一見さんお断り?よし、コネを使おう。
「ふぁあ、ああっよく寝たあぁ。」
ああ、そういえば今日から荷物持ちの仕事かあ。
楽な仕事で稼げるって最高だな!
そいやあ、待ち合わせ場所とか聞いてなかったなあ。
朝食がてら店の人にでも聞いてみるか。
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俺は宿を出て、何かいい店がないか探す。
ジャンボテリヤキンバーガーもいいんだけどなあ。
たまには別のもん食いてえよなあ。
そう思いながら歩いていると、香ばしい匂いがしてきた。
匂いにつられて店に入る俺。
他の客が食べているものをチラ見する。
なんだあれは!?めっちゃ美味そうやんけ!
早速頼もうと思い、カウンターに向かうと何か張り紙が。
ん?なんだ?なんか書いてあるな。
えっと....、一見さんお断り?
マジかよ....めっちゃ食いてえのに....。
いや待てよ?ごり押しで行けるか?
「店主、いつものを頼む。」
とりあえずいつものって言っときゃあ大丈夫っしょ。
「聞かねえ声だなあ、お前さん一見さんだろ。一見さんに食わせる物ははねえよ。」
振り向かずに作業しながら答える店主。
くっそ、強引すぎたか?
仕方ない、他の店に行くしかねえか。
そう思い店を出ようとしたとき、店の扉が開かれ、3人の女性客が入ってくる。
そして声をかけられる俺。
「なんだ、アレス君じゃないか!君もここに朝食を食べに来たのかい?」
うわあお、まさかこんなところで勇者パーティーと会うことになるとは。
ん?待てよ?勇者パーティーと一緒ならワンチャン食えるんじゃね?
使えるコネは使わんと損やな。
「ああ、朝食を食べに来たんだが、一見さんお断りと言われてしまってな。どうしたものか...。」
届け!俺の『こいつ一応パーティーの仲間だから食わせてやってくれ』って言ってくれアピール!
「ふうむ、なるほど。私が少し店主と話してみよう。」
届いたあー!よかったあー!
俺が思わず感情を隠しきれずニヒルに笑っていると、
「あんた、キモイわよ。何その顔。」
魔法使いに見られてた。
やだ、もう恥ずかしくて穴に入りたい...。
てかアリサさんよ、なんか俺に対するあたり強くな~い?
「彼は私たちのパーティーの仲間なんだ。何とかしてもらえないだろうか?」
「いくら勇者パーティーの仲間でもうちは一見さんには食わせる物はねえよ。」
んだよ、この店主。頑固すぎだろ。勇者様がお願いしてるんだぞ?
すると、ヘレナが店主の方に向かい何かを耳打ちし始めた。
ぶっちゃけこの子が一番何考えてるかわかんないわ。
正直怖いね、うん。
『彼は【紅】のナンバーワン、失礼な態度をとるとこの店がどうなるか、補償はできませんよ?』
「な、なな、なんだって!?」
うおう、店主よ、急にうるせえな。
「おいあんた!いやアレス!すまなかった!この通りだ。知らなかったとはいえ、失礼な態度をとっちまってすまねえ。なんでも頼んでくれ。」
「一見さんお断りじゃあ...。」
「あんたをお断りしたら俺の店の存在がお断りされちまうんだよ!」
てか、さっきまでのクールな感じどこにいったんだ。
しかし『存在がお断り』って、ヘレナさんやいったい何を言ったんですかねえ...。
まあ、食えるんならいいか。
「俺は気にしていない。そうだなあ...オススメはなんだ?」
「うちのオススメは、チーズインチョベリバーグだ!中からとろっと出てくるチーズとハンバーグの肉汁の相性が抜群なんだ!」
チョベリバーグって....。
なんか不安になる名前だなあ...。
この店と店主色々と大丈夫か?
まあ見ていて美味そうだったし頼んでみるか。
「じゃあ、それを1つ頼む。」
「私もそれで。」
「あたしは、小さめのやつにして。」
「わたくしも同じものを。」
「あいよ!」
みんな同じの頼むんかい!
まあ別に構わんけど。
てかアリサお前、ダイエット中か何かか?
魔導着着てるから体系よくわからんけど。
「あんたまた失礼なこと考えてるでしょ?」
「いんやあ、まさか。」
「言っとくけどお腹すいてないだけだから。」
えっ、ナチュラルに心読むのやめてもらっていいですか?
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チーズインチョベリバーグができる間、俺たちは今日攻略するダンジョンについて話していた。
「私たちが今日攻略するのはカンパイーン洞窟だ。ヘレナ、地図を出してくれ。」
「こちらです。この街の北、ミネルネ地方に進み、高原を超えた先にあります。」
カンパイーン洞窟か...。
パインでカンパイーンなんつって(笑)
「アレス、あんたどうせ『カンパイーン洞窟だけにパインでカンパイーン』とかしょうもないこと考えてるんでしょ?」
「そんなくだらないこと考えるわけないだろう。」
やべえぇ!また心を読まれた!?
もうここまでくるとあんたそれパッシブスキルだよ!
「カンパイーン洞窟は攻略難易度B、私たち勇者パーティーなら難なく攻略できるはずだが....、最近奇妙な噂を聞く。なんでも、本来生息しないはずの大型モンスターの目撃情報がギルドに報告されているんだ。念のため皆注意を怠らないように。」
「厄介そうね...。」
「慎重にいきましょう。」
みんなが重々しい空気を漂わせる中、俺は『早くチーズインチョベリバーグ来ねえかなあ。』と思っていた。
いやだって、腹減ってるし?
昨日の夜から何も食べてないし?
仕方ないよね?
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「ほい、待たせたな!チーズインチョベリバーグ4つだ。こっちが小さめのやつな。」
やべえ、めっちゃいい匂いするんだが?
早速頂こう。
どれどれ...はむっ、モグモグ...。
こ、これは!?
何たる業!?
一口食べただけで人を虜にするとんでもねえ食い物だ!
「気に入ってくれたみたいで何よりだ。ここのチョベリバーグは特に美味しくて評判なんだ。私も気に入っていてよく食べにくる。」
なるほど、確かにうまいな。
思わず飛びそうになったぜ。
「あら?アリサ、わたくしのチョベリバーグをそんなに見つめて、もしかして分けて欲しいの?」
「ちっ、違うわよ!食べきれないなら食べてあげようとしただけだし!?別にもっと食べたいとか思ってないし!?」
「いいのよ?ダイエット中だからって無理しなくても。はい、半分あげるわね。」
「しょうがないわね!仕方ないから食べてあげる!」
「ふふっ。」
なんだよ、結局ダイエット中だったんじゃねえか。
つるんでて思ったけど、この女、意地っ張りだな。
「違うからね!?」
俺の方見ながらなんか言ってるわ。
まあ、育ち盛りの女の子なんだしちゃんと食った方がいいよな。
そうしないと胸も....ゲフンゲフンこれ以上考えるのはよそう。
ジトー
「なんだアリサ?俺の分も欲しいのか?」
「違うわよ!あんたが失礼なこと考えてる気がしたから睨んでただけよ!」
え?何?またですか?
お前転職してその能力ほかのことに生かしたほうがいんじゃね?
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一方そのころ...
「アレスとの連絡はとれたか?」
「いえ、全く...。」
「あいつにはまだ昨夜の件の報酬を渡していない。それに個人的にも久しぶりに会ってみたいしな。捜索を続けてくれ。」
「了解しました。」
組織はアレスを探していた。