第89話 腐れ貴族の暗躍に気づく
今日は休みが取れたので朝から書いてみました。
「敵対者か・・いるな、一番のクソ野郎がな!」
「スルトさん?」
かなりイライラしてるのがわかるほど顔つきが変わったスルトさん、出会ってからまだ大した時間は経ってはいないがここまで怒る程の相手・・・どんな奴なんだろう?
「スルトさんがそこまでイラつく程の相手なんですか?一体誰なんです?」
「ん?あぁ・・・教える前に少し聞きたいんだが、今この場所は誰かに聞かれたりしない場所か?絶対に話した内容が漏れたりしないか?」
慎重を期するような相手なのか・・まさか相手は同じ貴族か?面倒な事にならなきゃ良いけどね。
「安心していいですよ、ここで話した事は絶対に人に漏れたりする事は無いですから。」
「そうか、なら安心して話せるってもんだ。悪いな変な事を聞いて・・一応これから話す事は漏れたらまずい内容なんでな?俺の立場もそうなんだが俺に協力してくれた人達にも迷惑が掛かっちまう、それだけはいけねぇ・・義に反するってもんだからな。」
「そこまで警戒する相手ですか、それは聞かせてもらえるんですか?」
「話す前にもう一つお前に聞いておきたい事がある、ユーラ・・お前は貴族をどう思っている?本音で思っている事を話してくれないか?その事でお前を非難したりユリーナの事でとやかく言ったりはしねぇ、心から思ったことを話してくれ。」
真剣な眼差しで俺を見つめてくるスルトさん、大して難しい事は思ったりしてはいないがとても重要な事なのかもしれない、誤魔化したりせずに真面目に答えるとしよう。
「貴族ですか・・正直あまり好きではないですね、人によるのかも知れませんが一々絡んできたり人のものに手を出そうとしたりする奴もいたりするので・・う~んまぁぶっちゃけて言うと面倒な存在ですかね?」
「そうか・・お前自身貴族になりたかったりするか?自分が貴族になったらこうしたいとか無いのか?」
「正直に言って全くと言っていいほどに無いですね、何より貴族になったら権力と財産を手に入れられるかもしれませんが、義務とか生じていろんな柵で雁字搦めになりそうなので御免ですね。」
「うん、そうか・・お前はそういう考えの持ち主か、まぁなんとなくそうかと思ってはいたが・・それなら計画を少し変更しておくか。」
今不穏な言葉が聞こえてきたな?その言葉を俺なりに解釈するなら俺を貴族にするつもりだったとか?さすがに冗談じゃない。スルトさんには悪いが貴族には何の魅力も感じないので遠慮させていただこう。
「わかった、話が反れたが俺がなんでここまで警戒していたか教えておこう。それは同じ貴族の中に俺の敵がいる・・いや俺達の敵、というべきかな?」
「敵、ですか?同じ貴族なのにですか?それまたどういう関係なんですか?」
「もったいぶってもしょうがないから教えるが、俺達・・まぁユーラにわかりやすく言えば俺とゴリニテあとはマシイナが所属してる派閥があるんだが、その派閥の敵対する派閥の親玉が今回の一番の敵だな。その親玉の名前がダリウル・デオ・シュツヘル公爵っていう自分が王に相応しいと宣ってる阿呆だよ。」
「これまた公爵ですか?随分と面倒な相手が敵なんですね。」
「とてもな?俺だって面倒な奴と面倒な争いはしたくないが・・そうも言ってられないんだよ、実は奴が近々(ちかぢか)大きな動きを見せそうなんだよ。本来なら王都にいて奴の動きを妨害したいところなんだが・・お前も知ってる通り俺は呪いのせいで体調不良になっていただろ?そのせいで王都から離れて自分の領地で安静にせざるを得なかったんだよ。」
今スルトさんの言葉を聞いて何かが引っ掛かった、うん?何だろう?このなんとも言えない喉に何かが引っ掛かった様な違和感気になるんだけど・・う~~ん。
「どうしたユーラ?何か俺が話した事で気になる事でもあるのか?」
「えっと、そうですね・・さっきスルトさんが話した言葉に違和感を感じたんですけど・・それが何かわからなくて気になってるってところです。」
「俺の言葉に気になるところ?何か変な事を言ったか?」
「いえ変な事ではなくて何かこう引っ掛かる様な・・よくわからないですね。気づいたら伝えますね。」
駄目だ、どうしてもわからない。それにもしかしたら俺がそう思っているだけで大した事はないかもしれない、後で何かわかったら話すとしよう・・と思っていたけどスルトさんはそれを良しとはしなかった。
「ユーラそれは駄目だ、そういう勘みたいなやつは後回しにしたりすると碌な事になったりしないもんだ。話すのを待つからもう少し考えてみてくれ。俺も自分の何がお前の勘に触れたのか考えてみる。」
スルトさんはそれだけ言うと腕を組み目を閉じて黙り込んでしまった、話し相手であるスルトさんが黙り込んだ以上俺もする事は一つしかないので先程の違和感について考えてみる事にした。
ただなぁ本当にちょっとした違和感だし、あまり大げさに考えないで欲しいんだけど・・でも確かに無視できない感覚ではあるんだよなぁ。俺もスルトさんに習い腕を組んで目を閉じて考えてみるが返って余計な事を考えて集中できなかったので、気晴らしがてら操作室の窓から外の様子を見る事にした。
外は相変わらず平原や森、たまに岩場がある地帯を進んでいるこの進み具合だとそう大した時間を掛けずにスルトさんの治める領地にたどり着けるだろう。それにしても魔物の大群か・・どうやって倒すかな?そういえば以前創ったまま今だに検証していない広域殲滅魔法を試してなかったな、実験がてら魔物で試してみるとしよう。うん?魔物の大群・・・そうか!わかったぞ!俺が感じた違和感は魔物の大群なんだ!
