第58話 ファンタジー鉱石発見!
3階層に斥候に行っていたウィリルとモニカが戻ってきたのだが、何やら顔を青ざめさせているので理由を聞く事にした。
「2人共顔色が悪いけど3階層で何があったの?」
「えっと、あのね?その…聞こえたの…。」
「…?聞こえたって、何が?」
「こ、声だよ、何かね?変な声が聞こえてきたの…。うぅぅ、すっごい気味の悪い声だったよぉ~。鳥肌が凄い立ってるよ。ホラ、見てよ。」
モニカの腕を見てみると確かに鳥肌が立っていた。よっぽど不気味な声だったのだろうか?目的の1つである原因解明のきっかけがようやく出てきたか…なら確認しに行かないと駄目だよな?その為にはもう少しモニカとウィリルから話を聞かないとだよね。
「その声ってどんな感じだったの?それと3階層の何処らへんなのかを教えてもらえる?」
「えっ?…もしかして…行くの?下の階に?」
「嘘でしょ?アンタ私と師匠の話聞いて無かったの?聞こえたのよ?気味の悪い声を!それなのに下に下りるって言うの?冗談でしょ?」
「いや…もちろん確認しに行くけど…それがどうかしたの?」
「呆れた…良い?すっごい気味の悪い声だったのよ?お化けがいたらどうするのよ?取り憑かれるかもしれないのよ?行ったら駄目よ!」
「そうだよ、ユーラくん!行ったら駄目だよ?きっとあの声はこのダンジョンで亡くなった冒険者がお化けになってさまよっているんだよ!だから駄目…行ったら絶対取り憑かれるよ~。」
モニカとウィリルがお化けが出ると言った瞬間、後ろ側から「ヒィッ!」と複数の声が聞こえたので振り返ってみると戦乙女のメンバーが怯えていた。それとは別にリィサとレナリアさんそれとユリーナさんはまるで気にした様子がないようだ。
あ~これは…もしかしてモニカを含む戦乙女のメンバーは無理そうだな~。ここで待機してもらってリィサ達を連れて行こうかな?
「俺達…リィサとレナリアさんとユリーナさんは3階層に下りてモニカ達が聞いたって言う不気味な声の正体を確認してくるから、モニカ達はここで待ってて良いよ?なんか皆怖いみたいだし…。」
俺がモニカ達にそう言った瞬間モニカ達がショックを受けた様な顔をした。あれ?俺もしかして何かマズイ事言った?
「酷いよ、ユーラくん!あんな不気味な声を聞いた後にこんな所に置いていこうなんて!」
「いやでも怖いんだよね?それならモニカ達はここで待ってた方が良くないか?」
「同じ怖い思いするならユーラくんについていく方を選ぶよ!だからちゃんと一緒に連れて行ってよ?絶対に置いて行かないでよ?」
「わ、わかったよ、だからそんなに必死に言わなくても大丈夫だから!」
「絶対だよ!絶対だからね!置いていったら恨むからね!」
「連れて行く、ちゃんと連れて行くから!ほら!置いて行かないように一緒に歩くから、それなら大丈夫だろ?」
幾らなんでも怖がり過ぎでは無いか?しかもモニカだけならわかるのだが、シェイラ達が全員だ。普段強気なウィリルやニーナなんかも怖がっているし、過去に何か怖い思いでもしたのだろうか?リィサ達は平然としてるので、そのまま警戒しつつ歩いてもらおう。さて、問題の3階層に降りていこう。
3階層への階段を下りていくと妙に静かだった。2階層も静かな方ではあったが、それでもちょっとした物音が聞こえたり魔物が歩いたりしてる音が聞こえたりしたのだが…ここは少し様子が可怪しいな?不自然な静かさだ。2階層よりは警戒を強めつつ進むとしよう。
「うぅぅ…ユーラくん本当に置いていかないでよ?私一人にされたら絶対に先に進めなくなりそうだから…絶対だよ?」
