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出会い

ーーエレナとは東京という街の地下で俺が休憩している時だったな。


以前読んだ書物によると、この東京という街は昔はとても栄えた街だったらしい。だが大昔に起こった人械大戦のせいで、もはや当時の面影はなく、代わりに綻びた建物の山と、それをまるで包み込むかの様な木々が今では生い茂っていた。


そんな人工物と混ざった森の中を俺は進んでいた。この前立ち寄った街の人の話では、この辺に村や集落は無いらしい。俺は歩きながら腰につけている小型カバンから計測器を取り出した。

ーーこの辺の瘴気は、、、60か。かなり濃いなここは。


街で測ると瘴気の数値は15〜20位だが、ここは街中の約3倍。つまり人間が生活できる環境じゃないという事だ。俺は前かがみになり、マスクが外れないように手で位置を整えて前に進んで行った。

ーーしかしこの歩く速度じゃ今日中にこの地域を抜ける事は難しそうだ。そろそろ夕方になりそうだし、どこか安全そうな場所を探さないとな。


俺は辺りを見ながら休めそうな場所を探しながら進んだ。

ーーおや、あれは‥


右前方の遠くに人が入れそうなものが微かに見えた。

ーーもしかして洞穴なのかも知れない。行ってみるか‥


予想は当たっていた。近くまで来ると、そこは下へと降りる階段があった。周りはツタの葉が隅々まで張り巡らされていたが、中は明らかに人工物。恐らく大戦前に作られた何かしらの施設だったんだろう。穴の中には大戦中に放たれ、今も徘徊している機獣がいるかも知れないが、そろそろ日も暮れてしまうし、地上の濃い瘴気の中で一休みするよりこの空洞に入った方が幾らかマシかも知れない。俺は覚悟を決めて中に入る事にした。


いつ崩れるか分からない、ボロボロになった階段をゆっくり警戒しながらと下って行った。カツン、カツンと遠くまで響き、その音以外は物音ひとつなかった。奥に進めば進む程、外から入ってくる光が少なくなり暗くなっていった。薄暗く静かで不気味さを感じる地下道を俺はゆっくりと壁伝いに下っていった。壁は雨水が滴っていたせいか、ヌルヌルとしており、少し悪臭が漂っていた。

ーー臭いな、しかし。空気の流れが無くて匂いだけが漂っているのか。


俺は腰のポーチから再び計測器を取り出し、右手にもって機械のボタンを押した。数秒間経った後、画面に10と表示された。

ーー10か。外に比べると随分とここは瘴気が入り込んでいないんだな。


俺はその機械を切ってカバンにしまい、地下道の更に奥を進む事にした。少し臭いが瘴気よりマシだ。

ーーこれだけ瘴気が少ないと、もしかしたら誰か住んでいるかもしれないな。



しばらく歩いていると明かりがチカチカと光っているのが見えた。

ーー何だあれ。誰かいるのか?


俺は警戒しながらゆっくりと光っている方向へ行った。俺が近づいてもチカチカと光っているだけの様だった。もし機獣であれば、ここまで来れば熱源感知で俺に気付いて近寄って攻撃してくるはず。だが、そんな雰囲気でもなさそうだ。光は大きくも小さくもならずにただついたり消えたりしている。小さくなってもいないから逃げている感じもない。同じ場所にずっと待機している様だ。これは‥


近くまで来てみるとその光は生物ではなく、小さな部屋の中で寂しそうに瞬きしている蛍光灯だった。

ーーなんだ、、脅かすなよ。ただの明かりだったのか。生き物、それも人間だったらと半分期待していたんだがな。


明かりが俺の周りをほのかに照らしていた。あたりは細長い空間になっていて下には更に大きなトンネルが二方向に伸びていた。トンネルの先は真っ暗過ぎて何も見えない。

ーーおいおい。まだ先があるのかよ。しかも何も見えないし、真っ暗で先が分からないな。


ここまでくるのに結構時間をかけた。正直あのトンネルにこれから入るのはもっとかかりそうだ。地上に戻るという手もあるが、瘴気はこちらの方が薄いし、自分の身体の状態も考えると、なるべく地下のこのトンネルを歩いていった方が良い気がする。それにもしこの東京という地域に人が住んでいるのであれば、この地下に住んでいる可能性が高い。

ーーふーむ。とりあえず今日はこの辺で休むとするか。ここなら明かりもいらなそうだしな。どこか丁度良い休める場所があればいいんだけどなぁ‥


蛍光灯の明かりを頼りに俺は周囲を見回してみた。トンネルの先は暗すぎて何も見えないから、なるべく明かりの近くがいいんだが、、。

ーーん?あれは‥部屋か?


