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第1話
そよ風が頬を撫でる感覚で俺は目覚めた。
澄んだ青空と、草木がそよぐ光景は、見慣れたビルが立ち並ぶ風景とは明らかに違う。
あの夜、俺はトラックに轢かれた。そうなると、ここはあの世、ということになるのだろうか。
目的もなく歩き回ると、ここが湖のほとりであることがわかった。
鏡のように綺麗な水面に顔を映すと、お世辞にも3枚目…とも言い難い俺の顔はそこにはなく、整った銀髪の少年の姿があった。
これは、もしかして。なんとなく読んでいたネット小説などの世界が頭によぎる。
「すみませーん! そこの方ー!」
草地を駆けて音とともに、声が聞こえた。
振り向くとそこにいたのは…金の長髪に整った純白の修道制服を着た少女。
少女とはいえ、今の俺から見ると少しだけ年上に見える。
「あの…突然ぶしつけなのですが」
息を整えた少女は続ける。
「もしかして、『転生者』さまでしょうか?」
予感は当たっていた。異世界転生。その舞台に俺は居る。
現実とは思えないことではあるが…ここで出された助け舟をみすみす逃すような俺ではない。
「そうだ。俺は『転生者』だ。」