第76話 侯爵家を測量しよう!
今回も無事に書き上げる事ができました。
【クラフトルーム】を使う事を思いついた俺は少し計画を練り直す為に、侯爵に一度作業内容を考え直す旨を伝えて充てがわれている自室に戻ってきた。
だからと言って実際に考え直す為に戻ってきた訳ではない。俺が試したいのは【クラフトルーム】の中で侯爵家の家とほぼ同等サイズの建物を作ったのちに、取り出して設置する方法が取れないだろうか?と考えての事だ。
もしそれが可能なら無理に今ある屋敷を改築しなくても新築の屋敷と入れ替えてしまえば良いんじゃね?と考えたからだ。だが、いきなり同じサイズの屋敷を建てよう!と言ったからといって簡単に出来るものでもない。
俺が考え直すと言ったのは何も屋敷の建築方法の為だけでなく、それに関する下準備の為にだ。その一つが新規の魔法だ。
魔法と言っても攻撃魔法などではない、今から創るのはコピーとでも言えば良いのか…自分的にはスキャナーをイメージしている。
まずその新規の魔法を創る所からだな。今創ろうと思っているのは…
【スキャナー】
世界に実在しているものを情報として取り込む魔法
【スクロールメモリー】
スキャナーで取り込んだ情報を記録する魔法
【トランスファー】
スキャンした情報を自身が転写したい場所に写し出す魔法
何を創るかをハッキリさせた所でサクッと魔法を創る、いやはや本当に便利な能力で助かるな。
その次にしたいのは屋敷全体…というよりは敷地内の全てをスキャンする事だ。敷地内の全体図を縮小図にして見ながら屋敷自体をどの様に配置するかを考えなければいけない。今の侯爵家は気の所為でなければ偏った配置になっている様に見受けられる、何か考えがあってそうしてあるならそのまま同じ場所に配置しても良いのだが、特に意味が無いというのなら配置そのものを移動したいと考えている。
それに付随する様に馬車置き場、警備兵の小屋などが配置されているので、それらをうまく使えるようにもしたいので、どうしても必要不可欠だと思っている。敷地内の縮小図を見ながらであれば全体のバランスを崩さずに配置を考えられるだろう。
そして屋敷そのものの…これに関しては設計図になるだろうか?それを【クラフトルーム】内で立体図いわゆる3Dで表記して作っていこうと考えている。なので、先んじて始める作業は【スキャナー】で敷地内と屋敷をスキャンして【スクロールメモリー】に取り込み、【トランスファー】で写し出す、ここまでを一つの段階として考えて行動を開始しよう。後はまぁそれからだな。
行動を起こす為に自室から出て、そのまま空中撮影よろしく空へと飛び上がった。もちろんの事だが空を飛んでいる俺を見て街の人々が騒ぎにならないように、【光魔法】ステルスコートを使用している。自分から面倒を起こさないように日々努力しているのだ!(当たり前の事なのだけど)
ある程度の高さまで上がって【スキャナー】を使用して敷地内の全体図を【スクロールメモリー】に取り込んでいく。こうやって上空から見るとかなり大きいな5ヘクタールくらいはあるかもしれない。かなりの面積だが…ほぼ使われていない様に見受けられる。しかもこの状況って簡単に攻め入られるんじゃないのか?かなり危険な感じがする。
マシイナ伯爵が治めていたトライフルの街もそうだったが、街全体を囲う防壁が無い様なものだ。正確にはあるにはあるが、防壁というよりは丸太の柵といった方がいいかもしれない。丸太の一本一本の間がゆうに50㎝は空いてる…あれじゃあ中型や大型クラスの魔物は入れずとも小型クラスそれこそゴブリンなどは簡単に出入りできるだろう。果たしてこれを防壁と呼んでも良いものか…。
ここで全く関係無いのだがゴブリンについて解説したい。この世界のゴブリンはよくラノベで見るような人族の女性を攫って孕ませる様な事はせずに人が育てた野菜などを盗んでいく様な連中で、村人、下手をするとちょっと強い子供でも殺せるそうだ。
繁殖については同族のメスと交尾をする事で繁殖をしてるそうだ。説明終わり!
