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へっぽこ元女神の日常日記

作者: 大鳥進

元女神の物語の一幕です。

この女、人間名ユリア・アウグストは苦悩していた。


「ううう……。今月の家賃の支払いどうしよう……。女神パワーはお金を作り出すことには使えないし……。しくった!」


こたつに入りながらテーブルに肘をつき、両指を組み合わせ、額に当てる。

苦悩している人のポーズだが、ミカンを食べながらなため、他人が見ればいまいち深刻さを感じないかもしれない。

最も、ここには彼女しかいないが。


「お金を貸してくれそうな友達は当たりきっちゃったしなあ。くぅ、薄情者め〜。そりゃあ前に借りたお金をまだ返しきってない私が悪いけどさ〜。もうちょいこう、情けがあっても……」


情けないことを言いながら金策に思い悩むこの女は、間違いなく美しい。

女神を絵として描こうと考えた画家は、彼女にモデルを頼むかもしれない。

髪は長く、絹のような質感を持つプラチナブロンドで、瞳はアメジストの輝きを放つ。

顔立ちはほっそりし、目立ちは涼しげで、大人の余裕を感じさせるクールさがある。……黙っていればだが。


「お給料日までまだ日数あるしぃ。あの大家は融通利かないからなあ。ここの保証人いらずの格安アパート追い出されたら、私どうすれば……。クソぉ〜。何が身体で稼げばよ。そんな事をホイホイ出来たら苦労しないわよ!神様舐めんな」


そう言いながら、こないだの友人とのやりとりを思い返した。


某日。ある喫茶店にて。

その喫茶店は若者向けに洒落た内装がされており、値段も程よいため、学生に人気だった。

店内に流れる音楽は、その店で休む人々に潤いを与えている。

しかし、同じ大学に通うそこそこ仲が良い友人にお金の無心をして玉砕し、テーブルに突っ伏して陰気なオーラを放つ一角は、せっかくの潤いを見事に負の力で打ち消していた。


「ちょっとお、いい加減にしなさいよね。恥ずかしいったらないわ」


見かねた友人は、そう叱りつける。

その言葉でようやく顔を上げた元女神は、涙でしょぼくれた目を濡れた子犬みたいな雰囲気を漂わせて向けてくる。

その美貌と相まって庇護欲をかきたてられそうな気配を放つが、目の前の友人は慣れたものでとことんドライかつクールに徹し、まったく動じなかった。


「まったく。よく金欠になるけどいったい何に使ってるのよ。まあ、あんたはお金の使い方は下手……個性的なのは知ってるけど」

「それはその、世のため人のためと言いますか。自分のためでもあるけど、巡り巡って世界のためになると言いますか……」

「何で敬語?それに世界のためとは大きく出たねえ」


呆れたように呟く友人だった。

ユリアも説得力に欠ける苦しい説明だと自覚があるため、言葉に詰まってしまう。

そんな中、友人はズバリ提案する。


「あんたがその気になれば、その身体を使っていくらでも稼げるでしょうが」

「か、身体って……。は、はは、ハレンチなーっ!」

「ハレンチって言葉、漫画の中だけのセリフかと思ってたわ……。そうじゃなくて、いや最終手段としてそういうのも否定はしないけど、そうじゃなく、モデルとかそっちの仕事してみればいいじゃない。覚えてるわよ。スカウトされたことがあるのを。そりゃその顔じゃねえ」

「え!?え、エヘヘへへ」

「謙遜しないんかい。まあ、その方が嫌味がなくていいわ。で、どうなのよ」


両手を頬に付け、照れ笑いを上げ続けるユリアに対して友人は答えを予想しつつも、さっきの自分の提案の是非を尋ねる。


「え。ええと、その、私には制約があって……。だから、自分の身体を使って目立つ行為はしたくても出来なくて」

「そういや前そう言ってたね。じゃあ風俗系は?」

「そっちは更にNGです!!」

「あー、はいはい。じゃあ男に貢がせるのは?」

「それも制約に該当します」

「面倒な制約ばかりね。あんた、やっぱりヨーロッパ辺りの良いところ出の訳あり家出女じゃあないの。そんなのが何で日本にいるかは謎だし、日本語の発音も使い方もネイティブ並みなのも謎だけど」

「ああ、それは女神パワーで……」

「女神?」

「あ、いえ、女神なんたらというアニメをきっかけに猛勉強した成果と言いたくて……」

「……まあいいわ。あんたの奇行は今に始まったじゃないし」

「ううううう……」


仕方ないとはいえ、あんまりな言われように目の幅涙を流すユリアを苦笑いで友人は見つめるのだった。


「あんたにも事情があるんでしょうから、仕方ないわね。でも、もったいないなあ。男を使えばすぐに解決するのに。男なんて良い顔しながらちょっとサービスしてやれば面白いぐらい貢いでくれるわよ〜」

