第29話 大食いチャレンジをしてるわけではありません!
なんとか間に合いました~。
宿に戻ると既に夕食の時間は始まっていたみたいで入り口から既にいい匂いが漂ってきたいた。あぁこれだ、この匂いだよ。楽しみにしてたんだ!早く食べに行こう。そう思い3人に声を掛けようとしたら、3人ともいない…。あれ?どこに行ったんだろう。周囲を見渡して見ると3人が5人の男に囲まれていた。しまった!丸焼きが食べたい一心で周りを全く見ていなかった。さっさと3人を回収して夕食にしよう。
「なぁいいだろ?一緒にメシを食おうって言ってるだけじゃねぇかよ。本当にそれだけだって、だからいいだろ、な!」
「そうそう一緒にメシ食べるだけだってそんなに警戒すんなよ。俺達って紳士だからさ大丈夫だって。」
ぺちゃくちゃとくだらんセリフを言ってるバカどもが居るな。鬱陶しいのでさっさと黙らせよう。
「お~い3人ともこっちこっち早くこないと食べれなくなっちゃうぞ!そんな奴ら無視してこっちに来いって!」
「はぁユーラ…そんな事言わないで、さっさとコイツラを片付けて頂戴。私達もコイツラは鬱陶しくてウンザリなのよ。」
「そうですよユーラさん。こんな人達に構っていたくないですけど、邪魔で通れないんですよ。」
「ですね~ひたすらに邪魔ですね~見るからに気持ち悪いですよ~。片付けをお願いしていいですか~ユーラさ~ん。」
俺にバカどもの片付けを頼む3人…まぁ良いんですけどね?恋人を守るのは男として当然だから。でもそこにユリーナさんが入ってるのは何だかな~仕方ないな…チャッチャッとお片付けしましょうかね?
「あぁん何だテメェ邪魔すんじゃねぇよ、俺達が先立ったんだぞ!あとから来て偉そうにしてんじゃねぇよ!おっと手が滑ったぜ!」
そう行って俺に殴りかかってきたおバカさん1号に見えない速度でアゴを掠める様に一撃をくれてやったこれやられると脳が揺さぶられるようで足に力が入らなくなる上に目の焦点が合わせきれなくなるんだよね。とまずは一人目ダウンです。お次の方どうぞ~。
「てめぇハンに何しやがった!ぶっ殺してやる!」
2号君が突っ込んできたので鳩尾にかる~く親指で押してあげた。突っ込んできた勢いがあるので全く力を入れずにただ構えているだけ。ただそれだけでも…。
「…グ…グヴォオエェ…グゥ…フゥ…」
となりますね。吐きそうになる一歩手前ってやつですね。この状態になると若干ではあるが気分が悪くなる。思考がまとまらなくなりますね。はい次の方どうぞ~。
「お、オイ、3人でやるぞ!それならどうにかなる。こんなヒョロいやつに俺らがやられるわけがねぇ!さっきのもただの偶然だ!死ねこの野郎!」
「そうだ!殺っちまおうぜ。どうせこんなヤツが死んでも大した事にならねぇよ。」
「殺して街の外に捨てちまえば魔物のエサになるんだ、誰もわかりやしねぇよ!」
ではまず1人目偶然ではありません、必然です。ドゴ!2人目俺が死んだら結構騒ぎになります。下手したらこの街が世界から消えます。バキ!3人目ここは食堂の入口です食堂に居る皆が見ています、それと街の外に出る前に衛兵に見つかります。ボゴ!つまりどういう事か?あなた達5人は馬鹿です。
「はいお疲れさまでした~お馬鹿さん達。あとは衛兵の皆さんにおまかせしますので、今日は牢屋という宿泊所に泊まるといいですよ?よかったですね!きっといい夢が見られますよ?それでは~。」
既に宿の入口には見覚えのある衛兵が待ち構えていた。確か伯爵の屋敷にいた人達だ。この人達なら任せても問題ないだろう。そう思って衛兵の人を呼ぼうとしたら、横一列に並んで待っていた衛兵の間からまさかのセルディオさんが出てきた!あれ~何で?
