第31話 ユリーナさんの正体
普段当作品を読んでいただいている皆様、そして評価していただいている方々、ブックマークしていただいている方々へありがとうございます!PV数が10000を超えておりました!こんなにも読んでいただき本当にありがとうございます!これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします!
どうやら朝食はあまり力を入れてないのか、普通にちょっと固めのパンとたっぷり野菜のスープ、それに薄くスライスされた何かの肉を焼いた物が数枚程度乗った物だけだった。う~むちょっと物足りない感じだ。あとで何か買ってから行こうかな?あ!そういえばこの街って屋台とか無いんだった。ものすごくがっかりだ、しょうが無いあとでマイバッグから肉でも取り出して焼いて食うか。
俺達が食べ終えるのを待っていたのだろう。ギールさんが手に革袋をいくつか持って待っていた。
もしかしてチャージラビットの買取金かな?あとは昨日言っていたユリーナさんの給金だろう。結構な数の革袋を持っているのでその幾つかはユリーナさんのものなんだろうな。そう思いながらギールさんに近寄っていくと、ギールさんが声を掛けてきた。
「おう、おはよう!起きるのが結構早いんだな。昨日はよく眠れたか?」
「えぇバッチリです、とても気持ちよく眠れましたよ。程よい疲労感が後押ししてくれましたね。」
俺がそういうのと同時に3人が頬を赤らめて俯いている。美女が顔を赤らめている姿は大変よろしいものですな。そう思いながら3人を見ていたら、ギールさんが俺を驚愕するような目で見ていた。なんだ野郎に見られて興奮するような趣味は持ち合わせてないぞ。こっち見んな。
「なぁ兄さん、少し聞いてもいいか?まさかとは思うが…その…なんだ…3人を相手にしたとかじゃないよな?いくらなんでもそんな事は無いよな?」
「えぇ、いくらなんでもそんな事出来るわけ無いじゃないですか~。やだなぁ、きっとあれですよ?何か想像し過ぎたんじゃないですか?」
「ハハハ!そうだよな!いくらなんでもな…3人とも顔が赤くなってるから、もしやと思ってな?そうだよな、ハッハッハ!っと笑ってる場合じゃなかったな。まずはユリーナから渡そうか。ユリーナの給金はこれだ、今までありがとうよ。お前さんのおかげで随分楽ができたぜ!ほんの少しだがいつもより多めに入れといたぜ。じゃあ元気でな!気をつけて故郷に帰れよ。」
「はい~ありがとうございます~。次はいつ来れるかわからないですけど~またこれたらいいなと思ってます~本当に今までありがとうございました~。」
「よし、次は兄さんだな!兄さんはこれ全部だ、受け取ってくれ!」
そう言われて見たものは置かれていた革袋のほとんどだ。ユリーナさんが受け取ったのは、テニスボールぐらいの大きさの革袋が1つだけだが、それ以外のバレーボールサイズの革袋がちょうど12個あるのだが、その全てが俺のものらしい。いくらなんでも多くないか?そんなに希少性があるように見えないのに、何故こんなに大量の革袋があるのだろう?
「あ~流石に驚いたようだな。期待させて悪いがこれの中身は殆どが銅貨や大銅貨なんだよ。流石に平民の俺が大量の金貨や銀貨は持ってなくてな。知り合いの商会に頼んで準備をしようとも思ったんだがな。あいにくと最近大量の金貨を両替した人が居るらしくてな?そのせいで金貨で準備できなかったんだよ。悪いけどそのまま受け取ってくれねぇか?チャージラビット200匹分を依頼料込で100万リルだ。すまんがコレ以上は出せないんだが…どうだい兄さん?」
「えぇ問題ないですよ。しかし自分にこれだけのお金を渡したりして宿の経営は大丈夫なんですか?なんでしたらこの半分でもいいですよ?いい食べ物に巡り会えたので。」
「ハッハッハ!兄さんは本当にチャージラビットの丸焼きが好きなんだな?それは料理人冥利に尽きるってもんだが、その金はしっかりと受け取って欲しいんだよ。兄さんが心配するほど、うちの宿は金に困ってねぇよ?宿の代金でも十分元はとれるが、うちは他の宿と違って料理に自信があるからな。それだけでも結構な金を稼げるんだよ。その上昨日あれだけのチャージラビットを仕入れる事ができたからな。何も問題は無いんだよ。だから気にせずに受け取ってくれ。」
