第40話 その地に佇むのは…
最近は読んで下さる方たちが更に増えてくれたようで、とても嬉しいです。評価やブックマークも数が増えてきてますます執筆意欲が湧いてくる毎日です。
自分の小説を読んで下さる方々がこんなにいてくれる事がとてもありがたく思っております。
読んで下さる皆様本当にありがとうございます!
「俺の気の所為なのかわからないんだけどさ…彼女達って妙に俺達にもたれ掛かり過ぎてる気がしたんだけど…この世界ではこんな感じで接してくるのが普通なの?」
「…どうかしら?私が知る限りで言うのなら、有り得ないわね。ユーラは簡単に送って上げるって言ったけど普通なら送るだけでもお金を取るわよ?そうでもないと乗り合い馬車の人達はお金を取る事が出来なくなってしまうわ。」
「…そうか最近の自分が横柄な態度を取っていないか心配になったからさ…もしかしたらここで断ったりしたら、上から目線の非道い奴になるんじゃないかと思ってさ。さっきのお宝の時もそうだけど少しぐらいならって思ってはいたんだ。でも、自分の目標もあるしどうしようか?ってね。」
「ちなみに目標って何?」
「その…少し恥ずかしいんだけどさ、俺達…俺とリィサやレナリアさんとユリーナさんが住めるぐらいの一軒家が欲しいなってさ…だから少しでも貯めておいて、いつかはどこかで買えたら良いな~と思ってさ…あぁ!なんか恥ずかしくなってきた~!。」
そこまで言って恥ずかしさから後ろを向いた俺にリィサが抱きついてきた。そして、俺に囁くように話し掛けてきた。
「ユーラはそこまで考えてくれてたのね…ありがとうユーラ愛してるわ。ここまで私達を大事に思ってくれるなんて…私達は幸せ者ね。」
「…俺の方こそ、いつも無理させてるはずなのに受け止めてくれてありがとう。リィサ達がいてくれるから俺だって頑張れてるんだ。だからありがとうリィサ。」
いつの間にか5人組の話から俺達の話に変わってしまったが、なんか幸せな気分に浸れてるのでしばらくこうしていようと思っていたのだが、どうやら見ていた彼女達はそれが気に入らなかったようで俺達の方に歩いてきていた。…せっかくの幸せ気分だったんだがしょうがない、これからどうするかを伝えるか。
「ま、またイチャついてるではないか!卑怯だぞ!どうして自分たちばかりイチャつくんだ!」
「いや…別に俺がリィサとイチャついて何が悪いんだよ、待たせた事自体は悪いとは思っているが卑怯とか言われる覚えはないぞ?」
「そうね…あなた達を待たせてしまった事は悪いとは思ったけど、私達は恋人同士だもの。卑怯と言われる謂れは無いと思うわよ?」
「な、なら、なら私もユーラ殿の恋人になる!だから私もユーラ殿とイチャつかせてくれ!恋人になれば良いのだろう?なら私も恋人になってユーラ殿とイチャつくんだ!」
……は?えっと…本当に何を言っているんだ?マジで意味がわからない。どうしてそうなるんだ?今までのやりとりでどこに好意が上がる要素があったんだ?本当にわからないんだけど…どうなってるんだろう、誰か教えてくれ…。
「ちょっと!シェイラあんた何を言っているのよ、しっかりしなさい!馬鹿な事を言ってユーラさんを困らせないで。それにあんたは忘れたの?師匠は今もずっと私達が来るのを待っているのよ?師匠がどうしてああなったのかを私達が忘れたら駄目なのはわかっているはずでしょ?それなのに……私達は決着が着くまで寄り道してる暇は無いはずよ!」
「ッ!………ごめん、そうだった。私達は…師匠を…………行こう…。」
「…何だったの?ユーラは今の行動に思い当たる事でもある?」
「少なくとも急にあんな事を言われるような事をした覚えはないな…。正直俺も意味がわからないしな。…理由はともあれ彼女達は次の行き先を決めたようだし、俺達もここから撤収しようか?」
「そうね…行きましょう、長居するような場所でもないし帰りましょうか。」
盗賊の住処から出てきた俺達はこの場を離れる前に誰も入れないように細工をして立ち去った。こうしておけば今回の盗賊のような連中に使われる事も無いだろう。これでここら辺も多少は安全になるのではないだろうか。
馬車まで帰る途中は誰も喋る事もなく、ただ黙々と馬車まで歩いていった。馬車まで辿り着き乗り込んだ後も5人が何かを話す事はなく、ただひたすらに沈黙を続けていたので俺は馬車を侯爵の街であるインペスタに向けて再度向かわせる事にした。
