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第86話 伯爵家領地に迫る危機

お待たせいたしました。

 部屋へと戻ってきた俺はこの地での目的を終えて次はどうしようかと考えていた、本当はこの街の周りを囲う様に柵を設置してみようかとも思っていたのだが、ゴリニテ侯爵とクラレさんに断られた。その理由というのが必要なのは知っているし頑丈なのを設置したいのは確かなのだが、そこまで俺にさせてしまうとこの街にいる職人達に回す仕事が無くなってしまうので今回は遠慮したいと言われている。俺だって決してこの街にいる職人の人達を蔑ろにしたい訳ではないので素直に引き下がる事にした。しかし、そうなってくると俺がこの街でしようと思っていた事は無くなってしまったのだ。

 それもあってそろそろこの街から離れようかとも考えている、皆と相談して決めておこうかな?それとどれくらいで此処から発つかもある程度考えておかないとな、話し合いをした時に提案できないしね。あともう一つ気になるのはカミラさんの事だ、カミラさんはどうするのだろうか?この街に残る?それとも俺達と一緒に来てくれるのか?そこらへんの事も含めて皆と相談しておかないと。



 いつまでも部屋に籠もっていても何も進まないので、取り敢えず誰かに話をしておきたいな。こういう事ならまずはリィサかな?結構皆をまとめているみたいだし、俺と一番長くいるし気心もしれている。・・・うん、リィサに相談しにいこう。



 借りている部屋を出てリィサ達がいる部屋を訪れる、確かここだったはずだ。俺とは違いリィサ達は一緒の部屋で寝泊まりをしているらしいのだが・・狭くないのかな?せっかく部屋はたくさんあるのだから使っても構わないといった侯爵の言葉に甘えても良かったと思うんだけど・・まぁ無理に借りる必要もないか。部屋の中で何をしているかわからないので、しっかりとノックをしてから部屋に入る事にした。妙なテンプレはしないに限る。



 コンコン―ノックをしてしばらく待っているとドアが開きカミラさんが出てきた。あれ?カミラさんは自室にいたはずでは?取り敢えずこのまま廊下にいても話ができないので部屋の中にいれてもらうようにお願いするとしよう。



「カミラさん今皆一緒にいるの?誰か欠けてる人がいたりしないかな?」


「皆さん一緒にいらっしゃいますわよ?ちょうどお茶の時間を楽しんでいましたの。ユーラさんもご一緒しますか?」


「ん~そうだね、丁度いいからお茶をしながらにしようかな?中に入ってもいい?」


「?えぇどうぞ、もしかして何かお話したい事がありますの?」


「実はそろそろこの街を出ようかと思ってるんだよ、侯爵にも言ったんだけどこの街でする事も無くなったからね。次の目的地の相談にきたんだよ。」



 部屋の中に入りソファに腰掛けた後にこの街を旅立つと言う俺の言葉にカミラさんが驚いて聞き返してくる。



「もう旅立たれるのですか!?もう少し居ても良いではないですか。せっかくユーラさんと仲良くなれましたのに・・寂しくなってしまいますわ・・。」


「あれ?カミラさん一緒にこないの?俺はてっきり着いてきてくれるものだとばかり思っていたんだけど。」


「私、ユーラさん達についていってもよろしいのですか?」


「いや良いも何も俺は元から着いてきてくれると思っていたから反対はしないよ。あ!そうそう一応ゴリニテ侯爵とクラレさんには俺達についていっても良いか確認しておいてね?いくらなんでも勝手に連れて行くのはまずいからさ。」


「わかりましたわ!早速お父様とお母様にお伺いしてきますわね。」



 カミラさんはそれだけ言うとあっという間に部屋から出ていった・・・お茶入れてくれるんじゃなかったの?まぁいいか、自分で入れるとしよう。と思っていたら気を利かせたモモリスがお茶を入れてくれていた。おぉ~さり気ない優しさですなぁ。



「はいどうぞユーラさん、美味しいかはわからないけど普通に飲めるとは思うわ。」


「ありがとうモモリス、気を利かせて貰って悪いね?」


「これくらい気にしないで?はいどうぞ。」


「ありがとうモモリス・・ふぅ~うまいねぇ。さてと、カミラさんがいないけど皆に聞いておこうかな?この街を旅立つのに反対の人はいる?」



 ふむ、どうやら反対の人はいないようだ。ついでにどこか行きたい所があるかも聞いておくか、今の所王都を目指す予定しかないが急がなければいけない程でも無いので、行きたい所があるのなら行ってもいいかなと思っている。



