されてしまったが、当然と言えば当然か。新任早々に生徒とスキャンダルなんて起こしたら、教師になるまでに頑張ってきたことが水の泡になってしまう。


 「影山先生?そんなに心配なされなくても、大丈夫ですよ?僕には、英莉菜という…それはそれは可愛い妹がおりますので。」


 「もおっ…!!お兄ちゃん…。だーいすきっ!!」


 「はぁ…っ。確認ですが、英莉菜さんは…お兄さんと深い関係では…勿論ないですよね?」


 まだ数日しか英莉菜とは一緒に暮らしていないが、とりあえず先週、僕が試されたのは昼間だけだった。それからは、英莉菜がベッタリと僕に抱きついてきているだけだった…筈だ。

 あとは…夜か。毎回、英莉菜がお風呂場にまでついてきて、僕が身体を洗ってる間、英莉菜が湯船に浸かっているのはセーフだろうか?


 「お兄ちゃんとはぁ…。一緒にぃ…お風呂に入るくらい仲良しな兄妹ですのでぇ!!」


 ああ、終わった…。凛々しくも美しい影山先生のご尊顔が、この世のものとは思えない程の形相で僕を睨みつけている。


 「高校生にもなって、兄妹で一緒にお風呂に入ってるんですか!?き、きっと…英莉菜さんは藤邑くんに唆されてるんですよね?!」


 「違うんです!!お兄ちゃんは悪くないです!!私が…お兄ちゃんといつでも一緒に居たいって言ったんです!!だって…私、お風呂だってお布団だって…お兄ちゃんと一緒が良いんです!!」


 本当に終わった…。僕のベッドで一緒に寝ていることも、英莉菜に言われてしまった。何故そんな事態になっているのかと言えば、理由は簡単だ。

 僕の家は、子供は一人という家族計画のもとで、建てられた二階建ての一軒家だからだ。だから、空いている部屋はない為、僕の部屋のダブルベッドで英莉菜と共に寝るしかないのだ。

 不幸中の幸いか、部屋数が少ない分個々の部屋の間取りは広く取られている為、部屋に英莉菜が居ても狭いとは全く感じなかった。


 「はぁ…っ。そうですか。分かりました。ご家庭の事情もあるでしょうから…少し、私は…踏み込んだ話をし過ぎてしまいました。申し訳なかったです。」


 どうしたのだろう。影山先生は急に謝ってきたかと思ったら、英莉菜に対して質問するのをピタリとやめ、暫くの間は言葉遣いも大人しくなってしまっていた。

 まさかとは思うが、英莉菜はまた不思議な言葉で、影山先生が大人しくなるようなスキルでも使ったのだろうか?


 ──キィッ…


 ようやく、賎宮高校の校舎の裏手にある教職員用駐車場へと、影山先生が運転する車が到着した。家からの直線距離的には2km程しかないのだが、信号が多く幹線道路沿いの為、通勤の時間帯と重なって、道が混んでおりそこそこ時間を要した。


 「幸い、こちら側には生徒は居なさそうだな?今のうちに、教職員用の通用口から入るぞ?」


 確かに、正門側には生徒が沢山歩いてきていたが、こちら側からの登下校は生徒は禁止されており、生徒は殆ど近寄らないのだ。


 「あのぉ…つかぬことをお伺いしますが、影山先生は恋人居るんですか?」


 「い…居るわけ無いだろう!!私が好きなのは二次元男子だからな?もう、早く降りるぞ?」


 とても良いことを聞いてしまった。と言うか…影山先生の口調が戻っている。それに、二次元男子など興味なさそうなイメージだったので、凄く意外だった。

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