移動中ふと外が気になったので操作室に移動して外を眺める事にしたのだが、外に広がる光景を見て思わず絶句してしまった。それは見渡す限りの一面が紫色をしていたからだ。なんだコレ…それに所々では紫色した蒸気のような物が漂っているまさかとは思うがガスなのか?それにあまりにも不気味な色をしているがこの見渡す限りの全てが毒とか言わないよな?あまりにもおかしな状況に俺の頭の方がおかしくなりそうだ…。
俺が唖然とした表情で外の状況を見渡していると、いつの間にかリィサ達3人が俺の側に来ていた。
「なんなのコレ…まさかこの全てが毒なの?どういう場所なの?ここって…。」
「凄まじいですね…昔に一度だけ見た毒薬に似た色をしていますね。この全てが毒だとしたらここに生物は存在する事は出来ないのでは無いでしょうか……。」
「私が前に言った場所はここの事ですよユーラさん…。ここなら多少派手な事をしても問題ないと思いますよ。ただここまで紫色の範囲は広くなかった気がするんですけど…どうなってるんでしょうね?」
いつもの間伸びした喋り方をしないユリーナさんだ、という事はユリーナさんも彼女達に少なからず影響を受けてしまっているのだろう。あまり嬉しくない状況だ。せっかくの旅だというのにこの沈んだ雰囲気のせいで皆が暗くなってしまっている。彼女達を一緒に連れてきた俺の判断は間違っていたのだろうか?そう思い馬車の中を見渡していたのだが、そんな俺を見たリィサが首を横に振り、まるで俺は悪くないとそういってくれてる様な気がした。
俺があまり気にしすぎるのも良くない気がするので、気を逸らす為に外を眺める…。本当に凄いな…この全部が毒ならとんでもない世界だ。この光景を見ているとやはりここが異世界なのだと思い知らされるな。……しばらく無心になって外の光景を眺めていたのだが、辺り一帯に広がる毒の沼?とでも言えばいいのだろうか?一際大きな毒の沼の中心に何かが見える。その物体まで今は距離がありよく見えないが、何なのだろうか?
「なぁリィサちょっといいか?、あの毒の沼の中心に何か見えないか?今までの毒の沼には無かったのに、この一番大きな毒の沼にだけあるから気になったんだけど何かわかる?」
「…私はわからないわね。そもそもこの辺りに来るのが初めてだから、こんな場所があるのも今知ったもの。」
「私もわからないですね。この様な場所がある事自体初めて知りました。」
「私は知ってますよ~。さっきも言いましたけど、私がトライフルの街に行く前に比べてかなり大きくなった様な気がします~。」
「それってどういう事なの?」
「すみませ~ん。流石にそこまではわかりませ~ん。」
「いえ、別に謝ってもらう程では無いので気にしないで下さい。」
馬車は徐々に近づいて行く、何があるのか気になってずっと見ていたのだが不意に馬車に備わっている警報が鳴り響いた。この音は!
「!ユーラこの音は何?何が起きてるの?」
「ユーラさん大丈夫なんですか?何かマズイ事でも起きましたか?」
「わわわわわ~なんですか?なんですか~。」
3人共慌てているが今は大丈夫だ。この警報は魔物が馬車に近づいてる事を知らせる物だ。つまり今この馬車に魔物が接近してるという事だ。それなら急ぎ迎撃体制を取らねば行けないが、今の時点ではまだ大した武器を搭載していない。せいぜい追い払うぐらいしかできないだろう。その間に急ぎ距離を稼ぎ逃げるしか無い。だがその前に3人にこの状況を説明しないと。
「リィサ、レナリアさん、ユリーナさんも慌てないで大丈夫だよ。この音は魔物がこの馬車に接近してきた時に鳴る様になっているんだ。」
「それなら早く逃げたほうが良いんじゃないの?追いつかれたらマズイんじゃ…。」
「あぁ大丈夫だよ、魔物を倒す事は出来ないけど追い払うぐらいはできるから。その間に距離を稼ぐ為に一気に加速するから。」
「よくわからないですが問題ないんですね、ユーラさん?」
「大丈夫ですレナリアさん、任せて置いて下さい。でもその前にどの方向に魔物が居るのかを確認しないといけないんだ。だから…。」
俺がそこまで言いかけた時に操作室の入口であるドアを激しく叩く音が聞こえてきた。しまった!彼女達に説明をするのを忘れてた!落ち着かせる為に説明をしないと。
「リィサすまないがドアを開けて彼女達を入れてくれないか?今の状況を説明しないといけないから。」
「わかったわ、今開けるわね。」
操作室のドアを開けると5人組が駆け込んできた、一気に操作室が女性で満たされていく。何かをしてるという訳ではないのだが、妙にテンションが上がる。そんな俺を置いて5人は突然の警報に驚いたようで、何があったのかと説明を求められたのでリィサ達にしたのと同じ説明をしてあげた。
「魔物が近づいて来てるなら早く対処したほうが良いのではないだろうかユーラ殿!」
