第85話 解呪の成功と優良への疑念
なんとかどうにかなりました!
スルトさんはさっさとゴリニテ侯爵を呼びに言ってしまった。俺完全に置いてきぼりだね?何処に行けば良いのかわからずに適当にロビーに向かうと丁度いいタイミングでスルトさんがゴリニテ侯爵とクラレさんを連れて来た。以外と早かったね?もっと時間が掛かるかと思ってお茶でも飲んでいようと思ったのに・・仕方ない後にするか。
「お前何ゆっくりくつろごうとしてるんだ?俺の呪いを先に解除するのが優先だろうが!全くよぉ。」
本当にガラが悪いなこの人は・・やれやれこれ以上愚痴られてはかなわないので、さっさと呪いを解除するとしますかね。
「わかりました、では早速始めましょう。それでどこでやりますか?まさかここでは無いですよね?」
「あぁ・・それなんだが、何処かいい場所は無いか?流石に人の屋敷でやる訳にはいかないしな。お前ならいいところ知ってそうだと思ったんだが、どうだ?」
「何処かいい場所ですか?うぅ~ん、そうですね~。」
何処かいい場所・・あ!そうだ、毎度おなじみの【叫びの洞窟】に行くとしよう。あの場所なら多少何か起きても人目に触れないし特に問題は無いだろう。スルトさんの為ならゴリニテ侯爵も許可してくれそうだし。
「丁度良さそうな場所を思い出しました、今からそこに移動しようかと思いますけど・・今からでも良いですか?」
「は?もう思いついたのか?ったく・・真面目に何処か無いかと考えていたのにあっさり思いつきやがって。」
「ユーラ殿そこは本当に問題ない場所なのか?万が一があっては絶対にならんのだぞ?」
「そうですね・・幾らスルト様が良いと言ったとは言え適当な事は許されません。しっかりと考えた上でお願いしますね?ユーラ殿。」
あれ?俺って結構信用ない?それとも二人がスルトさんを心配するあまり過剰な反応を見せてるのかな?まぁ二人の考えがどうであれ特に問題はない、失敗するつもりでやる訳ではないのでどうか安心して任せて欲しいんだけど、うまく伝えきれるかなぁ?
「いい加減な事をするつもりはありませんよ、ユリーナさんのお父さんですからね。しっかりとやらせていただきます。」
「何か態度がうさんくせぇが、まぁ仕方ねぇか。俺や周囲の奴らじゃ何も出来なかったしな。そうだ、おいユーラ!もしお前がうまく俺を治せたらお前の望む褒美をやるよ。だから気張って治してくれよ?」
「何はともあれまずは移動しましょう、褒美の話も解呪がうまくいったら考えましょう。では移動しますので、俺のそばに来てください。」
「うん?馬車を準備するんじゃないのか?俺はてっきりお前の持ってるあの不思議な馬車に乗れるもんだと思っていたが違うのか?」
「えぇ、いちいち馬車で移動してたら時間が掛かってしょうがないのでさっさと移動します。」
「お前のそばに来るだけで良いのか?」
「それでいいです、それ以外特にする事は無いです。立ってるだけで良いです。」
「そうか、なら後は任せるぜ?」
「わかりました、動き回らずじっとしていてくださいね。」
もったいぶる事をせずにすぐに転移無法で【叫びの洞窟】の3階層へと移動した。ついてすぐに周囲を索敵して何もいない事を確認すると解呪の為の準備をする。とはいってもする事はスルトさんに対して解呪の魔法を使うだけだ。緊張する事もなければ慌てたりする事もない。
しかし、俺自体が解呪なんてものをするのは初めてなので気を使わなければならない事もある。例えば解呪したと同時に呪いそのものが他の誰かに移ったりしないかなど。なので、一緒についてきたゴリニテ侯爵とクラレさんには光魔法の【セイントバリア】を展開しておく。この【セイントバリア】は悪意そのものや邪な存在を弾く結界だ。何故悪魔とか指定しないかと言うとよくラノベとかである悪を悪と思わないでいる奴とかいるのを読んでいて厄介な奴だ!とか思った事があるからだ。もしかしたらこの世界にもそんな奴がいるかもしれないので、俺自身がそいつの行為を悪と断じた時点でそれが立ち入れないようにしようと思って創ったのだ。