「誰もがさえちゃんみたいにはいかないよぉ。それにさえちゃんはそういうことをして後が怖くないの?」

「あたしはその分サービスしてるわよ。まあコツがあるの」

「はあ」


さえちゃんと呼んでいる友人が得意気に語るのを、別世界の住人のように感じながら気の抜けた返事で返すユリアだった。

そんなユリアを見ながら始めて出会った頃を、さえは思い出しながらしみじみ言う。


「まったく。もっと器用に生きればいいのに。ユリアは知らないだろうけど、以前はあんたへの周囲の反感が凄かったんだから。言い寄ってくる男共をことごとく振ってるもんだからお高くとまってるってね」

「知ってる……」

「あらそう。でも常識外れの行動の数々のおかげで幸か不幸か、おか……、変わった残念な子という位置付けになって逆風もだいぶ収まったけどね」

「うう……。それも嬉しくない」

「とにかく、お金は貸せないけど即金の仕事をあたしの方でも探してあげる。でも、あまり期待しないでよ。あ、ここはあたしが奢ってあげるわ」

「あ、ありがとうさえちゃん!あれ、この後用事?」


立ち上がるさえを見上げてユリアは問いかけると、さえは頷いた。


「この後彼氏と待ち合わせなの。ユリアはまだここにいる?」

「ううん。私も帰るよ」


二人は揃って店を出ると、さえはユリアの肩を叩き、元気づけるように笑いかける。


「まあ頑張んなさい。前向きな所があんたの取り柄なんだから」

「うん。頑張る」


こんなやりとりがあったが、現状は好転しなかった。

時間ばかりが過ぎる現状にユリアは焦りを見せていた。


「あれからさえちゃんから良い知らせはなし。私の方も全滅。なんで人間の世界ってこうお金に世知辛いのかしら。これじゃあお金が神様みたいじゃない。最近一日パン二枚しか食べてない……。お肉の味なんて忘れちゃったわよ。ああ、お寿司、ステーキ、ラーメン……」

「食欲旺盛ですね〜。太る心配はしないんですか?」

「それは大丈夫。腐っても元女神。いくら食べても太らない黄金体型は維持出来るのって、あんた誰よ!」

「へ〜。堕ちても便利な性質はそのままなんですね。私は墜ちることはないので、参考にはならなくても勉強にはなります。あっ、自己紹介が送れました。ここの土地神をやっている女神で琴音姫命ことねひめのみことと言います。琴音姫、又は琴音ちゃんと呼んでいただけたら。以後お見知りおき」

「あっ、これはご丁寧に。私は今は人間で元女神のユリア・アウグストと言います。もちろんこれは人間名ですよ。女神としての名前を名乗る事は、今許されてなくて。だから言えないんです。ごめんなさい」


お互いに自己紹介を行い、お辞儀をし終わったら、すっかり相手のペースに嵌まっていることにユリアは気づいた。


「っと、やるわね。すっかりあなたのペースに引きずられてたわ。で、その土地神である女神が何の用よ」

「実はですね。私はしばらくあなたの事を観察していたんです」

「観察?。何でまた」

「そこ、疑問に思いますか?自分の管轄下の土地に同業者っぽいのがいたら、疑問と警戒で注視するのは当然じゃないですか。……それともあなた、やってないとか?」

「ぎくっ。ま、まさか。そんなわけないじゃあないの。私はその、やってて当たり前の事以外に、何か意図があるんじゃあないかと思って聞いただけよ」

「ほんとに〜?」


ジト目で見つめ続ける琴音姫から必死で目を反らしつつ、この状況をどうしたものかとユリアは考える。

琴音姫と名乗る目の前の女神はパッと見て、お店で見た日本人形のようだった。

髪は宵闇の如き漆黒で腰まである長さに、前髪はパッツンと綺麗に切り揃えられている。

あごは細く鼻筋が通っており、外見から予想出来る年齢は高校生ぐらいの美少女だが、その落ち着いた佇まいはどこか神秘的で、彼女を成熟した大人にも見せる。

着ている服装は着物で、華やかで高そうだが、嫌みの無い年季の入った仕立てだった。

ユリアは本能的にこの出会いは録でもないものと感じたため、早く帰ってもらおうと慎重に言葉を選んでいた。


「そ、それで?ここに現れたという事は、観察は終わったということよね。何か問題あったかしら」


愛想笑いを浮かべながら、出来るだけにこやかに問うユリアに、琴音姫は調査結果から伺えるユリアの姿を告げるのだった。


「問題ですか?率直にいってあなたの素行は問題だらけですね。たった今、金策に頭を悩ましていましたが、あなたの金銭感覚は滅茶苦茶です。根本的に改めないといつまでもそうですよ」

「ごはっ!気にしていることを……」

「だってそうでしょう。大した貯金もないのにお給料が入ったらその日の内に八割使うなんてアホですか?しかも買ったものは、どこぞの神に関わりがあるのかも怪しい壺ですよ。あなたそれでも女神の端くれなんですか?」

