八月頃
始まりは、庭先をやけに気にする母の姿でした。
「どうしたの?」
「実はさっき猫がいたのよ。」
「へ? いつもお父さんが追い払っているじゃん。」
庭いじりが趣味な父にとって、植物を枯らしかねない猫は天敵。
猫が近づかなくなるという粉を、まき散らしたりしていたが、あまり効果はなく。
最近はガラス戸をたたいて追い払うことが多い。
「そうだけど、まだ子猫なのよ。どうもお隣さん家の庭で生まれたみたいで……」
「あちゃー」
お隣さんはおばあちゃんが一人暮らししていた。現在は一人暮らしが困難となり、病院に入院している。時々空気の入れ替えが行われているが基本は無人だ。猫が子供を産んでも不思議ではない。
「さすがにね。とりあえず人なれさせて里親を探すか避妊手術を受けさせようと思うの。」
「お父さんはなんて?」
野良猫を見つけてはガラス戸をバンバン叩く父。子猫の存在をどうみなすのか。
「お父さんは……」
「ただいまー」
部屋に入ってきたのは大きなスーパーの袋を持って帰ってきた父だ。
「おかえり~」
「おう」
ドン(キャットフード)ドン(猫用缶詰)。
「……」
「これか?いや最近子猫が来るようになったからさ。見つけちまったもんはしょーがないからな」
問題なかったようです。