「それと今の所俺としては王都を目指す以外予定が無いんだけど、どこか他に行きたい所とかってある?もしあるなら行っても良いよ?」


「でしたら皆さんと相談しても?せっかくなので皆が楽しめる場所へ行きたいですので。」


「別に構わないよ、俺はお茶でも飲んで待ってるからゆっくりで良いよ。」


「では早速相談して参りますね?みなさ~ん・・・・。」



 皆と相談する旨を伝えて離れていくカミラさん、最近ようやく歳相応の振る舞いをするようになってきた。ちょっと前に聞いた所あのバレブロがだらしない生活態度と貴族らしかぬ振る舞いをするのを見て自分はそうならないように気をつけようとして気を張っていたら、何時の間にか大人ぶった振る舞いをしてしまうようになったのだとか。あいつは本当にロクでもない奴だったんだな。居なくなってせいせいしたと言った所か?

 まぁアイツの場合はハッキリ言えば自業自得もいいとこだ、もう少し真面目に生きていれば違った形の生き方ができたはずなのにな。これ以上考えても仕方ないし、アイツの事を考えるのも癪なのでもっと自分の益になる事を考えるとしよう。



 今回のゴリニテ侯爵邸を建築したことで今まで貯めてきた各種素材がかなり減ったので、そろそろ採取もしていきたい。あとは魔物を狩るのもいいな!せっかく戦闘の勘も鍛えてあるのに手つかずにして鈍らせてしまうのは勿体ない。いつ何処で自分以上の存在に出会うかわからないし、その存在が自分たちに牙を向けないとも言えない、だから戦闘勘はしっかりと鍛えておこう。



 他にしたい事といえばおじいちゃん達と連絡が取れない事だ、ある日を境にぱったりと連絡が取れなくなってしまった。今まで呼びかければすぐに返事があったので、呼びかけても返事が無いと何かあったのではないか?と気になって仕方ない。だがもしかしたらただ単に神様としての仕事が忙しいだけなのかもしれないからなんとも言えないんだよなぁ。それに俺みたいなたかが一人の人間が神様の心配をするなんて烏滸がましいかもしれない。



 この先の事やおじいちゃん達の事を考えている時に部屋をノックする音で我に返った、誰だろう?と思いソファから立ち上がり部屋を訪れた人を確認するべくドアを開けると・・そこにいたのはスルトさんだった。



「あれ?スルトさんじゃないですか、部屋で休んでいたんじゃなかったんですか?」


 そう尋ねるとスルトさんは苦虫を噛み潰したような顔で答えてくれた。



「あぁゆっくりと休んでいたさ、だがこれ以上休んでいる場合じゃなくなってな。急いで領地に戻らなきゃならなくなったんだよ。それでユーラお前に頼みがあるんだが・・聞いてくれないか?」


「頼み、ですか?そうですね、まず話を聞かせて貰えませんか?流石に内容を聞かずに返答はできませんので。」


「わかった、可能性があるならそれでいい。悪いんだが中に入れてもらえないか?まだ少し体がダルくてな?できたら座らせてもらえると助かる。」


「確かに立ち話もなんですしね、座ってゆっくりと話しましょう。えぇっと・・ごめん悪いんだけど誰かスルトさんにお茶をいれて貰えないかな?」


「私が準備するわユーラ、少し待ってて貰ってちょうだいね?」


「ありがとうリィサ、スルトさんこっちに座ってください。このソファなら負担も少ないはずですから。」


「いきなり来たのに気を使って貰って悪いな、だがどうしてもお前に力を貸して欲しくて来たんだが・・さっきも言われたからまず力を貸して欲しい理由を話させてもらおう。」



 かなり真剣味を帯びた表情だ、それに何やら切羽詰まった雰囲気を感じる。そこまでまずい事が起きたのだろうか?しばらく座って待っているとお茶を入れたリィサが来て俺とスルトさんの分をおいて下がっていった。その際に御礼がわりにリィサに微笑んでおいた、俺の意図が伝わったらしくリィサも微笑んで皆が待っている場所へ移動した。

