第51話 今契約をすると特典が…
なかなかゴリラ侯爵の街に着きません…精霊の話が落ち着いたら着く予定ですので。
ルティアとイチャつきながら待つ事1時間ほどしてからだろうか?何やら妙な感じがし始めた。嫌な感じなどでは無く、大きな力の塊?のような気配が俺たちの乗る馬車に迫ってきているのを感じた。
そして、その気配を感じたのはどうやら俺だけでは無いようで一緒にいたルティアもその気配を感じたようだ。
「…!ユーラ…何か凄いのが近寄ってきてる?気の所為かな?」
「いや…ルティアが感じてる通りだ。大きな力を持った奴が近寄ってきてるな。もうすぐここに来るんじゃないか?多分シファがさっき言ってた人物を連れてきたんじゃないかな?」
「…そう言えば連れてくるって言ってた…楽しみだね?」
「あぁ契約内容がよほど変なもので無ければルティアは相当強くなれると思うぞ。」
「…シファ早く来ないかな?会うのが楽しみ…。」
「ん~そろそろじゃないか?…」
と、そこまで言いかけた時だった。衝撃音と共にかなり強い横揺れが起きた……しまった!そう言えば馬車に結界を掛けたままだったの忘れてた!今のままだと俺が認めた人物以外は決して入れない設定にしてあるんだった。
まさかとは思うが…墜落とかしてないよな?更にまずい状況だと俺達を敵認定してくる事だ。折角ルティアに対して協力的だったのに、俺の手違いで敵に回ってしまうのは非常にマズイ。こういう言い方をすると何だが精霊に嫌われるのはまだ良いが、ルティアに嫌われてしまうのは嫌だ。急いで確認しに行こう。
「…ユーラ!?今のは何?凄い揺れたけど…魔物が襲いに来た?」
「いや…魔物ではないと思う、もし魔物なら警報が鳴ってるはずだから…今のこの馬車にぶつかったのって多分だけど…。」
「…多分、何?」
「シファとシファが連れてくるって言ってた精霊じゃないかと思う…。」
「…!それなら急いで助けに行かないと!早く行こう、ユーラ。」
「わ、わかった、行こう。」
正直…内心冷や汗ダラダラものである、事態がどう転ぶかわからないのでなんとも言えない気分だ。せめて相手が怒ってはいても、こちらに敵対心を抱いていない事を祈ろう。
操作室に向かう途中で他の皆が集まって来たので、先程の出来事を最初から説明しながら操作室へとたどり着いた。中に入って急いで馬車の乗車一覧にシファ達精霊達を加えていく。加えた直後にすぐに大きな気配が俺達に近づいてくるのがわかった。この狭い操作室に皆が揃っていると流石に暑苦しいのでリビング代わりに使っている部屋に移動する事にした。
「…ユーラ?シファ達はまだ入って来てないの?さっき近づいて来たような気がしたんだけど…。」
「多分だけど…気配を消してこちらの様子を伺ってるんだと思う。」
「…何でそんな事をしてるの?私早くシファに会いたいのに…もしかして私シファに嫌われちゃったのかな?」
「それは…流石にどうなのかな?もしかしたら連れてきたっていう精霊が様子を見る為に、シファに黙っているように言っているのかも知れないな。」
「…そう…なのかな?シファ…私の事嫌いになってないといいな…。」
「大丈夫だと思うよ?だってあんなにルティアに懐いていたんだ。きっと契約してくれるはずだよ。まぁ…一応は契約内容を確認してからだけどね?」
「ねぇ?さっきからずっと言ってるけどさぁ、どこに精霊が居るの?全然見えないし気配も感じないんだけど?」
「いや~どこに居るのかはわかっているし、俺は見えてるんだけど、相手の出方を見ようと思ってね?だから大して何かをする訳でもなくジッとしているんだ。」
「ねぇユーラ?その精霊というのは大丈夫なの?私達では見えないし声も聞こえないから不安なのだけど…。」
リィサの言葉に応じるかのように同じ様に精霊を感じる事が出来ないメンバーが頷いている。不安に感じる事は無いのだが、目に見えないというだけで不安に感じてしまうものなのかもしれない。
皆を不安にさせる訳にはいかないのでそろそろ姿を現して貰おうかな?そして見えないメンバーに大しては俺の方から補佐させてもらおう、そうすれば不安に思う事もないだろう。
