EP.0〜はじめまして〜
僕には変な僕がいる。鏡の前に立つと、鏡が動き喋り出す。
その僕に「あなたは誰?」と聞くと、必ず「鏡の世界の僕」と言う。
僕はその僕を「鏡くん」と呼ぶ。鏡の中の鏡くん。どうして僕だけわかるのか。
自己紹介がまだだね。僕は嘉神 悠。小学4年生。
勉強も運動もそこそこできる方だと思う。
同級生には「いつも冷静すぎて怖い」って言われるタイプの人。
血液型はO型。誕生日は4/4。
まぁ僕の話はこれくらいにして、鏡くんの話をしよう。
これはちょっと怖くて、ちょっと面白い‥そんな話だ。
鏡くんはいつもいる。水溜りにも鏡にも。僕の信頼できる人。
実は僕には後1人僕がいる「影くん」だ。
僕は物心ついた時から影くんと鏡くんとお話ができた。
いつも僕のことを理解してくれる。
ーある日、影くんにも「あなたは誰?」って聞いてみた。
そしたら今度も「影の世界の僕」と言う。
「二人にあって触ってみたい」と言うと、
「時が来る。それまで待ってて」と言う。
ーその時は意外と早かった。10歳の誕生日の夜。僕はとある夢を見た。
気づくと見知らぬ場所に立っていた。目の前には鏡くんがいた。
「どうして鏡も水溜まりもないのにここにいるの?」
「ここは鏡の村。僕みたいな鏡の住民が住んでいるんだよ。」
「でも鏡くんに触れるよ。今までは触れなかったのに、なんで?」
「それは鏡の村だからだよ。触れるし、いっぱい遊べるの!」
それから僕は鏡くんといっぱい遊んだ。
「…おや。もうこんなに経ったんだ。じゃあ今度は影の村に行ってきな。
影くんも待ってるよ。」
「でも…僕は、まだ鏡くんと遊びたい!」
「大丈夫。また来たかったら、鏡にさわって
<鏡の村に行きたい!>って4回心の中で唱えて。
そうしたらまたこっちに来れるよ。
悠くんの世界とは時間軸が違うから、10時間居ても、
悠くんの世界では一秒だから、そこは大丈夫。
でも気をつけて、寝ている時に会うのは一秒一分同じだから。
影の村でもそれは同じだから注意してね。
ここにはどの鏡でもこれるよ。影もどの影でもこれるよ。
影同士、鏡同士の移動もできるよ。でも気をつけて、
遅刻しそうだから使ったり、面倒臭いから使ったりすると、
二度と僕と会えなくなるから…。」
「うん!」
「注意事項はこれくらいかな。じゃあ今回は特別に僕に力で影の村に送るね。
これはあんまり使っちゃいけないから、今回だけだよ。
次からは一回鏡の村から僕が悠くんの世界に戻して、
悠くんが影の村に行くって言う感じになるよ。それじゃあ準備はいい?」
「うん!大丈夫!」
ー気づいたら影の村にいた。隣には影くんがいた。
「影の村へようこそ!」
「影くんはやっぱりシルエットのままだね」
「まぁ、影の村の住人はみんなこうだからね。
こんなんじゃないのは、悠くんみたいな能力を持ってる人だけだよ」
「能力?」
「そう!本当はみんな鏡の中や影の中に自分がいるんだけど、
それを知っている人は少ないんだ。
その中でも、生まれつき持っている悠くんみたいな人は、
千年に一人って言われてるんだよ。」
「そんな能力が僕に…正直すっごく驚いてるよ」
「でもその代わりの代償もある。」
「代償って?」
「悠くんさ。同級生に『怖いくらい冷静』とか『喋る言葉がちょっと子供っぽい』なんて言われたこと、あるよね。」
「うん」
「それが代償。生まれつきでも、そうじゃなくても、
何かがマイナスになることで、俺たちと話すことができるんだ。」
「でも僕はあまり不便だとは思わないよ?」
「それならいいんだ。」
ーその後僕らはいっぱい遊んだ。遊び疲れるまで遊んだ。
「そろそろ。帰る時間だね。」
「うん。また会おうね。」
ー気づいたら見慣れた天井が見えた。
びっくりして洗面台に行って鏡くんに尋ねた。
「今日の夢って本当?」って
そしたら鏡くんは、
「本当さ。僕らは何回だって遊べるんだよ。」
影くんも
「ついでに言うと影も操れるようになってるよ。
俺に会えるようになったから、俺の能力が使えるようになったんだ。
でも、これも悪用しちゃダメだよ。
ピンチの時とか、身の危険を守るために使ってね。」
「うん!」
その時、
「悠!朝ごはんできたわよ!」
と、お母さんの声がした。
僕は
「今行きます。」
と返事をした。
さぁ、これから、悠を中心にして、周りはどのように変化するのか⁉︎
ー次回に続くー