新暦第二の年 伝導師
レーリアは、ケセフが神の元に赴き、救済を受けたという知らせを聞いた瞬間、胸の内がざわめいた。
居ても立ってもいられず、気づけば彼の元へと駆け出していた。
あの日、大母様、いや神の御降臨を見たその瞬間から、彼女の魂は何かに突き動かされるように震えていた。
まるで見えざる声が彼女に呼びかけているかのように。「役目を果たせ」と――。
その日以来、レーリアは自らの役割を知りたくてたまらなかった。
神の真意をひと目でいいから伺いたい。
何かを学び、そして自身の使命を見出したいと切望していたのだった。
しかし、その思いとは裏腹に、父母や兄にある特別なものが、自分にはないことが、何よりもずっと彼女を悩ませた。
そうして、一月もの間、彼女は神の跡を追って彷徨い続けた。
だが、どこにも神の姿はなかった。
何も見つけられない自分が無力に思えた。
ついに疲れ果て、肩を落として家に帰ったのはつい数日前のことだった。
その日の朝、食事の席でケセフが神から救いを授かったことをローシュから聞かされた時、レーリアの心は一気に燃え上がった。
「どうしてケセフだけが…」
その思いは心の中で何度も繰り返された。
落ち着いて食事など誰ができようか。
音を立てて立ち上がると、まるで春を告げる嵐の風のごとく、迷いなくケセフの元へと飛んで行った。