「う~んあの柵も問題だなぁ、ゴブリンならまだ良いけどコボルトは危険だと思うんだよなぁ。アイツラ一応武器持ってるし、大人なら平気かもしれないが子供は危ないだろうし…屋敷の改築…新築が終わったら聞いてみるか。さて!自室に戻って作業でもしますかね!」
あ!忘れてた!屋敷のスキャンまだしてないや。しておかないとそれが一番の本命だというのに…ボケてきたのかな?気が抜けてきた?どちらにしろもっとしっかりしないとな!
よく連枝さんにも注意されたよなぁ…皆今頃元気にしてるかな?特に葉津梛ちゃんと和津梛ちゃんには悲しい思いをさせたはずだし…会えるものなら会ってあの時の事を謝りたいな。俺の不注意だったし……おっとと!また暗くなる所だった、そういうのはもう無しだ!無闇に暗くなるのは誰も得をしない。もっと前向きに行こう!大丈夫!きっといつか会えるさ!
まず今は目の前の事に集中しよう。これはある意味で修行でもある、いずれはおじいちゃん達の家?を建て直す機会がくる。その時までに腕を磨いて置く必要があるしな。
時間を掛ける事なく屋敷のスキャンを終えた俺は自室に戻り早速作業に移ろうとした所、リィサ達に呼ばれて昼食を取る事にした。いつの間にかお昼になっていた様だ、全然気づかなかった…。
「ユーラ作業の調子はどうかしら?順調にいってるの?」
食事を終えて一息ついている所にそう話しかけてきたのはリィサだ。何かこちらの様子を伺う様な感じに話しかけてきてる感じがする…何だろう?
「今の所まずまずって所かな?まだ始まったばかりだし、侯爵様と話す事もあるからね。この後侯爵様の時間があるようなら話をしたいと思ってたけど、何か用でもあった?」
「そう…ね、今は忙しいのよね?それならまた今度にしようかしら。ごめんね?」
思わせぶりだな…こういう感じで言われるとかなり気になる。逆に作業が手つかずになりそうだ。
まずは話を聞いてから作業に移ろう。
「リィサ先に話を聞くよ、作業に関してはそれからでも十分間に合うからさ。」
「でも…大丈夫なの?侯爵様にも話があるって言ってたじゃない。」
「予定を取っている訳じゃないよ、出来たら良いかな?程度だったしね。今回はリィサを優先させてもらうよ。だから、話を聞かせてもらえる?」
「そう?それなら…あのね?ユーラ、その…少しだけで良いの…カミラさんと話をしてくれないかしら?彼女お風呂場の一件以来かなり自信を無くしてしまったみたいでね…私達が大丈夫って言っても同情してるからだと思ってるみたいなのよ。だからね?ユーラから一言大丈夫だって言って貰えないかしら?」
自信を無くした?そんなにお風呂場でのぼせてしまった事がショックだったのか?それともすぐに来ると思っていた俺が来なかったから?何が原因かは知らないけど、声を掛けるくらいなら問題は無さそうだな。俺が声を掛けたぐらいで自信を取り戻せるのなら、多少時間を取るのも良いかな?
「わかった、カミラさんは今何処に?こういう事はあまり時間を置かない方が良いよね?何なら今からでも良いけど?」
「あぁ…ごめんなさいユーラ、今は疲れたのか寝ているのよ。どうやら夜もろくに寝ていなかったみたいなの。だから、さっき無理やり私達が寝かせたのよ。……そうね、夕食を終えた後とかならどうかしら?それならユーラも夕食の時間まで作業に時間を取れると思うのだけど。」
「そうだね、それなら助かるよ。なら、夕食の後にもう一度声を掛けて貰っていいかな?忘れない様にするつもりだけど、ついうっかり…なんて事もあるかもしれないからさ。お願いしていいかな?」
「それで良いわ、じゃあまた後で。お仕事頑張ってねユーラ。」
「ありがとう、じゃあまた後で。」
それにしても…自信を無くした、かぁ。何に対しての自信なんだろう?う~ん…駄目だな、俺では女心を深読みする事はできないな。俺って結構鈍いタイプの人間だからなぁ。それに、そこまで相手の思いを図れるのなら前の一件を引き起こす事もなかっただろうしな。今なお俺は精神的な面でも修行中なのだよ。
カミラさんの事は気になるが、他に意識を取られて怪我をしてしまっては意味がない。なので今は屋敷の作業に集中しよう。まずは、侯爵に屋敷の改築という事で報告をしておこう。俺の意向としては新築のつもりだが、新築します!って言っておいて後から新築で出来ない可能性も考えて新築にするという件は伏せておき、可能な限り【クラフトルーム】にこもり作業をしていこう。【クラフトルーム】内の経過時間を調整して現実時間の10倍に設定しておけば大丈夫だと思っている。
魔法を併用して作業をするつもりなので行けるのではないかと思っている。前までは魔法無しで自分の技術を磨こう!と息巻いていたが、正直な話…無理です!