「ユーラ様この者達の身柄は私が預かりましょう。心配なくともユーラ様方が街から出発なさるまでは絶対に牢から出す事は致しません。それと教育も兼ねていろいろ教えておきますので。」
「…それならお願いします、セルディオさん。」
「はい決してユーラ様がこれ以上不快な思いをしないように配慮させていただきますので…ではこれで失礼をさせていただきます。…この不届き者達を屋敷の牢へ…まずは身の程というものを教えなければなりません。」
俺を睨もうとした5人だがセルディオさんの手が一瞬だけブレたのが見えた。それと同時にガックリと動かなくなる5人…。おそらく何かをしたのだろうが、まったくわからなかった。俺のステータスでわからないとか…本当に何者なんだろうか?謎が深まる一方だ。
「じゃああとはセルディオさんにまかせて俺達は食堂に行こうか。じゃああとはお願いしますね、セルディオさん。」
「は~いそれじゃあ行きましょう~。」
「お願いしますね、セルディオさん。(ユーラさんを傷つけようとした不届き者達に情けは必要ありませんよ。)」
「…お願いします、セルディオさん」
「皆さんお気になさらずに決して皆さんに害が及ばないように致しますので、快くお食事をなさって下さい。ではこれで失礼致します。」
追加のお馬鹿さんを連れて宿から出ていくセルディオさんと衛兵達。セルディオさんは頭をさげて、衛兵達は敬礼をして去っていった。そして俺達はというと素知らぬ顔をして食堂へと入っていく。既に夕食を取っていた人達は俺達を見て戦々恐々といった感じだが、俺達は特に何か騒ぎを起こす気など毛頭ないのだ。だからそんな怯えた目で俺達を見ないで!だがそこにこの状況を振り払ってくれる人が現れてくれた。そうハg…ギールさんだ!
「誰が騒いでるのかと思えば、お前らだったのか。さぁさぁ!そんな所に突っ立ってないで席に座ってくれ、お前たちの分はしっかりと人数分準備してあるからな。今すぐ持ってくるから座って待っててくれ!」
俺達に喋る暇を与えずに準備が出来た事を伝えて厨房に行ってしまったギールさん。まぁいいかお腹が空いているのは確かだからな。そのまま座って待つ事にした。
それにしても何か今日はいつもよりいい匂いがする。何が出てくるのだろうか?今から楽しみだ。
そして待つ事2分程してからギールさんが丸焼きを持ってやってきた。相変わらず大きいな。これがまた食べごたえがあるんだよね!
「ホラよ!待たせたな、今日のチャージラビットの丸焼きは特別使用だぞ。いつもなら香草を使うだけなんだが今回のは香辛料をふんだんに使っただけじゃなく、いつもと違って焼き方にも工夫を凝らしてるんだ。かなりの自信作だから残さずに食ってくれよ?じゃあさっそく食べてくれ!俺は他の客の料理を出さないといけないからこれで行くが、ゆっくり食べていってくれ。それとユリーナはもうそのまま上がっていいぞ。今からじゃまともに仕事にならないだろうからな。それと今までの給金だが、兄さんと同じで朝に払ってもいいか?見ての通り忙しくてな、出来たらでいいんだがどうだ?」
「いいですよ~、あと本当に手伝いは大丈夫ですか~?食べた後でもいいならお手伝いしますよ~。」
「いや本当に大丈夫だ。最後の日くらいゆっくりしていけ。じゃああとは頼んだぜ、兄さん。」
「話は終わったか?それなら早く食べようぜ!これ以上は待ちきれないからさ、それじゃあいただきます!」
「「「………。」」」
「ん?どうしたんだ、食べないの?せっかくの出来たてが冷めちゃうよ?」
「ねぇユーラ?今のいただきますって何?初めて聞くのだけど…何か意味があるのかしら?」
「あれ?俺食べる前っていつもちゃんと言ってたぞ。伯爵の屋敷で食べる前もちゃんと言ってたし。」
「あら、そうだったかしら?なら聞いても良い?どういう意味があるの?」
「あぁいただきますの意味ねぇ…え~と確か犠牲になった動植物に対してその生命をいただかせていただきますって言うのを聞いた事があるなぁ。そんな感じの意味だったと思う…多分。」
「また随分と曖昧なんですね、しっかり調べてないの?」
「そうですね~神様への祈りと同じならしっかりと調べるべきだと思います~。」