違和感に気づいた俺は早速スルトさんに話をすることにした。スルトさんは今だに腕を組み目を閉じているスルトさんに声を掛けようとしてある事に気付いた。あれ?スルトさん寝てないか?人に考えさせるだけ考えさせといて寝てるとか・・あぁやべぇ怒りが湧くよりもなんかすっげぇイタズラしたいんだけど!
これは寝ているスルトさんへのちょっとした罰だ、ほらアレだよ?会議中に寝たりしたら当たり前だけど怒られるだろ?アレと一緒一緒!というわけで罰を執行します!だがしかし痛みを与えるようなのは俺の望むところではない。痛みを与えず尚且相手が嫌がるのが一番だ。
そこで与える罰は俺が以前毒魔法を創ってる際に失敗して出来上がった魔法を使う事にしました。その魔法名は【ガス魔法】である。本来はよくラノベなどで見る敵を窒息させる魔法を創りたかったのだが、魔法を創る際に俺がついついオナラを嗅いで悶絶してる姿をイメージして創ってしまったために出来上がった物なのだ。この【ガス魔法】当たり前だが非常に強い致死性のあるガスも創れるが、それとは別にただひたすらに臭いだけのガスも創れるのだ。ちなみに冗談半分で臭いガスを創り出し自分で嗅いでみたが・・・鼻がもげるかと思った。匂いで死ぬと初めて思った瞬間だった。
だからといってそれをスルトさんにするわけではない、せいぜいニンニクや玉ねぎを消化した後のオナラレベルくらいの匂いで抑えるつもりだ。でわ、実験・・罰の執行であります!
まず【ガス魔法】により先程のオナラを生成します、そのままだと霧散して自分も被害を受けるので【風魔法】でオナラを一つの塊とします。丁度顔をスッポリと覆うくらいのサイズに調整をして頭の上から・・かぶせる!
1秒、2秒、3・・・。
「くっせぇーーーー!何だこの臭い!何処からだ!ユーラ!お前まさか屁をこいたんじゃねぇだろうな!何なんだこの臭いは!」
「失礼な・・オナラなんてしてませんよ。まぁ寝ていたスルトさんは気づかなかったでしょうが。」
「どういう・・って待てユーラ、お、俺は寝てなんかいないぞ?俺はちゃんとお前が何に違和感を抱いていたのかを考えていたんだ。ホントだぞ?」
ホホゥ?伯爵様たる御方が嘘をお付きになるか、いけませんねぇとてもいけない事ですねぇ?もう一発いっとく?