「うぎっ。私、幸運値が足らないからそれの足しにしようと思って……。幸運値が高くなれば生活が楽になるかもって……」

「雲を掴むような話ですね〜。そもそもパチもんで幸運値を上げるも何もないですが」


いつの間にかユリアへの駄目出し大会になっていたが、当のユリアはそれにまったく気付いていなかった。

そのため、琴音姫のペースで話が進んでいく。


「他にも食べ歩きを毎日のように繰り返し、破産状態。いくら食べても太らないが仇となってませんか?」

「あうう……。それは私が下界に墜ちたばかりの頃で……。物珍しさに手を出したら、つい嵌まっちゃって……。だってあまりにもおいしいんだもん」

「恵まれない子への募金で身の丈に合わない寄付やって自分が不幸になってどうするんです?掃除のアルバイトやってて張り切り過ぎて備品を壊して借金作るし。行動がハチャメチャ過ぎですよ」

「あうううううううう………………」


いつしかユリアは琴音姫の容赦ない指摘に反論する気力もなくなり、呻き声を上げるのみとなっていた。

そこで琴音姫は根本的な疑問を口にする。


「そもそも何故堕天して人間として暮らす羽目になったんですか?」

「それはその……、言えない。恥を晒すに等しいため、答えられない……」

「気持ちは分かります。でも、事情次第では私の上司経由になりますが、つてを辿って取りなして、処分を軽くすることが出来るかもしれません」

「ほ、本当?」

「確約は出来ませんが、神様仲間としてお力になれるかもしれません」


その言葉に希望を見出だしたユリアは、迷いはしたものの、話してみることにしたのだった。


「実はね、酔っ払って女神パワーを使用しちゃって……。その結果、多くの村人を豚に変えちゃったみたいで……」

「それはまた盛大にやらかしましたね……。それで、その人間達はどうなったんです?ドナドナされちゃいました?」

「出荷寸前で元に戻して、その間の記憶も消したわ。でも、うちの上司にバレちゃって……。大目玉くらった挙げ句、罰として人間となり、徳を積んでこいと言われちゃって。一定の徳を積めばまた神様に復帰させてくれるそうだけど……」

「はあ。そういう事ですか……。でも、何故またこんな遠く離れた場所にいるんです?文化や風土が違い、戸惑う事も多く、不便に感じるのでは?」

「近くじゃ知り合いに落ちぶれた姿を見られちゃいかねないじゃあない。ならいっそ、自分の事を知らない地にしようと思って。それに、この地の文化に興味もあったから」

「なるほど。一応は色々考えてはいたんですねえ。見直しました」

「何か引っかかる言い方ね……」


感心したように呟く琴音姫をジト目で見つめ続けるが、面倒になってきたため、ユリアは話を続ける。


「人間の世界で生きるために必要な資金や知識を叩きこまれ、晴れて下界デビューよ。制限付きながら女神パワーを使えるから、それで行政や大学の手続きをなんとかしてね」

「でも、色々叩きこまれたけど、うまくいかなかったんですね。でも、努力は認めます。頑張りましたね。よしよしです」

「うう……。分かってくれるのね……」


頭を撫でてくる琴音姫につい胸襟を開きかけてしまうユリアだった。

そのため、琴音姫の意図に気づけない。


「制限付きとはいえ、女神パワーを使えるなんて凄いですね。でも、どんな制限なんですか?」

「墜ちたとはいえ、女神が人の世界にいると、人の世の営みにどんな影響が出るか分からない。だから、極力目立たないようにしなければならない、と言われたわ。だから、映像に写って世に広がるのはNGだって」

「墜としといてそれですか。でも、昔ならともかく、今は難しくありませんか。監視カメラやSNSの時代に」

「映像はいずれ修正がかかり、なくなるの。でも、人の認知度次第で、その修正にかかる手間が凄い事になる。現代の事情を考慮し、自然に写った場合やそのルールを知らない人間が私が知らない内に広める分は仕方ない。でも、私が意図して働きかけて広める行為は厳しく咎められ、場合によっては処罰の対象になるし、天界復帰は遅くなる。徳を減らされちゃうの」

「徳?」

「善行を重ねたり、誰かの役に立ったり、自分を高めたりすれば、徐々に貯まっていく。逆に悪行を重ねたり、誰かを害したり、堕落していく怠慢行為をやってると、減らされていくし、場合によれば、マイナスになる。私がルールを破った場所は特に厳しいわ」

