表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からやってきた妹(自称)が、僕に甘々してくる話。  作者: 茉莉鵶
第二章 妹と自称したいストーカー気質な美少女編
21/21

第二十一話 可愛い来訪者はお兄さまが好き③


五月六日、八時頃────


 突然の英莉菜の来襲で僕は思わず身構えてしまったが、何も起きなかった。逆に…英莉菜は僕のことはそっちのけで、善莉澄ちゃんの手を引くと先程の東屋に向かって歩き出していた。


 「おーいっ?英莉菜ぁ!!」


 「お兄ちゃんはぁ…あっち行ってぇ!!私はぁ…善莉澄ちゃんと仲良くしたいのぉ!!」


 さっきの睨むような怖い顔を英莉菜がしてたのは、なに私仲間はずれにして可愛い子と遊んでるんじゃワレぇ!!って事だったのか?

 僕に近づこうとする同性に対して、自分が認めない限りは、嫉妬と敵意しか向けない英莉菜が珍しいと思った。


 「着いて行っても…良いだろ?」


 「ダメなのぉ…!!善莉澄ちゃんが…穢れちゃうからぁ!!」


 はぁ…っ?!まるで、僕のせいで善莉澄ちゃんが、穢れちゃうような口ぶりだ。

 どんな口で、そんなことよく言えたもんだな…。


 「あの、英莉菜さん?お兄さまは、そんな悪いことされるのですか?」


 あ、その話の振り方、ダメだわ…。


 「うんっ!!極悪非道なんだからぁ!!お兄ちゃんはぁ…ああ見えてねぇ…?既にぃ…二股してるんだからねぇ!!」


 「そうでしたか。あの?お兄さま。私の想定の範囲内ですので、今後の関係についても、問題ありません。」


 マジかよ…。こんな天使みたいな子、他には居ないだろうな…。英莉菜は悪魔だろうなぁ…って、魔王の娘だから…間違いではないか。


 「え…っ!?い、善莉澄ちゃん…?このゲス野郎のこと、ドン引きしないの?!高校二年なのに…ふ、二股してるんだよ!?」


 先行して歩く英莉菜と善莉澄ちゃんは、東屋まで辿り着いたようだ。


 「シーッ…。英莉菜、声…大きいぞ?まぁ、二人ともそこで座って待っててくれ。」


 とりあえず、英莉菜と善莉澄ちゃんを東屋の屋根下に設置されている、木製ベンチへと座るように言った。


 「しかもねぇ…?お兄ちゃんはぁ…変態なのぉ…。」


 ようやく僕も東屋に辿り着いたところで、英莉菜が善莉澄ちゃんの耳元で、そう囁いているのを目撃する。


 「はい、存じております。お兄さまの尊厳に関わることになります。ですから、英莉菜さん?あまり口外なされない方が良いです。」


 そうですよね…勿論、善莉澄ちゃんなら…そんなことくらい、知ってますよね。やっぱり怖い…。どこまで僕のこと知っているのだろうか…。


 ああ、何となく英莉菜が何をしたかったのかが、見えた。でも、まさか…僕のイメージダウンの情報を、善莉澄ちゃんへと吹き込んで、諦めさせようって魂胆だったのか?


 「善莉澄ちゃんはぁ…お兄ちゃんのことどう思ってるのぉ?」


 「はい。私のお兄さまだと思って、お慕い申しております。」


 今日は五月晴れと言えるような、青空が広がる良い朝だ。なのに…この東屋の中は、ドス黒い暗雲立ち込めてきた気がする。


 「え…?な、何言ってるの…?!私がお兄ちゃんの…妹なんだよ!?」


 「ただ、それは戸籍上の話ですよね?私は、お兄さまから、妹と呼ばれたいのです。」


 今ここに、戸籍上の妹(自称)と、妹を自称する美少女との火蓋が切って落とされた瞬間だった。



三十分後───


 「なぁ?二人ともいい加減にやめにしないか?」


 すぐに感情を表に出してしまう英莉菜と、淡々と表情一つ変えずにいる善莉澄ちゃん。そんな対照的な二人の言葉での攻防が、もう三十分程続いている。

 空も徐々にではあるが、朝の柔らかな日差しではなくなってきている。それに、普段遅くても八時迄には朝食を済ませている僕にとって、この時間まで飲まず食わずは流石にお腹が空いてきた。


 「いえ。ここでやめてしまえば、これまでの全てがふいになるのです。それにお兄さまは、私のお兄さまなのです。」


 「バカ言わないでくれない?お兄ちゃんは、私のお兄ちゃんに決まってるでしょ!!」


 こんな時、芽莉沙さんが居てくれたら、この程度の話ならあっという間に解決してくれそうなのだが…。異母姉妹の英莉菜とは対照的で、しっかり者で姐御肌なイメージが僕の中にはある。

 そう言えば、どうして芽莉沙さんと英莉菜の姉妹は、異世界から地球にやってくる際に、別々の場所で生活することを選んだのだろうか?