「そうは言うがな~小さな頃から何も知らずに使ってきた言葉だからなぁ。食べる前にはいただきますで食べた後はごちそうさまでしたって言いなさいって教わってきただけで意味までは教えてもらってないからね。そう言われても俺は困るのですよ。俺の住んでた国の人だとその意味をしっかりと知ってる人のほうが少ないんじゃないかな?まぁこれも多分だけどね。」
「なんか結構いい加減ね、そんな事だと神様に対しての冒涜にならないかしら?」
「そもそもがなんだけどね、この挨拶ってさ神様に対してじゃなくてその調理された動植物にであって神様にではないよ?あとは…家畜や野菜なんかを育ててくれた人に対する感謝の気持ちだったりしたはず…。」
「なるほど、そういう事でしたか。納得しました。ですが神様に対しても感謝の気持ちを上げるのは普通では無いのですか?それとも、ユーラさんは神様を信じてはおられない方なのですか?」
「え~ユーラさんは~神様を~信じない方なんですか~?」
「ユーラどうなの?」
「俺?ん~昔は信じて無かったけど、今は信じてるよ。」
「それは何か信じられるような何かがあったのですか?」
「何がとは言えないけど、まぁ信じられる事が起きたのは確かだね。」
その神様と祖父母と孫の関係になりましたって言っても白い目で見られるか、不敬者扱いされるだけだろうから言わないけどね。まぁ見守ってくれてるのは確かだから、関係の無い人に信じて貰えなくても構わないけどね。とか思っていたら、おじいちゃん降臨ですよ。
『優良よ食事中にすまぬな、少し話して起きたい事があってのぅ。あまり長々と話す気はないからハッキリと言っておこう、よいかの?』
なんだろう?自分達の事を話してはいけないとかそう云う事なのだろうか?それならもとより勝手に話す気は無いんだけどね。
『良いか、優良よ。お主が気にならないのであれば儂等との関係を話すのは自由にして良いぞ。儂等は決してお主との関係を隠す気は無いからのぅ。神域では既にお主は儂等の孫という事で話が通っておるぞ。だからこの世界のどこに行ってもその地域に居る神がお主を守ってくれるであろう。存分に話すが良いぞ。もし証拠が必要なら儂等が直接その地を収める者達に教えてやるからのぅ。フォフォフォ。だからその娘達にも教えても良いぞ。儂が言いたいのはそれだけじゃな。ではな、今度はもう少し時間がある時に話すとしよう。これからも頑張るのだぞ優良。』
あ、ありがとうおじいちゃん…。こ、これは流石にどうなんだろうか?今はちょっと判断に迷うな。この件に関しては後で考えよう。気になりすぎてせっかくのご飯の味がわからなくなりそうだ。今は適当に誤魔化しておこう。
「とりあえず食べよう、本当に冷めちゃうよ。もったいない。」
「そうね…じゃあ私もいただきます。…でいいのかしら?」
「しっくりこないならいつもしてる通りでいいと思うよ?別にいろんな感謝の仕方があってもいいと思うしね。」
「せっかくだからね。それにユーラと一緒のほうが嬉しいかな?って思ったのよ……。」
オウオウ、リィサさんが恥ずかしがってますよ?いい顔してますね~バッチリ脳内に焼き付けておきますよ~。ん?なんかレナリアさんとユリーナさんが羨ましそうな顔してるね?レナリアさんはわかるけどなんでユリーナさんまでそんな表情?ますます嫌な予感がするんだけど…とりあえず見なかった事にしよう。下手にはまると大変だからね。
「ではユリーナさん私達も「「いただきます。」」これがユーラさんの言っていた丸焼きなんですよね?そのこれって1人で召し上がる物なのでしょうか?すごく…大きいですね。」
「そうですね~私も何度も見てきましたが、実は初めて食べるんですよ~。1人で食べられるか心配ですね~。」
「私もどうかしら?あまりにも大きすぎて食べきる自信は全くないのだけど…ねぇユーラ?ユーラは1人で食べ切れたの?」
「ん?あぁ俺―パリ!うん全然イケるよ。―モグモグッゴクン―これぐらいなら普通でしょ?皆も余裕でイケるって食べてみなって!」
一心不乱に食べている俺に不思議な物を見るような目で見ている3人。普通だと思うんだけどなぁ。まぁコレばっかりは強制するような事じゃないしね。食べきれなかったら俺が食べるから大丈夫だよって言っておくかな?
