神歴第二十七の年 竜族の島
それから丸一日、大蜥蜴は眠っていた。
その間、きゅーちゃんは側を離れようとしなかったため、皆で見守ることにした。
「しかし、こんな大きなとかげ初めて見たね!」
と、ルーアが興味津々な様子で、大蜥蜴の色々なところをじっくり観察しながら言う。
「そうですね、昏きものも、少し似た様な形をしていましたし、ここ一体は植物だけでなく動物の生態系も異なるのかもしれませんね。」
と、顎に手を当てながらシャムスが答えた。
ヨナの子たちは、
「何だか光ってる帯みたいなの凄かったね!」
「起きてくれるといいな。」
「きゃーちゃんも心配してそう。」
と、口々に感想を述べていた。
リリは、きゃーちゃんを撫でながら、大蜥蜴をじっと見つめていた。
そうして翌朝、皆が起きた頃に、大蜥蜴はむくりと起き上がった。
一同は少し驚きながらも、ここからどうなるか…と、考え、大蜥蜴の反応を待った。
ぐるっと辺りを見回して、リリの腕の中ですやすやと眠る大蜥蜴の子を見て目を細めると、皆に向かって頭を下げた。
「ありがとう。見かけないもの達。」
見た目に似つかわしくない、やや高めの、大人の女性を思わせる声が大蜥蜴より発された。
「喋れるのー!すごい!!」と、ルーアがぴょんぴょんと跳ねながらはしゃぐ。
皆口々に驚きの声をあげる。
「ええ。あなた達にもわかる様に話すための術を使っているのです。どれ程寝てしまっていたか分かりませんが、私とその子を助けてくれたこと、礼を言います。」
と、再び頭を低く下げた。
「いえ、むしろもう少し早くこれずすみません。」
と、シャムスが謝ると、大蜥蜴も頭を下げて、こちらがいやこちらが…とやり始めたため、
ルーアが、「それで、どうしてその術?を使えるの?」と横から割って入った。
すると大蜥蜴は咳払いをしつつ、
「私たちは竜族。神が作りし昏きものから弾き出された存在です。」
と、予想だにしない答えを返してきた。
そうして大蜥蜴はわ長くなりますが…との注釈のあと説明を始めた。
神が人への試練のために作り出した怪物達の悪の部分を、誰かがより濃く集めて歪な感情を固めたものが昏きものであること。
そして、それ以外の部分…原型となった生物などの元の形に近い姿を持ちながら、神により与えられた特殊な力を持つ自分たちのようなものが、世界にはちらほらと存在しているということ。
自分たちはこの島に集まって住み、竜族と名乗っていること。
それらを説明した。
「何やら大きな話になってきましたね。どう関わっていいのかよくわかりません。試練のためとはいえ大元は敵対する予定だった様ですし…」と、困惑するシャムス。
いざという時は、自分が時間を稼いででも皆を逃さないと…と考えつつも、目の前の存在が敵対しそうだとはあまり思えず、危険性と自身の感覚との間で揺れていた。
リリは、ようやく目を覚ましたきゅーちゃんを抱いて、「敵じゃないよ!優しい子だよ!」と、攻撃されない様に守っている。
「いや、そんな、別に今すぐ戦うとかそういう訳では…!」
と、早口で説明しながら慌てるシャムス。
「でもまぁ、今は敵じゃないんでしょ?私たちってことは、他にも色んな子がいるの?」と、ルーアが尋ねる。
「ええ、あなた方には恩もあります。お礼に、この島初めてのお客様としてご案内しましょう。」
大蜥蜴は、島の奥に皆を案内するのであった。
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