「わかりました、ありがとうございます。でもそれとは別にコレって殆どが銅貨や大銅貨で銀貨は入ってないんですよね?お釣りとか不足したりしないんですか?」
「あぁ兄さんは知らないのか?実はなこの国の鉱山って銅ばかり多く取れるらしくてな?どれだけ出しても全然減らないそうなんだよ。逆に銅は他の国に売り込んで金や銀を仕入れてるらしいからな。この国の銅はかなり良質らしくて結構高値で売れてるらしいぞ?だから兄さんが釣り銭不足を気にする必要はないよ。荷物になるかもしれないが受け取ってくれ。(ってそう言えば兄さんはアイテムボックス持ちだったな、いらぬ心配だったか?)」
「(ハハッそうですね、気にしないで下さい。)では今度こそ気にせず受け取る事にしますよ。ありがとうございます。」
「そんなに何度もお礼を言われてもこっちが困るぜ。あぁそうだ!足りない分って訳じゃないんだけどよ、昨日作ったチャージラビットのあまりで悪いが簡単なメシを作ったんだよ。人数分包んであるから持っていってくれ。兄さんの分だけ特別に多く準備したぜ。昨日の食いっぷりを見てたがありゃ見てて嬉しいもんだったぜ!残さず食ってくれるのは料理人としてはかなり嬉しいからな。昨日ほどはないがそれでも1人前にしては多くしたつもりだからな。旅の途中にでも食ってくれよ。」
「それは本当ですか!またあれが食べられるんですか?ありがとうございます!ギールさん!本当に!ありがとうございます!」
「お、おう!金を受け取った時よりも興奮してんな。変わった兄さんだ。まぁ料理人としては嬉しい限りだがな。」
そうかそうか!また食べれるんだな~あの肉が!マジで嬉しいよ。向こうにいる時から食べる事は俺の数少ない楽しみの1つだったからな。こうやって未知の美味しい食べ物に出会えるのはこの世界ならではな感じだな。この世界に呼んでくれた女神様に感謝だな!あれ?そう言えば女神様と言えば最近女神様に会ってないな?もしかして忙しいのだろうか?この世界の管理者って言ってたし、何か理由がるのかもしれないな。今度おじいちゃんに聞いてみよう。今の目的はとりあえず侯爵の領地に向かう事だ。考え事は後にしておこう。
「それじゃあユリーナさん別れの挨拶は済みましたか?」
「はい~大丈夫ですよ~。いつでも旅に出れますよ~。」
俺がギールさんと話してる間にユリーナさんは他の従業員に別れの挨拶をしていたようだ。何人かは涙ぐんでいる人もいるようだ。どうやらユリーナさんはこの宿でいろんな面で頼られていたようだ。それもあって皆別れを惜しんでいるようだ。
「また機会があれば~ここに寄りますから~そんな顔をしないで、ね?大丈夫、皆なら頑張れるよ。だから笑って見送って欲しいな。」
ユリーナさんのセリフの後半に妙な愛情のような物を感じた気がした。まるで姉が妹をなだめるようなそんな感じだ。もしかしてあれが本当のユリーナさんなのだろうか?優しいお姉さんか…向こうに居た時に勤めていた神楽坂工務店の姉妹を思い出すな…。おっと!俺までしんみりしてしまったな。そろそろ行くかな?時間が無いわけではないのだが、このままじゃきりがないのでユリーナさんにそろそろ行きましょうと声を掛けた。
「みんな~じゃあね~またいつか会いに来るからね~。」
大きく手を振りながら少しずつ宿から離れていく、一瞬だけユリーナさんを見ると涙ぐんでいるように見えたが、見ないふりをしておいた。あまり気にしてもどうかと思うしね。それに俺もつられてしんみりしそうだから気にしないようにした。
街の出入り口に近づいてくると見慣れた人達が待っていた。どうやら俺達が来るのを待っていたマシイナ伯爵達のようだ。この人達にも挨拶は必要だよね。一応一度旅立ちと別れの挨拶はしているが。
「ユーラ殿今回は叔父上が無理を言って本当に申し訳ない。また私もうまく止める事が出来ずに不甲斐ない思いだ。ここに今一度謝罪を、本当に申し訳なかった。力になると言っておきながらとんだ体たらくを見せてしまった。後ろ盾を持てといいながら何も出来ずすまないとしか言いようがない事をどうか許していただきたい。どうかこのとおりだ。」