「ゆ、ユーラ殿?これは一体何なのだ?儂とクラレに何をしたのだ?」
「落ち着いてください侯爵、それは万が一を考えて結界を張っただけです。もしスルトさんの解呪をして成功したとしてもその後に何かが起きる可能性がゼロではないので、安全策を取っただけですから。」
「ホォ~これが儂らを守ってくれるのか・・ユーラ殿は色々出来るのだな。さすがカミラの旦那だな!ハッハッハ!」
「本当に・・カミラもユーラさんが居てくれれば安心ですね。」
「あ~ハハ、そうですね。」
此処ぞとばかりに自分の娘をアピールしてくるな、そんな事を思っているとスルトさんが俺を睨んでいるのが視界に入ってきた。
「で?俺は何時まで待てば良いんだ?急かすようで悪いんだが、なるべくなら早いとこ解呪ってやつをして欲しいんだが?正直自分が呪われてるとか言われて平然としてられる程俺は泰然としては居られないんだがな。」
「す、すいません!今から始めますね。」
確かに自分が呪われてるなんて言われて平然とはしてられないだろう、スルトさんに一刻も早く落ち着いて貰う為に早速解呪の準備を始めた。しかし、俺のすでに人外とも言えるステータスからして時間は掛からない、すぐにスルトさんに対して解呪の魔法を行使した。
「光魔法【ブレイクスペル】!」
魔法の詠唱と同時にスルトさんの中から黒いモヤが吹き出して霧散していく、解呪事態は成功したとは思うが今の状態をしっかりと鑑定して確認しておく必要がある。するべき事をせずに後から後悔したくはないからね。ではでは、鑑定しますか。
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スルト・セッテ・フォースター
【性別】男性
【年齢】56歳
【種族】人族
【職業】伯爵・フォースター領領主
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【現在のスルト・セッテ・フォースターの状態】
【他者】により掛けられた呪いが新石優良の手によって解呪されている。
徐々に体力・精神が回復しつつある、呪いにより落ちていた思考も戻りつつあるので、呪いを掛けた相手を探し出してて然るべき処置を取ろうと考えている。
呪いを解呪してもらう為に奮闘した新石優良を自身の身内として認めている。
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良かった!どうやら呪いはしっかりと解呪できたようだ、あとスルトさんに身内として認められたようだ。奮闘という程の行動はしてない気がするが、認めてくれたのは嬉しい限りだ。
「おい、ユーラ!何かピカッと光ったけど、どうなったんだ?終わったのか?それともまだなのか?どっちなんだ?いつまでもこうやってジッとしてるのは結構面倒なんだがな。」
「問題ありません、しっかりと解呪できました。」
「それならそうと早く言えっての、いつまでも義理の父親を突っ立たせて悪いとは思わねぇのか?」
「すぐに声を掛けなかったのは、ちゃんと解呪できてるか確認していたからですよ。出来ても居ないのに終わったとは言えないですからね。」
「あぁ・・・それもそうだな悪かった、まだそんなに体力が回復した訳じゃないんでな?立ってるのがしんどいんだよ、そのせいでついイラッとして八つ当たりしちまったんだ。すまなかった。」
「ちょ、ちょっと!スルトさん!やめてくださいよ、俺みたいな若造に頭なんて下げないでください。」
「はぁ?何言ってやがるんだ、お前。悪いと思ったら頭を下げるのは当たり前の事だろ?子供でも知ってる事だぞ?」
それがそうでもないんだなぁ~これが。悪いと思ってても頭を下げない奴なんてザラにいるからな。スルトさんとゴリニテ侯爵が実直なだけだと思いますよ?