「さて?そろそろ姿を見せてもらえるかな?いつまでも皆を不安にさせる訳にはいかないからね?さぁ出てきてくれないか?」
俺がそうやって声を掛けたからか、気配を絶っていた精霊がその気配を漂わせるのと同時にその姿を現した…のだが、やはりというべきか俺には割とハッキリと姿が見えるのだが他の皆はイマイチその姿を捉えきれてないようだった。
せめて(仮)とはいえ風の精霊の加護を受けてるルティアは?といえばシファの姿を辛うじて見えてはいるようだが、その側にいる大精霊と思しき精霊の姿までは見えていないようだった。
そしてそのルティアなのだが、戻ってきてくれたシファを抱えて喜んでいた。
『るてぃあ~シファかえってきたよ~、うれしい?るてぃあシファがかえってきてうれしい?』
「…うん、嬉しいよ。シファが帰ってきてくれてとても嬉しい。…本当に良かった。」
何やらお互いに喜び合っているが…大精霊らしき精霊が側でほったらかしの状態なのだが…そのままで良いのか?取り敢えず面倒な事になる前にシファに尋ねて見ようか。
「お互いに喜び合っている所悪いんだけどな?シファの言ってた『セラお姉ちゃん』はそこに居るだろ?ほったらかしにして良いのか?」
『あ!そうだった!るてぃあ!こっちにいるのがね、セラおねえちゃんだよ。セラおねえちゃん!それでね?こっちにいるのがるてぃあなんだよ。』
シファにより紹介された大精霊と思われる精霊が何故かルティアではなく俺の方を見ている。何も言わずにただジッと俺だけを見ている、取り敢えず気になったので俺の後ろを見てみたが誰も居ないので俺を見ているので間違いは無いのだろう。…念の為もう一度後ろを見ておいた…やっぱり俺を見ているのか、何故だろう?
『いやあのね?何度も後ろを振り返っているけど私はあなたを見てるのよ?何故一度確認したのにもう一度確認したの?誰も居ないわよね?』
「あぁやっぱり俺だったのか、もしかしたら俺の後ろに誰か居るのかもって思ったからさ。まぁ念の為ってやつだよ。」
『あなたがシファの言っていた契約内容を知りたがっているっていう人間なの?どうしてそんなに契約内容を知りたがっているのか教えてもらえる?』
「それは簡単な話だよ、契約するのに際して契約したルティアにデメリットが無いのかを確認しておかないと後で大変な事になるかもしれないだろ?」
『成程…そういう事だったのね。それなら大丈夫よ、特に無いわよ。契約したい当人同士で魔力を交わし合うだけでいいの。そもそも精霊にとって契約できる種族ってなかなか居ないから見つける事が難しいの。それなのに複雑な契約をつけたりしたら精霊達は一生契約ができなくなってしまうの。』
それなら問題は無いかな?仮に何か問題があったとしても俺がどうにかして契約を解除してしまえばいいだろう。もし俺が出来なかったとしても最後の手段としておじいちゃんにお願いしよう。ここにいる皆は俺の恋人になってるから俺の力及ぶ限り守っていきたいしね。
「それならルティアに契約をしても問題ないと伝えておこうか。わざわざ来てもらって悪かったね。シファとルティアには俺が伝えておくからあなたは帰っても大丈夫ですよ。」
『ねぇ…あなた私の事普通に見えてるの?それと声もハッキリと聞こえるんでしょ?』
…何故そのような事を聞いてきたのだろうか。まさかとは思うがこの精霊…。
『もしよければ…なんだけどさ?私と契約しない?もし契約してくれたら色々特典があるのよ?どうかな?できたら考えてくれる?私今からシファがちゃんと契約できるか確認してくるからその間に考えててもらえる?でもあまり複雑に考えなくてもいいよ?嫌なら嫌で別に構わないから。じゃあまた後でね。』
むぅ…大精霊と契約…か。今でも充分強さとしてならあるんだけど、特典があると言われると凄く気になるな。日本に居た頃もそうだったけど、ゲームなんかを注文する時は特典はかなり重要視してたしな。物によっては特典欲しさに商品を購入した事もあるぐらいだ。
契約…しちゃおうかな?これで大した事無ければ速攻で契約を破棄してやる。