 お茶を飲んで多少落ち着いたのスルトさんは、考えをまとめる為だろうか?目を閉じ腕を組んで黙っている。しばらくして考えがまとまったのだろう、話をし始めた。



「ユーラあまり時間も無いから回りくどい事は言わない、俺の治める領地に魔物の軍勢が向かってきているらしい。それでお前に頼みたいのは俺を領地に連れて行ってもらえないかという事だ。なんでもお前の馬車は宙に浮いているそうだな?それを使えば体に負担を掛けずにすむはずだ。どうか俺の願いを聞いてくれないか?頼む!」



 思いつめた表情で頭を下げるスルトさんだが、いつまでも義理の父に頭を下げさせたままにさせておくわけにもいかないので返答する事にした。



「頭をあげてくださいスルトさん、義理とは言え父親に当たる人のお願いですから出来る限りのことはさせてもらいますよ。」


「それは本当か!?すまない助かる!あと出来れば急いで欲しい、領地から来た手紙を受け取ったのはついさっきだが、手紙そのものは2週間前になるらしい。魔物の位置からして俺が領地に向かう前には襲撃される危険があるんだ。もしかしたらすでに襲撃されてる可能性もある、だからなるべく急いで欲しいんだが・・本当に頼めるのか?」


「大丈夫です!なんなら今すぐ向かいましょうか?皆はどうする?ここで待っていても良いよ。スルトさんの所に一度行った後にもう一度戻ってきてもいいしね。どうする?」


「もちろん行きますよ~、だって自分の家の事じゃないですか~。それなのに置いていかれるなんて嫌ですよ~。」


「そうは言ってももしかしたら戦いになるかもしれないんですよ?その時すぐに動けますか?」


「大丈夫ですよ~?だってダンジョンで私も戦ったじゃないですか~。余裕ですよ~。」


「それもそうか・・なら大丈夫かな?じゃあユリーナさんは行くとして他の皆はどうする?」


「ちょっと待てユーラ!どういう事だ?なんでユリーナが戦っているんだ?お前俺の大切なユリーナに何をさせているんだ!」



 唐突に俺の胸ぐらをつかみ揺すってくるスルトさん、ぐぇぇぇ!やめてくれぇ~痛くはないが揺すられると気持ち悪くなるぅ~。まるで怒り狂ったかのようなスルトさんを止めてくれたのは娘であるユリーナさんだった。



「お父様~駄目ですよ~、ユーラさんをイジメちゃ~メッですよ~。」



 なんともゆる~い感じで怒り狂ったスルトさんを止められるとは思えなかったが、なんとたった一言でおとなしくなった。



「ユ、ユリーナ!大丈夫だったのか?怪我しなかったか?無理やりさせられたりしてないのか?」


「お、お父様!落ち着いて!私は大丈夫だから~それよりもユーラさんに酷い事を言ったら駄目だよ~。いつも無理を言ってるのは私の方なんだから~だからちゃんとユーラさんに謝って?」


「うぅ、その・・すまなかったユーラ悪かったこの通りだ。」



 娘の一言は重かったようだ、かなりあっさり謝罪をしてきた。まぁそもそも俺は怒ってなどいない。というか俺としては付き合いの許可も無しにユリーナさんに手を出してしまった事もあり後ろめたさしかない。そんな事もありスルトさんが怒ってしまうのは俺としてはしょうがない事だと思っている。



「問題ありませんよスルトさん、それよりも本題に戻りましょう。領地に行くのは全員で向かいましょう。何か合ったとしても俺がどうにかしますから。なるべく急いだほうが良いんですよね?」


「そうだな、できれば今すぐにでも向かいたい所だが・・行けるか?」


「準備さえ出来ていれば俺の方は問題ありません。」


「わかった俺も急いで準備してくるからお前達も頼むぞ?じゃあ俺は部屋に・・「その必要は御座いません」。」



 部屋に戻ると言いかけたスルトさんを遮って現れたのはイルディオさんだった。相変わらず唐突に現れるな・・俺のスキルが仕事をしてくれないんだが・・どうなっているの?