「どの位置にいるか確認してから対処しようとしたけど、アンタらが駆け込んできたからまだなんだよ。」
「そうか…それはすまない事をしてしまった…。向こうで大人しくしておくとするよ。……な!あ、あれは!」
金髪巨乳さんが急に大声を上げて操作室から見える外の状況を見て驚いている。何だ?何かあるのか?何をそんなに驚いているのだろうか。
「…ようやく見つけた、こんな所に居たのか。…ょう…達が…ず。」
あれが何か関係あるのか?そもそもあれは一体何なんだ?よくわからないんだが…。5人が集まって離れた場所で話し合ってるな。こそこそとしてるが…何を話しているやら。関わると面倒な事になりそうだから聞き耳すら立てる気はないけどね。…どうやら何かを決めたようだな。頷きあって俺の所に向かって歩いてきてる。さてさて俺に何を言う気なんだろうかね?
「…ユーラ殿お願いがあります。私達をここに降ろしてもらえないだろうか。私達はあの沼の中心にいるあの魔物に用があるんだ。頼むユーラ殿。」
ん?あれって魔物なのか?もしかして警報が鳴ったのってアイツが原因かよ!全く…まさか自分から魔物に近づいていたとは…とんだマヌケな事をしていたようだ。しかし、おかしいな…ある程度の強さなら警報は簡単にはならなかったはず、あくまでも驚異になると判断された魔物でしか警報はならないはず。…ならあの魔物はかなりの強さがあるという事か?…彼女達を降ろしていいかどうか迷うな。下手したら死ぬ可能性がある。適当な理由をつけて降ろさずにこの場を離れよう。
「悪いが無理だ…今ここでアンタらを降ろす為に入口を開けてしまったらそこからあの毒ガスが入ってくる可能性があるからな。そんな事になったらアンタらは自業自得ですむかもしれないが、俺達はその巻き添えを食ってしまう。ハッキリ言ってそれはゴメンだね。という訳でその意見は却下だ。俺達はそのままインペスタの街に向かう。」
「ガ、ガス?何の事かよくわからないが、ユーラ殿達に迷惑は掛けない!だから私達をここで降ろしてくれ!このままじゃ…私達はまた機会を失ってしまう、お願いだ!」
もしかしてガスがどういう物かわかってないのか?それを教えれば引いてくれるかもしれないな。俺もあまり細かい事はわからないが、危険な物であると教えれば諦めてくれるかもしれん。
「駄目だ…同じ事を何度も言わせるな。よく分かってないようだから教えてやるが、あの紫色の煙のような物が見えるだろ?おそらくあれは毒だ、しかも空気の様に特定の形を持たないから間違って吸い込んでしまえば、まず間違いなく毒に汚染されるぞ?それでも降りるというのか?」
「そ、そんな…そんな危険な場所にいるというのか…師匠は……なら私達はどうすればいいんだ…。」
「師匠?ここからアンタらの師匠がいるのが見えるのか?」
「バカ!シェイラ何を言ってるのよ!その…違うのよ?シェイラは慌ててるからきっと勘違いしてるのよ。あはは……。」
「そうは見えないんだけどね…そうか…勘違いね、ふ~ん。俺はてっきりあの魔物がアンタらの言う師匠なのかと思っていたんだが、違ったのか?」
俺の言葉に5人は明らかに焦り始めた。シェイラに至っては自身が口走ってしまった事から顔が青ざめている。どうやら当たりかな?おそらくだが、俺と出会う以前に彼女達とその師匠に何かがあってその師匠とやらが魔物になってしまったのだろう。憶測の域を出ないがだいたいあってると思う。というかありがちな気がしたからなんだけどね。あぁやっぱり面倒な事になったな。俺ってステータスにトラブルメーカーとかついてるのだろうか?【創造神の恩恵】とかあったから変なデバフは付きそうに無いんだけどなぁ。
「…いくら何でも魔物が師匠とかない、ユーラさんは頭がおかしい…。」
「頭がおかしいとは言わないけど、魔物が師匠という事はないわよ。あれは…そう!私達の討伐対象なのよ、ようやく見つける事ができたからそれで焦ってただけなの!だから、その、どうにか私達を降ろす事が出来ないかしら?」
もの凄い挙動不審なんだけどな…なるほど、そう来るかぁ。なら…。
「そうか…なら俺が倒しても問題ないよな、早速だけどこの乗り物ってな基本的には追い払うぐらいしかできないけど、魔物を殺す事が出来ない訳じゃないんだよ。だから、アンタらが降りて戦うよりも俺がここから狙い撃ちにしたほうが安全だろう?だから俺に任せて置いてくれ。なぁーに安心してくれよ?魔物を倒した手柄はちゃんとアンタ達、戦乙女に譲るからな!早速準備をして殺すとするかぁ!」
その発言に焦りまくる5人、さてどうやって誤魔化そうとするかな?それとも諦めて俺達に情報を開示するか。さて、どっちを選んでくるかな?
