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第55話 ようやく侯爵家に到着

ここらへんからまたぼちぼち採取や製作の話を入れていきます。間を随分長くとってしまいました。

 シェイラ達の協力の御蔭でなんの問題もなくインペスタの街に入る事ができた…いや、一点だけ問題があった。それは…馬が引いていない馬車に俺達が乗っていた事だった。流石にこればっかりは門番の彼らも無視できなかったようで、これが何なのかをシェイラ達に問い詰めていた。

この問題にうまく対処してくれたのが、モモリスだった。クエスト中に知り合った人物から一時的に借りている物でいずれ返さないといけない物なので傷を付けないようにと言ってうまく躱していた。正直そんな事で誤魔化せるのか?と思ったのだが…問い詰めていた門番は戦乙女ヴァルキリオンのファンだったらしく普通に『なら問題ありません!どうぞお通り下さい!』とか言って普通に通していたのを見てそれで良いのだろうか?と思ってしまった。



街の中をそのまま進んでいるとやはり馬の引いていない馬車というのは相当目立つようで街の人達が物珍しげにこちらを見てきていた。その所為で思うように進めない場所もあったりしたが、その都度衛兵がきて危ないので下がるようにと言ってくれたので何とか移動できていた。俺自身はこの街に詳しくはないので、シェイラ達に道案内を頼んでいた。

 馬車を歩かせる事15分ほどでようやく目的の場所である侯爵の屋敷にたどり着いたのだが…何というかめっちゃ大きいな…何かに例えて伝えられれば良いのだが、生憎とそうやって例えられる程に物を見聞きした事がないので、大きいなぁとしか言えない。強いて言うならマシイナ伯爵の屋敷よりは大きいのだけは確かだ。



 屋敷前に着いた所でその前に居た門番が俺達の乗った馬車に対して止まれ!と声を掛けてきたので、その対処の為に降りて話をしに行こうと思ったのだが、ここも自分達に任せて欲しいとシェイラ達に言われたのでお願いする事にした。どう考えても俺よりも信頼のあるシェイラ達のほうがスムーズに事が進むだろうという判断からだ。

 俺としては顎で使ってるようで気になるのだが、仲間に任せる事も重要だとモニカに諭されたので、俺はシェイラ達にお願いして馬車の中で待つ事にした。



 馬車で待つ事5分ほどしても中々シェイラ達が戻ってこない、そんなに時間が掛かるのだろうか?もしかして何か問題でもあったのだろうか?流石に心配になってきたので外に出て確認をしようかと思って馬車の出入口に向かっていると、ちょうどドアが開いてシェイラ達が入ってきた。何やら苦笑いをしながらだったのだが、何か面倒な事にでもなったのだろうか?取り敢えずは話を聞いてみる事にしてみよう。



「シェイラ達どうかしたの?戻ってくる迄に時間掛かったみたいだけど、何か問題でもあったの?」



 俺がそう尋ねるとまたも苦笑するシェイラ達…本当に何があったのだろうか?



「あぁ…いや何ちょっとな?私達がこの街に来た事を街の出入口の門番に聞いていたみたいでな?いつ自分達と会えるのか?と楽しみにしてたらしくてな…そう考えて話していた時にちょうど私達が来たものだから、これ幸いとばかりに握手をして欲しいと頼まれてね…あと色々話をしていたら少し時間を取ってしまっただけだよ。侯爵様の屋敷に入る許可は既に取ってあるから安心してくれていいぞ?」


「そうか…それは良かったよ。じゃあそのまま屋敷の中に入っても問題は無いのかな?」


「あぁ問題ないそうだ、今から門を開くから開いたら入って欲しいそうだ。それと先触れの方から聞いたのだが、侯爵様が馬車を止めたらすぐに来て欲しいと言っていたそうだ。」


「そうか…わかったよ、それじゃあ門も開いたみたいだし中に入るとしようか。」



 門が開いたのを確認してから馬車を侯爵の敷地内に進めていく、門から結構離れているがあの正面に見えているのが侯爵の屋敷なのだろう。屋敷のすぐ側にはおそらく馬車を停めておくであろう場所に一台だけ馬車が停めてあるので、そこにでも停めて置くかな?それとも万が一を考えて【マイバッグ】に収納して置くか…う~ん念の為に収納しておくかな。自分達がどういう立ち位置になるかわからないから変な話いつでも逃げられるようにしておきたい。



