第81話 新築屋敷の下準備
遅くなりまして申し訳ありませんでしたーー!
苦労の末ようやく屋敷を完成させた俺は報告の為に侯爵家の自室に戻る事にした。いくら屋敷が完成したとはいえ作業が終えた訳ではない。今度は元々の屋敷を撤去して新たな屋敷を設置しなければいけないのからな。
屋敷に戻った俺は早速報告をしようとゴリニテ侯爵を呼んでもらう事にした、自身で探すよりもイルディオさんを呼んだ方が効率がいいからだ。
「イルディオさ~ん、侯爵と話w・・・。」
俺が言い切る前に目の前に現れるイルディオさん・・・おかしいな?今回俺はイルディオさんがいつも突然現れるので、【すべての地図】を使いどうやって来るのかを監視していたにも関わらず唐突に目の前に現れたのだ。こういうシチュエーションってさ?よく見かけるけど今までの俺としては「ちゃんと監視しないで油断してたんじゃないのぉ?」というのが俺のスタンスだったのだが・・どうやら俺は間違っていたようだ。何処にでも居るんだね?規格外ってやつは。
「どうかなされましたか?私に御用があったのではと思いましたが・・違いましたでしょうか?」
「あぁ!いえいえ、用はちゃんとありますよ。実は屋敷の改築の件で侯爵に話がしたいと思いまして、それでイルディオさんに侯爵に確認を取っていただきたいんですけど・・お願い出来ますか?」
少し考えるような素振りを見せた後今の時間であれば問題ないとの事なのでイルディオさんの案内で侯爵のいる執務室へと足を運ぶ事にした。
―コンコン!
「旦那様、イルディオに御座います。ユーラ様が旦那様にお話がおありとの事なのでお連れ致しましたが、如何なさいますか?」
イルディオさんの呼びかけに対して入っていいとの返事がきたので、そのまま部屋へと入っていく。部屋に入ると珍しい光景を目にした、見た目ゴリラの侯爵がそれなりの椅子に座って執務をしていた。へぇ~暴れるのとカミラさんとハッスルしまくってっるだけのゴr・・脳筋じゃなかったんだな。
そしてなぜか口に出してないはずの俺の考えにそばにいたイルディオさんが返答してきた。
「(ユーラ様、旦那様は執務は勿論の事ですが自身の領地を見て回り如何に発展できるのかを常に考えておられる方で御座います。決してユーラ様がお思いの事だけをなさる方では御座いません。)」
「(え~っと?何の事でしょうか?俺はただ初めて見たので気になって見ていただけですよ?)」
「(そうで御座いましたか、これは失礼を致しました。)」
わかってて敢えて俺に言ってきたな?それにしてもよく俺が考えてる事を言い当てたな?もしかして顔に出てたか?
そんな事をつらつらと考えていると執務を終えた侯爵がソファーまで移動して俺にも座る様に促してきた。それと同時?もう既に?というべきか。イルディオさんはいつの間にか出来たての紅茶?を置いて侯爵に礼をして部屋から出ていってしまった。あの人は何というか人の間隙を突くのがうまいというか・・まぁいいや、今は屋敷の話だ。
「してユーラ殿?ワシに何か話があるとか言っておったが、屋敷の改築の件か?もう材料が揃ったという事だろうかな?もしそうなら中々に仕事が早いな!少しでも早く屋敷の改築をお願いしたいところだが、いつから始めるのだ?」
おや?やはり持ってたイメージと違ってかなり察しが良いな?だが、しかし!幾らなんでも屋敷が完成してるとまでは思うまいて!フッフッフ・・・そこら辺では俺の勝ち(?)だな!