出会い頭にそう言いながら頭を下げる伯爵。こちらの言葉を待たずして勢いに任せて言ってきたな。まぁ流石に俺ももう怒ってはいないのだが、どうやら伯爵はずっと気にしていたのかもしれない。伯爵が気をもんでいる間も俺は武器屋で暴れたり、宿でイチャイチャしてたりしてたんだがな…。ん?もしかして武器屋でセルディオさんを呼んだ時にちょっと怒っていたような気がしたが、伯爵がこんな状態なのに俺が冗談半分で呼んだから怒っていたのかな?う~む、十分有り得るな。可能性としては無きにしもあらずだ。この人なら離れていても俺達が何をしているか調べるぐらいわけもないだろうし。
そんな事を考えながら伯爵の謝罪を聞いていたら、セルディオさんが近寄ってきて、耳元でこっそり告げてきた。
「(ユーラ様この度は私が至らないばかりに無用な配慮をさせてしまい大変申し訳ありません。ユーラ様が考えて居られる通りで合っております。旦那様が苦しい思いをされてる時にお呼びになられたので、少し不快な気分で居たのは確かですが、ユーラ様方に苛立ちを覚えたのではなく、街の者達がことごとくユーラ様に迷惑を掛けてしまった事になのです。決してユーラ様方にではございません事をご理解頂きたく思います。)」
そこまで言った後に素早く伯爵の背後に戻るセルディオさん。いくら素早く戻っても頭を下げたままの伯爵にはばれないかもしれないが、周りにいる人達には見えているだろうに…伯爵にバレなければいいのかな?そう思っていたらリィサとレナリアさんに両側から肘でつつかれた。いつまでも頭を下げさせたままじゃイカンだろうと言う事なんだろうな。
「頭を上げて下さいマシイナ伯爵。今回の事は勉強になったと思っているので気にしない事にしました。それに、これは俺自身が腕を磨く機会でもあるのでちょうど良かったんですよ。だからこれ以上は気にしないで下さい。」
俺にそう言われたマシイナ伯爵は頭を上げて俺の顔を見ながら今度はお礼を言ってきた。
「本当にすまなかった。それとあれ程の一品を作ってくれて本当にありがとう。私も1人の貴族として箔がついて嬉しい限りだ。ありがとうユーラ殿。」
「気に入ってくれたのなら何よりですね。作った側としても末永く使ってくださると嬉しいです。どうか大切にして下さい。」
「勿論です、子ができた時にはあれを大切にするように言明しておきましょう。代々の宝にして参りましょう。」
「そこまで言ってくれるのは嬉しいですね。それではここまでにしておきましょうか。今まで大変お世話になりました。またいつか会えるのを楽しみにしてます。」
「ユーラ殿達もどうか無事に旅が出来ますように、神に祈っております。どうか良き旅を!」
「えぇそれでは、また会える日まで。」
その一言を別れに告げて街の出入り口から出ていく。馬車ではなく徒歩で向かうと言ってあるので、特に何かを言われる事はなかった。始めは危険だからせめて馬車を使った方が良いと言われたのだが、強くなるために鍛えながら行くというと渋々ながら引いてくれた。きっとレナリアさんを危険な目にあわせたくない為なのだろうが、それだとこっちに不都合が生じるのだ。どうせ、馬車を貰っても使わないしね。しばらくは徒歩で街を離れていき、流石に見えないだろうと思う所で準備していた俺の自信作を出す予定なのだ。
「それにしても旅かぁ。この街に来るまではずっと1人だったからなぁ、こうやって3人も増えるとなんかすごい違和感があるな。」
「そうなの?てっきりこの街に来るまではどこかに家があるのかと思っていたのだけど違うの?」
「私は知っていましたよ、初めて会った時にユーラさんは大森林から1人で来たとおっしゃっていらしたので。」
「へぇ~それはまた物騒な場所から来たんですね~。よく今まで生き残れましたね~。」
言わんとする事はわかるがユリーナさんはたまに言っている言葉そのものが物騒だな。この人の発言には注意しておこう。しかし、そろそろ聞いても問題ないかな?レナリアさんが宿屋で言い淀んでいたのが気になるから今のうちに聞いておこうかな?