「なるほど。で、現在いかほどで?」

「うっ。そ、それは……」

「ここまできて隠してどうするんです?ほらほら、取りなし取りなし」

「うぐっ。し、仕方ない。実は……」


ユリアは、どれくらい徳を積んだかが分かるパラメーターを空中に現出させた。

どれどれと琴音姫は覗いてみると、すぐさま呆気に取られた表情を浮かべる事となった。


「えっ?たったこれだけ?」

「色々あったのよ。色々」


人間の世界に来て、かれこれ二年近くになるが、その時間に見合わない少なさだった。


「色々やらかしているのは知っていますが、予想以上の惨状でしたね。これじゃあ天界復帰は何世紀後になるやら」

「う、うるさーい。困った事態なのは分かってるわよ。でも、仕方ないでしょ。頑張った結果がこれなんだから」

「開き直っても解決しませんよ〜。まあでも、人前に出る仕事をしていない理由が分かりました。そうなると、男性からのアプローチを拒んでいるのは……?」

「私だって何のしがらみもなければ、お付き合いしてみたいわよ。別に人間の男が嫌いとかじゃないの。理由はいくつかあって……。一つはいずれ別れる運命が決定している以上、深い仲になるなんて相手をもて遊び、傷付けるも同然じゃあない。そんな事出来ないわ」

「そこまで堅苦しくならなくても。あなたのご友人のように楽しめばいいのでは?自分も相手も楽しんだ末に、お別れにしている」

「さえちゃんみたいに器用に振る舞える自信はないし、私の性格にも合わない。仮にそのように振る舞おうとしても、心のどこかでは相手を傷付けると思ってしまうだろうから……」

「はあ。まあそんな調子じゃあそうなっちゃいますねえ。そうなると、徳は貯まるどころか減る一方と。では、他の理由は?」

「理由その二は私の元の神格が影響してるの。別に純潔を司るわけじゃなかったけど、性に奔放でいい神格でもなかったから。元の神格の性質と違える事をやっていると、女神としての在り方に悪影響が起きかねないわ」

「なるほど」

「何にせよ、こう見えて色々制限があるから不便だな~と感じる事もよくあるのよ」

「ご友人に「あんたが顔出しOKなら動画で稼ぐことも夢ではないかもしれないんだけどな~。というか、あんたのセンスじゃそうでもしないと再生数は伸びる事ないから」といわれてましたね」

「私的には面白いと思って動画を上げてみたのよ。でも全然再生数は伸びなかった。人の世界って不思議よね」


ユリアは本気で首を傾げていたが、琴音姫はそんな彼女を生暖かい目で眺めるだけだった。


「で、どう?あなたの上司に取り直してもらえそう?」

「ごめんなさい。これでは無理ですね」

「はあ?ち、ちょっと待って。なんでよ!」

「なんでって……。一連のあなたの説明に取りなしを頼めるプラス材料何てあったと思いますか?」

「う。そ、それは……」

「あと、今の話にちょっと気になる所があります。あなたが堕ちた理由は分かりましたが、その理由だけが人間界に放逐の理由なんですか?」

「え?」

「人間にとってみれば一大事ですが、我々神の基準では、大事とその程度では見なされません。死者が大量に出ればさすがに問題視もされ始めますが、幸い犠牲者は結果的にはゼロであり、記憶も修正出来たのでしたら、人間界への影響も軽微です。少なくとも我々の方だったら、この程度でそこまでの処分はしません。神がいなくなる事や人間界への神の放逐は、それはそれで影響が大きいですから。まあ、実は我々の方の規律はちょっぴりゆるふわですけど。あなたの方は違うんですか」

「ぎくっ!」

「ん~?どうですかあ~。正直に言わないと徳も減っちゃうんじゃないんですか~」

「うう……。実は、それまでにも度々、やらかしてて……。積もり積もった問題がとうとうこの度、爆発した結果でして……」

「やっぱり。さて、それでもまだ何か言う事はありますか?」

「ううう」

「私はそれでもあなたなりの頑張りを評価します。でも、それはあくまで私の主観であって、私の上司に通じるものではないのです」

「うううううううう」


ユリアは恨めし気な呻き声を上げていたが、やがてそれも止み、後はこたつに額を押し付け、さめざめと泣き始めた。

そんな彼女を琴音姫はしばし眺めていたかと思うと、彼女にとっての本題にようやく取り掛かり始めた。


「ユリアさんは現在大ピンチです。毎度金欠に喘ぎ、人間界への適応にも不安が未だに残り、徳もなかなか貯まらない。このままでは天界復帰なんて夢の又夢ですし、人間界では底辺の生活を送るのも時間の問題でしょう。奇跡が起こり、戻れたとしても、その神の立場には他の神が収まり、居場所がなくなっているかもしれません」