「まぁ、何だ。ユーラお前のお陰で助かったぞ。これでようやく色々な問題の解決に乗り出せるってもんだ。さてと?早速ゴリニテの屋敷に戻ろうか。荷物をまとめて自分の領地に戻らなきゃならん。いつまでもアイツに任せっぱなしも悪いしな。」
「わかりました、それなら早速戻りましょう。皆もきっと心配してるでしょうしね。」
「結局儂らはここにいる意味があったのか?ユーラ殿とスルト殿だけでも良かったのではないか?」
「おいゴリニテ!お前俺が何を言ったのか忘れたのか?万が一何かあった時の為の証人だといっただろうが・・。お前はたまに人の話を聞かない時があるな?もうちょいしっかりしろよ?お前は俺より上の侯爵の地位にいるんだ。言い掛かりは少ないかもしれないが、お前の地位を狙ってる奴もいるんだぞ。ったくよぉ、お前といいユーラといいもうちっとしっかりしろ!」
「「すいませんでした・・。」」
「あぁ!うぜぇ!大の男がしょんぼりしてんじゃねぇ!気持ちわりぃんだよ!しっかりやれば特に問題はねぇんだ。足りない所があればちょっとくらいなら俺も手を貸してやるから、いい加減その態度をなおせ!」
なるほど・・こういう何気ない所で気を使ってくるからゴリニテ侯爵がスルトさんになついてるんだな、飼い主はスルトさんだったのか。まぁそれはともかくとしてだ、スルトさんはしんどいらしいので早く屋敷に戻るとするか。
「そろそろ屋敷に戻りましょうか?3人共俺のそばに来てください、ここに来た時の様に戻るのも同じ方法で戻りますので。」
3人に声を掛けて待っていると侯爵とクラレさんはすぐにそばに来たのにスルトさんだけが立ったままジッと俺を見続けていた。あれ?どうしたんだろう?もしかして疲れて動けなくなったのかな?それなら支える為にスルトさんのそばに行って移動しよう。
スルトさんのそばに移動してそのまま屋敷に戻ろうと転移無法を使おうとした時にスルトさんに話し掛けられた。
「ユーラ・・お前は一体何者なんだ?あんなに規格外な屋敷を建てたってだけでもすごいのに、それだけで飽き足らず解呪も出来れば一瞬で知らない場所に移動出来るとかよ・・お前人間か?俺はお前が神や悪魔だといっても不思議じゃないと思ってるぜ?」
「いやいや、神や悪魔だとか・・変な事を言うのはやめてくださいよ!俺は至って普通の人間ですからね?」
「・・そうか、今はその答えで満足しておくさ。だが、いつかは本当の事を教えてくれよ?少なくとも俺はお前の事を息子だと思っているんだからな。」
俺が言った事を軽く否定しつつもお前は俺の息子だと思ってる、とか。この人は俺をどうしたいのだろうか?いや、まぁ、ね?そう言われて悪い気はしないけど、それなら俺が言った神でも悪魔でもないって所を信じても良くない?
屋敷へと戻ってくるとスルトさんは結構限界だったらしく借りている部屋へと戻っていった。ゴリニテ侯爵とクラレさんは何故か二人して何かを考えてる様な素振りを見せつつ何処へと移動していった。その場に残された俺はそのまま此処に居てもする事は無いので、借りている部屋へと戻る事にした。
◇
「クラレ・・お前ユーラ殿の事をどうみる?今までの行動を見ているに普通の人間が出来る事を逸脱し過ぎている、何故彼はあの様な辺境にいたのだ?彼程の力があればかなりの出世もできるはず・・今まで名前すら聞かなかったのはどう考えてもおかしい。」
ゴリニテ侯爵の言葉を聞いた夫人のクラレはしばらく目を閉じ考えにふけっていたが、考えが纏まったのか目を開き話を始めた。
「そうですね、彼・・ユーラ様が何故今まで名前を聞かなかったのか流石にわかりませんが、ただ一つわかっている事があります。」
「何?クラレそれは何なのだ?」
「それはですね?少なくともユーラ様の周囲にいる彼女達が幸せでいるという事です。」
「そんな事わからないだろう?もしかしたら私達知らない圧倒的な力を持ってして彼女達を操っておるかもしれんぞ?」
「あらあら?あなたはまだまだ女性の心をわかっておりませんね?どうして操られている人間があの様に幸せな笑顔が出来るでしょう?それにカミラの普段の行動を気にかけて見てませんでしょう?あの娘今まではお見合いなどがあると敢えて似合わない質素なドレスを着たりしてましたが、ユーラ様の前ではお気に入りのドレスを着ていますのよ?果たして操られた人間がそんな風に相手によく見てもらおうと考えるものでしょうか?私はそんな事は無いと思います。」
クラレの言う事は半分は合ってるが、半分は間違っている。優良は使っていないだけで本人の意思を表にだした状態で操る事が出来ないわけではない。その様な術があるにはある、ただクラレが言うようにそれを使っては居ないというだけなのだ。しかし、偶々なのかクラレは真実を言い当てた、今の優良には操ってまでどうこうしようという人間は一人もいないのだ。と、こうしてる間も二人の話は続いている。
