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もし神様がいるなら、この荒廃した世界を救ってほしい。  作者: Naichu
第二章 瘴気渦巻く街
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作戦準備

司令官オーダーとの話し合いが終わり、俺とエレナは準備をする為、MID08Aの後についていった。


「…それで協力する事にしたのね。」

「そうだな。話を聞いてるとこのまま放置するわけにはいかなかったしな。」

「ふぅん…。」

「…ごめんな。勝手に決めちゃって。」

「うん?ああその事。別にいいよ。話聞いてて私も協力しようと思ってたし…。」

ーー…キミ、話の途中で寝てたじゃんか…。


「それで…どこに向かってるの?」


エレナがそう言うと、前を歩いていたMID08Aが後ろを向いて答えてくれた。


「…作戦の実行の為に必要な準備と訓練をしてもらう為に地下の倉庫へ向かっています。」

「準備ね…確かに今俺が持っている得物じゃ辛いだろうしな。」

「ヒト種の武器もそうですが…機人種の方もある程度準備をしてもらいます。」


そう言ってMID08Aはエレナを見た。


「…わ、私?」

「ええ、そうです。あなたは機人種としての性能を活かしきれていないようなので。」

「そ、そうなんだ…。」

「はい。」

ーー軽くダメ出しされてるな。


「…着きました。こちらです。」


MID08Aはそう言って地下の倉庫前に立った。扉の横に小さなカメラがついておりそのカメラの前にMID08Aが立つと、上から声が聴こえてきた。

『機体識別コード検索中……。機体番号MID08Aを確認。開錠実行シマス。』


「すごい‥。」

「ああ、機械の技術の凄さが分かるな‥。」


二人で感嘆していると、MID08Aが話しかけてきた。


「これらの技術はもともとあなた達人間が作り上げたものです。」

「えっ‥?」

「今の人類は文明こそ衰退してますが、大戦前はこれぐらいの技術は当然のようにありました。」

「そうなんだ…。」

「では中に入りましょう。」


そう言い終わるとMID08Aは部屋の中に入ったので、俺達二人も続いて中に入った。


倉庫の中に入ると幾つもの棚が並べられていた。MID08Aはこちらを向き、俺に幾つか質問した。


「まず‥ヒト種の方ですが、どんな武器を使われていますか?」

「俺は‥短刀と銃をよく使ってますけど、長刀や狙撃銃もそろそろ持った方がいいかなと…。」

「そうですか…。ではその武器を見せてください。それと…。」


そう言ってMID08Aは俺の近くまでやって来て両腕や胸を触りだし、時折触った箇所を押し込んだり引っ張ったりし始めた。

ーー…えっ?え?マッサージ?


「ちょ、ちょっと…!アキトに何してるんですかっ!」


エレナが動揺して叫んだが、MID08Aは全く止めることなく今度は俺の両足や太股を触り始めた。

ーーあー…そこは…ちょっと!


一通り触り終わると、MID08Aは俺から離れ棚の方へ向かい、何かを探しながら俺に話し始めた。


「あなたの筋肉量では近接武器での攻撃はあまり機獣相手に通用しないでしょう。通用させるとしても刺突武器が限界だと判断しました。」

「え…。」

「従って、中遠距離から機獣の急所を狙える小銃や狙撃銃の方が適切でしょう。」


MID08Aは言い終わり、棚から幾つかの銃を持ってきた。

ーーなるほど。確かに思い当たる節はある。エレナの村での一件では短刀で防御しか出来なかったし、結果的には銃で何とか可能性を切り開いたようなものだったもんな…。


「あなたが使っている銃はかなり古い時代で使われているもので薬莢やっきょう内の火薬を点火させた際の衝撃で銃弾を飛ばすというものです。仮に20mから発砲したとしてもその攻撃力は機獣の表面を傷つけられるかどうかといった所でしょう。」

「そ、その通りでした…。」

「ですので、こちらの小銃を使ってください。これは火薬の代わりにナノマシンがもつエネルギーを銃身内で凝縮して1.5km先まで打ち出せるようになっています。勿論、ナノマシンが周囲にない場合、5.56mm銃弾による攻撃も可能ですが、この辺りはナノマシン密度が高いので使うことはないでしょう。」

ーー1.5km…。街で売られていた狙撃銃でも600m位。渋谷近辺の左端で狙って右端まで狙える距離だな…。


俺は銃を手にとってみた。見た目より軽く銃口から銃身にかけて鋭利な刃がついていた。

ーーなるほど。刺突武器としても使えるようになってるのか。合理的だな。


銃を構えた時に俺は銃床が青白く光り始めている事に気づいた。


「MID08Aさん、これは何ですか?」

「その銃床に手を当てることでナノマシンを流し込みナノマシンの持っているエネルギーを抽出したエネルギー弾を撃てるようになります。そのまま使用すると銃床付近のナノマシンの持つエネルギーを吸収しますが、このスーツと併用することでスーツ全体からナノマシンを吸収し、銃床へより効率的にエネルギーを撃ち出す事ができます。」