「うううううう」

「でも、私、もしかしたらユリアさんの窮状を救う事が出来るかもしれません。もちろんユリアさんの頑張り次第ですが」

「な、何か名案があるの?ねえ?」


もう藁にも縋る思いで琴音姫に迫るユリア。

そんなユリアを見て、内心うまくいってるとほくそ笑みながらもそれをおくびにも出さず、厳粛な雰囲気を張り付かせ、頷く琴音姫だった。


「はい。実を言うと、今日は今から話す事のご相談をしたくてお邪魔したんです。この件をうまく解決出来れば、あなたの抱える多くの懸念事項に対処出来ますし、私も私が守るべき人々も大助かりで、多くの者にとって満足いく結果に至れます。あなたの一向に集まらない徳も爆上がり間違いなし。というか、この機会を逃したらもう這い上がれないかもしれませんよ」

「そう言われる時って大体ろくでもないのよね……。でもいいわ。とりあえず話してみて頂戴。もう私、なりふり構っていられないのよ」


ユリアは猫に追い込まれた鼠の如き闘志を燃やし、話を聞く姿勢を見せる。

琴音姫はその様子を満足げに見やりながら、問題事を話し始める。


「我々神の仕事の内に、悪しき超常の者から世界を守るというのがあります。その事はどこも同じだと思いますが、間違いないですね」

「ええ。それは私達の方も同じだわ」

「その悪しき者達の中に、稀に人間の負の感情から生まれる怪物がいます。それを私達はアヤカシと呼んでいるんです」

「あー、あれね。へー。こっちじゃそうあれを呼んでいるのね」

「ピンと来たようですね。何よりです。その退治に協力してほしいと思い、今日伺った次第です」

「え?ま、待って待って。それは本来あなた達の仕事でしょ。何でそこで私が出て来るの?」


当然の疑問をユリアはぶつけてみると、琴音姫は待ってましたとばかりにその理由を口にする。


「疑問は最もです。私も普段は自分でこの土地を任された神として、アヤカシを退治しています。ただ、あるアヤカシが困った事になっていまして……」

「何があったの?」

「アヤカシは基本的には知能もなく影でこそこそ動き回り、時々近くを通りかかった人間を襲うぐらいの存在です。人間ならともかく、我々には脅威とはなりません。しかし、極稀に人間に憑りつく事が出来るアヤカシが現れます。そういったアヤカシは、知能が驚く程高く、強い力を得ていくのです。憑りついた人間との相性の問題もあるため、その力には個体差がありますが」

「なるほど。見えてきたわ。アヤカシの中にその憑依タイプが現れ、驚くほど強い個体へと成長したって所かしら?」

「ご名答!話が早くて助かります。しかもですね、そのアヤカシは部下も増やして勢力を拡大中でして。そのアヤカシが力を持ち始めた時、私はたまたま別件でこの土地を留守にしていたんです。もちろん知り合いの神に管理を任せた上で出かけていたんですが、あろうことか、その神は怠慢を働き、その厄介なアヤカシを見過ごしてしまったんです。ちくしょうです。私が気付いた時にはそいつ、なかなか厄介な存在になってしまっていて……」

「で、そのアヤカシ退治に協力してほしいという事ね。でも、他の神々は協力してくれないわけ?特にその怠慢を働いた神は責任を感じて率先して協力してくれてもいいじゃないの」

「うんうん。いい質問です。その土地のアヤカシ退治は、その土地の管理者たる神の仕事です。ですので、留守にするため委託しようが、最終的には任せた神の責任となります。その点を盾にして、自分に任せたお前が悪いと奴は開き直ったわけです。許せないでしょう」

「それは酷い話ね。血も涙もないわ」


ユリアはすっかり同情してしまった表情を琴音姫に向けていく。

琴音姫はヨヨヨっと泣く仕草をしている。

この場にいる者に疑う事が出来る者がいれば、その嘘臭さに感づけたろうが、あいにくそういった者はいなかった。


「分かったわ。私が出来る事があるなら、可能な限り協力する。でも、今の私に出来る事ってあるのかしら。神であるあなたが警戒する程の敵なんでしょう?」

「大丈夫。あなたならば出来るでしょう。色々補足しておきますが、そのアヤカシは確かに力を付けてきてますが、私やあなたが歯が立たないというわけではないんです。ただ、私の立場で動いては、色々困った事になるんです」

「困った事って?」

「アヤカシに憑依されているのは私が守るべき人間です。乗っ取られた本人に非がありません。憑依されているからとはいえ、非がなく、哀れな被害者を私の手で誅する形になるのはいささかまずいのです。そのアヤカシは私程ではないですが、それなりに強い力を持っていますし、当然抵抗してきます。力づくになってしまう可能性が高く、そうなるとその人間はタダでは済まず……」

「そういう事ね。その点、私ならしがらみがないと。…………分かったわ。私はこれでも女神の端くれ。神の立場の制約や苦しい立場には理解があります。私が代わりに討ち果たしましょう」

「ご理解していただき感謝します。ああ、やはり私の見込んだお方」

「超常の存在には神の力が相克するため、修正の力が及ぶのは限定的。そうなるとどうしても可哀そうな事になる者が出て来る。それを受け止めるのも神の務めでしょう。こういう事情なら女神パワーを使い、危害を加える形でも許されるでしょう。じゃあ、琴音姫。どうすればいいか言って」