トンネルに沿った通路の先に小さな部屋が目に入った。近くまで来てじっくり見てみると、その部屋はガラス囲まれている部屋で中には椅子がいくつか並んでいた。

ーーここがちょうどいいな。中から外が見れるから、敵がやってきても察知できそうだ。


俺はその部屋に入り、椅子の上に背負っていたリュックを置いた。

ーーふう‥。まさかこんな所に休憩できる場所があるなんてな。


独り言をつぶやき、リュックの中に手を突っ込んだ。

ーー確か‥ここに来る途中に立ち寄った街で携帯食料と水を買ったはず。少しお腹が減っているし、携帯食料を少しだけかじるか。


バッグの中から小さな容器を取り出して、蓋を開けた。塩胡椒で味付けしただけの鳥の干し肉で簡単な物だ。鳥と言っても脂身の少ないササミの部分を軽く味付けした物なので、食感はパサパサしているし、味も塩の味しかないし、堅い。でも何回か噛んでいれば満腹感はあるし、お腹に入れるだけで多少空腹は凌げる。

ーーとはいっても生肉を焼いて食べたいなぁ。


いつもなら近くの動物を捕まえて捌いて食べる。だがここにくる途中の街で干し肉を売っていたおばちゃんが

「あんた、東京に行くのかい?あそこはここより瘴気の量が多いから狩りはしない方がいいよ。これでも買ってときな。」

と言っていたからなぁ。でも実際買って正解だ。ここまで瘴気が濃いとは思わなかった。ここで鳥とか魚を捕まえても食べれなかっただろうな。ここを一通り調べて戻ったら後でお礼を言わないとな。


そんな事を考えながら、堅い干し肉をくわえて先の見えないトンネルをぼんやりと見た。

ーーしかし‥このトンネルは一体どこまで続いているんだろう。


トンネルの先が蛍光灯の弱い光では全く届かず、静けさも加わって逆に不気味さが漂っているように感じた。本当に何かやって来そうで怖い。


ゆっくりと噛んで干し肉を食べ終えた後、椅子にしばらく座っていると、周りの薄暗い、そして弱々しい光のせいなのか眠気が俺を襲った。そういえばここ最近歩き詰めだったからな。こんな瘴気の少ない場所なんてなかなか無かったし、ある意味ここは安全地帯かもしれない。

ーー何か襲ってくる気配も無さそうだし、、、ちょっと横になるか。


丁度俺が座っている椅子は一列に並んでいるし、横になって寝れるぐらいの長さだ。俺は椅子に横になって上着を掛け布団がわりにした。リュックは頭の下に置いて枕代わりにして一眠りすることにした。



寿命の短い蛍光灯の光がついたり消えたりしながら静かな時間が流れていた。部屋の中は光が微かに届いてきており薄暗いままだが、休憩するには十分だった。


そんな暗闇の中、、、。


‥カツン‥‥‥


人間の足音の様な地面を歩いている音が聴こえた。

ーー聞き間違いか?いや‥確かに聴こえた。


音からして犬や猪の様な獣の音では無さそうだ。俺は少し頭を上げてトンネルの方向に目をやったが、薄暗くて分からなかった。さっき聴こえた小さな足音は間違いなくトンネルの奥から聴こえた。


‥‥カツン‥‥‥カツン‥‥‥カツン‥‥‥


やっぱり聞き間違いじゃない。何かがこちらに来ている。一定の感覚で足音が聞こえる事から多分一人。足音も軽く、軽装でやって来ている。俺と同じ冒険者であればリュックやバッグなど色々持って行動しているはず‥。こんな瘴気の多い場所に、軽装でやって来ている人間なんているのだろうか。


カツ‥カツ‥カツ‥


足音の間隔が早まってきた。何かに気づいて少し足早に向かっている様だった。

ーーもしかして俺に気づいたか?