「ねぇレナリアさん?さっき宿にいる時妙に言い淀んでいたでしょう?あれは何かあったんですか?」
「……それはユリーナさんについてですね。私は正直に言って駆け引きが得意ではありません。ですから率直にお尋ねします。ユリーナさんあなたは何者ですか?ただの平民が他領の領地をよく知ってるのはなかなか無い事です。あの街に住んでいると言うならわかります。ですが、私はあの領地にあなたの様な方が居るとは聞いた事がありません。だからもう一度聞きます、ユリーナさんあなたは何者ですか?」
「私ですか~私はユリーナ・セッテ・フォースター。スルト・セッテ・フォースターの娘で私は長女になります~。それで~お仕事を終えたら~家に戻るように言われてましたよ~。」
は!?何、ユリーナさんって貴族なの?嘘でしょ!貴族らしさが皆無じゃん!気品がある可愛さや美しさというよりは天然ホワホワなお姉さんって感じしかしないぞ!マジなの?
「やはり貴族でしたか…しかしおかしいですね。普通貴族の家族構成は王都に報告して記録する義務があったはずですが、その記録にユリーナさんの名前は無かったはずですが…。」
「それは簡単ですよ~元々私の事は生まれてから一切報告をしてないそうなので~私は平民として偽装されてましたから~。」
「…何故ユリーナさんの両親はそんな事をしたのかしら?下手をすれば王に弓引く行為だと見られかねないんじゃないかしら?」
「そもそも~私は側室のお母様から生まれたらしいのですが~どうも私のお母様は~正妻のお母様に疎まれていたのではないかと言ってました~。しかも正妻のお母様が子を生む前に~側室のお母様が先に私を身籠ってしまったので~余計に仲が悪くなったと聞きました~。」
「…それはまたなんとも言えないな…貴族ってやつはそんなに愚かな事をするのか…度し難いな。」
「流石にね…子を捨てるのは平民だけじゃないって事ね。私だっていつの間にか捨てられてて小隊長に拾われて暗部で隠密活動だからね。貴族だけが子を捨てるわけじゃなくてどうしようも無い奴らが捨てていくのよ。」
「まぁそれはさておき~そんな私なので身元をわかりづらくして~よその領地に侵入するのは~とても簡単だったんですよ~。あとはそこで周りの人から信頼を勝ち取れば~何の問題もないんですよ~。」
「ユリーナさんの身元もだいぶ気になるが結局あの街に侵入して何を調べていたの?何かヤバい事?」
「そうですね…それは私も気になりました。一体何を調べていたのですか?」
「それはですね~普段からマシイナ伯爵様がどれだけの仕事をこなしているかを~確認する事ですね~。」
「……それで?他には?」
「それだけですよ~あ~あとですね~それを調べ終えたらそれを報告書に書いて~書いた物を受け取りに来た人に渡すだけですね~。」
「具体的には何を書いたの?マシイナ伯爵の弱点になるような事を調べて書いたのかしら?私が知る限り屋敷や伯爵の周りに不審な人物がいたという情報は無かったのだけど。」
「それは簡単ですよ~。今日は伯爵様が屋敷から出てきませんでしたとか~、宿の配達の仕事をしていたら偶々伯爵様に声を掛けられたとか~そんな事を書いて渡してました~。」
「え~と、それだけ?」
「はい~それだけですよ~それが何か~?」
マジか!それは報告書に書いて渡すようなものか?というよりもこんな情報じゃなくもっと役立つ情報をよこせとか言われなかったのか?ちょっとよくわからん状況だな。もう少しよく聞いてみよう。
「ユリーナさんちょっと聞いても良いかな?」
「なんですか?ユーラさん、ユーラさんになら私の事でもお家の事でも何でも教えますよ~。」
「ユリーナさんの事も興味はありますが、まずは家の事を聞かせて貰えませんか?例えば報告書に伯爵が屋敷から出てきませんでしたって書いたと言いましたよね?それに関してもっといい情報をよこせとか言われなかったんですか?」
「いえ~全然言われませんでしたよ~それどころか~よくやった褒美をやるって言って金貨を5枚も貰ったんですよ~。きっと私いい仕事をしたんですよ~。」
これはますますおかしい、なんか妙だな違和感が凄い。何か妙な思い違いをしてるんじゃないか?これはもう少し話を聞いた方が良さそうだ。何か俺の直感がこの状態を放置すると、とんでもない事になると言っている気がする、主に俺が……。
そろそろ神楽坂姉妹の話を書こうかと思っております。もしかしたら使い捨てキャラみたいに思われてないかと思ってですね?違いますからね!ちゃんと彼女達も本編に関わってきますからね!(壮大なネタバレ)