「おい待てユーラ?何だその変な笑い方は!よせ!これ以上俺に近寄るな!わかった!認める!寝ていたのを認めるからこれ以上その笑い方をしながら俺に近づいてくるのをやめろ!その両手に何を持っているんだ!見えないのが余計に怖いんだよ!」
まったく・・始めから認めていればいいものを変に意地になるからだ、次に妙な事で嘘をついたら即座にくらわせてやろう。
「はぁ・・寝ていたのは悪かったが、だからといってあんなやばいものを嗅がせる事はないだろう?鼻がもげるかと思ったぞ。」
「人が真面目に考えていたのに寝ているからですよ?自業自得です。呪いの影響はとっくに俺が解消したんですから体力は万全なはずでは?なら今のはただの居眠りでしょ?当然の報いですよ。」
「だから悪かったって謝ってるじゃねぇか・・そ、それよりもアレだ!違和感に気付いたんだろ?ホラ!話してくれよ。」
「次は無いですよ?次は速攻で今以上のモノを嗅がせてやりますからね?」
「だ、大丈夫だ!次はこんな事が無いように気をつける。(あんな危険なモノを二度と嗅がされてたまるか!)」
「さてと色々ありましたが俺が気付いた違和感の話をしましょう。俺が気付いた違和感は魔物の大群についてです。」
「魔物の大群について?そこのどこに違和感を感じたんだ?周囲にダンジョンもあるし魔物が大群で押し寄せる事なんて近くにダンジョンがあれば珍しい事じゃないんだぜ?何処に違和感を感じる要素があるんだ?」
「それを今から話します、その前にですけど・・スルトさんはもし呪いが解除されずにいたらどうしていましたか?」
「それはゴリニテのところからって話か?それだったらまずゴリニテに俺の妻と娘のユリーナそれと領地に関して面倒を頼んだ後に自分の領地に帰ってその時がくるまでは妻とゆっくり過ごすつもりだったが・・・それがどうかしたのか?」
「気づきませんか?スルトさん、スルトさんは今言った通りに事が運んでいたならスルトさんは呪いの影響で戦う事もできないボロボロの体で自分の領地に帰っていたんですよ?もし、もしスルトさんが俺と行動する時間が無かったとしたらどのタイミングで領地に帰っていましたか?」
「それは・・!まさか、もしそのまま俺がユーラに会わずに領地にそのまま帰っていたら・・。」
「おそらくスルトさんが考えてるとおりだと思います。そのまま俺に会わずに領地に帰っていたらスルトさんはその魔物の大群と鉢合わせていた可能性が高いです。もし仮に鉢合わせ無かったとしてもいずれ魔物の大群はスルトさんの領地に押し寄せて来て・・・。」
「みなまで言わなくてもいいさ、わかってるユーラお前はこう言いたいんだろ?そのまま為すすべもなく魔物に蹂躙されていただろうって。戦う事の出来ない俺はそのまま命を落としていただろうってな?」
「そのとおりです、ですが俺が気付いたのはそれだけじゃ無いんです。」
「まだ何かあるのか?他に何があるっていうんだ?」
「・・誰かしらに掛けられた呪いの影響で体の弱ったスルトさん、スルトさんが留守にしてる最中に押し寄せてきた魔物の大群、何も無ければ魔物の大群との鉢合わせるだろうタイミングの合った領地への帰還、これってただの偶然で起こるものですか?」
何か気付いたであろうスルトさんが拳を強く握りしめて怒りで体全体を震わせている、それもそうだろう、ただの偶然だけでここまで条件が揃うとは到底思えない・・どう考えても誰かの意思が絡んでいるのは一目瞭然と言えるだろう。
「ユーラお前はこう言いたいのか?何者かが俺を・・俺の治める領地を狙ってやっているんだと、そう言いたいのか?」
「領地を狙っているのかどうかは知りませんが、スルトさんが狙われているのは確かだと思います。」
「・・・すぅ~ふぅ~・・。そうか・・そうかよ誰か、な。一体どこの誰だろうな?こんな馬鹿な真似をしくさる奴は・・・まぁ一人しか居ないか。」
「おそらくですが『シュツヘル公爵』。」
「やっぱりそうなるのか・・いいだろう、喧嘩を売るっているんなら買ってやろうじゃねぇか。ただしこのツケは高いぜ?必ずやり返してやるぞシュツヘル公爵!」
とんでもないところから厄介な問題が飛び出してきたが、手を貸さないわけにはいかないだろう。はぁ~腐れ貴族とか・・・本当に面倒な奴らだな。魔物の大群よりも貴族を相手にする事に憂鬱な気分を覚えるのだった。
ほんのちょっとした伏線を張りたいが為のスルト伯爵領地行きです!そう言えば本編では書きませんでしたが、ゴリニテ侯爵やマシイナ伯爵よりもスルト伯爵が年上です。あと何故ゴリニテ侯爵がスルト伯爵に丁寧な対応をしてるのかはスルト伯爵が自分よりも身分が低く普段の口は悪くとも面倒見の良い兄貴分を発揮しているからです。ゴリニテ侯爵はそんなスルト伯爵の生き様に憧れているので丁寧な対応を心がけています。以上ちょっとした補足でした。必要であれば本編でも書き記す事もあるかも?