「複雑な気持ちでしょうけど、徳も一気に貯まりますよ。また、これは心ばかりの手付金です。後日、更にお渡しますね。はい。では、まず移動しましょうか」


そう言い、琴音姫はユリアを連れて、転移を始めた。

転移した先の光景を見て、ユリアは目をパチクリさせた。


「あ、ここは神社ね」

「はい。ここは私を祀っている神社です。小さいのが玉に瑕ですが」


そこは、ユリアも知っている神社だった。

街外れに近いが、年末年始には人でごった返す場所だったため、印象に残っていた。


「ここを決戦の地とします。ここなら私の力で周囲への被害を最小限に食い止められるでしょう。ここにアヤカシを誘き寄せます。その際はユリアさんにもご協力してもらいますが」


そう言いながら琴音姫は神社の外へ移動する。

今は周囲に人はおらず、静謐が広まっている。

最も、ここに人がいたとしても、琴音姫の姿は見えないが。

そして、神社の外に出て、歩道に入ると、腕で道沿いを指し示す。


「出来るだけ周囲の干渉を避けるため、決行は夜とします。また、監視カメラは機能停止にあらかじめしておきますし、人払いの結界も発動させます。」

「分かったわ。それなら影響を出来る限り食い止めることも出来るでしょう。しかし、ここって紛らわしいわね。社にまで到達すれば違いが分かるけど、そこに至るまでの道は目の前の神社と同じなんだもの」


そうユリアは目の前にある神社を眺めながら言った。

そこは、さっきまでいた神社とは異なるが、瓜二つの趣きだった。

そう、さっきまでユリア達がいた神社と目の前の神社は対になっているのである。

琴音姫は目の前にある自分を祀っていない方の神社の境内を睨みつけながら、吐き捨てるように言葉を紡ぐ。


「……本当に腹立ちますね。目の前にある神社が祀っている神は私と兄妹神という扱いに勝手にされているんですよ。そんなんじゃないのに。」

「え、そうなの?」

「はい。何故そうなったかは私にも分かりかねますが、いつの間にかそうされてしまったのです。そして腹立つことに、神社の規模や豪華さは向こうの方が上なんですよ。腹立ちます。この事は同じ神の間でもしばしば話題にされネタにされます。腹立ちます」

「ん?ひょっとして、留守の間に管理を任せた相手って……」

「はい。目の前の神社が祀っているあんちくしょうです」

「そういう事ね……。いいわ。私からも同じ神のよしみとして文句言ってやる」


そう言い目の前の兄神(という事になっている)の神社に向かおうとしたユリアだが、慌てた琴音に引き留められる。


「い、いいですってば。あの、その、私達の争いに巻き込むのは忍びないと言いますか。あ、そうだ。きっと元・神という立場を突っ込まれて相手をされず馬鹿にされるだけですって。不快になるだけだから止めときましょう。ねっ」

「え、うん。あなたがそう言うならそうするけど……」


怪訝に思いながらも足を止めるユリアをホッとした思いで見つめる琴音姫だった。

そして、話題を変えたかったのか、力強く補足事項を向かい合っているユリアに告げる。


「では、当日は遠慮なく全力でやって下さい。手加減無用です。もし、私が力を抑えきれなく、神社を破壊する事になったとしても、文句なんて絶対言いません。むしろ、全てを破壊するぐらいの気持ちでガツーンとやっちゃって下さい!」

