表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新世界創造  作者: プラトー
第0章
1/112

現世界の終焉

ある街の片隅。


路地裏の掃き溜め。


かつて少女だったものが、静かに、そしてかろうじて残された息を引き取ろうとしていた。


その双眸には何も映らない。


降りしきる雨が彼女の体を打ちつけているはずだが、その冷たさすら…もう感じることはできなかった。


ただ一つ、彼女をこの瞬間まで生かし続けたものがある。


それは、自らの身に降りかかった不幸への深い恨み。


それだけが、彼女のか細い呼吸を微かながらも、続けさせていたのだった。



妬ましい。悔しい。辛い――。

そんな感情は、もう涙と共にとうに枯れ果てたと思っていた。


だが、死を目前にした今、その感情は再び静かに、

しかし確かに彼女の胸の奥からふつふつと湧き上がってきた。


それは不条理への怒り、無力さへの絶望、そして何より、この世の全てに対する深い恨みだった。


(願ったって叶わない。祈ったって変わらない。)

どうしようもなく打ちのめされる中、皆が必死に縋るように祈りを捧げているのを横目にただそう思っていた。


救いなどなく神父に売り飛ばされ、狂った目をした大人に、その後汚され、絶望の淵にあって祈りを捧げている子達を沢山見てきた。

そして、自分はそれをどこか達観したような、諦観したような気持ちで見ていたのだ。


しかし、この時を迎えて、祈らずにはいられなかった。願わずにはいられなかった。

指先一つ動かない中で、出来ることはもうそれだけだったのだ。


今まで見てきた少女達とは違った形で、少女は祈った。祈ってしまった。


ああ…世界よ、天上に踏ん反り返っている神よ。


こんな道端の虫のように死にゆく姿は、あなたの目には映らぬのだろう。


私という存在が消え去っていくのは、もうどうしようもなく避けられないのはわかる。


だが、この胸に渦巻く恨みは、それだけは消えることはないだろう。


たとえ私が塵となっても、この心の奥底に燃え続けるこの思いだけは…永遠に燃え続ける憎悪の炎だ。



神よ。貴方に初めて祈ろう。


神よ。最期に祈ろう。


永劫の禍を。



どうか貴方と世界に不幸あれーーー






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