MID08Aはそう言って薄いスーツを渡してくれた。手渡されたスーツを見ると、両手が透けていた。


「このスーツはナノマシンと同じ素材で作られています。物理的防御力向上効果、重力軽減効果もついているので機械種との戦闘でも効果的と判断できます。また今着ている服の下に着込んでも大丈夫です。」

「…わ、分かりました。」

ーーこれで多少機獣とある程度渡り合えそうな気がする。荷物も銃弾や短刀も要らなくなるし、軽量化にもなるな。


MID08Aは一通り俺に渡してくれた装備の説明をしてくれた後、エレナの方を振り向いた。


「次に機人種の方ですが、。」

「あ、その前にさ…。自己紹介させてよ。名前だけでもいいから。私の事は"エレナ"って呼んで。あっちの黒髪は"アキト"ね。」

「…分かりました。」

「それと…あなたのあだ名決めてもいい?」

「あだ名…?機体番号のことですか?それならMID08Aと呼んでください。」

「その名前がちょっと言いづらくて…。だからあだ名をね…?」

「理解に苦しみますが…言いづらいのであればお好きなようにお呼び下さい。」

「じゃあ…"ミーア"さんでいい?」

ーーMIミーD08 Aね…。


「…分かりました。そのコード名も機体番号欄に追加しておきました。それでは話を戻しますが、あなたにはナノマシンをある程度操れるように訓練して貰います。」

「…へっ?」

ーーナノマシンを…操る…?



カタン、タタタタタン…!

カタン、タタタタタン…!

カタン、カタン、タタタタタタタタタタ…!


「…よし。大分馴染んできたな…。」


新しい銃を使いこなせるように、射撃練習室で練習する事3日。初めは前の銃と大きく違っていた為なかなか当たらなかったが、今では10発中9発命中出来るようになった。これなら問題ないと思うが、まだ止まっている的なので実戦で戦えるかと言われると微妙だろう。

ーーそれにしても…これが大戦中の人類が使っていた武器だったなんてな。何で今これらが公に出てないのか…謎だな。


「…さて、もう少し練習するか。」


俺は壁のパネルのボタンを押して射撃練習を再開した。



射撃練習も一通り終わり、司令官オーダーが用意してくれた休憩室に戻ろうとすると、隣の部屋からエレナの声が聞こえた。


「このっ…このっ…えい!あー!」

ーー…ちゃんと練習しているようだな。折角だし立ち寄ってみるか…。しかしエレナにそんな能力があるなんてなぁ。


俺はあの時のMID08Aミーアさんの会話を思い出した…。


「…大気中にナノマシンが漂っている事は知っていますか?」

「うん。瘴気の事でしょ?」

「あなた達人類はそう呼んでいるのですか。では瘴気の性質については知っていますか?」

「ええっと…それは…。」


エレナはそう言って俺にチラチラと目配せをした。

ーー助け船出せって事か。全く…。


「書物では…機獣の強化と修復をしてくれる性質があると書かれてましたね。」

「…それは我々機械種のソルジャーでの使い方です。ソルジャーは基本的に司令官オーダーからの命令の実行の為に行動していますが、その命令の大半は敵の殲滅です。ですので瘴気を利用して破壊力や防御力強化として利用していますが、それ以外の使い方もあります。」


そう言ってMID08Aミーアさんは両手をゆっくりと広げた。すると徐々に両手から火の玉が出始めた。

ーーこれは…エレナが使っていたのと同じ…?


「…それって…。」

「これは手の付近のナノマシンを操って空気中の酸素を利用して燃焼反応を起こしている状態です。それ以外にも大気中の水蒸気を抽出して水を出したり、電子を取り出し放電現象を出すことも可能です。人間の文献から抜粋すると"魔導まどうと呼ばれているようですが。"」

「…すごい…。」

「あなたは機人種ですので、我々機械種と同じようにこういう使い方が出来るはずです。ですが先程の外での戦闘で見せた魔導の威力を分析した結果、あまり使いこなせてないと判断しました。」