「う、うん。あなたが良いと言うなら……」

「約束ですよ!」


そう言ったかと思えば半ば無理矢理指切りげんまんをする琴音姫だった。


「この指切りげんまんという儀式、呪いの言葉じゃないでしょうね……」


そうブツブツ言うユリアだったが、ふと見渡すと、どっちが琴音姫の神社か分からなくなった。


「あ、あれ?」

「どうしました?」

「いや、どっちがあなたの神社だったかなと思って……」

「もう、間違わないで下さいね。()がそうです」

「あ、()がそうか」


そうお互いが向き合い(・・・・)ながら確認し合う。

そして、ユリアは周囲の景観を叩き込み、確認する。


「よし、覚えたわ。じゃあ、いつ決行する。被害をこれ以上出さないためにも早い方がいいんだけど」

「お、素晴らしい意気込みです。では、さっそく今日の夜はいかがです?」

「今日?いいわ。任せて頂戴。腕が鳴るわね」

「期待していますよ。ユリアさん」


そうにこやかに笑い合いながら、向き合う(・・・・)二人だった。


その日の夜。

ただでさえ普段から人気が少ない上、今は寝静まり、更にこの周辺一帯に人払いの結界が発動しているため、完全に人の気がない。

アヤカシは、部下たちと共に、金髪の女を追いかけていたが、いつの間にか術中に嵌っていたことに気付く。


「クソ」


そう毒づくアヤカシは、撤退の合図を部下に送ろうとしたその時だった。


「待ちなさい!」

「!!!」


声は空から聞こえた。

慌てて空を見上げると、月をバックにその光に照らされ、一人の女が鳥居の上に佇んでいた。

何者だと叫ぼうとしたが、金髪とクソダサいシャツを見た途端、さっきまで自分達が追いかけていた女だと気付いた。


「世のため人のため私のため、世を乱すアヤカシの存在を許さない!神に変わって元・神の私の鉄槌を食らいなさい!!」


そう叫び、こちらを指さす女を白けた気持ちで見上げるアヤカシだったが、目の前の女、ユリアがただものではない事に気が付いた。

変な女だが、油断できるような相手ではないと。


「とうっ」


どう叫ぶとノリノリで飛び上がり、地面に着地する。

そして、開口一番叫びながら、初手から必殺攻撃を放つのだった。


「女神パワーーーーーーッ!!!」

「あ、やべ」

「え?」


かめ〇め破のようなポーズでビームを放つユリアを見て、アヤカシはあっさり憑依体から抜け出た。

このままでは気の毒な人間を殺してしまうことに気付いたユリアは、必死にコントロールギリギリの所で人間への直撃を避ける。

そのかわり、社を盛大に破壊してしまった。


「あ、あちゃー。やっちゃった……」


そう呟くユリアだったが、遠慮なくやっていいという琴音姫のお墨付きを思い出し、すぐさま気持ちを切り替え、忘れた。


「やるわね、アヤカシ!」

「貴様もな。変な女よ!」

「変な女って何よ。ユリアと呼びなさい」


そう言い合い、元・女神と禍々しきアヤカシは派手に戦いを始めるのだった。


その頃、その激戦の地から離れた森の中。

月を見上げながら、お茶を飲むのは琴音姫だった。


「むふふ。今頃憎きあんにゃろうの神社は滅茶苦茶になってるんだろうな~」


そう邪悪な笑みを浮かべ、自分の計画を自画自賛していたのである。

そう、彼女は今、戦場と化しているのが自分の神社とは夢にも思っていない。

気に入らない兄神ということになっている神社だと思い込んでいるのだ。

決戦の地である琴音姫の神社の確認をする際、お互いが向き合った状態で、右と言い合っていた。

あの時、琴音姫は自分から見て右と言った。

だが、ユリアは自分から見て右だと思ったのだった

その勘違いは訂正される事はついになかった。

そんな事とは露知らず、得意気に独り言を言っていた。

神は一人でいる事は多く、そのためか独り言を癖にしている者がおおく、彼女もその一柱だった。


「あの残念な女を使ってのあんにゃろう堕天計画を考えた私って天才かしら~」


変な歌を上機嫌で歌っていた。

彼女の計画のあらましはこうだった。

日頃から疎ましく思っていた兄神気取りの神をどうにかしたいと常々考えていたある日、ユリアの存在に気が付き、ほぼ同じ頃、やっかいそうなアヤカシの存在に気が付いた。

こいつらを使えばうまくいけるんじゃないか、と。

ユリアを観察し、想像以上に残念な女である事を確認する度に、この計画の成功を確信していった。

まず、ユリアに接触し、徹底的に調べたユリアの残念な現状を当てこすり、メンタルを弱らせる。

その後、弱ったユリアに甘い言葉を囁き、自分の計画へ自分の意思で参加するように誘導した。

お人よしで神としての正義感も強い彼女なら、必ず私の計画の手の上で踊ってくれると思ったのだった。

また、並行してアヤカシを気付かない振りをして成長させた。

兄神気取りの神は彼女を気遣い、忠告をしようとしたのだが、琴音姫はのらりくらりと躱し続けた。

例え自分の監督下の土地だろうと、神社は別だった。

神社は一種の治外法権であり、その神格が管理しなければならない場所だった。

もし、その神社に何かあった場合、神としての威信にも関わるため、厳しく咎められる。

兄神気取りの神の神社が滅茶苦茶になれば、その管理責任を問われるだろうと。

この出来事だけではユリアのように堕天しないだろうが、これは序の口であり、今後も策謀を続けるつもりだった。