カツ‥カツ‥カツカツカツ‥カツ‥カツ‥‥カツ‥‥


俺が横になっている部屋をその足音は通り過ぎ、近くで音が止まった。どうやら俺が部屋にいる事に気づいていなさそうだ。俺は物音を立てない様にリュックの横につけている刀を手に取った。部屋からガラス越しに音が止まった方向をそっと覗くと、蛍光灯の光で壁に人影が映し出されていた。

ーーやっぱり人間か。しかもリュックも何もしていない。こんな危ない所で軽装でいるという事は‥。


少し驚きだったが、ここの瘴気数値から考えればあながちあり得ない事ではなかった。東京の地上は瘴気が濃いが、地下は瘴気が規定量より低い。つまり地下で人々が暮らしていてもおかしくはなかった。それよりもあの人は多分只者じゃなさそうだ。真っ暗なトンネルから明かりもつけず、しかも瓦礫にも足もとられずにこちらに来ていた。目が暗闇に慣れているって事なのかも知れないが‥。いや‥このトンネルの事をよく知っているという事か。となると俺と同じ冒険者ではなく、本当にここに生活していて、近くに家か集落がある可能性が高い。


そんな事を考えながら俺はを観察していると、


「あーあ‥やっぱりここの回線が劣化しちゃって電気がきてなかったのかぁ。どうしよう‥」


と、高くて小さな声が聞こえてきた。女の子の声のようだった。蛍光灯から来る淡い光のお陰で、後ろ姿を見る事ができた。白銀の髪に白い肌の女の子。長い髪を後ろで一つにまとめてポニーテールにしていた。

ーー年齢は‥‥10代後半かな。まさか、こんな場所に女の子がやって来るなんてな。


とりあえず話しかけてみる事にしよう。色々ここの事も聞いてみたいし、この子がどこかで住んでいるなら、どうやって生活しているのかも聞いてみたい。ただ、この場所でいきなり声をかけたら当然警戒される。さて、どうやって挨拶するタイミングを見極めるか‥


「どうしよう、まだ回線は生きてるみたいだけど‥長の所に相談した方がいいかなぁ‥‥」


女の子は小さく呟いて立ち上がった。どうやらその長の所に行くようだ。これは隠れながらついていった方がいいかもしれない。俺はゆっくりと立ち上がって椅子に置いてあるリュックを手に取った。


ギギ‥


リュックを背負った時、椅子が少しずれてしまって音を立ててしまった。やばい‥


「誰!? 誰かここにいるの?」


後ろで鳴った小さな物音にその女の子はすぐに振り返った。不意に立ててしまった事で、逆に女の子を警戒させてしまった。

ーー完全に失敗だ。友好的に話しかけるつもりだつがこれでは上手くいかないかもしれない。警戒している女の子の前に知らない男が出てきたらもっと警戒してしまうだろうし‥。いや、知らない男が出てきた時点でどのみち同じだわ。素直にあの子の言葉に応じてゆっくり出ていった方が良いだろう。


