第87話 腕試し
お待たせで御座います!お楽しみいただければなによりです。
玄関まで来るとスルトさんを始め俺のパーティメンバー+カミラさんが待っていた。どうやら俺が一番最後だったみたいだ。
「おいユーラ、お前人には早く準備しろみたいな事を言っておきながら自分は遅れてくるとかなかなか良い根性をしているな?」
「アハハハ・・すいませんスルトさん、出発前に色々あったのものですから。」
それを聞いたスルトさんはチラッとカミラさんを見た、どうやら気づいてくれたようだ。しかし、その上で言いたい事があるようだ。
「それも踏まえて前もって準備しておけっつぅ話だよ、どうせなぁなぁにしてた所を誰かに後押しされたんじゃねぇのか?」
「へ?いや~ハハハ、面目次第もありませんね。まったくもってその通りですハイ。」
「男らしくしっかりしろよ?そういう事はビシッとしておけ!お前も男ならな。」
「肝に銘じておきます。」
「あぁ、それでいい。それよりもだ、この荷物どうするんだ?俺はお前の馬車に運ぼうとしたんだが、お前の女達がそのまま待ってればいいって言ったんだが。」
「あぁ、それはこうするんですよ。」
そのまま荷物まで歩み寄ると手を触れてそのまま【マイバッグ】へと収納していく、そこにあった全員分の荷物が一瞬で消えた事でスルトさんが驚きの表情のまま固まっている。屋敷の建築時に俺が収納と取り出しを見せたはずだけど見ていなかったのかな?
「改めて見ても普通じゃないな、俺が見た事あるアイテムボックスの容量を明らかに超えているぞ。ホントお前は規格外ってやつだな?」
規格外いただきました!いやぁなんか楽して手に入れた力ではあるが、こう言われるとちょっと優越感がある。まぁだからといって調子に乗ると痛い目にあうのは以前学習しているので控えめで。
「そうですか?まぁもしかしたら他にもいるけど悪用されないようにひた隠しにしているだけかもしれませんよ?」
「ん・・まぁそれもあるかもな?実際それが使えるだけで輸送が一気に楽になるし何より悪どい事を考えてる奴らからしたら見せたくないものを隠しておけるっつぅメリットもあるしな。そうそう自分が使えると公言する奴はいないか。」
「ですね、俺も使う時は気をつけないといけないかもしれませんね。」
「・・・お前に限ってはその配慮が必要とは思えないが、まぁ娘のユリーナもいる事だ。もしかしたらユリーナが人質に取られてお前に強要するかもだしな?」
「ん?えぇまぁユリーナさんが捕まる様な事があれば助けますが・・必要ないかと思いますよ?」
「何?それはどういう事だ?お前はユリーナが捕まっても何もしないつもりか?」
怒気を放ちながら詰め寄ってくるスルトさん、何か勘違いしてるようなので説明をする事に。
「ちょっと待ってくださいよスルトさん何か勘違いしてるようなので説明しますけど、俺が何もしないのではなくてユリーナさんだけで十分対処できるという意味ですよ。」
「はぁっ!?お前いい加減な事言ってんなよ?俺が知ってるユリーナは機転が利く娘ではあるが、こと戦いに関してはそこまでの事はできないんだぞ?せいぜいが護身程度の事しか教えてないからな。それなのにお前はその護身程度でプロを相手にどうにか出来るっていうのか?」
そうか、そう言えばまだ誰にも教えていなかったがカミラさんを除く俺のパーティーメンバーはすでにそこらへんにいる様な奴らでは全く及ばない程に強くなっている。その理由があの【叫びの洞窟】にいたあいつ・・え~と?そうそうスクラップサーペントを倒した事でその経験値を多く取得した為に一気にレベルが上がっているのだ。しかもただ上がっただけなら対して上がらなかっただろうが、どうやら俺の恋人になった事で間接的に創造神であるおじいちゃんとおばあちゃんの異常な恩恵を受けている為本来なら経験値は人数配分になる所を単独取得のような配分になっており更にその経験値を2倍にするという効果で非常にレベルが上がりやすくなっていた。
詳細は省くが彼女達のステータスは俺には遠く及ばないが、この世界ではトップレベルに近いと言ってもいいほどに高くなっているのだ。さて、脱線したのでそろそろ話を戻そう。
「俺が口で言うよりも実際に見たほうが早いでしょう、そうですね・・・手っ取り早く懸念の対象になっているユリーナさんに実演してもらいましょうか。スルトさんとユリーナさんで対峙してみてください、それで流石に殴り合いはまずいのでお互いの背後を取ることができれば勝ちというのはどうでしょう?」
今の言葉に対してさすがにカチンと来たのかスルトさんは俺を睨みつけてきた、うわぁ~おっかねぇ~。