ーーあー、MID08Aミーアさんと初めて会った時に俺に電気かけたあれの事か。


「ですので…魔導練習をして貰います。まず始めに…。」


ーー…という訳で今に至っているわけだが…。


部屋に入ってみると、エレナが魔導練習している横でMID08Aミーアさんが指導していた。


「あ、アキト!」


エレナは俺の姿を見て話しかけてきたが、横にいるMID08Aミーアさんに

「練習してください。」

と、すぐに呼び止められた。


「えーいいじゃない、みーちゃん。声かけるくらい…。」

「時間の無駄使いです。あなたは成長速度が平均より遅いのでしっかりと練習してください。」

ーーみーちゃんって…MID08Aミーアさんの事か。また変なあだ名ついてるな…。


「ひどいなぁ…。頑張っているけどなかなか上手く出来ないんだもん。その…瘴気からエネルギーを取り出して別のエネルギーに変えると言われてもさ…。」

「そうですか…。ではエネルギー変換の基礎知識が足らないと判断しました。」

「えっ…。」

「エネルギー変換の知識を理解してもらいましょう。」

「えーっ!みーちゃんひどいよぉ!」

ーー…まるでしつけだな。あんまり俺の出る幕じゃなさそうだ。


「俺がいると何か迷惑かけてるみたいだし、そろそろ出るよ。MID08Aミーアさん、エレナを宜しくお願いします。」

「あ、アキトぉ!裏切り者ぉぉ!」

ーー何でだよ…。


部屋を後にした俺は休憩室に向かうことにした。

ーーしかし…MID08Aミーアさんはエレナの良い指南役だな。どこかで訓練はさせないといけないとは思ってたから丁度いい。


「アキトさん、ちょっといいですか?」


廊下を歩いていると司令官オーダーが後ろから俺を呼び止めた。


「はい、大丈夫です。」

「そろそろ作戦について打ち合わせをしたいと思っていますので、後で司令室に来てくれませんか?」

「分かりました。すぐそちらに伺います。」

ーーそろそろか…。



司令室へは地下5階にあり、外敵からの攻撃も考慮に入れて地下シェルター内に作られている。元々は大戦中の人間達が造り上げた施設らしいが、大戦後に機械種によって占領されてからは改良したようだ。


地下5階についた俺は突き当たりの司令室に入った。目の前に大きなモニターがあり、モニターの下には更に幾つかの机と共に小さいモニターが設置されていた。大戦中は沢山の人間がここで作戦などを考えていたのだろうが、今では俺と司令官オーダーの二人しかいない。


「それで…作戦についての打ち合わせ、と伺っていますが…。」

「そうですね。アキトさんの戦闘準備も整ったようですから…。もう一人はMID08Aからの報告ではなかなか準備に時間がかかっているようですけどね。」

「その件については…その、すいません。」

「いえいえこの作戦は緊急性はないのでお気になさらず。ただあんまり時間がかかってしまうと向こうの機械種の動向も変わってくると思うので…。」

「なるほど。お話は大体察しがつきました。」

「ははっ流石に鋭いですね。察しの通り、今回の作戦の目的は渋谷区にいるもう一人の司令官オーダー()()()()です。」

ーーやっぱりこの辺に司令官オーダーが一人いたのか…あの黒蛞蝓くろなめくじ司令官オーダーとの性格や方針を考えると腑に落ちなかったしな…。


「それでは作戦について話しますが、まずはこれをご覧ください。」


そう言って司令官オーダーは大きいモニターに映像を写し出した。


「…!これは…。」


その写真はかなり高いビルの最上階から撮られている映像に見えたが、その最上階にはおぞましい数の大小の機獣達がモゾモゾと群がっていた。


「これは…一体…。」

「渋谷にある一番高いビルの屋上の映像です。ビルの名前は確か…ShibuyaシブヤScrambleスクランブル Centerbuildingセンタービルですね。」

ーー流石にこの量は一匹一匹倒せないな…。


「それで…何故あんな数の機獣ソルジャーがこんなに集まっているんですか?」

「それはチルドレンの許可なく司令官オーダーが指令を出しているからです。それも…NANONETナノネットを介して無制限で…。その結果この辺一帯だけでなく他区にいたソルジャー達が集まってしまっているのです。もともとソルジャーは指令実行を最優先させる為に知能回路を搭載されておらず、指令をより効率的に出来るように処理回路を大きくしています。その為指令にはほぼ100%実行します。このままではいずれ東京都内のソルジャーが集まりかねません。」

「…なるほど。そうなる前にその司令官オーダーを機能停止にさせて阻止させるということですね。」

「その通りです。実は既に数回私から指令解除の要請をしておりますが受理されず、対処しようにも他の機械種の攻撃は禁則事項になる為、こちらから手を出せない状態なのです。ですので、あなた方に助力をお願いしたいのです。」

ーー司令官オーダーから止めろと言っているけど、聞き入れてくれない。倒そうにも倒せない…そんなところか。しかし結構これって機械種の中では大きな問題なんじゃないか?だからあの時冒険者の人間性を見ていたのか…。


「お話は分かりました。俺もエレナも協力するつもりです。色々と装備も用意してくれましたしね。」

「そうですか。ありがとうございます。MID08Aからの報告から分析すると、エレナさんは後4日程で最低限ですが作戦に参加出来るでしょう。ですので4日後に決行しましょう。」

「分かりました。」


俺はそう言って司令室を後にした。

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