俺は一息ついて、ゆっくりと部屋の扉を開けた。


「いや、ごめん。まさかここに人が来るとは思わなくて。君を驚かせるつもりはなかったんだ。」


俺は両手を上げてその女の子を見た。透き通るような青い眼の女の子だった。珍しいな。


「‥‥」


女の子はじっと俺を見て構えていた。ここはまず挨拶をして様子を伺おう。


「俺はアキト。西の街からやって来た冒険者なんだ。ここで偶然地下道を見つけてここで休んでいただけなんだ。」


「‥西の‥街‥!」


女の子はそう言って急に険しくなったかと思うと、腰につけていたナイフを手に取って俺に飛びかかってきた。


「えっ‥ちょっ!ちょっと待って!!」


俺は咄嗟に右に動いて襲いかかってきた女の子を避けた。


「な、なになに!?何で攻撃してくるの!」


訳がわからず、ナイフの軌道をかわしながら俺は聞いた。


「西の街から来たんでしょ!?またここで誰か捕まえて売り飛ばしに来たんでしょう!そんな事、もうさせないんだから!」

「え?売り飛ばす?何の話してるんだよ。」

「うるさい!」


女の子はそう言って俺に距離を置き、ナイフを腰に戻した。そして深呼吸をした後右手を前に出して目を閉じた。

ーーん?気のせいか?いやこれは‥


前に出した右手が少しずつ輝きだしたかと思うと、それは放電現象のようにバチバチと音を立て始めた。

ーーえ‥なんだそれ‥どうなってんだ、あれは。まさか、右手で作り出しているのか?どうやって!?もしかして‥"魔法"って奴か?でもおとぎ話の世界だろ、それって。今までそんな"魔法"使ってる人見たことないぞ‥ってか、反則じゃん!あんなもんどうやって防げばいいんだよ。


俺は臨戦態勢を取っている女の子のすぐ隣をちらっと見た。近くにさっき降りてきた地下道が見えた。

ーー一か八か、タイミング見計らってあそこに移動して一旦外に出るしかないか。


バチバチバチ!と女の子の右手の放電現象が大きくなってきている。


「なぁ‥少し落ち着いて話さない?こちらに敵意はないんだけどな。」

「うるさい!」


ーー駄目だ、こりゃ。もう俺を敵と思っちゃってる。ちょっと冷静になってもらいたいんだけどな。


俺は一回深呼吸した瞬間、女の子が俺めがけて飛びかかり放電が集まっていた右手を振りかざした。俺はそのタイミングで地下の入り口に向けて走り出した。


バチチチ、バチッ!


大きな音が地下に大きく響き渡った。その瞬間、ふっとあたりが真っ暗になった。

ーーこれはチャンス!周りが真っ暗になってしまえばここから脱出しやすくなる。一旦この場から遠ざかろう。


そう思ってた俺だったんだが‥


「あああああ!回線がショートしちゃったよおおお!」


真っ暗の中で、それまで緊迫していた雰囲気が一変してしまった。

ーーなんだ、どうしたんだ、あの子‥。何が起こったんだ。


拍子抜けした俺は女の子の声を聞いて少しその場で立ち止まった。さっきの女の子の攻撃でぼんやりと照らしていた蛍光灯の光が消えてしまい、辺りは何も見えなくなっていた。

ーー困ったな、こんな暗闇の中じゃあ身動きもできない。仕方ない‥


俺はバッグからランタンを取り出し火をつけることにした。火をつけると辺りがぼんやりと見え、遠くの方で女の子が壁の近くで地面に座り込んでいるのが見えた。こちらを見て、臨戦態勢をとろうとしている訳でもない。どうやらさっきまでの戦意はすっかり無くなっているようだ。

ーーこれは‥落ち込んでる‥?


「あの、、、どうしたの?怪我したん?」


俺は女の子に恐る恐る話しかけてみることにした。俺の声に女の子はこちらを向き、少し半べそかいている様子で、


「ううん、回線が壊れちゃったみたいで、、、このままじゃあ怒られちゃうよぉ‥」

ーーえーっと‥誰に?


と。思ったが、多分近くに集落があってリーダーとかに怒られるんだろうか。さっきまでの威勢とは真逆で、今にも泣きそうな弱々しい声で俺の質問に答えてくれた。良かった、やっと話を聞いてくれる雰囲気になってきた。


「回線?どこ?」

「ここ‥」


そう言って女の子は壁の出っ張っている場所を指差した。俺はランタンでその辺りを照らした。太い線がそこには数本壁伝いに上へと張り巡らしてあるが、さっきの攻撃のせいなのか、一部切れた導線のようなものが出てしまっていた。