俺が1人シファが連れてきた精霊であるセラと契約するかどうしようかと悩んでいた所に事情をよく知らないルティア以外のメンバーが集まってきた。おそらく何が有ったのかを聞きに来たのだろう。
そういえば皆に説明をするのを忘れてたな。さて?少し面倒ではあるがちゃんと説明しておかなきゃな。
「ユーラ~ルティアと何してたのかを教えてもらおうか!二人だけで話てたとか卑怯だぞ~。さぁ私達にもキリキリ説明してもらおうか!」
「わかったわかった。だからそんなに興奮するなモニカ!今からちゃんと説明するから。」
それから俺はルティアに魔法を教えようとした時に偶々風の精霊の加護がある事を知り、それを知った事から風の精霊との契約をするという話になったが、俺が契約内容を確認するまでは待ったほうが良いと言った事からしっかりと契約内容を知っている精霊を連れてくるという話になり、今さっきの衝撃はその精霊が勢いよくぶつかった事によるものだったと伝えた。
「って事は今ルティアはその風の精霊と契約をしてるの?もしそうなら見に行こうよ。私精霊って初めて見るのよね~。だから見ておきたいのよ~、さっ!行こうユーラくん。」
「よし!俺も気になるから見に行ってみようか?一緒に見に行くのは誰と誰?」
『ハイ!』
今ここにいないルティア以外の全員が手を挙げたので契約が終わる前に早速見に行く事にした。
何処に居るのかを気配を探りながら歩いているとどうやら先程まで訓練していた場所で契約をしようとしてるようだった。
静かに部屋の中に入るとシファとルティアが向かい合ってお互いに魔力を溜めているのがわかった。
さっきも大精霊であるセラが言っていたが、契約を交わす為に魔力を交わさないといけないと言っていたのでその準備段階なのだろう。
準備が出来たのだろう、シファとルティアがお互いに両手を合わせて魔力をお互いに交わし合っているのがわかる。ほんの10~20秒ほどだろうか?目的を終えたようで手を離していった。そして、契約が完了するのを側で見守っていたセラがこちらを見てきた。俺にも契約をしようと言う事だろうか?正直契約するメリットを感じられないので断ろうと思っているのだが…。
『ユーラさっきの話考えてくれた?私と契約するっていう話…答えを聞かせてもらっていいかな?』
「悪いけど…契約をする意義を感じないしなぁ…遠慮させてもらうよ。」
『そっか…残念だけど無理やりお願いする事じゃないしね…うん、わかったよ。じゃあ私はシファに声を掛けてから帰るとするよ。じゃあね、また会える機会があると良いね?』
「ごめんな?それとルティアの為にわざわざ来てくれてありがとう。」
『気にしないでいいよ、シファに契約者が出来たんだから私としても嬉しいからね。』
「そっか…そう言ってくれると助かるよ。悪いけど二人にも声を掛けてあげてくれないか?」
契約を終えた二人に近寄り声を掛けてるセラなのだが、何やらシファが騒ぎはじめた。どうかしたのだろうか?しばらく様子を見ていたのだが、今度はルティアまでが騒ぎ始めた。そして、今度は俺の方を向きこちらに向かって手招きをしてきた。何がなんやらよくわからないが、取り敢えず三人の元に行ってみる事にした。
「どうしたんだ?わざわざ呼んだりして。何か話でもあるのか?」
俺の言葉にルティアが一瞬迷ったようにしていたが何か思う所があるのか覚悟を決めたかのように話してきた。
「…ユーラその…どうしてセラと契約してあげないの?折角来てくれたのに…もったいなくない?」
妙な言い回しをするルティアに引っかかりはしたが、先程セラに伝えたのと同じ事をルティアに伝えるとルティアは微妙な表情をして俺を見てきた。
「…ねぇユーラどうしてそんな事を言うの?損得だけで考えるなんて…寂しい事言わないで欲しい…。」
確かにそう言われればそうなんだけど…さっきは特典に惹かれもしたんだけど…うぅん、かといって人に言われたからじゃあ契約しましょう。は、なんか違う気がするしなぁ。せめてどういう特典かを聞いてからにしたほうが良いだろうか?うん、一度聞いておくか!