「ユーラ・・お前は確かにすごい・・それは認める、だがな?今回の事に関しては言わせて貰えればがっかりだぞ。俺は貴族ではあるがだからと言って鍛えてないわけじゃないんだぜ?今はまだ万全じゃないが、体調の良い時なら普通にゴリニテを抑えるくらいの力はあるんだぞ。そんな俺がいくら万全じゃないとはいえ最近まで戦う事を知らなかった娘に負けるって言いたいのか?いくらなんでもそれは俺を下に見過ぎじゃないか?」
スルトさんの・・というよりは父親としてのプライドを、だろうか?かなり刺激してしまったらしい。俺としてはそんなつもりはなかったのだが、どうやら無用な怒りを買ってしまったようだ。とりあえず大丈夫なくらい強いという事を証明したあとに誤解であることを伝えないといけないな。あとどうせ安心させるのならスルトさんを完全回復させてからにしよう。うん、そうしよう。
「スルトさんまずは公平な勝負にする為にスルトさんの体調を治しておきますね?【ライトヒール】っとこれで問題は無いでしょう。」
「なっ!体が、体のダルさが無くなっただと?ユーラお前一体俺に何をしたんだ!?」
今まで体調不良だったにも関わらずそれをいきなり治されて驚きそのまま詰めて寄ってくるスルトさん、やめて!おっさんに詰め寄られるとか誰得だよ!
「お、落ち着いてくださいスルトさん、ただ単に回復魔法を使っただけですから。」
「その回復魔法がすでにおかしいんだよ!なに如何にもなんでもない風を装ってるんだお前は!」
だいぶ冷静さを失ってるようだ、きっとそれだけ疲れていたんだね?もっと早く治して上げればよかったかな?(←盛大な勘違い)
「あぁ!もういい!とりあえずそれは後で聞く、今はユリーナの事だ。ユーラお前は本当にユリーナが俺に勝てると思っているのか?」
「スルトさんには申し訳ないですが、ユリーナさんが勝ちますね。ほぼ間違いないですよ?まぁもっともユリーナさんが手を抜かなければ、という解釈が入りますけどね?」
「良いだろう俺の不安を解消する為にも必要だからな、全力で対応してやるさ。ユリーナ俺が親だからといって手を抜かずに本気でかかってきなさい、良いね?」
「はぁ~い!本気でお父様を叩きのめせば良いんですね?わかりました~。」
「・・・・・・。」
あらぁ~スルトさんが絶句しておる、そりゃ~自分の娘に叩きのめすとか言われたらそうなるか。
「ユーラ・・お前が言わせたんじゃないだろうな?」
「俺は関係ない・・と思います。」
「後で聞くとしよう・・逃げるなよ?」
「・・わかりました。」
被弾した、俺多分悪くないのに・・。酷くね?気を取り直して始める事にしたが、一応ちょっとしたルールをつけておこう。そうしないと本当にユリーナさんがスルトさんの事を叩きのめしてしまいそうだ。
「一応ルールとして相手を叩きのめすのではなく、今の実力を見せるだけで良いです。決して過度な力で相手を怪我などさせたりしないように、良いですね?」
「わかってる。」
「えぇ~せっかくお父様に私の努力の成果を見せられると思ったのに~。」
「何!ユリーナの努力の成果だと!?よし!そういう事なら問題ないぞ!ユリーナ!お前の努力の成果を父に見せてくれ!」
なんで自分から危険地帯へと踏み込むのか・・・止めないととんでもないことになりそうだから横着せずに止めておこう。下手したらここに血溜まりができそうだ。
「やめておいたほうが良いですよ?スルトさん、今のユリーナさんの全力は危険ですからね。さっきも言いましが、お互いの背後を取った方が勝ちが良いと思いますよ?」
「ユーラお前はユリーナの全力を受けた事があるのか?」
「え~と、無いですね?受ける必要も無かったですし。」
「フフ・・そうか、そうかならユリーナの全力をこの身に受けるのは俺が初めてになるんだな!ハッハッハ!」
「えぇ~~。」
なんとなく、なんとな~く思ってはいたがスルトさんは相当な親バカのようだ。しかもかなり振り切ってると見た。この分だとボコボコにされても喜びそうだな・・うん、なんか説得するのがバカバカしくなってきたな。・・放置しよう。そうだな、死にそうなら回復してやればいいだろ。
「スルトさんがそれでいいなら始めましょうか?」
「あぁ!良いぞ全然問題ない!さぁユリーナ!お父さんに飛び込んできなさい!」
「はぁ~い!ちゃんとユリーナを(※注意!攻撃の事です。)受け止めてくださいね~。」
「ブフッ!―い、良いぞ!お父さんがユリーナの全てを受け止めてあげよう!」
「ねぇユーラさん?何故スルト伯爵は鼻から血をだしているのでしょう?まだ体調が万全ではないのでしょうか?」
「あれが気になりますか?レナリアさん、あれはきっと日差しが強いから頭をやられたんでしょう、後で終わったら回復しておくので気にしないでください。」
「はぁ・・ユーラさんがそう仰るのでしたら。」
純粋な人の前で変態を晒すのはやめて欲しいものだ。レナリアさんにはいつまでも純粋でいてほしいんだからな!