「その必要は無いとはどういう事だ?」



 少し睨むような感じのスルトさんだが、その視線をまるで何事もないかのように受け止めて話を続けるイルディオさん。なんともまぁタフな性格をしてる人だ。



「スルト様のお荷物ですが勝手ながらすべてまとめて玄関前に準備させていただきました。すぐにでも出発できます。」



 その言葉に自分の早合点に気づいたスルトさんは気まずそうな顔をしている、まぁ焦っているからしょうがないといえばしょうがないけど気まずいのは確かだね。



「イルディオすま・・。」


「おぉ、そういえばいくら急いでいるからとはいえ無断でスルト様の部屋に勝手に入ってしまいました事をお詫びしなければいけません。スルト様無礼にも勝手に部屋へと入室してしまい申し訳御座いません。この無礼如何様にも。」


「はぁ・・・いや無礼はこちらの方だ、それと荷物の事は助かった礼を言わせてくれ、ありがとうたすかったぞ。」


「はい、寛大な処置に大変感謝致します。それとユーラ様少しお話が御座いますのでほんの僅かのお時間を頂きたく。」


「俺ですか?わかりました、ではスルトさんは玄関で待っていて貰えますか?皆は荷物をまとめておいて?話が終わったら俺が回収しにくるから。」



 各々の返事を聞き届けた後に少し離れた場所でイルディオさんと二人だけで話をする事にした。



「時間をとらせてしまい申し訳御座いませんユーラ様。」


「それは構いませんが、話とは何でしょうか?」


「カミラお嬢様の事で御座います、聞けばユーラ様達は皆一緒にスルト様の領地へと行かれるとか。でしたら一緒にカミラお嬢様もお連れして欲しいのです。ちなみに旦那様と奥様の許可は取ってありますのでなんら問題は御座いません。」


「これまた随分と用意周到ですね?もしかしてこの後俺がどう動くのか予想してましたか?」


「恐れ多くも発言させていただけるのでしたら、おそらくユーラ様はカミラお嬢様をここに置いて行かれるのでは無いかと予想しました。理由は戦う力が低いせいかと。ここに居られれば危険はないからと説得を試みたのではないかと。」


「あぁ~ほぼ合ってますね、さすがと言っておきます。しかし本当に良いんですか?結構危険な事もありますよ?」


「私が愚考するにレナリア様は元々戦闘においては護身程度しか身に着けてなかったと思いますが、ユーラ様がダンジョンから戻ってきてからはそれ以上の力を感じております。つまりユーラ様には何かしらの手段で力を身に着けさせるあるいはそれを補助するだけの力をお持ちなのでは無いでしょうか?そうであるのならばカミラお嬢様もユーラ様と同行すればいずれはそれなりに戦えるだけの力を身につけられると思っておりますが・・如何でしょうか?」



 この人は・・本当にただの執事か?セルディオさんの時も思ったが、どうも常人枠に収まる人達ではないようだ。愚考とか言っていたが大体というかほぼ合ってるのがまたなんとも言えない。元々それなりの力を持っていたって所かな?



「いえいえ私はただのしがない執事で御座います。してカミラお嬢様の件如何でしょうか?」



 俺今口に出してないよね?なんなら独り言のようにつぶやいた覚えもないんだが・・。まさかほんの僅かな表情の違いから考えを読み取ったとか?それともテレパシー的な何かが使えるとか?ともかく油断ならない人なのは確かだ。



「色々言いたい事はありますが、侯爵とクラレさんの許可まで取ってあるなら仕方ないですね。カミラさんの事は任せてください。しっかりと俺が守らせていただきます。」


「ホホッ!それはそれはなんとも心強いお言葉をいただきましたな。これで納得致しましたかカミラお嬢様?お嬢様の事はユーラ様がしっかりとお守りするそうですよ?」



 何!?イルディオさんが話した方向に振り返るとそこには顔を真っ赤にして恥ずかしそうな表情で俯いているカミラさんがいた。この爺さんやってくれたな?


「そのように睨まないでくださいユーラ様、爺の戯れで御座いますよ。ホッホッホ!」


「全く・・カミラさん聞いていただろ?俺達と一緒に行きたいんだよね?だったら旅の準備をしておいで?玄関で待ってるから。」


「それには及びませんよユーラ様、すでにお嬢様が旅に出るための荷物は準備して御座います。一緒に玄関まで行かれてくださいませ。」



 何処まで手のひらだったか・・どんなにすごい力を持っていても年の功にはかなわないなと思う一時だった。


実は一度書き上げたのですが、今後の展開を考えるとちょっと話が合わなくなりそうだったので、王都への出発は見送りました。予定には無かったのですが追加でスルト伯爵の話を間にはさみます。最近投稿にかなり時間が掛かっていますが決して手を抜いてる訳ではありません。色々考えてどうしたら面白く書けるだろうか?という試行錯誤をしながらなので時間が掛かっているだけなので飽きずにこれからも読んでいただけると嬉しいです。m(_ _)m

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