「いや、だから何回言うのさ?置いていかないから少し離れて歩いてくれないか?そうやってくっついて歩かれると魔物が来た時の対応が出来なくなるから。」
「えぇ…大丈夫?本当に置いて行かない?」
「置いていかないし、仮に俺とはぐれてもシェイラ達もいるしリィサ達も居るだろ?モニカ達がこうだと魔物に対処できる人がいないから俺が対応しないと。だから、少しだけ、な?」
「うぅ…わかったよぉ~。」
「はぁ…やれやれ、それじゃあリィサ達悪いけどモニカ達の側にいてくれないか?俺は魔物が来たらその対応をするから、あと出来たらでいいんだけど後ろにも気を配ってもらっていいかな?なるべく俺が気を配っておくけど、前と後ろの両方から同時に来られたら対処するのが難しそうだからお願いしていいかな?」
俺のお願いに自信アリげに頷いてくれた、よし!これでなんとかなりそうだ。今のモニカ達を鑑定すると【状態】が恐慌・軽度となっているので、戦闘を任せるのは不安だしな。さて、モニカ達の言っていた不気味な声にも気を付けながら進むとしよう。
モニカ達それとリィサ達と離れすぎないようにしながらゆっくりと進んでいく。しばらく歩いていくとT字路に差し掛かった。ダンジョンに入って初めて道が別れたな。例の不気味な声も聞こえてこないし、何処に行けばそれが聞こえてくるんだろうか?
もう一度モニカとウィリルに聞いておこう。
「なぁモニカ、ウィリル。2人が聞いた声って階段下りてきてすぐの場所だったの?それとも、ここらへんまでは来てみたの?」
「えっと…私はここまでは流石に来てないかな?ウィリルちゃんはどうだったかな?」
「私はここまで来ましたけど…道が2手に分かれてしまったので、これ以上1人で進むのもどうかと思いここからは戻る事にしましたけど。」
「二人共バラバラに行動してたの?危ないなぁ…何かあったらどうするのさ?駄目だよ?一緒に行動しなくちゃ。」
「いや、あのね…子供のお使いじゃないんだから。このくらいのダンジョンなら斥候に出るのに1人いれば十分なの?わかる?私達はここよりもっとヤバい場所での行動もしてきたのよ?こんな所を1人で斥候に出ても魔物に遅れを取る事も無いし、罠だって引っ掛かったりはしないわよ。」
「私はウィリルちゃんみたいに罠を見つけたりは得意じゃないけど、それでも簡単に罠に引っ掛かるほど間抜けでもないし、魔物にやられる事も無いかな?」
「そうなのか?俺も冒険者に詳しい訳じゃないから、あまり深くは言わないけど気をつけてくれよ?二人に何かあったらと思うと気が気じゃないのは確かだからさ?」
「心配してくれるの?ユーラくん。」
「そんなの当たり前だろう?その…モニカ達も俺の恋人なんだからさ…。………あぁ、もう!とにかくあまり無茶な事はしないでくれよ?」
「ムフフ!はぁ~い、わっかりました~気をつけま~す!」
「そ、そうね!そんなに心配だって言うなら…少しは気をつけておくわ。」
クッ!何か恥ずかしい事を言ってしまった気分だ!二人共俺に心配されたのが嬉しかったのか、俺の両腕に1人ずつ抱きついてきた。俺に追い打ちをかける気か!けど、両腕に当たる柔らかさが素晴らしいので振りほどく気になれない!と軽くイチャついた時だった。
―ウオォォォォォーン
「「キャアーー!」」
『!!』
「今のは!」
急に響き渡った叫び声に素早く戦闘体勢に入る。おかしいぞ…俺はこのダンジョンに入る前に久々に創り出したスキル【気配感知】【生命反応感知】【魔力反応感知】を3つ同時に使用しどの魔物あるいは生命体も取り逃がさないようにしていたはずなのに、その3つのスキルのいずれにも反応しなかった。まさかとは思うがこのどれにも反応しない魔物もしくは生物が居るというのか?