「今屋敷に滞在してる方にも了解を得てな?しばらくは宿に泊っても構わないとの事だ。近々屋敷の改築にも取り掛かる為の準備も整うであろう。その後は頼むぞユーラ殿!」
う~んと、どうしようかな?屋敷を置き換えるのに確かに一度出てもらわないといけないのは確かだが、一日掛かる様な作業ではない。それなのにわざわざ宿を借りてしまっては宿代が勿体ないだろうし、それならいっその事もう既に完成してるから少しの間だけ屋敷から出てもらうように言ってみようか。
「あ~それなんですけどね?わざわざ宿をお借りしなくても問題ないですよ?それとももう借りてしまわれたんですか?」
「む?宿を借りなくてもいいとな?だが、それでもいかんのだよユーラ殿。ワシの大事な客人なのでな・・・屋敷の改築が終えるのにも時間は掛かるであろう?それなら宿を借りて落ち着いた状態で過ごして欲しいのだよ。」
「あぁ、そうではなくてですね?単純に一日も掛からずに終わるので少しの間だけ屋敷から出ていただければ問題なく作業を終わらせる事ができるんです。なので、半日程どうにか時間を作れないですかね?」
言い終えた俺を訝しげに見つめてくる侯爵、さも「そんな事できる訳無いのに何を言ってるんだ?」みたいは表情をしている。というか似たような事を今小声で言ってるのを聞いたので間違いないだろう。
「ユーラ殿・・貴殿はワシをからかっておるのか?それとも初めから改築をする気など無かったのか?」
何やら不穏な空気を纏い始めた侯爵、もしかして説明が足りなかった?このままじゃあせっかく作った屋敷がパァになる。もう一度説明をしておこう。
「違います違います!ちゃんと屋敷を直しますよ。ただ侯爵が考えてるやり方は世間一般的な物なのに対して俺のやり方が普通とは違うというだけなんです。それを、今見せたい所なんですが、屋敷の中に人がいては出来ないので、侯爵様の客人だけでなくメイドの方達も含めて全ての人に一度出てもらわなければいけないんです。」
「むぅ・・普通とは違うとな?それは真か?嘘や誤魔化しでな無いのだな?」
「勿論です、それだけは自信を持って言えます。いきなりで勝手だと思うかもしれませんが、お願い出来ませんか?」
しばし目を閉じて考え込む侯爵、さすがにこの条件を飲んでもらわないと新しい屋敷を置く事は出来ない、中に人が居る状態でマイバッグに取り込んでしまったらどうなるかわかったもんじゃないしな。あとできれば早く決断してほしい所だ。あまり遅くなると今日中に設置できなくなる。幾ら置くだけとはその前に地面を綺麗に均してからじゃないと屋敷が傾いてしまうからな。そこからしっかりやらないといけない、今はまだ日が高いから良いが暗くなってしまうと作業にも支障をきたしてしまうかもしれないしね。
考えが纏まったのだろうか?侯爵はイルディオさんを呼び出して何かを伝えてるようだ。イルディオさんは一度俺に向き直り会釈をした後に部屋を再度出ていった。あれ!?そういえばいつ部屋に入ってきたんだ?またイルディオさんの謎が増えてしまった。
「ユーラ殿しばらく待っていてくれないか?今イルディオに命じてワシの客人に確認をしておる。客人次第になるが、あちらに問題がなければユーラ殿にお願いしたいのだが・・どうだ?」
「それで問題ないですよ、ただ少しでも良いので早めにお願い出来ませんか?時間が早い内のほうが作業をしやすいので。」
「わかった、その様に計らおう。イルディオが来るまでしばらく待っていてくれ。」
「そうですね、わかりました。」
イルディオさんを待つ為に執務室のソファーに座っているのだが・・会話が無い。俺から話せばいいのかもしれないが特に共通点も無いし、よくよく考えればそこまで親しい訳でもなかった。こんな事なら(変態の)クラレさんでも居てくれた方が気が紛れたかもしれん。そんな風に場を誤魔化しているとふと侯爵が話しかけてきた。
「そういえばなのだが・・ユーラ殿。」
「はい?何でしょうか?」
そう言いながら何気なく侯爵の言葉に相槌を打った俺だが、次に発した侯爵の言葉に度肝を抜かれた。
「カミラとの間に何時頃子を設けるのだろうか?出来れば子を孕む前に式を挙げてやりたいのだが、どうなのだ?」
「ブフッ!―い、いきなり何を言ってるんですか?」
「いや何な、ここ数日のカミラはやたらと腹を抑えて愛おしそうな顔するのでな?その時の顔が妻のクラレが子を孕んだ時とそっくりだったのだ。それを見てもしや誰か相手でも居るのかと思って聞いてみればユーラ殿に一発キメて貰ったというではないか。それならあの表情も理解できるのでな?でだ、ワシもあれの親としては腹が大きくなる前にドレスを着た姿を一目見ておきたいのだ。だからな?ワシの親としての頼みだ、カミラを娶るのは一向に構わないがせめてドレスを着た姿をワシら夫婦に見せては貰えないか?」
オィィーーー!何簡単に夜の営みをバラしてくれちゃってんの!せめてそういう事は人がいない所でやってくれよカミラさーーん!俺はこの事態をどう収拾すればいいだろうか?しかし、軽くパニックになっている俺を差し置いて尚も侯爵は喋り続ける。
「もしや金の事が心配か?それなら気にしないでいいぞ?ワシがすべて準備するからな!ユーラ殿はいつ頃カミラと婚姻するのかだけ教えてくれればいいぞ。」
ヤバい・・屋敷の話からいつの間にかカミラさんといつ結婚するのか?に話がシフトしてしまっている。別にカミラさんと結婚するのは良いのだが、さすがに順番というものがあるだろうし、何よりも自分の家を持つまでは考えていなかった事なのだ。いきなり目の前に現実を見せられるとどうしていいのかわからなくなってしまった。
此処は早めにイルディオさんに戻ってきて欲しい所だ、早く、早く戻ってきてイルディオさーーん!
コンコン!―
「む?誰だ?」
「イルディオで御座います」と返事があると同時に「失礼いたします」と部屋に入ってくるイルディオさん。偶然というにはタイミングが良すぎるが俺の願いが叶って何よりだ、そう思いながら何気なくイルディオさんを見ると・・ニコッと微笑まれた。まさか・・な?
