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異世界イヌ  作者: 双葉うみ
古国 ガルチュア編
40/57

S08話 遺跡

 ルクスとエミリスは占い屋に来ていた。

 占い屋の女は昨日来た時のように、不機嫌そうな表情をしていたが、口調は思ってよりも、厳しいものではなかった。

 てっきり、姫同様に、きつい物言いをしてくると思っていたのだが、悪態の一つも吐かず、基本的な客対応をしてきた。

 姫に対するあれは、特別なものなのだろうか。


「それで、今日はどういった用件だい?」

「今日は、こいつにも占いをしてくれないか?」


 ルクスはエミリスを指さし、女に言った。


「そうかい、分かった。ちょっと待ちな」


 女はカードを取り出し、机に散らばす。

 どうやら、昨日と同じ占い方法らしい。

 カードをバラバラにし終えて、女は首に下げていたネックレスを外し、カードの上に垂らした。

 ネックレスには黄色い宝石が輝いており、カードの上で揺れている。

 昨日は、そんなことはしなかった。


「それは?」

「これは、占いの精度を高めるアイテムだよ。そっちのお嬢さんには並みの占術じゃ、疎外されそうなんでね」

「疎外?」


 ルクスはエミリスの顔を窺い、首を傾げた。

 だが、エミリスも女の言葉の意味が分からない様子で、同じく首を傾げた。


「それじゃあ、始めるよ」


 そう言って、女は瞳を閉じ、ネックレスをカードの上で垂直に垂らす。

 ネックレスの宝石が光を放った。

 魔法?

 いや、魔力は感じない。

 だとしたら、これはなんだろうか?


 前世でも占術という存在はあった。

 しかし、当然だが、そこに具体的な力はなかったように思える。

 いや、それはルクスが家の中で蓄えた知識でしかない。

 実際は、占術に特別な力があったのかもしれない。

 だが、一般常識的には、確固たる明確な力は無かったと記憶している。


 垂らしていたネックレスの宝石が揺れ始めた。

 光を放ちながら、ぐるぐると円を描くように揺れている。

 

「止まった」


 ルクスは不意に、呟いた。

 宝石はあるカードの上で止まる。

 ネックレスは重力を無視し、物理法則が外れた状態で、斜めに真っすぐ伸びている。


「これだね」


 女はネックレスの宝石が示したカードをめくり、二人に見せた。


「これは……?」


 エミリスの疑問の声に、ルクスも目を細める。

 そのカードに描かれていたのは、翼を携えた女性――天使だった。


「天使かい。やっぱり……」

「このカードの意味は?」


 女はネックレスを首に戻しながら、エミリスに顔を向ける。


「天使……意味はお告げ、黎明、暁」

「ん? どういう意味だ?」


 つまり、夜明け、という意味か?

 だが、お告げ、というのも気になる。


「何かの始まり。革命後のプレリュード、なんて意味があったかね」

「……? つまり、どういうことなんだ?」

「さてね、私もよく分からないよ。私は占いの結果を言うだけ。その結果から想像するのが、客の仕事」

「そうなのか?」

「そう、占いはそういうもんだよ」


 女は懐から煙草を取り出し、一本、抜き出した。

 火をつけ、咥える。

 静かに吸って、口から煙を出した。


「そういえば、話は変わるけど、今日は、あの()、来ないの?」

「あの娘?」

「ほら、昨日一緒に来たじゃないか」

「今日は一緒じゃない」

「そうかい」


 口を窄ませ、口笛を吹くように煙を吐く。

 