 確証は無いがこの侯爵は自身の子でもある豚貴族ことバレブロを処刑しているはずだ。この目で直接見たわけではないから確実ではないのだが、確か俺とレナリアさんの前で『殺す…』とか言っていたあの後持ち手の部分が血に染まった大剣をもっていたので、多分殺ったのでは?と思っている。

 もしかしたらあれが実は演技で俺達の目を欺く為のものである可能性もあるが、今の所は殺っちゃった可能性が高い。その過程で考えると結構短慮?である可能性も無きにしもあらずと言った所なので警戒しておくに越した事はないだろうとの判断からだ。



 俺達の考えでは特に問題は無くとも相手からしてみればその行為や発言が許せないものだったりする事があるのをつい最近身を持って確認したばかりなので一応の判断だ。何事も無い方が良いのは確かだが、気づいたら虎の尾を踏んでました。というのが無いとも言えないのが現状だ。

 悪い方向にばかり考え過ぎなのかかもしれないが、今までろくに人付き合いもせずに逃げ続けてきた代償がここにきて来てしまったので、皆の力を借りてどうにか進むしか無いだろう。



 馬車を停めて皆が降りたのを確認してから俺も馬車から降りると屋敷の門の前には執事と思われる60~70代くらいの人と入口前に並ぶ大勢のメイド達だ。メイドだけでも軽く50人ぐらいはいるんじゃないだろうか?このぐらいの屋敷の大きさなら当たり前なのだろうか?それはいいとしてもまずは挨拶をするべきだろう。



「どうもこんにちは。侯爵様に呼ばれて屋敷に伺ったユーラと言いますが、お話は聞いてますでしょうか?」



 俺の問に執事であろう男性が答えてくれた。



「はい伺っております、今回旦那様が仕事を依頼されたユーラ様ですね?そして、一緒に居られますのはレナリア様と確か…リィサ様とそちらに居られるのは…!まさかとは思いますが、フォースター伯爵様の公女であるユリーナ様では?」


「え~と…私の事をご存知なのですか?執事さん?」


「これは…失礼致しました。驚きのあまり名乗り出すのを忘れておりました。私の名はイルディオと申します、皆様が屋敷に滞在中は私達が全てのお世話をさせていただく予定ですのでよろしくお願い致します。」



 ユリーナさんを知っているのかぁ…大丈夫かなぁ、もう既にユリーナさんには色々ヤッてしまったので、いずれユリーナさんの家族にはバレる筈だが、今はまだ勘弁してほしいな。色々心の準備が出来てないのよ…。



 そんな俺を尻目に執事のイルディオさんが自己紹介するのと同時に礼をすると側にいたメイド達も一斉に礼をしてきた。おぉ~こんな人数が同時行動すると圧巻だな。日本にいたら絶対に見れない光景だよ。頭を下げたままのイルディオさん達を見ながら感動していると、側に立っていたレナリアさんが俺の脇腹をつついてきて目で合図をしてきた。どうやらこちらも自己紹介をしろという事らしい。



「え~と…イルディオさんが言っていたユーラです、よろしくお願いします。皆も自己紹介して。」



 あ~なんかレナリアさんが首を振っている。もしかして間違った?でもどうやって良いのかわからないよ?流石に貴族の礼儀とか俺には無理だよ?勘弁してくれないかな?



「では私からイルディオさんからもご紹介に預かりました。第一王女のレナリア・プリムス・フォルティシアです。しばらくの間お世話になりますが、過度に緊張などせずに是非普段通りに接してくれると嬉しいです。皆様よろしくお願いしますね。」



 自己紹介を終えたレナリアさんがチラッと俺の方を見て『わかりましたか?』という表情をしているが…さっぱりわかりません!言葉遣いなのか自己紹介の仕方なのか、はたまた順番だったりしたのだろうか?一般人の俺に分かるわけがない。



 その次とばかりにユリーナさんリィサと戦乙女ヴァルキリオンときたのだが、ここに来て問題が起きてしまった。そうモニカである。彼女は一応冒険者ギルドからは既に魔物との戦闘で亡くなった事になっているのだそうだ。本人にもその自覚があるのか、どうしよう?とばかりに俺に視線を合わせてきたのだが…ここで下手に嘘をついてもモニカを良く知るであろうゴリラ侯爵に見つかれば確実にばれるだろうし、なんなら眼の前にいるイルディオさんは目を見開いてモニカをガン見している。イルディオさんがガン見しているのも、モニカのお胸様に見とれているのでなければ、ほぼ間違いなく何故死んだはずのあなたがここに?というのが一般的なはずだ。

 だからこそここで嘘をつくよりも何とか生きてました~みたいな感じで言えば良いのではないだろうか?俺もいまいち良案がある訳でもないので仕方ないだろう。俺はそんなに賢くないんだぞ?