「え~と?セラ悪いんだけどさ?さっき言ってた特典ってやつを教えてくれないか?それによっては契約してもいいと思ってるんだけど…どうかな?」
『え!?本当に?わかったよ。なら教えておくね?まず1つが私は風の大精霊なのはわかってると思うんだけど、私と契約すると風の魔法の効率化と精密操作、それと威力上昇の効果が付くの。2つめが私と一緒にならだけど条件次第では精霊の住む国【精霊の庭園】に行けるようになるよ。そして3つめが風の大精霊の加護がつけてあげられるの。一応これだけなんだけど…どうかな?』
結構凄いな!なんで俺はろくに話を聞きもせずに断ったんだ!?俺って凄く馬鹿じゃないか!これを教訓にしてもう少し考える事をするのと相談する事をしよう。自分の行動が馬鹿すぎる…。
俺がそんな事を思いながら反省していると、ずっと気になっていたのかルティアが俺にどうするのかを尋ねてきた。
「…それでユーラどうするの?セラと契約してあげるの?」
「うん契約しておこうかと思ってるよ。ちょっと考えが足りなすぎたみたいだからね。セラの話を聞いて契約してもいいと思えたよ。ルティア…さっきはありがとな?俺にああ言ってくれてさ。これからはもう少し考えたり相談してから決めてみるよ。」
「…うぅん…私が言った事がユーラの役に立ったなら良かった…。」
俺とルティアのやり取りを待ちきれなかったのか、セラが横から俺に話しかけてきた。
『ねぇねぇ!契約してくれるならさ?早く契約しようよ!私も初めて契約するから楽しみなんだよ!』
「え!?初めてなの!えっと…大丈夫…何だよな?」
『それは問題ないよ、シファは忘れてたかも知れないけど、私はちゃんと覚えてるから。ちょっと恥ずかしいけど問題なくいけるよ!』
「恥ずかしいって何だ?一体何をするから恥ずかしいんだ?」
『口に出すと躊躇いそうだから言わない!それよりもユーラも魔力を高めて集中してね?ちょうどいいタイミングで私のほうから契約を結ぶからね。』
セラに魔力を高めて集中してと言われたので、取り敢えず魔力を高めて集中する事にした。加減がよくわからないから適当に程々に魔力を高めておこう。
『うん…かなりいい感じだね!じゃあ今から契約を結ぶから動かないでね?私が良いって言うまで魔力を弱めたりしたら駄目だよ?』
「わかった、じゃあ頼むよ。」
セラのタイミングがあると思うので俺はただひたすら魔力を高めて集中していたのだが…徐々に不安になってきた。魔力の高さってこれぐらいで大丈夫なのかな?もうちょい高めておいた方が良かったりしないかな?取り敢えずもうちょい高めておこう。それと、集中も途切れないように気を付けてっと。……もうちょい上げとくかな?
『では…いきます!―チュっ!』
あれ?この感覚って…もしかして!俺セラにキスされてるのか?精霊で触れる事が出来ない筈なのにどうして?と考える自分とは別に、精霊とはいえかなりの美女にキスをされてるという事が俺を興奮へと誘っていく。うぉおおおお!高ぶってきたーーー!
『へ?あれ?ちょっと?ユーラ?少し魔力が高まり過ぎかな?もう少し抑えて貰っていいかな?流石にこれじゃうまく私の方で制御できないから抑えてほしいんだけど。』
どうやらセラが俺に魔力を抑える様に言っているようだが、この高ぶりを抑える事はできそうにない。そのままどうにか頑張って契約を完了してくれ!
『ちょ、ちょっと!これ、待って!私の魔力もユーラに無理やり引っ張られる上に私の中にユーラの魔力が…これ…もう、駄目ーーー!』
セラが絶叫するのと同時俺とセラを強烈な光が包み込んでいくなかセラが俺の手を強く握っていた。そう強く握っていたのだった。
この後ちょっとばかりシリアスを入れておこうか迷ってます。うまく書けるか心配なので…一応2パターン考えているのでお楽しみに。