「姫がどうしたんだ?」

「姫……? あの娘の事かい?」

「……? ああ、そうだが」

「へぇー、あの娘、そんなあだ名を付けられてんのかい。変わってるね」

「あだ名……?」


 もしかして、この女は彼女が姫だということを知らないのだろうか。

 だとしたら、無理に彼女の素性を話す必要もないか。


「あの娘、毎朝、決まってここに来るんだよ。私はうざったいんだけどね。けど、今朝は来なかったんだよ。それで、ちょっと気になって」

「そうなのか」


 毎朝、来ていたのか。

 よく、来ている、とは言っていたが、毎朝とは。

 それ程に、この店を気に入っているのだろうか。

 それとも、この女を。

 その方が可能性が高いか。

 昨日のやり取りを見れば、なんだかんだ言って、仲が良いのは見て取れた。


「あいつとは、いつからの仲なんだ?」

「あの娘とかい? そんな長くないよ。この店に来始めたのも、半年ぐらい前だったかね」


 女は机に肘をつけながら、僅かに微笑んだ。


「それで、他に用はあるのかい? 無いんだったら、もう帰りな。今夜は、ちょっと嫌な気がするからね」

「嫌な気? とはなんだ?」

「嫌な気は嫌な気だよ。ほら、金置いて、さっさと帰りな」

「分かった」


 ルクスは所持金を出そうとして、自分が金を持っていないことを思い出す。

 そういえば、自分には一銭として、所持されることをエミリスたちに許されなかったのだ。

 そんなに信用ならないのだろうか。

 ルクスはエミリスに顔を向け、頷いた。


「そうでしたね。ルクス様にお金を持たせなかったのは私の判断です。すみません。けれど、これもルクス様を思ってのことです」


 そう言いながら、エミリスはカードが散らばる机に銀貨を置いた。


「これぐらいでしょうか?」

「少し多いが、お釣りは?」

「いりません」

「そりゃあ、ありがとさん。ありがたく貰うよ」


 そして、二人は店から出た。

 にしても、やはり、不思議な女だった。

 そして占いに関しても、蒙昧とした結果だった。

 しかし、そもそも占いとはそういうものだったか。


「どうだった?」


 ルクスは何とはなしに、隣で歩くエミリスに聞く。

 エミリスは微笑を浮かべ、頷いた。


「楽しかったですよ。占いというものは初めてでした」

「そうか、ならよかった」


 ルクスも微かに口元を緩めた。

 時刻はそろそろ、昼食の時間である。

 二人は、そのまま昼食をとれる、適当な飲食店に入り、昼食を食べた。

 

 その後、明日の遺跡探索に向け、必要なアイテムや情報収集をして、夕方ごろに城に戻る。

 城にはリゼルとロッセルが戻っており、四人で明日のことを話し合った。

 その会議は夜の十一時ごろまで続き、その後、ようやく一行は寝静まった。

 もちろん、城であっても、寝る時は交代制。

 一人を見張り役として、その他が英気を養う。



――――――――――――



 遂に、四人はシロエ遺跡の探索のため、遺跡に繋がる大きな両扉の前に来ていた。

 これを作ったのは、先代の発掘隊らしい。

 つまり、この扉の管轄は発掘隊である。

 

 発掘隊の一人が扉の前のテントから、顔を出し、ルクスたちの方へ駆け寄ってきた。

 