 俺の表情を見て『はぁ~…』とため息をついたモニカは覚悟を決めて自己紹介をする事にしたようだ。



「え~と…アハハ知ってる人もいるかも知れませんが…モニカ・エーデルです。何とか生きてました~…ハハハ…はぁ。」



 そう自己紹介をしたモニカが急に俺の方に向いて『そらみろ!どうしてくれるんだ!この空気!責任を取れ!』と言わんばかりの視線をよこしてきた。いやいやちょっと待て!なんで俺が考えた感じの自己紹介をそのまま出来たんだ?お前はエスパーか!という視線を交わすと『イエス!』といわんばかりに親指を立ててきやがった!つか何で俺の心を読み取ったの?俺ってそんなにわかりやすい表情してる!?

 


 俺とモニカが視線を交わしながら意思疎通をしていると、ようやく正気に戻ったイルディオさんがモニカに本当にモニカなのかを尋ねてきた。



「失礼とは思いますが、今一度確認をさせていただけませんでしょうか?あなたは本当にあの最強とまで言われたモニカ・エーデル様なのでしょうか?」


「その最強と言われたかどうかはともかくとして、私がモニカ・エーデルなのは間違いないですよ?」



 何故に疑問形なのか…わかりやすく挙動不審だな。まるで自分の犯罪がいつバレてしまうかとキョロキョロしてる犯罪者だな…。別に後ろめたい事をした訳でもないのだから、堂々としていればいいのに…モニカは変な所で気が小さいな?アッハッハッハ!



 俺は心の中で笑っていたにも関わらず何故かモニカにめちゃめちゃ睨まれた。…おかしいな、表情には気を付けていた筈なのに。まぁいいや…それよりもいつまでここにいれば良いのだろうか?もしかしてまだ迎え入れる準備が整っていなくて時間稼ぎをしているとか?それならもう少し待つほうがいいだろうか?なんて考えていたのだが、それはただの思い過ごしだったようだ。何故なら…。



「イルディオ!いつになったらユーラ殿を部屋に呼ぶのだ!ワシをいつまで待たせる気なのだ!早くユーラ殿を案内せぬか!」



 しびれを切らしたゴリラ侯爵が表に出てきてしまった。あら~どれだけ待たされていたのかわからないが、ここまで出てきたという事は相当な時間待っていたのだろうか?流石に悪い事をしたかもしれないな。早めに中に案内してもらう事にしよう。



「旦那様大変申し訳ありません。意外な人物が居られたものですから、つい動揺してしまいました。」


「ほぅ…お前が動揺するほどの人物がいると?誰がいると言うのだ?」


「そこに居られます、どうぞご自身の目でご確認下さいませ。」


「ふむ?どれ誰ぞ珍しい者でも…お前は…もしやエーデルなのか?あの時お前は死んだのでは無かったのか!?」



 ゴリラ侯爵が叫びながらモニカの両肩を掴んで前後に揺さぶっている、その所為でモニカのお胸様がブルンブルンとお揺れなさっている。オイ!やめろ!このゴリラ!勝手に人のモノを揺さぶるんじゃねぇ!それは俺が鑑賞したり…色々するためのモノなんだぞ!丁重に扱えや!



「旦那様!淑女に対してする行動ではありません。すぐにお離しになられて下さいませ。」


「ム!おぉそうだったな、すまなかったなエーデル。しかし…本当にあのエーデルなのか…。一体どのようにして生存できたのか聞かせて貰えないか?」


「旦那様…その先のお話は是非お部屋にご案内した後がよろしいかと。」


「うむ!それもそうだな!では皆を部屋に案内してやってくれ。その後は夕食まで時間もあろう、茶を飲みながら話をしようではないか。」



 俺達は執事のイルディオさんとメイド達を先頭にそれぞれの部屋に案内してもらった。屋敷が大きいだけあって1人ずつ部屋を貸してくれるそうだ。皆は先に部屋に案内されていったが、俺の部屋だけはかなり奥にあるようでイルディオさんが案内してくれている。そして、その途中イルディオさんが俺に話しかけてきた。