そしていつか、忌々しい兄神気取りの神を放逐し、この一帯を自分だけが管理することが出来るようになることを夢見ていた。

まるで邪神の如き企みをしていた彼女だが、幸運にもまだ知らない。

もうじき自分に鉄槌が下される運命を。


その頃、琴音姫の神社にて。


「とりゃーーーーーーーーーー!」

「ぎゃああああああああああああ」


ついに、ユリアの一撃がアヤカシを打ち砕いていた。


「み、見事だ。全力で戦った。俺にくいは無い!」

「アヤカシ……」

「ふっ。自らに名を付けてこなかったことがこんなにも未練になるとはな……。名さえあれば、ユリア。貴様に覚えておいてもらえたかもしれない……」

「……よかったら、あなたの名前、私が付けてあげる」

「何?」

「レギオン。どう?」

「レギオンか……。ああ、悪くない。わるく、ない」


その言葉を最後に、アヤカシ「レギオン」は散る。

既にその部下は滅ぼされ、その場にいるのは彼女一人だけとなった。


「レギオン。あなたとは別の形で会いたかったわ。……さて、後はこの気の毒な人間を病院に連れていけば終りね」


そう言い、かつては神社だった場所を見渡す。


「琴音姫。約束を果たしたわよ。じゃあ行くわね」


そう言い残し、彼女は人間を連れて、その場を軽やかに去っていく。


そうして、しばらく時間が経ったある時。


「ふんふーん♪」


鼻歌交じりに戻ってきた琴音姫だったが、目の前の光景に絶句する。


「え……。な、何で」


目の前には最早、自分を祀る神社は無く、廃墟だけが広がっていた。


「ど、どういう事……」

「どういう事はこっちのセリフじゃ」

「ひぃ」


後ろから聞こえてくる聞き覚えのある声に、嫌な未来を悟り、悲鳴を思わず琴音姫は上げてしまった。


「これは、どういうことじゃ」

「ひいいいいい。何故、あなたが!」


振り返ると案の定、自分の上司である神が腕組みして立っていた。

更に後ろには、気遣わし気にこちらを見てくる疎ましく思っている兄神気取りの神もいた。


「何故もこうもあるか。この惨状を知り、駆け付けてきたのだ。まったく。前々から問題を起こしても、その度にまだ未熟だからと庇って来たが、もう我慢の限界じゃ。きっちり処罰してやるから覚悟せい!!」

「ひえええええええええええええええええええ」

「ど、どうか出来る限りの慈悲をこの妹神にお願いします。兄神として、琴音姫が泣く姿を見とうございません」

「お主は優しいのお。だがの、時にはその優しさがためにならんこともある。今回ばかりは厳しくいくからの!!!」

「あうううううううううううううううううううううううううううう」


辺りには琴音姫の悲鳴が木霊するのだった……。


それから一月経ったある日の事。

ユリアはこたつに入り丸くなりながらテレビを眺めていた。

一時、神社の謎の倒壊が世間を騒がしたが、いつの間にか話題にされなくなった。

その際、近くの監視カメラが機能していなかった事や倒壊に誰も気付く者がいなかった事、謎の光を見たと言う者、女性の悲鳴が聞こえたという者の話が一部で話題になったが、いつしか鎮静化していった。


「今日も平和ね~」


ユリアは欠伸交じりに一人ごちる。

神社倒壊の件で誰も彼女の元を訪れた者はいない。

事前の処置が彼女の影を掴ませなかったわけだが、琴音姫は来てくれてもいいのに愚痴っていた。

残りの報酬もそうだが、それ以上に彼女はこの地で初めて出来た神様仲間である友人だ。

一緒に遊べればなあと思っていたのである。

彼女の邪悪な性根は知る由もない。


「今彼女はどこにいるのか分からないし……。彼女の神社に行ってみたけど、規制されているわ、何とか中に入ってみたら何故か廃墟になっていて誰も居なかったし、どこ行ったんだか……」


そう独り言ちていると、ピンポーンとチャイムがなった。

この間頼んだものが届いたのかなと思い、覗き窓から外を見ていると、ついさっきまで思い浮かべていた者がいたため、慌てて戸を開ける。

何で前みたいに入ってこなかったんだろうと思ったが、それを失礼と思うデリカシーが身に着いたのだろうと脳内補完する。


「ど、どうしたの、琴音姫?さがし、たのよ……」


声を掛けたが、徐々に声が小さくなっていった。

なぜなら、以前とは趣が変わり、よくある白シャツにパンツというラフな格好にデカいバックを肩に吊り下げていたからだ。

ただ、顔は地面の方を向いていた。


「その恰好、一体……?」

「私も泊めて……」

「は?」

「私も堕天して、人間になっちゃった……」

「えええっ!どういう事……」

「いいから入れて下さい!」


以前とは違い、必死な形相で強引に入ってこようとする琴音姫を見て、あ、これはトラブルの種だと悟り、思わず閉めようとするユリアを必死の形相で食い止める琴音姫だった。


「ちょっと。何で閉めようとするんですか。開けて下さい。そもそもこうなったのはあなたのせいなんですからね」

「ええっ何よそれ。訳が分からないわよ。って近所迷惑になるでしょうが」

「だったら素直に開けて下さいってば」


彼女達は仲良くじゃれあっていた。

旅は道連れ世は情け。

元女神の住処に同居人兼相棒な元女神が加わりそうである。

読んで下さりありがとうございました。

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