「よし!ユーラ!いつでも良いぞ!合図を出してくれ!」
「わかりました、ユリーナさんも良いですか?」
「良いですよ~何時でもどうぞ~。」
開始宣言を出す前にユリーナさんが腰に挿していた棒状の物を専用の鞘から抜き放つとあっという間に形が変化してモーニングスターになった。それを片手で持って振り回すと手持ちの部分から先端部分をつなぐ鎖がチャラチャラと独特の金属音を鳴らしつつ先端の凶悪なトゲトゲしい鉄球部分が空気を震わせてブンブンと唸っている。そしてそれを見たスルトさんはさっそく自分の言った言葉を後悔しているのだろうか?顔を青ざめさせてモーニングスターを笑顔で振りまわすユリーナさんを見つめている。
さすがに危険だとわかったはず、そう思った俺はユリーナさんに加減するように言おうとしたが、それよりも早く何故か青ざめていたはずのスルトさんが開始の合図をだした。
「さぁおいで!ユリーナ!お父さんにその力を見せてくれ!」
「いっきますよ~、えぇ~い!」
間延びした言葉とは裏腹にかなりの勢いをつけて頭上でモーニングスターを振り回しながらスルトさんに素早く接近したユリーナさんはその勢いを落とすことなくスルトさんに振り下ろす!・・のではなくスルトさんの懐に潜り込ませるようにまるでスマッシュアッパーをかますかの如く打ち付けた!そのあまりの速さについていけないスルトさんは何の抵抗を試みる事もできずにそのまま打ち上げられた!
今この光景が俺にはスローモーションになっているかのように見えている、打ち上げられていくスルトさん、打ち上げた本人であるユリーナさんは笑顔でありその顔からはキラキラと汗が飛び散っており実にいい表情をしている。そしてもう一度スルトさんを見れば落下してきている最中だ、流石に危険すぎるもしかしたら痛みで気を失っておりまともに受け身も取れないかもしれない。そう思い受け止めに行こうと思ったが・・止めた。何故な手痛い一撃を貰ってにも関わらずスルトさんの顔が正直気持ち悪い程に笑顔だったからだ。普段の硬派を思わせる渋いものではなく満面の笑みをうかべていた。
そのまま見送っていると地面に激突したスルトさん、先程もいったが非常に満面の笑みである。うん、正直キモいな。知らない人が見たら不審者が撃退されたと勘違いされても仕方にレベルだ。だが、いくらその表情がキモくて不審者に見えようが大切な人の父親であるのは間違いないので回復しておくことにしよう。仕方なくスルトさんに近寄り回復魔法を掛けようとしたら何故か怪我をした本人が止めてきた。
「ま、待て!ユーラ・・まだ回復をするな・・今はユリーナの想いを俺の体に染み込ませている最中だ・・もう少しだけ待ってくれ。」
ドン引きである、ほら周りを見てくれよスルトさん。皆がドン引きしているんだぜ?あの完璧執事のイルディオさんですら僅かに引いた表情をしている。この中で唯一の例外はゴリニテ侯爵くらいだ。あのモーニングスターの一撃を受けたスルトさんを見て「流石だな!」とか言っている・・アホだな。
魔物が自領に向かっているというのに、この調子で本当に大丈夫なのか?と心配になる優良だった。
ちょっとだけ優良以外も強くなってるんだよ?というのを書こうと思ったらこうなりました。