 「もう腹減ったからさぁ…?この近くのファミレスで朝飯食べないか?お金は僕が出すからさ?」


 この時間帯なら、僕のスマホの交通系ICにチャージしてある額で三人分いけると踏んだ。


 「はい、私もそう思っておりました。ですが、私は自分の分は自分で払いたいのです。宜しいでしょうか?」


 「うん…。」


 先程までの勢いはどこに行ったのだろうか、英莉菜が善莉澄ちゃんの言葉で急ブレーキが掛かったように、一言ポツリと喋ると黙ってしまった。



十分後───


 やけに上機嫌な様子の善莉澄ちゃんに、僕は手をひかれる形で近所のファミレスのまでやってきていた。何故だか気まずそうな英莉菜は、ずっと僕の後の方をトボトボと着いてきていたが、理由は大体想像がついている。


 「英莉菜?僕が払ってやるから、好きなもの頼んでいいぞ?」


 「お兄ちゃん…ほ、本当にいいのぉ…?!」


 「ああ。英莉菜の財布の中身、殆ど入ってないだろ?」


 前にも、少しだけ触れただろうか?我が家では、毎月お小遣いは支給されている。

 でも、携帯電話の使用料はそこから差し引かれる為、若年層向けの割引がないキャリアだと結構ツラいと思う。

 先月、英莉菜は影山先生こと姉の芽莉沙さんから、お古という名目でスマホを譲って貰っており、スマホデビューしている。今月は契約時の事務手数料も乗ってきた為、手元には殆ど残っていないのだ。

 僕の場合は、お小遣いの他にお年玉の預金が多少あるので、それでやりくり出来ている感じだ。

 因みに、飲み物やお菓子、衣料品等は、家族で買い物に出掛けた際、普通に買って貰えるので別にお小遣いを使い切っても、普段の生活では不便はしない。ただ、友達付き合いが多いとキツいと思うが、高校の外で遊ぶ友達は殆ど居ないので、僕は助かっているだけかもしれない。


 「うん…。」


 「お兄さま?私、英莉菜さんの分もお支払い致します。宜しいでしょうか?」


 目の前のいるライバルを、完膚なきまでに叩きのめすとは、まさにこういうことを言うのだろう。英莉菜にお灸をすえるのには、丁度良い機会かもしれない。


 「じゃあ…善莉澄ちゃん、済まないね?お願い出来るかな?」


 「え…っ!?お、お兄ちゃん…?!な、何言ってるの…!?」


 慌てふためく英莉菜。まぁ、それはそうだろうな。


 「はい、お兄さま。承知いたしました。では、英莉菜さん。お好きなメニュー、お好きなだけお選び下さい。」


 明らかに英莉菜より幼く見える善莉澄ちゃんは、僕と同じソファ席に並んで座っており、テーブルの向かい側のソファに一人座る英莉菜に対し、淡々と語りかけると頭を下げてみせた。


 「きぃぃっ…。お兄ちゃんのぉ…バカぁ…。」


 とても屈辱に塗れた表情を見せた英莉菜は、歯軋りしながら小さく声をあげた。


 「では、お兄さま?大変お腹、空かれていますよね?頼みましょう。」


 「そうだな。じゃあ、僕は…。」



三十分後───


 「お会計はどうされますか?」


 「あ、この注文は別会計でお願いします。」


 ──ピッ…ピッ…


 「かしこまりました。それでは、一点で九百九十円となります。お支払い方法は如何なさいますか?」


 「交通系ICで、お願いします。」


 「では、こちらにタッチ願います。」


 ──ピピッ…


 「レシートはご入用でしょうか?」


 「大丈夫です。」


 僕は結局、色々選べるモーニングセットの豪華版を頼んでしまった。こんだけ食べると、お昼はいらないレベルだ。


 ──ピッ…ピッ…ピッ…


 「では、次のお会計ですが二点で千六百八十円となります。お支払い方法は如何なさいますか?」


 「はい。現金でお願い致します。」


 善莉澄ちゃんは可愛らしい財布から、二千円を取り出すと、レジの店員さんにそっと手渡した。

 因みに、英莉菜は僕と同じモーニングセットの豪華版、善莉澄ちゃんはお手頃価格のモーニングセットを頼んでいた。


 ──チャリチャリチャリチャリッ…


 「レシートはご入用でしょうか?」


 「はい。お願いします。」


 お釣りだけは自動釣り銭機のようで、善莉澄ちゃんはまずレシートを受け取り、次に出てきたお釣りも一緒に財布へとしまった。


 「ありがとうございます。」


 店員さんの言葉を背に、僕たち三人はファミレスを後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