1人で全ての作業を手作業のみやろうとした場合何年掛かるかわかった物ではない。ここは異世界だ異世界なりにしても良いではないか!
ま、まぁ、あれだよ!依頼者に迷惑を掛けるのも悪いかなぁってね?………ごめんなさい!無理です!なんだかんだと言ったが俺はまだまだ未熟なんです!大目に見て下さい!
何はともあれだ、まずは侯爵への説明をしないと…そうだなぁ…10日の間に材料を確保すると説明しておいて…それで何もしないで部屋にこもっていると流石にバレるから…う~ん一応街の外には出ないといけないよなぁ…時間まで作業が出来そうな何処かいい場所は…そうだ!ダンジョンの3階層があるじゃないか!そこに転移して作業をしよう!あそこなら俺の許可無しには誰も入れないしな!丁度いいんじゃないか?よし!この一連の流れをリィサには説明しておこう。他の皆にはリィサに伝えるように頼んでおこう。計画はこんな所か?まずはリィサに伝えてその後に侯爵に伝えにいこう。
リィサの元に向かいさっき立てた計画の一連の流れを説明した所、後は自分に任せて欲しいと言われた。やはりリィサは頼りになるな、最近は特に俺を立ててくれる事が増えてきた…ちょっとだけ夫婦みたいだな、と思ったのは内緒だ。
「ユーラその件は私がしっかりと皆に伝えておくけど、カミラさんの事忘れてないわよね?ちゃんと声を掛けてね?こればかりはユーラじゃないと駄目だから…お願いね?」
「大丈夫!忘れてないよ。それに今日はある程度触りだけ試してくるだけだから時間を掛けずに戻ってくるから。」
「忘れてないのならいいの、じゃあ後は任せておいて。気をつけて行ってきてね?いってらっしゃいユーラ。」
「ありがとうリィサ、それじゃあ早速行ってくるよ。」
さて!お次は侯爵だな、何処に居るか…イルディオさん呼んだ方が早そうだな。あの人ならセルディオさん同様呼んだら現れるだろ。
「イルディオさ~ん、何処ですか~?居るなら来てくれませんか~。」
「その様な大きな声を上げずとも聞こえてますよ?ユーラ様。」
「うぉ!い、いつの間に後ろに来たんですか!さっきまで何処にも居ませんでしたよね!?」
「その様な些事は気にせずともよろしいではありませんか。それで私に何か御用でしょうか?」
「些事って…まぁ良いです…。侯爵様が何処にいるのか教えて貰えませんか?」
「旦那さまは、今このお屋敷にお泊りになられている方と大切なお話の最中ですので…困りましたね。ユーラ様はお急ぎでしょうか?」
「急ぎ、というよりは伝えておいた方が誤解を与えないかと思いまして…そうですね…イルディオさんの方から伝えておいて貰えませんか?それでも十分だと思いますので。」
イルディオさんにもリィサに伝えたのとはちょっと違う内容で伝えた。イルディオさんには10日の間は材料を探して回る事を伝えており、屋敷の改築に関してはそれが終えたら始めると伝えておいた。それを聞いたイルディオさんは「分かりました、旦那様には伝えておきます。」と言葉を残して離れていった。これで、次の作業に移れるな。これからが頑張り所だな。
しばらく調べ物をしながらの執筆になりますので、投稿に時間は掛かりますが気長に待っていただけると幸いです。