「旦那様、客人の方が時間を取るのは問題ないとの事です。ただ一つ条件があるそうで。」
「ふむ?あの方はなんと言っておった。」
「はい、自分もその場に立ち会わせて欲しいとの事です。」
「なんと、それはいらぬ負担を掛ける事にならないか?どうだイルディオよ。」
「今の状態であれば問題無いかと、何かあるようであれば私達の方で補佐いたしますので一緒に立ち会われては如何でしょうか?今の状態では何かとストレスも溜まるかと。」
「そうか・・では、注意を払いつつ一緒しよう。イルディオ、ワシも気をつけるがお前も細心の注意を払っておいてくれ。あの方は自身を誤魔化すのが得意であるからな、ワシでは気づけ無い事もあるやもしれん頼んだぞ。」
「お任せを旦那様。」
「うむ、ではユーラ殿早速屋敷から人払いをしようかと思うが、本当にすぐに終わるのか?」
「えぇ、早ければ半日も掛からないと思いますので。」
「わかった、聞いていたなイルディオ。すぐにでも屋敷から人払いをするのだ。」
「はい、ではこれで失礼いたします。・・ユーラ殿楽しみにしておりますよ?」
「えぇ、任せてくださいイルディオさん。」
足音も立てずに部屋を出ていくイルディオさん・・さっきの言葉に俺は裏を感じたのは気の所為だろうか?俺にはこう聞こえた気がするのだ「私が此処までするのです、真面目にやらないと・・わかっていますね?」と。
ちゃんと真面目にやりはするから問題は無いはずなのに、背筋がブルッとした俺ってチートでかなり強いはずなのに、どうしてこんなにヤバいと思う場面に何度も出くわすんだろう?謎だ。
「ではユーラ殿ワシ等は外に出て待っていようではないか。皆よりも先に準備をする必要もあるのでは無いか?」
「そうですね、では一足先に外に出ていましょう。おっと!その前に俺はレナリアさん達を呼んで着ますので、侯爵様は先に行ってて貰えませんか?」
「ふむ?ではワシもクラレを呼んでくるとしよう。カミラは・・あれだろう、レナリア様と一緒に居るのでは無いか?」
「もしかしたら居るかも知れませんが、一応確認はしたほうがいいと思いますよ?」
「クラレと一緒に居るとは思えんが・・まぁ確認はしておくとしよう。ではまた先に行っておるぞ?ユーラ殿。」
「はい、また後で。楽しみにしてらしてください。」
「そこまで言うか、では期待してるとしようか!ハッハッハ!」
相変わらず声がデカイな、笑い声でドアが振動していたぞ。発声量が凄いな。野性味溢れる笑い声だった。さぁてと!俺もリィサ達を呼びに行くとしようかね。
リィサ達が借りている部屋まで来ると何やら話し声が廊下にまで聞こえてきた、彼女達の声が大きいのかそれとも壁が薄くて話し声が漏れてくるだけなのか。まぁいいか、それも今この時までの事。今夜からはどの部屋からも声は愚か物音一つ漏れなくなる事だろう。
ドアをノックするとすぐに返事がありドアが開いた、どうやら皆ここで話をしていたようだ。丁度いい何箇所も回る手間が省けた。
「リィサ話して最中で悪いんだけど、屋敷の外に出てくれないか?今から屋敷を置き換えたいんだよ。」
「ユーラもしかしてもう完成したの?私が思っているよりもかなり早く完成したのね?」
「あぁ、俺自身も自分が思っている以上に仕事が進んだんだ。それで早く終わったからね、どうせなら侯爵も早い方が良いかと思ってすぐに帰ってきたんだよ。」
「あら?そうだったのね。それなら私達もすぐに外に出た方が良いの?」
「そうだね、だから皆一緒に居てくれたのは丁度良かったよ。皆で一緒に外に出ようか。そういえば・・カミラさんも一緒に居るの?」
「もしかしなくても居るわよ?ユーラとシタでしょ?どうだったのか感想を聞いていたのよ。」
それは何というか・・恥ずかしいな、何をしたとか何を言ったのかと聞いたのだろうか?結構その場の雰囲気で色々な事を言ったような気がする。あまり変な事とか言ってなければいいけど。
「ま、まぁ、何はともあれ外に出ようか?侯爵も待ってるだろうし、そろそろ行こうか。」
「そうね、皆!聞いていたでしょ?外に出ましょう。続きはまた後で・・楽しみに取っておきましょう。」
あぁ、話続けるんだね?まぁ皆が仲良くしてくれるのは良い事だから良いか。でも、恥ずかしい事は恥ずかしいからなるべくお手柔らかにしてほしいけど、そんな事を思いながら皆で一緒に侯爵の待つ外へと移動していくのだった。
最近時間を取るのが難しくて執筆時間がなかなか取れずにいるので、更新に時間が掛かりますがしっかりと続けて行きたいと思ってますので、これからもよろしくお願いします。