「うーん‥これは何かの配線のようだね。」

「うん‥さっきの私の攻撃で回線を切っちゃったみたいなの。ここの回線直さないと、町に電気が行き渡らなくて‥生活できなくなっちゃう‥」


女の子は今にも泣きそうにになっていた。


まぁ‥俺もいきなり警戒させてしまったわけだし、ほっとくわけにはいかないわな。


「多分だけど、、中の導線が切れてるだけだから、繋げれば直ると思うよ。」

「‥ほんとう!?」


俺の言葉に女の子は少し元気を取り戻したようだ。良かった。


「直接手で触っちゃうと感電するかもしれないから、ゴム手袋みたいな絶縁素材がどこかにあればいいんだが‥知ってる?」

「ゴム手袋‥あっ、あそこならあるかも。」


そう言って女の子は立ちあがり、トンネルの方へ向かって歩き出した。


「こっち。」


どうやら俺を案内してくれるようだ。とりあえずは敵じゃないと思ってくれたようだ。

俺と女の子は二人でトンネルの奥に一緒に歩くことにした。



トンネルを歩いて結構時間がたった。女の子は夜目が利くらしく、暗闇でもほいほいと転がっている瓦礫を飛び越えながら進んでいた。一方の俺はランタンで辺りを照らしながら慎重に歩いていた。そんな様子を見て女の子は少し気にさわったのか、


「ねぇ、早く行こうよ。」

「ごめんごめん、そう言っても俺は暗闇に慣れてなくてね。ところでさ、後どのくらいなの?」


さりげなく言い訳する俺。


「うーん、、もう少しかな。右手に小さな部屋があって、そこに色々器具とか部品があったと思うんだよね。」

「へぇ、詳しいんだね。」

「うん、私いつもこの辺を歩いているから。」


女の子は少し得意気に返してくれた。


「あぁ、それで暗くてもほいほい進んでいけるのか。俺なんて真っ暗の場所なんて明かりがないと下に転がっている瓦礫の山とかもわからないよ。」


と、さりげなく俺は更に言い訳すると、


「‥まぁ、それだけじゃないんだけどね。」


と、女の子は少し黙った。

ーー何か、含みがある態度だなぁ。


「そういえばこの辺はね、昔東京が大きな街だった頃に乗り物が走っていた名残なんだって。」


女の子は露骨に昔の東京の話に話題を変えた。まぁあまり触れてほしくない話題なのかもしれないな。こういうのは敢えて突っ込まない方がいい。


「‥へぇ、こんな地下に乗り物がねぇ。」

「うん、"チカテツ"って言うんだって。おじいちゃんがそう言ってた。」

ーーそういえば、以前古い書物でそんな事を読んだことがある。街と街を短時間で結ぶ乗り物があったとかなんとか。半分冗談かと思っていたが、地下にこんな大きな空洞があるのを見ちゃうと、あながち本当だったのかもなぁ。


そんな事を考えながらランタンの明かりを頼りに進んでいると、


「あ、ここだよ。」


と、女の子が前方を指差した。トンネルの前方に小さな通路が見えた。


「へぇ、あれが‥」


女の子に連れられ、俺はその通路に入り、階段をしばらく上ると小さな部屋があった。ガチャリとドアノブを回して中に入ってみると、そこは机や棚、ロッカーが並べられていた。


「うーん‥確かこの辺だったかなぁ。」


女の子はロッカーを一つずつ開けて中を見出した。ロッカーの中には分厚そうな服が何着か掛けられていた。


「まさか地下にこんな所があるなんてなぁ。」

「ね。あたしも初めはビックリしちゃった。」


女の子はロッカーの中をごそごそと漁りながら俺の言葉に答えてくれた。俺はランタンで辺りを見回し、壁に何かの地図が貼ってあることに気づいた。多分、、チカテツが通っていた頃の地下の地図?なのかな。今俺達がいる場所がどこかは見当もつかないが、当時はこれを見ながらあの服で工事していたのかもしれないな。


「あ、あったこれだ。これでいいかな?」


物思いにふけっていると、ロッカーの中を探していた女の子が話しかけてきて、俺に分厚い手袋を手渡してきた。俺はその手袋を両手でちょっと引っ張った。


「うん、ゴム手袋。」

「やったぁ!」

「よし、じゃあ導線つないで直しに行こうか。」

「うんっ!」


俺は手袋を持ってさっきの場所へ引き返そうと部屋を出ようとすると、扉の前に女の子が立って


「あたし、、エレナって言うの。ありがと、おにいさんっ!」


と、笑顔で名前を言ってくれた。


「いや、俺の方こそ驚かせて悪かった。改めて俺の名前はアキト。のんびり旅している冒険者をやってる。よろしく。」


俺もエレナに自己紹介をして、二人でさっきの場所に戻ることにした。

おまけ4コマ

挿絵(By みてみん)



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