閑話 近づいたようで離れた距離
今回はいつもより文字数が少なめですが、ご勘弁を!
「ではそんな葉津梛さんの為に前置きはなしで教えましょう。私がこの水晶を手に入れたのは今日とは別の日ではあるのですが、日本に一時帰国した時にですね。家には帰らずにホテルの一室で休んでいたのですが…ある朝起きると私の枕元にいつの間にか置かれてあったんですよ。誰が置いたのか?私に気づかれずにいつ置いたのか?色々と謎な部分はあるのですが、一番謎なのはどこに置いても、置き忘れても、捨てても、必ず私の元に帰ってくる事、ですね。これには流石の私も恐怖を覚えました。」
「えぇ!静姉この水晶を捨てようとしてたの?ダメだよ!折角のゆう君の手掛かりなのに!」
「葉津梛姉さん!だから落ち着いて下さい!何度言えばわかるんですか!」
「うぐッ!だって…。」
「だって…じゃありません!まだ静梛姉さんの話は終わってません。最後まで聞いてから反論するならして下さい。」
「ハイ…すいません。」
「謝るのは私にではなく静梛姉さんにです。」
「う!…静姉…その…ごめんなさい。」
「はい、謝罪は受け取りました。葉津梛さんの気持ちはわからないでも無いですが、もう少し私の話を聞いて下さいね?」
「うん…静かに聞いておきます。」
「では続きを…それとなぜ水晶を捨てたのか?と先程葉津梛さんは言いましたが、考えても見て下さい。完全に施錠した部屋の中にどうやって入ったのかも知らない。誰が置いたかも知らない。ましてや自分に思い当たるフシが見当たらないものが何度も何をしても戻ってくるんですよ?何も知らない人からしてみれば恐怖以外の何物でもないと思いませんか?」
「それは…確かに…。」
「それはそうですね、静梛姉さんの言う通りだと思います。」
「何度捨てても、何処かに置き去りにしても戻ってくる水晶…落とし物として交番に届けても戻って
くるので、二度と届けに行く事も出来なくなった時はどうしようかと思い本当に困ったものでした。 しかし、ある時私が出かけようと思いまたも私のカバンの中にこの水晶が入ってるのを見かけたので取り出して何処かに置いていこうと思い取り出そうと触れた時でした。急に目の前に森が広がっていたのです。
その時はまだ朝で私も起きたばかりだったので、一瞬私は自分がまだ寝惚けているのかと思いましたが違いました。待てども待てども視界は私が泊まっていたホテルの部屋になる事はなくひたすら森が広がる光景を目にしていました。ですが次の瞬間私は驚きを隠せませんでした、目の前にいきなり炎の塊が現れたからです。
そしてその炎は森を焼いていきましたが、その次の瞬間には目の前で豪雨と呼んで良い光景が広がりました。最早意味がわかりませんでした、なぜこの訳のわからない光景を見ているのか?なぜ私なのか?と。」
少し話疲れたのだろうか?それともその時に受けた精神的な疲労を思い出してなのか、静姉は深い溜息を付きながら天井を見上げている。私達は特に何を言うでもなく話を続けるのを待った。
また少しして落ち着いたのか、静姉は話を再開し始めた。
「…私はこの水晶がより気味悪く感じるのと同時にあの光景が何であったのだろうか?と興味を持つようになりました。そう思う様になってからはこの水晶を捨てようとはせずに大切に保管する事にしました。
しかし、この水晶はただ持っていても必ず見れる様では無いみたいでした。見れる時と見れない時があり、そのタイミングも全く把握する事が出来ずにいました。
そして、ある日の事でした。私はあの水晶を通してある光景…いえある人物を見る事になりました。そう、あなた達もよく知る人物です。
それは…優良さんでした、鏡に写った優良さんだったのですが…些か私が見た時よりも若く見えました。年の頃は…そうですね10代後半と言った所でしょうか?しかしあれは間違いなく優良さんだったと思います。
私は葉津梛さんや和津梛さんから水晶の話を聞くまでは、自分が優良さんに逢いたいと思う感情が見せる夢や幻なのでは無いかと思っていたのですが、優良さんが居なくなったと聞いた時に、もしやあの光景は何処かに居る優良さんが見ている光景なのでは無いかと考えるようになりました。
さて、葉津梛さんや和津梛さんはこの私の考えに対してどう思われますか?」
正直…やはり凄いな、と思った。私達はゆう君が居なくなった状況やその後にどうしてこの水晶が手に入ったかを聞いたりしていたから、対して怪しむこともせずにゆう君の手掛かりとして持っていたが…それを知らない静姉は自力で色々調べていき持っていても問題がない事の確認もした上で所持していた。
そして、私達に再会して水晶の情報を手に入れて自身の考えをある程度まとめて私達に提案してきた。私自身も確証はないがほぼ合っているのでは無いかと思っている。
「うん…私も静姉の言う通りじゃないかと思ってるよ。というか今の所それしか考えられないかな?」
「私は…正直よくわかりません…。そうであれば良いなとは思いますが…何分情報が足りなすぎるので一概にこれが答えなのでは?とは言い辛いものがありますので…。」
「そうですね…確かにこれが答え、と言い切るには証拠が足りないですね。もっと正確な情報があれば良いのですが…葉津梛さんと和津梛さんは何か思い当たる事はないですか?」
静姉にそう聞かれたが、今の私達にこれ以上の答えは出せなかった。今まで時間を掛けても大した情報を得られる事が出来なかった。
「私達もこれ以上は大した事は知らないの…手掛かりが無さ過ぎて…。静姉は他に何か手掛かりは無いの?」
「私もこれ以上は他に手掛かりを持ってません、これと同じ水晶を探す事が出来れば良いのですが…。」
「それは…流石に難しいのでは無いでしょうか?静梛姉さんが持っていた事自体奇跡と言っても良い事ですのに。」
「確かにそうですね…そうなるとこれ以上の情報はありませんか…。」
ここで私は少し気になった…消えて無くなった水晶が静姉の元に来たのはただの偶然?それに5個ある内の3個が私達姉妹の元にあるのも偶然なのかな?
