第三の年 神歴第一の年
それからのことは、後の経典に詳しく記されている。
経典第一部、伝道師レーリエによる創世記、降臨の章ーーー第二節、第一項
「聞け、世界よ」
その声は、まるで万物の静寂を破るかのごとく澄み渡り、全ての魂を根底から揺るがした。
天が裂け、光の柱が大地を貫く中、神は燦然たる輝きを纏い、天上からゆっくりと舞い降りた。
神々しきその姿は、凡そ人知を超えた威光を放ち、全ての生きとし生けるものを一瞬にして沈黙させた。
鳥は翼を畳み、ただ地に伏す。
獣たちは巣穴を離れ、深々と頭を垂れた。人々は畏怖の念に打たれ、地に座り、手を組み合わせて仰ぎ見た。
神の降臨に際し、世界はその動きを止め、ただその瞬間に存在を委ねた。
「この世界を我が導く。我を信じよ。」
神の御声は空に響き渡り、その言葉の一つ一つが大地の隅々まで行き渡った。
聞く者すべての胸を打ち、深いところへと刻み込まれる。
その御声に宿るのは、絶対的な御力と慈悲の両方であった。
「あなたがたに大切なものを守る力を、あなたがたの大切なものに守られる力を授ける。隣にいる者に愛を持て。我はあなたがたすべてを愛している。」
神の御声はまるで、世界そのものが語っているかのように響いた。
それは冷たくも暖かく、厳しくも優しい。
その御言葉には、すべての生命が等しく神に愛され、必要とされていることを示す確信が込められていた。
「あなたがたは、そのひとりひとりに至るまで、全て我と、世界に必要とされて生まれ落ちたのだ。」
この神の御言葉により、人々の心には勇気と友愛の精神が深く根付いた。神は続けて語りかけられた。
「心底乞い願うことが、お前の隣に居る者のためであれば、我は救いを与えよう。我は必ず見ている。ずっと見ていることを約束しよう。
あなたがたが母の体から生まれ落ちるその前から、やがて地に還り、再び魂が我の元へ戻ってくるその日まで、あなたがたは決して一人ではない。」
この御言葉をもって、神は祈りによる救済の奇跡を約束し、一人一人の心に寄り添い、常にその傍にあることを示された。
人々は、祈ることで神と心を通わせ、その慈しみを享受することを定められた。
神は最後にこう言われた。
「だから生きよ。おのれにできる限りのことを成せ。」
この御言葉をもって、人々はただ神に祈りを捧げるだけでなく、神がそうなされているように、
互いを慈しみ助け合うことを命じられた。
魂が再び神の元へ帰るその日まで、助け合い、共に生きることが人間の使命として定められたのである。
ーーーこうして、少女は名実ともに神となり、世界を導く者としての宿命を全うし始めた。
彼女の降臨は、全ての生命にとって新たな希望の光であり、神と共に歩む時代の幕開けを告げるものだった。