神歴第二十五の年 父
朝の爽やかな空気が、熱を増していく太陽が、もうじき来る初夏を感じさせる。
雛鳥が木の枝に一列に並び、羽ばたいて、飛び立つ練習をしている。
木漏れ日と鳥の囀り。
夏の足音に心浮かされて、気分よく教会の扉を開いたもの達がいた。
エーレと、ヨナ、そして子供たちである。
この度、ヨナとの間に四人目の子を授かり、その報告に来ていたのだ。
エーレは子供を産み育てる力を強く持っていた。
ローシュに匹敵するほどの母性と育む力だと称されるほどであった。
そうして身籠ってすぐに出産すると、またすぐに次の子を身籠った。
そうして昨日、四人目を授かったことがわかったのだ。
元々溢れんばかりの母性を持っていたエーレは、
一人目をすぐ産んだことに、
「なんて素敵なことでしょう。」と、すぐに受け入れていた。
しかし、ヨナは驚き、なかなか実感が湧かなかった。
それでも、生まれて来た子を抱きしめて、笑顔で涙を浮かべなが祈る妻を見て、
「この光景を守りたい。」そう思ったのだ。
今や、イーサンとローシュの二人に次ぐ子沢山であり、ヨナは身重の妻と子供達、愛する全てを守るため、ケセフやメハムと協力して、度々昏きものとの戦いに赴いていた。
先日久々に帰宅して、家族団欒を楽しみつつも、育児の大変さにエーレにますます頭が上がらなくなったヨナは、それでも幸せを噛み締めていた。
エーレの影響か成長が途轍もなく早かった子供達は、もうかなり体が大きくなったものの、まだまだ抱っこをせがんでくる。
ヨナは聖気で嵩増しした筋力で、前後に抱えながら、にこやかにやって来た。
皆で、新たな子を授かった感謝と、この先の人生が明るくあることを祈った。
木漏れ日を受けて、きらきらと輝く装飾と、
神殿にある色の入ったガラスを分けてもらい作った小さな窓から入る色とりどりの光に、
「綺麗だねえ。すごいねえ。」
「あれも、父さまのきらきらの力で作ったの?」
と、子供たちは興味深々で目を輝かせていた。
その後、教会の外に出て、動物達と子供たちを遊ばせていると、レーリアがやって来た。
「賑やかになったものねぇ、報告は終わったの?」
そう訊ねるレーリアに、
「うん、今さっきね」
そう答えながら子供達を見て微笑むヨナ。
「また守るものが増えたんだ。もっと強くなるよ。」
そう言いながら、エーレ目が合った。
「あなたのことは私が守るわね。」
そう言いながら笑うエーレに、つられて笑った。
子供たちは、若葉が萌えるように、のびのびと未来に向けて育っていく。
その未来を守り、良い方向に伸ばせる様に、子供達の世界が美しいもので溢れる様にと、ヨナは心の中で祈った。