「クラレよ、儂は真面目な話をしておるのだぞ?今は女性の心どうこうの話をしておるのではない。今のうちにどうにかできるのであれば儂はこの国の貴族の一員としてユーラ殿を止めないとならない。きっと彼はその内にレナリア様を連れて王都へと向かうだろう、その時に何かが合っては困るのだ。だからこそ儂はお前に相談しているのだぞ?」
ゴリニテに厳しく言葉を掛けられたクラレはその言葉に怯むのかと思えたが、逆に鋭い目つきでゴリニテを睨み返した。
「あなたこそ何を仰っているの?私は真面目に言ってますわ。考えても御覧なさいませ、もしユーラ様が本当にその様な方法を使えたとするならばさっさと私達にも同じ様に使えば良いのではないですか?あなたが考える様な中途半端な猜疑心でユーラ様が持ってもいない敵対心を持つようになったらどうするおつもりですか?ましてやあなたが懇意になさっているスルト伯爵はユーラ様を信じた上に自身の娘であるユリーナさんを託したではないですか。何処をどう疑えばユーラ様が敵の様に思えるのですか?」
「それは、な?確かにそう言われればそうなのだが・・。」
「スルト伯爵に関してはどちらかというと私達の方が迷惑を掛けましたわよ?ほら、いたでしょう?迷惑ばかり掛ける子供が一人だけ。」
「あぁ・・バレブロの奴か。あれはどうしてあぁもおかしな方向に育ったのか。次男ではあったのが唯一の救いか。長男のアウゼンは真面目な奴なのに、バレブロだけは小さな頃から周囲の者に迷惑を掛けていたな。あんな奴でも我が子だと思い育ててきたが、積もり積もった行いは許されるものでは無かったな・・クラレ、今更ではあるがお前の相談無しにバレブロに手を下してしまってすまなかった。」
「全く何も思わない訳ではありませんが・・正直な話少しあなたがバレブロに手を下したと聞いた時ホッとした所もあるのは確かですわ。あなたには言っておりませんでしたが、あの子は・・バレブロはあなたとアウゼンが居ない時を狙って私やカミラにも手を出そうとした事が何度もありましたから。」
「な、何だと!それは本当なのかクラレ!?」
「悲しい事に本当の事ですわ、バレブロはメイド達や街の女の子達に手を出すだけでは飽き足らず私やカミラの寝込みを何度も襲おうとしてきましたから。まぁなんとか手を出される前に誰かにバレて逃げ出していましたが。」
「それを聞いて安心したぞ・・儂は早まった訳では無さそうだな。母親や妹にも手を出そうとするとはな・・・本当に何故あの様な子が儂らの間に生まれたのか不思議でしょうがないぞ?」
「こう言っては可哀想ですが、私もそう思いますわ。別段無理やり何かをさせた事も無ければかといって極端に甘やかした覚えもありませんし、それにアウゼンとカミラはしっかりと育っています。本当に何がいけなくてあの子がああなったのか皆目検討も尽きませんね。」
「本当にな・・と、そう言えば儂らはユーラ殿の話をしていたはずではなかったか?」
「そう言えばそうでしたね。しかし、もう良いのではありませんか?今の時点で何かある訳でもないですし、物事に対して事前の対策を立てるのが悪いと言いませんが、今回のユーラ様に限っては必要ないかと思いますわ。」
「うむ・・そうだな、確かに何か悪事を働いた訳でもないしその様な噂を聞いた訳でもないからな。」
「本当にそうですよ?あなたが国の為に常々頑張っていらしてるのはわかっておりますが、今回に限っては完全に杞憂ですわ。」
「いや、すまんな。余計な心配を掛けた、ユーラ殿があまりにも規格外過ぎて余計な考えをしてしまった。世話になった人物にする考えではなかったな。」
「気をつけてくださいね?あんな優しい方はおりませんのよ?カミラにとっても優良物件ですからね。あの子には幸せになって欲しいですから。」
「そうだな、せめてバレブロの分まで残ったアウゼンとカミラには幸せに生きてほしいものだ。」
「えぇ、本当に・・でも、もうひとりくらい欲しいとは思いませんか?ア・ナ・タ。」
「ふむ?一考の余地があるな?ではこの新しい寝室で早速励んでみるとするか!」
「きゃん!あなたったら、私はどこにも逃げませんわ。だからじっくりと時間を掛けて私に子供を授けてくださいね?」
「ウォォォ!カミラーー!愛しておるぞーー!」
優良に対する疑いの気持ちが晴れた二人は結局いつもどおりになってしまうのだった。
まさかのバレブロの事で手を焼くとは思わなかった(´・ω・`)まぁ今後は出てこないでしょう。出ても名前くらいです。