「そ、その待ってくれ!あの魔物を殺さないでくれ!あれは私達の師匠なんだ!だからお願いだ、やめてくれ!」
「「「「シェイラ!?」」」」
「…お願い、何でもするから…だから…師匠を殺さないで…お願いだから…殺さないでよぉ。ししょーをころさないでください。おねがいします。」
……急に幼児退行したかのような喋り方になったな。しかし、やはりあれは元人間だったのか…彼女達はアレと対峙して一体どうしようとしたのだろうか?自分達の手で片を付けたかったのか?それとも元の人間に戻す方法でもあったのだろうか?それを聞かない限り彼女達を自由にするのはやめておいた方が良さそうだな。何とか理由をつけて彼女達をを縛り付けておこう。仮に元の人間に戻す方法があったとしても願い叶わず…と言う事もあるかもしれないしな…はぁ仕方ないな、放っておくと目覚めが悪いしな、どうにか彼女達から事情を聞いて手を貸すかね…。その前にリィサ達に今の事を報告しておこうか。
『リィサ少し良いか?レナリアさんとユリーナさんも聞いてくれ。』
『ユーラ皆まで言わなくてもだいたい聞いていたから説明は要らないわ。ユーラが彼女達と話してる間にこっちは意見をまとめておいたわ。私達の意見は「ユーラに任せる」よ。だから私達に気を使わないでいいわよ?ユーラがしたいようにしていいわ。それが私達3人の意見よ。』
『…わかった、ありがとうリィサ…レナリアさんもユリーナさんもありがとう。せっかく助けた人が死にに行くのを見届ける訳にはいかないからさ…だからお節介をしてみる事にするよ。何かあれば3人も手を貸してくれると助かるよ。』
『勿論!(よ)(です)(ですよ~)』
ふぅ本当に頼りになる恋人達だな…なら頑張ってみますかね!とりあえず彼女達に理由を聞く事から始めてみるかな。
「なぁ…他人の俺が聞いてもいいかわからないけどさ、誤魔化さずに教えてくれないか?あの魔物とアンタ達、戦乙女の関係をさ。もし話してくれるなら可能な限りだが、俺も手を貸すぞ?どうだ?話してくれないか?」
彼女達はお互いに顔を見合わせて頷いている。この雰囲気なら聞かせて貰えそうだな。彼女達の話す内容次第では忙しくなりそうだ。こりゃしばらくインペスタの街には行けそうにないな。ゴメンよゴリラ侯爵…ドラミングでもして待っててくれ。
「話を聞いたら本当に私達に手を貸してくれるのか?」
「あぁさっきも言ったが俺に出来る可能な限りという条件は付くけどな?で、どうする?」
「わかった。なら話をさせてもらう、ただあまり話がうまくないから拙いかもしれないが出来たら最後まで聞いて欲しい。それでもいいなら話させてもらおう。」
「それでもいいから話してくれないか?」
「そうか…わかった。まず事の始まりは私達が冒険者になったばかりに起きたんだ。それは……。」
さて、出来るならあまり長くなりすぎないように要点を抑えて話をしてくれると助かるが…どうなるかな?
調子よくヒロイン候補が増えていきますが、簡単にとはいかせません!
優良君には苦労して頂きましょう!