「勇者様たちですね。今日はどのようなご用件で? 生憎、隊長は席を外していまして、本部でお待ちしていただければ……」


 エミリスは一昨日、冒険者組合(ギルド)で発行してもらった入場許可証を取り出し、男に見せた。


「それは……! 遺跡に入るとは、聞いていないのですが?」

「駄目ですか? 許可証があっても?」

「い、いえ、そのようなことは」

「それじゃあ、入らせていただきます」


 エミリスは男を横切り、扉に許可証を(かざ)した。

 両扉が重い音を響かせながら、徐々に開き始めた。

 そして、人ひとりが通れるほどに扉が開いたのと同時に、ルクスたちは遺跡に入る。

 扉は未だ、完全に開ききっていない。

 だが、ここで発掘隊に足止めされる訳にはいかない。

 ルクスたちの後ろでは男が「ま、待ってください!」と制止する言葉を放っているが、無視する。


 遺跡の入り口付近にはランプの光が煌々と暗闇を照らしていた。

 そのため、真っ暗闇の中、進むということにはならない。

 恐らく、発掘隊が潜った場所までは人の手が加えられているのだろう。


 エミリスは事前に手に入れたシロエ遺跡内の地図を頭で思い出す。

 この遺跡は、それぞれ階層ごとに空間が区切られており、その階層に存在する一か所だけの階段を利用し、下の階層に降りる、という構造になっているらしい。

 つまり、遺跡攻略にはその階段を見つける、と言うのが重要になってくるのだ。

 いや、それが目的と言っても差し支えない。


 発掘隊が確認できたのは今のところ、第五階層まで。

 それまでの地図は入手済みで、前日までに脳内に叩き込んだ。

 そこまでの道順ならば、大丈夫だろう。

 しかし、それ以降。

 そこからが、気を引き締めなければいけない、危険な領域である。


「いえ、第五階層までも魔物が出現するそうです。最近では、その魔物の数が多すぎると噂になっていました。最初から気を引き締めて悪いことはありません。警戒を」

「ああ、分かっているとも」


 ロッセルの言葉に続き、ルクスとリゼルも頷く。


 ランプの灯りとエミリスの指示を頼りに先を進む。

 しかし、当然の疑問なのだが、そもそも魔物はどこから現れているのだろうか。

 地上の世界や地下迷宮ならば分かる。

 つまり、魔物の生態系が確立しているのだ。

 だから、繁殖し、棲息している。


 しかし、遺跡はどうだろうか?

 遺跡に入って分かるが、遺跡内には植物も生えていなければ、食料がありそうにも思えない。

 もしかして、魔物同士で共食いでもしているのだろうか。

 しかし、だからといって、それが魔物の発生源の根拠にはならない。

 やはり、魔物がどこから生まれているのか、疑問が残る。


「ロッセルはどう思いますか?」

「魔物の発生源か。確かに、気になる点だね。そして、その謎は王獣の出現にも繋がるんじゃないかな」

「王獣と?」

「うん。だってそれは、王獣にも言えることだろう? 王獣はどこから出現したのか」

「一昨日も同じことを話しましたね」

「だね。あの時は結局、一番怪しい遺跡に行こう、ってことで話がまとまったけど、次は遺跡のどこから、が問題だ」

「なるほど、問題をよりもっと、深く考えよう、ということですね」

「そう。今日は一昨日と違ってルクス君もいるんだ。ルクス君はどう思う?」


 突然話を振られたルクスは、目を見開き、おどおどと視線を彷徨わせる。


「ロッセル、ルクス様が困っています」

「そうだね。ルクス君、いいよ」

「そうか? 考えるぞ?」

「ルクス君の発想はいつも興味深いけど、今は思いついてないでしょ?」

「うーん。そうだな」


 ロッセルは笑顔で頷いて、リゼルにも視線を向ける。

 リゼルも同様に眉間に皺を寄せて考えているようだが、こちらも当てにはならなそうだ。

 となると、頼りはエミリスだけ。

 いつものように、ロッセルとエミリスが頭を使う。


「さて、エミリスちゃんはどう思う?」

「と言っても、私も思いついていませんよ。遺跡探索も序盤。何も情報がありません」

「そうなんだよね。現状での情報が如何せん、何もない。話を振っておきながら、この謎に関しては、今のところ、これと言った落としどころが見つからないんだよね」

「それを今から探りに行くんでしょう?」

「なんだ、そういうことだったのか」


 そこで、ルクスの言葉が割って入った。

 なるほど、ルクスは何も知らずにここに来たのか。

 だから、重要な点だけでなく、過程の話も聞くべきなのだ、とエミリスは内心で思った。

 だからと言って、直接、言葉では言わない。

 それを甘えだ、とリゼルとロッセルに言われることもしばしばだが、仕方ないのだ。

 

 勇者に仕える。

 勇者とともに世界を救う。

 それが、エミリスが生まれてきた意味なのだから。


「それじゃあ、謎は置いといて、先に進みますか」


 ロッセルの言葉とともに、四人は遺跡の奥へと歩を進める。

 灯りが揺らめき、冥闇も一緒に揺らめく。

 