ここで疑問に思うはずなのでこの3つのスキルの効果を説明しておこう。
【気配感知】
生物が行う息遣いや足音または物音からおおよその位置を特定する事が出来る。だが、どの様な物音も感知してしまう為必ずしも生物を感知するとは限らない。
【生命反応感知】
あらゆる生物が持つ生命力を感知してどこに居るのかをかなり高い精度で特定する事が出来る。ゾンビやスケルトン、ゴーストなどの死霊系は感知出来ない。
【魔力反応感知】
ある程度の生物が持つ魔力に感知してどこに居るのかをかなり高い精度で特定する事ができる。魔力を持たない者を感知する事は出来ない。
3つともメリット・デメリットがあるが、同時に使えば漏らしがあるとは思えなかったのだが…俺が知らないだけで、この3つのスキルに反応しない生物か何かしらが居るのだろうか?もう少し警戒度を上げて探索を続けないといけないな…。
「ゆ、ユーラく~ん。もう帰ろうよ~侯爵様には何も居なかったって私が説明しておくから~。」
「幾ら苦手だからって嘘の報告は駄目だろう?まだ、危害は受けてないんだ。せめて何が居るのかだけでも確認しておかないと。それに、俺はここで今回修理に使う為の鉱石も探したいんだ。できるなら問題を解決した後に、じっくりと採掘もしたいんだよ。だから、今何も解明しないまま帰る訳にはいかないの?わかった?」
「わかったけど…わかりたくない~帰ろうよ~。」
「だから、それじゃ駄目なんだってば。それにしてもどうするべきか…う~ん。」
流石に今の声?を聞いて余裕をかましている事は出来ない。気を付けていないと何があるかわからないし、本来ならどこから聞こえて来たのかを探りに行きたいけど、また置いていかないで!とか言われても困るし…と悩んでいた俺に風の大精霊のセラが俺に提案を持ちかけてきた。
「ねぇユーラ、もし良かったら私とシファが何処から聞こえたのか調べて来ましょうか?」
「え?セラとシファの二人で行くの?大丈夫?危なくない?」
「フフ…ユーラ?私これでも大精霊と呼ばれるぐらいには強いのよ?言っては悪いけど多少強い程度の魔物や死霊ぐらいじゃ私達に影響を及ぼす事すら出来ないわよ?」
「セラが強いのはわかったけど、シファは大丈夫なの?こんな小さい子に無理させるのはちょっと…。」
「シファはよわくないよ!こんなにつよいんだよ!」
そう言いながら力こぶ?を見せてくるシファ強そうとか逞しいというよりは可愛らしいという方が合ってるシファを斥候に行かせるというのはかなり抵抗があるのだが…本当に任せて大丈夫なのだろうか?
「ユーラ私達にも活躍の機会を与えて欲しいの、契約するだけしてもらって何もしないのは…ね。せっかく契約したんだもの私達が役に立つという事を知ってほしいのよ。」
セラが力強くそう言い放つ側でシファが宙に浮いた状態で両手を上に上げてやる気を漲らしている。
そこまで言ってくれるならお願いしてみようかな?俺もセラやシファが何処まで何が出来るのかを知りたいと思っていたしちょうどいい機会なのかもしれない。
「それならお願いしてもいいかな?出来たら魔物にも注意しながら行ってくれると助かるよ。じゃあシファとセラ行って来てもらえる?」
「おー!シファにまかせてー、じゃあいってきまーす。」
「あ!こら、シファ!1人で行かないの!ってじゃあユーラ行ってくるわ。いい結果が報告出来るように頑張ってくるわね。」
俺に声を掛けた後に直様シファを追いかけて行ったセラを見送り、あまりウロウロしてセラ達と合流に手間取ってもどうかと思うのでここで出来る事をしようと思い立ち、ここに来た目的の1つでもある鉱石探しをする事にした。
適当に周囲を見渡して見るが、以前大森林の洞窟では結構簡単に見つかったのだが、ここでも簡単に見つかるのだろうか?それに、鉱石を探す為にあちこちをやたらめったら掘り返して洞窟に影響が出ても困るのでせめて鉱石を探す為に掘り出すなら切掛になるものを探した方がいいかもしれない。
