地上の技術は
良心の価値がひどく軽視されていると思う幼子よ。
あなたに世界を託したくてこれを書きます。
地上の技術は加速度的に発展している。
それがもたらす喜びと変化に人々は酔いしれる。
しかし、内心の義がおろそかになりつつ、技術のみ強力になった先に幸福があるでしょうか。
人類の幸福はむしろ、非常な危険にさらされているというのが現実です。
技術は、力をもたらす。力は、金銭をももたらす。
金銭こそが最も汎用な価値である時代には、金銭こそが個人の価値の貴賎でもある。
人々は、力で測って他者を仰ぎ、力で測って他者を蔑んで生きていく。
そうする先では、他者の気持ちにどこまでも鈍感な生き物へと、人間は規格化されていきます。
他者の気持ちに繊細な者は、今の時代は生きづらい。
自分さえよければいいと思って暮らし、そう生きる人生に満足できる者こそ栄える。
技術と経済にとって便利な種へと、人間達は淘汰されつつあります。
この近代人類の立場を、俯瞰して絶望と呼ぶことは当然に可能でしょう。
しかし私は、生まれた時代と地域における自らの安寧には絶望しえても、広く人類について絶望までは感じません。
なぜなら、ここで話題にしたような、近代的な大衆心理の構造の理解は、どうしてもたやすいものにしか思えないからです。
世界に何らかの潮目が訪れたとき、今から見れば特別な良心や知性を備えた人々は、無数に生まれ落ち、互いに力を合わせるのではないでしょうか。
人々は、一面ではあまりにも弱く愚かですが、どの一人も明らかに計り知れないほど強く賢い。
だからきっと、絶望するにはまだまだ早い。
多くの善良な戦士達がひどい苦しみのなかで倒れていきますが、とても残念ですがやむをえない。
行く末に勝利を夢見て、義に生きることが私達の物語でしょう。
良心の価値がひどく軽視されていると思う幼子よ。
ですから、あなたに世界を託したくてこれを書きました。
ご武運を、心からお祈りします。




