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新世界創造  作者: プラトー
第10章
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神歴第二十七の年 歓待

「いやあ、こりゃいい湯だねー…あぁぁぁ気持ちいい。」

空にはぽっかりと浮かぶ月。

夜風はそよそよと時折涼しく吹きながら、濡れた頭を、身体を冷やす。

しかし、湯に浸かってすこし火照った体にはそれもまた心地良く感じられる。


ルーアは思わず声に出しながら、頭を温泉の縁の岩に乗せて大の字に手足を広げてぷかぷかと浮かんでいた。


「ルーア!色々とだめだよ!」と、リリ達に言われて渋々座る。


「ちぇー。いいじゃない誰も見てないんだし!」

「それでもローシュお婆ちゃんや、お母さんならそう言うわ!」

「それはさー!いや、…そうだね。気をつけるよ。」

と、いった会話をしていると、


「人間はそんなことも気にするのですね。」

美しい若竹色の髪の女性が言いながら、湯に浸かり、座りながらそっと足を揃えて閉じる。

初めて聞いたという反応をしていたにも関わらず、一連の動作が様になっており、何故か目の離せない様な大人の所作を感じさせた。


その様子に、ぱしゃぱしゃと湯を尻尾で叩いて音をを出して遊んでいた少女も、見様見真似で座りながら、湯を叩く音も小さくなった。


ここは、竜族の村。

密林と言って差し支えないほどの森を抜けた先、深い谷とそこに流れ込む滝が程近くにある、火山の麓の竜たちの住処であった。


「ようこそ、竜族の村へ。貴方たちは初めての客人です。」

ルーア達一同が大蜥蜴に連れられて来た竜族の村。

広大な敷地。所々から火山の影響か湯気が立ち込めている中、赤、青、黄の様々な色合いの蜥蜴や蛇の特徴をもつ竜達がいた。

あるものは巨体を揺らしながら、あるものは宙を滑るように行き来している。


「すっ…ごぉおおい!!初めてだらけでどうすればいいかわかんない!ねえ、それどうやって浮いてるのー!」

滑空する様に、空を泳ぐように浮かんでいる竜に声を掛けながら走っていくルーア。


「あっ、ちょっと!!」シャムスが止めようとするが、風の力を使って走るルーアには到底追いつけない。

見知らぬ土地で皆離れ離れよりは、ルーアだけ迷子であればどうにか出来るか…と、思い直し皆のところへ戻った。


そうして竜族の村を案内されて分かったことは、自分たちとは大きさも、生活も全く異なるということ。

家々が立ち並ぶ区画もあるのだが、その大きさが人間の家の数倍はある。


また、空を駆けるものは空に浮かんだまま、地中に潜って生活するものなどもおり、多種多様といったところであった。


「人間の家よりも数倍は大きいですが、それでも貴女達には小さいのではないでしょうか?」

と、シャムスが尋ねると、


「ああ、それでしたら…」大蜥蜴が額の前に光を浮かべる。聖気とはまた異なる輝き。神聖さというよりも生命力の様なものに満ちている。


その光が大蜥蜴の身体を包むと、みるみるうちに姿が人の丈ほどになり、「わっ、眩しい」と、目を開けていられない程の、光量になったあと大蜥蜴の姿は消えて、顔や体の各所に青竹色の鱗が散りばめられた女性が居た。


「おっきいとかげさん消えちゃったよ!」

「お姉さん誰?」「鱗すごいね!」

「なるほど、その力を使って人に姿を変えられるのですね?」驚く他の者と異なりシャムスが言うと、

人の姿になった大蜥蜴は頷いた。


元の姿で過ごすもの、人の姿で過ごすもの、それぞれの特徴が混じった様な姿で過ごすもの…特に決まりがある訳でもなく、好きな姿でそれぞれの思う様に暮らしていることがわかった。



そうして、仲間を昏きものから救ってくれた初めての客人ということでもてなしを受けた。


見たことのない、大きな牙を持つ猪のような形の鼻の長い動物を竜が火炎で炙った丸焼き、宝石のように輝く果物。

どれも鼻腔をくすぐる良い香りがしている。


「ありがたく頂きます。」

「お肉美味しいね!これはなんのお肉?」

「竜の料理って豪快な感じなんだね!」


「いやー、なんか山の頂上まで行くことになったけど、帰りは乗せてもらえたよー。おっ、これおいしいね!」

ルーアは食事の香りと賑やかな空気に釣られていつの間にか戻ってきて、食事をとっていた。


そうこうして、今夜は大蜥蜴のバレケトの家にお世話になることになり、その娘…ぴーちゃんと皆で火山の麓の温泉に来ていた。


シャムスは、竜族に酒を振る舞い大層気に入られたため置いてきた。


まだ生まれて十年とのことであるが、人型になった時にはまだ五、六歳に見えた。

「ぴーちゃん!一緒にお風呂入ろうね!」リリに言われて、「ヤロク!ぴーちゃんでもいいけど、ぴーちゃんはヤロク!」と、まだ上手く変化出来ずに腰の辺りから伸びた尻尾をパタパタと振りながら名前を必死に伝えていた。


(なんだか人懐こい狼だかなんだかみたいで可愛いなぁ…)本人は必死なので口には出さなかったが、皆同じ様なことを心に思った。


そうして、湯煙と新しい出会いに身も心も暖まり、緊張も解れた一同は翌日昼過ぎまで眠り、余計に一日滞在することとなったのであった。


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