――――――――――――



 ルクスたちは第五階層まで来ていた。

 ここまでの道程で、いくつもの魔物に遭遇した。

 そこまで危険度の高い魔物ではなかったが、しかし数が多い。

 地上でも、こう多く魔物とは遭遇しない。

 まして、遺跡内でここまでの魔物と遭遇することは異常だろう。


 剣についた血を飛ばし、鞘に戻す。

 この動作を何回行っただろうか。

 それ程の数を、斬ったのだが、未だ、その底は見えない。


「また魔物だ」

「今度はなんですか?」


 彼らの前方、奥からこちらに近寄ってくるは人型の影だった。


「あれは……魔泥人形(マジックゴーレム)か! 見るのは初めてだ」


 噂に名高い、魔泥人形(マジックゴーレム)

 発見されたのは地下迷宮、終末塔(ヴィグリス)の第四階層だけである。

 地上でも確認されていない魔物。

 それも、他の魔物とは大きく異なる。


 魔泥人形(マジックゴーレム)は正確に言えば、生物ではない。

 つまり、身体は肉で構成されていなければ、血も通っていない。

 その身体は硬質な岩石と魔力で構成されており、特に弱点というものがない。

 心臓など、どこを探してもないのである。


魔泥人形(マジックゴーレム)は光魔法を扱うはずです! ロッセル、お願いしますよ!」

「ああ、任されたとも」


 ロッセルの扱う魔法系統は全てである。

 全系統、扱える。

 魔法大学始まって以来の天才。

 いや、前人未到の領域者。

 しかし、彼の実力を知っている人物は限られる。

 それこそ、評議国のベルトリス・カリルール・ベンサリアと数えるだけである。


「光魔法には黒の魔法と相場は決まっているね!」


 そう言って、ロッセルは掌から禍々しい黒色の球体を生み出した。

 その魔法はシンプルに名を――『黒球』という。


「さあ、これを避けられるかな!」


 ロッセルの『黒球』は十個ほどに分裂し、全てが同時に魔泥人形(マジックゴーレム)に放たれた。

 魔泥人形(マジックゴーレム)はその攻撃に、こちらもと言わんばかりに、掌から『光球乱射(フォスシューティング)』を放ち、対抗する。

 しかし、数発はそれで霧散させることが出来たが、残り数発が魔泥人形(マジックゴーレム)に襲い掛かる。

 だが、それをすんでのところ、異常な身体の柔らかさで、躱す。


「何だよ、あれ!」


 リゼルが驚きの声を上げる。

 ロッセルも同様の驚きを見せる。

 ルクスとエミリスも目を見開いていた。


「ロッセル、攻撃を続けてください!」

「う、うん」


 驚きもすぐに平静を取り戻し、エミリスが指示をする。

 ロッセルは未だ、動揺が隠せないが、エミリスの声に従い、『黒球』を放ち続ける。

 魔泥人形(マジックゴーレム)は先程の異常な身体の柔らかさを駆使し、躱しながらも、だが、ロッセルの膨大な魔力量から放たれる『黒球』の連続攻撃に、流石の魔泥人形(マジックゴーレム)も幾弾かはその身に受けていた。

 だが、魔泥人形(マジックゴーレム)はその攻撃に痛みも感じずと言った感じで、そのままルクスたち一行に突進してくる。

 

 魔泥人形(マジックゴーレム)に痛覚は存在しない。

 痛みを感じない魔泥人形(マジックゴーレム)に怯みを期待するのは無意味と言えるだろう。

 そんな相手に持久戦を選択するのは、それこそ愚かと言わざるを得ない。

 魔力が尽きぬ限り、魔泥人形(マジックゴーレム)は動き続ける。

 

