第二話 異世界からやってきた妹(自称)②
四月五日、六時十分頃────
絶対に変だ…何かがおかしい筈なのに、両親は何も気付きもしないどころか、当たり前かの如く写真の寝ている女の子を、僕の妹だと言った。
──ガチャッ…
モヤモヤしたまま、僕は自分の部屋のドアを開けた。
「わぁっ…!?」
すると僕の目に飛び込んできたのは、先程まで気持ち良さそうに寝ていた筈の女の子が、起きており僕のベッドの上でペタンと座り込んでいたのだ。
「お兄ちゃんっ!!おっはよー?」
女の子と目があった途端、満面の笑顔を見せた女の子に、僕はお兄ちゃんと呼ばれてしまった。しかも、女の子は僕に向かって可愛らしく手を振っている。
「えーっと…君は…?」
「お兄ちゃん、ゴメンなさいっ!!私は…地球とは別の異世界からやってきた、お兄ちゃんより一つ下の十五歳、妹の英莉菜だよぉ?」
異世界からやってきた一つ下の妹って一体何なんだ!!って正直ツッコミたかった。でも…英莉菜と名乗る子の見た目が、最近人気の恋愛アニメのハーフ系ヒロインみたいで、滅茶苦茶可愛いかったので、僕は素直に受け入れてしまった。
「君は、英莉菜さんって言うんだ?いつ頃地球に転移してきたの?」
「えっとぉ…。私、お兄ちゃんの事が本当に大好きでぇ…。逢いたくて逢いたくて堪らなくてぇ…。昨日の夜中に来ちゃいましたぁ!!それでぇ…私のことをお兄ちゃんの妹ってぇ…認識するようにぃ…記憶改竄の魔法を地球のぉ…人間全てに使ったんですけどぉ…?どうやらぁ…お兄ちゃんにはぁ…効かなかったみたいでぇ…?あははっ…あはっ…。」
僕のことを大好きとか、逢いたくてとかって言われても、どこで接点があったのか思い当たらなかった。それに、記憶改竄したとか…恐ろしいことをさり気無くやってのけていて、あはは等と笑って誤魔化せるレベルでもなかったのだが、あまりにも英莉菜が可愛過ぎて、言えなかった。
どれだけ英莉菜が可愛いかと言うと、背は僕より小さくて、髪は背中まである程に長くて茶色に輝いていた。そう、肌は真っ白で目の色も茶色くて…本当に恋愛アニメの世界から飛び出してきたみたいだった。あれ…?何か、デジャヴだろうか?どこかで…こんなことを…?まぁ…気のせいだろう、きっと。
先程も言ったと思うが、とにかく容姿が日本人離れしていて、ハーフのような印象を受けた。しかも、細身の身体なのに…出るところははち切れんばかりに出ている。恐らくEカップ以上はあると推測される。
「英莉菜さん?君、十五歳って…言ったよね?」
「もぉーっ…嫌だよぉー!!お兄ちゃんー!!英莉菜って呼び捨てで呼んで欲しいのぉー!!あ…っ!!ゴメンなさいっ!!今日からぁ…英莉菜はぁ?お兄ちゃんとぉー同じ高校へ入りまぁーすっ!!」
「えっ?!僕と同じ高校に?!今日から入るの!?大丈夫なのかな…?高校に通うのが二人になるけど…。」
思わず、我が家の財政状況で、高校に二人も行かせられる程の余裕などあるのだろうか…?ふと心配になってしまい、本音が口から溢れてしまった。
「あっ!!そこはぁ…ご安心くださーいっ!!私の我が儘でぇ…お兄ちゃんの妹にさせて貰ったのでぇ…?卒業するまでの必要経費はぁー両親の口座にぃ…お振込済みでーすっ!!」
可愛いだけの色々ヤバい子かと思ったけど、案外そういう所はキッチリしているみたいで、少しホッとした。
「そう言えば…さ?今日から僕の通ってる…賎宮高校に入学するって話だけどさ?制服とか…持ってるの?」
「はぁーいっ!!【(何を言っているか分からない)】!!」
──ピカッ…!!