「リィサ~あの原因不明の声の調査はシファとセラにお願いしているからあまりここから動くと合流するのに支障が出ても困るからしばらくここで待機していようと思うんだけど、どうかな?」
「へ~シファとセラがあの不気味な声の調査に…ね、それはユーラがお願いしたの?」
「いや、違うよ。二人がさ、せっかく契約してもらったのに役に立ててないから力になりたいって言ってくれたから、ここは二人の意気込みを買ってお願いしてみたんだけど…それがどうかしたの?」
「…いえ、ユーラが少しずつ捻くれた考えを変えてきてくれてるんだなぁって思ったら少し嬉しい気分になっただけよ?気にしないでちょうだい。」
「捻くれたって…まぁ間違ってはいないけど、はっきり言うなぁ。」
「今のユーラだからこそ言えるのよ?前のユーラのままだったら絶対に言えなかったわね。」
「うぅ…これからは気をつけます。」
「ごめんなさい、嫌味の様になってしまったわね。でも…本当にユーラの態度が少しずつ良くなっていくのを見てると、私まで嬉しくなるわ。だから…これからも優しくて強いユーラで居てね?」
「うん…こんな俺だけどこれからもよろしくね?リィサ。」
俺とリィサは肩を寄せ合いながら二人でほんのり明るい洞窟の壁を見ていた。すると俺の肩に頭をのせていたリィサが壁の一部をジッと見ているのに気づいた。
「どうしたの、リィサ?ずっと壁の一箇所を見てるけど何かあるの?」
「…あぁ、ねぇユーラ?あの壁で光ってるアレってもしかして何かの鉱石とかじゃないかしら?」
「えぇ!本当に?よし!リィサちょっと確認してみようよ。」
リィサを連れ立ってその場所を見に行くと……おっ!確かに何かの鉱石らしき物の一部が壁の表面に飛び出していた。何かはわからないけど、取り敢えず掘り出してみよう。
「ごめんリィサちょっと掘り出してみたいから少しだけ離れてもらっていい?流石に危ないからね。」
「えぇ、わかったわ。でもそばで見てるのは構わないわよね?」
「あぁ、それは問題ないよ?でも破片が飛んでくるかもしれないから気をつけてね?」
リィサが少し離れたのを確認してから早速掘り出してみる事に…。採掘道具であるピッケルでガッ!ガッ!と鉱石の周囲を軽く削ると10㎝ぐらいの塊が出てきた。これってもしかして…今まで見た事はないけど、俺の予想があってるのならこれは…。
自分の予想どおりでありますようにと願いながら、掘り出した鉱石を鑑定してみる事に…。さて結果は?
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【ミスリル鉱】
ミスリルの鉱石。今は原石の状態で加工の必要がある状態。加工には魔力が必要で魔力量で加工品質に差が出る。純度を高めて加工をしたいのであれば純度の高い魔力で加工するとよい。
【備考】
ミスリル鉱石は一箇所に大量に取れる事が多いので、1つ見つけたならば周囲を探してみるとかなりの量が期待できるかも?
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おぉ!マジか!これはラッキーだ。リィサに感謝だな!早速掘り出していこう。っとその前に…。
「リィサ!ありがとう!大当たりだよ!とてもいい鉱石を見つけたみたいだよ。今からここらへんを掘り出そうと思うけど、リィサはどうする?」
「それならユーラの側で魔物が来ないか警戒しながら見守る事にするわ。邪魔では無いのよね?」
「側で魔物が来ないか見張ってくれるなら助かるよ!掘ってる最中は夢中になってるはずだから、お願いしていいかな?」
「私が言い出した事だからユーラは気にしないでいいわよ?頑張って採掘してね?」
「本当に助かるよ、じゃあ早速始める事にするよ。あとはお願いね、リィサ!」
初めて見るミスリル鉱石に興奮しながら採掘をする俺を優しげな目で見守るリィサには気づかずこの掘り出したミスリルで何を作ろうかな?と考えながら採掘に夢中になる俺だった。