「ルクス様、リゼル! 前に出て、横から挟んで攻撃を! ロッセルの射線を気を付けてください!」

「おう!」

「分かった」


 ルクスとリゼルはそれぞれ、両方向から魔泥人形(マジックゴーレム)を挟撃する。

 その挟撃には魔泥人形(マジックゴーレム)も、両方の攻撃を同時に防ぐことは叶わず、リゼルの攻撃を避けることを選択した。

 リゼルの大剣を避け、しかし、もう片方の――ルクスの攻撃が迫りくる。

 腰を曲げた態勢での回避だったので、ここからの、もう一度の回避は、身体の構造上、不可能である。

 しかし、魔泥人形(マジックゴーレム)は腰を曲げ、天を仰ぐ形で、掌をルクスに向けた。

 掌から放たれるは『光線放射(フォスラジエーション)』という名の光線。


 だが、その魔法にルクスは攻撃を止め、回避することはない。

 そのまま、剣での攻撃で魔法ごと斬り伏せる。


(リュウ)(アギト)


 上下、二方向からの斬撃。

 ルクスの『龍・顎』は魔泥人形(マジックゴーレム)の『光線放射(フォスラジエーション)』を上下から斬り、真っ二つにする。

 そして、そのまま、その斬撃は魔泥人形(マジックゴーレム)を襲う。

 魔泥人形(マジックゴーレム)は咄嗟に、地面に手を付け、逆立ちの態勢に移行する途中で、足を蹴り上げ、ルクスを突き飛ばす。

 僅かの差で、ルクスの斬撃は魔泥人形(マジックゴーレム)に届かなかった。


「くそっ!」


 だが、その態勢は隙と言わざるを得ない。

 リゼルが大剣を横にぶん回す。

 同時にロッセルの『黒球』が放たれる。

 魔泥人形(マジックゴーレム)はその同時攻撃に、回避できる術を算出することが出来ず、攻撃を受け入れる。

 リゼルの大剣が魔泥人形(マジックゴーレム)の身体を二つに分断する。

 その後、ロッセルの『黒球』が魔泥人形(マジックゴーレム)の身体を粉々にする。


「やったか?」


『黒球』の直撃によって、魔泥人形(マジックゴーレム)の辺りには土煙が舞った。

 それを覗き込むように、リゼルが声を出すが――


「まだです!」


 エミリスの声とともに、リゼルは崩そうとした構えを戻す。


天使の伝来(イエラポス)!」


 エミリスが魔泥人形(マジックゴーレム)に対して、ダメ押しの魔法を放つ。

 土煙が晴れ、瓦礫と伏した魔泥人形(マジックゴーレム)の姿が見え始めた。

 そこには、手首だけになりながらも、掌をこちらに向け、魔法を放とうしている魔泥人形(マジックゴーレム)の残骸があった。

 しかし、エミリスの『天使の伝来(イエラポス)』によって、魔力を減らされ、魔泥人形(マジックゴーレム)の最後の攻撃は失敗に終わる。


 そして、そこでようやく、本当に魔泥人形(マジックゴーレム)は完全に活動を停止させた。


「ふぅー」


 リゼルは息を吐き、ルクスも同様に肩の力を抜いた。

 エミリスもロッセルも、同様に緊張を解いたようだ。

 しかし、それも束の間――


「頭を下げろ!」


 ルクスの突然の声にリゼルとロッセルがすぐに頭を下げた。

 エミリスの頭はルクスが無理矢理、手で押さえつける。


 ルクスが声を上げた、一秒にも見たいない瞬間、その後に、頭上すれすれに巨大な何かが通り過ぎた。

 そして、その巨大な何かは、ルクスたちの後方の壁に突き刺さったようだ。

 壁との衝突の際に「ドスッ」と重く、低い音が遺跡内にどよめく。

 後ろを見れば、そこには斧のように大きい中華包丁のようなものが突き刺さっていた。

 

 ルクスたちの前方から、重低音の足音が迫ってきた。

 それが、今先程、巨大な刃物をこちらに投擲した犯人。


 その姿はフルプレートアーマーを身に纏う――魔物だった。

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