「うわっ…?!」
可愛らしいパジャマ姿の可愛い英莉菜が、聞いたことのない言葉を喋り始めた。喋り終わると同時に、パジャマ姿の英莉菜は一瞬眩い光に包まれ、次の瞬間には制服姿へと変わっていた。
「ジャーンっ!!私の制服姿どうかなぁ…?お兄ちゃんっ…。」
「英莉菜!!滅茶苦茶…可愛いぞ?似合ってる!!」
会ったばかりなのに、もうシスコン兄貴になりかけてるな僕。それと、英莉菜が不思議な力を使うのを目の当たりにしたが、幼い頃の不思議な体験をしている事もあり、然程驚かなかった。
「お兄ちゃんならぁ…?私にぃ…何してもぉ…良いんだからねぇ?」
ベッドの上で英莉菜はそう言いながら、スカートをヒラヒラとさせている。
──ゴクリ…
「何してもって…さ?何しても良いのか…?」
「えっとぉ…。とりあえずぅ…私はぁ…お兄ちゃんの妹だけどぉ…。妹じゃないからぁ…何してもぉ…OKだよぉ!!」
──ドクンッドクンッドクンッドクンッ…
「じゃ、じゃあ…さ?英莉菜に、エッチなことしても…良いのか?」
「それは、お兄ちゃん次第かなぁ?とりあえず、私はね?暫くの間は…仲良くなる意味も込めて、お兄ちゃんの妹として、一緒に生活していきたいって思ってます。」
急に英莉菜が真面目な表情になると、それまでの甘々な感じからハッキリとした口調へと変わった。やはり英莉菜的にも何か目的があって、僕の妹として地球に転移してきているのだろう。
「ちょっと英莉菜を試してみただけだ。普通、こんな可愛い妹と一緒に暮らせるだけで、幸せ過ぎるだろ?」
本音を言えば僕は年頃の男子だ、エッチな事には滅茶苦茶興味はある。でもあんな事言ってしまった手前、警戒されて当面はチャンスは薄いだろう。まぁ…きっと、英莉菜に真摯に向き合っていればチャンスはきっとあるさ。
「ふぅーん?私は、お兄ちゃんとエッチなこと…したいと思ってますけどね?本当は、どうなんですか?」
「スマン!!実は…僕も英莉菜と同じ気持ちだ!!」
「ほらぁ…やっぱりぃ!!でも…良かったぁ!!本当に当分はダメですからねぇ?でもでも、キスとか…ハグなら…大歓迎ですけどね?」
それにしてもこの妹、小悪魔すぎるだろう。僕が我慢出来なくなって、英莉菜を押し倒してエッチなことに及んでしまったら、どうする気なのだろうか。そんな事、僕がする筈がないという確証があっての事だろうか。
「そうだぁ…ねぇ、お兄ちゃん?大好きーっ!!」
それはさておき、僕は英莉菜の素を知りたくなってしまった。急に真面目になったり、甘々になったりを繰り返しているが、どちらが本来の英莉菜なのだろうか?それとも…どちらも素の英莉菜ではないのだろうか。
暫く、英莉菜を妹として接するのも、英莉菜を知る上で悪くないと思った。
──ギュッ…!!
ベッドの上で英莉菜はずっと、僕がハグしてくるのを両手を広げて待ち構えていたのだ。それに応えてあげない兄は居ない筈なので、僕はベッドに近寄ると英莉菜をそっと抱き寄せた。
七時十分頃───
「お兄ちゃんっ!!早く学校に行こう?」
先程、朝食を終えて制服に着替えを済ませた僕に向かって、英莉菜がそう声をかけてきた。いつの間にか、自分用なのか通学用のカバンを手にしている。
やっぱり…どこからどう見ても英莉菜が可愛い。可愛すぎて、今日からの高校生活がいつもより楽しく思えてきた。だって、今日から英莉菜と一緒に登下校出来るからだ。お昼だって…一緒に食べようと思えば出来ないこともない。
ようやく、僕の去年のつまらない一年間が報われる日がきたのだ。
「じゃあ…英莉菜?僕と学校に行こっか?」
「うんっ!!」
──ガチャッ…
部屋を出た僕と英莉菜は廊下を進み、階段を降り始めた時だった。
「あれっ?!英莉菜さん!?今日、私たちと一緒に賎宮高校まで行くんじゃなかったっけ?」
一階の玄関の側にある居間から、英莉菜の行動に驚いた様子の結以さんの声が聞こえてきた。
「結以さん、ゴメンねぇー?私、お兄ちゃんとぉ…一緒に行きたいのぉー!!」
「全く…お兄ちゃん好きすぎるんだからっ!!じゃあ、二人で気をつけて行きなさいね?暁人さん、英莉菜さんのこと頼んだわよ?」
「了解!!じゃあ、健吾さんと結以さん、後で英莉菜さんとの合流お願いします!!じゃあ、いってきます!!」
──ガチンッ…ガチンッ…
──ガチャッ…
「お兄ちゃんっ!!待ってよぉ!!」
──ギュッ…!!
玄関まできた僕はローファーを履くと、鍵を解除して玄関のドアを開けた。するとすぐ後から英莉菜が僕を追いかけるように、手を握りしめてきた。
今日から、僕と妹(自称)の高校生活が始まるのだ。