「ユーラ様…ユーラ様はトライフルの街ではマシイナ伯爵の屋敷に逗留されていたとか…それで、もし差し支えでなければ聞かせていただきたい事があるのですが…。」


「はい、何でしょうか?」


「内の弟…セルディオは元気でしたでしょうか?あれは私の弟なのですが…中々連絡も無いものでして…便りがないのは元気な証拠とは言いますが、あまりにも何も無いとそれはそれで気になるものでして…。」



 あぁ~セルディオさんってイルディオさんの弟さんだったのか…。確かによくイルディオさんを見ればセルディオさんと似てる気がするなぁ。っとイルディオさんの質問に答えないと。



「セルディオさんは元気でしたよ、色々と優秀な人でとても助かりましたよ。セルディオさんも凄かったですけど、イルディオさんも同じくらいに頼りになるんでしょうね?」


「そうですか…弟は元気でしたか…。それとアレに執事としての生業を教えたのは私でしてね。アレよりは役に立てると思いますよ?フフ…。」



 あ~もしかして怒らせたかな?そんなつもりは無かったんだけど…一応謝っておくかなぁ。



「もしかして怒らせてしまいましたか?すいません、特に含む所は無かったのですが…。セルディオさんが優秀な方だったんで、イルディオさんも同じくらい仕事が出来る人なんだろうなって思っての事だったんですけど…。」


「あぁいえ…こちらこそ申し訳ございません。お客様であるユーラ様に失礼な発言をしてしまいましたね。大変申し訳ありませんでした。」


「いえいえ、俺も過ぎた言葉じゃないかと思って謝ったのでイルディオさんが問題なければ気にしないで下さい。」


「ありがとうございますユーラ様。ただ1つだけ言わせて頂いてもよろしいでしょうか?」


「はい、何ですか?」


「私にも執事としての誇りというものがあります。弟とはいえ比べられれば気にもなるものです。まぁ今はまだまだアレに負ける訳にはいきませんよ。」


「そ、そうですか。凄いんですね…ハハハ…。」



 どうやら妙なツボを刺激してしまったらしいな。滅多な事を言わないように気をつけよう。



 ようやく…と言えばいいのだろうか?俺に貸してくれる部屋に着いたのだが、見事な迄に一番端っこ屋敷の最上階…3階なのだがそこの廊下の一番奥の突き当りまで来てしまった。ここは見事に皆と離れた部屋になっていて周りの部屋には誰も居ないとの事だった。なんで俺だけこんなに離されたのだろうか?もしかして嫌がらせだろうか?怒りはしないが寂しい事この上無いのだが…。取り敢えず何故俺だけ皆と離された部屋なのかを聞いてみる事にしよう。



「あの…イルディオさん何故俺の部屋だけ皆と離されているんですか?流石に周囲の部屋に誰も居ないのは寂しいんですけど…。」


「あ~ソレですか?それはですね?ユーラ様も男性ですから色々とあると思いましたので、ユーラ様のお部屋だけ離れた場所にさせて頂きました。そうすれば他の方々に気を使わないで済むのはではないかと思いまして。」



 色々?…………!あぁなるほどね。流石出来る執事さんだね!その気遣いは素直に嬉しいよ。



「イルディオさん…ありがとうございます!そこまで気を使ってもらえるなんて!出来る執事さんは違いますね!」


「わかっていただけて私も嬉しく思います。ではお荷物を置いて…と言ってもユーラ様は荷物をお持ちでない様子…馬車に置いてきたのでしたら、こちらで運び込んで置きますが如何しますか?」


「あぁいえ荷物は持ってますよ?ホラここに…。」



 俺はそう言ってから【マイバッグ】から手頃な荷物を取り出して見せたら、イルディオさんがびっくりしていた。ちょっと自慢できたので嬉しかったりする。



「ユーラ様はアイテムボックス持ちの方でございましたか。旦那様から聞いた話と総合するとかなり多才な方でいらっしゃるようですね。その様な方のお世話が出来るのは嬉しい限りですね。」


「そういう訳ですので、部屋の中をある程度見てから皆の所に行きましょうか?」


「そうですね、では部屋を一通りご覧になられたら皆様の所へ参りましょうか。」



 そうして部屋をある程度見た後は雑談をしながら侯爵と皆が待っているリビングに向かった。

年末に差し掛かり忙しくなってきました。更新に支障が出ないように頑張りたいのですが、結構…いやかなりきつくなってきました。

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