「…う~ん。」
「葉津梛姉さん?何かありましたか?唸っていますが…体調が悪いようなら休まれてはどうですか?」
「葉津梛さん?和津梛さんが言うように体調が悪いのでしたらお休みなられては如何ですか?」
「あ~いや…そういう訳じゃなくてさ、ちょっと考えていたんだけどね?5個ある内の3個がよくもまぁ私達の側に揃っているなぁと思ってただけだよ。」
「そう言えば!なぜこんな単純な事に気づかなかったのでしょうか?静梛姉さんもそう思いませんか?」
「そう言われてみればそうですね…何故この様な単純な事に気づかなかったのでしょう…もし…もしもこれが全部私達姉妹の元に全て集まってくるとしたら…あの方達の元に届いていたりする可能性もあるかもしれません。」
「それが本当なら連絡取ってみようよ!何か分かるかも知れないよ!」
「………。」
「……それは難しいかも知れません、葉津梛さん。」
「静姉…どうしてなの?」
「私達が連絡先を知らないからですね、葉津梛さんは知っておりますか?」
「わかんない…でも!和津梛!和津梛は知らないの!」
「すみません…葉津梛姉さん…私も知りません。何分あの人達は自由奔放な方達なので…。」
「そうだ!大兄か連兄なら知ってるかも!早速電話して聞いてみよう!」
「葉津梛姉さん!少し落ち着いて下さい!今、大樹兄さんと連枝兄さんはお仕事中ですよ?聞くにしてもせめて帰ってきてからにして下さい。」
「でも!連絡取るなら早いに越した事無いじゃんか!」
この時の私はただひたすらにゆう君に逢いたいという事しか考えておらず、この後和津梛が発した言葉に衝撃を受けた。
「葉津梛姉さん!…優良さんが…優良さんがどうして怪我をしたのか…忘れましたか?そして、それと同じ事を大樹兄さんや連枝兄さんにあわせるつもりですか?」
「あ……ごめん…私…そんなつもりじゃ…なかった。」
「なら落ち着いて下さい。もう身内の方があんな目に遭うのを見たくありませんから…。」
「うん…本当にゴメンね?和津梛…。」
「いえ…私も少し強く言い過ぎました…ごめんなさい葉津梛姉さん。ただ私も気持ちだけなら葉津梛姉さんと一緒ですから。」
「あの方達の連絡先は私の方でも調べておきましょう。二人共心配されなくとも大丈夫ですよ?このような不思議な水晶を調べろと言われると難しいですが、連絡先程度なら何も難しくはありませんので期待して待っていて下さい。
私が必ず調べて見せましょう。とは言ってもそれだけだと心も落ち着かないでしょう。ですので期日を設けましょう、3日あれば大丈夫です。3日後には連絡先をお持ちしましょう。
それでいいですか?葉津梛さん、和津梛さん。」
「うんっていうか…たった3日で調べきれるの?もしかしたら日本にいないかも知れないよ?」
「それを踏まえての3日、ですね。何も問題はないでしょう。私も優良さんに逢いたいので全力を尽くさせていただきます。」
静姉の話し方はとても冷静な喋り方をしているけど、これは相当気合が入ってるようだ。…そうか、静姉もそんなにゆう君に逢いたいんだ…ん?これってもしかしてライバルが増えちゃった?マズイ!今の私じゃ静姉に対してあまりアドバンテージを持っているとは言い辛いものがある。
ど、どうにかして私も有利になるような情報を集めなきゃ!せめてゆう君関連の何かしらを!取り敢えずは和津梛と協力して今までとは違った方法で情報を集めないといけない!
「和津梛!私達も待つだけじゃなくて、もう一度情報を集めてみよう!…そうしないと静姉にゆう君を取られちゃうよ!」
「葉津梛姉さん、気持ちは分かりますが今の私達では今まで以上の情報を集めるのは無理がありますよ?それよりも静梛姉さんが情報を集めてきた時の為に今までの情報をしっかりとまとめておくべきです。」
「うぅ~ん…でも…。」
「葉津梛姉さん…我慢しましょう。私もどうにかして自分の手で優良さんに関する情報を集めたいとは思いますが、下手に動いてより面倒な事になってしまっては迷惑を掛けてしまうだけですから。」
「うん…そうだね。わかったよ、私達は私達に出来る事をして待ってようか?だけど…もう一年近く経つけど本当にゆう君はどこに行ったんだろう?…逢いたいな…ゆう君。」
「そう…ですね、私も優良さんにまた逢いたいです。そして今度は二度と離れ離れにならないようにしたいですね。」
「うん…今度あったら絶対に離れてあげないんだからね!待っててよ、ゆう君!」
そうして私達は今まで手に入れて来た情報をできる限りわかりやすくまとめておく事にした。静姉も帰ってきたばかりで悪いとは思うが、ゆう君に逢いたいのは静姉も同じ気持ちのようなので甘えさせてもらう事にしよう。
先々月に買った新品のキーボードが壊れてしまったので急いで新しいキーボードを購入してきました。前回の物は少し値段が安かったせいか、長く持ちませんでした。今回はかなり奮発したのできっと問題無い!と思いたいです。