「3人共まずは食べれる分だけ食べなよ。食べきれなかった分は残していいよ。俺がしっかりと残さず食べるから。」
「そうなんですか?…(普通って何でしょうか?)」
「それは助かるわね、じゃあ食べきれない分はお願いね、ユーラ。(ユーラのお腹ってどうなってるのかしら?)」
「私も~食べれなかったら、お願いしますね~ユーラさ~ん。(ユーラさんはお腹も底なしさんなんですね~。)」
何やら小声で3人が言っているが、そんな事はどうでもいいのだ。ただひたすらに丸焼きを食うのみだ!それにしても前回食べた時よりも更に美味い!皮の部分にふんだんにまぶしてある香辛料に絶妙な塩加減、これがまた良いね。そしてそれが肉の部分にもしっかりと味がついていていい塩梅になっている。適度な大きさに切り分けて食べると断面から肉汁が溢れてくる。口いっぱいに頬張ると鼻から抜ける香辛料の匂いがより食欲を加速させる。付け合せに野菜が添えられているが、これはどうなんだろう?食べてみると肉に合わせてなのか、極端に味付けをせずに茹でてあるだけのようだ。たっぷりの油をとる事になるから箸休めみたいなものなのかな?だがしっかりと美味い。見た事がない野菜だが、さっぱりとしていてミントのような清涼感のある野菜もある。そしてスープだが、かなり透明で一見すると水にしか見えない。まさかここに来てただのお湯とかじゃないよな?そう思い飲んでみると…おぉ~もしかして何か肉類を使って出汁を取ったのかな?それをシンプルに塩と少しの香辛料で味付けをしてあるようだ。味が濃すぎないのでちょうどいい感じだね。パンは…相変わらずだね。あまり柔らかいとまでは言い難い感じだが、まぁそこまで悪いわけでもないのでいいか。
ここまで説明してる間に俺は自分の分を食べ終えた。時間にしてわずか10分程度かな?昔から早食いのクセがあり、なかなか抜けずに今に至る。本当はゆっくり噛み締めて食べたほうが消化にいいらしいのだが、クセとは恐ろしいもので気がついたら目の前の料理が消えている事が多い。さてクセの話は置いてといて、一緒に出された水を飲む。水は本当に美味いな。ミネラルウォーターを飲んでいるかのようだ。カルキ臭とか一切しないのだ。そんな事を考えながら3人を見てみると、3人共全く量が減っていない。どうしたんだろう?お腹空いてないのかな?夕食の時間には早すぎたかな?ところが3人ともよく見ると肉を突き刺した状態で手が止まっている。その上目が虚ろになっている。お~い大丈夫か~?
「3人共どうしたの?まだまだ沢山残ってるよ、しっかり食べないと力が出ないよ?」
俺がそう言うと3人して俺に向かってこう言ってきた。
「「「もう食べれないよ…ユーラ(さん)食べて下さい……。」」」
え~3人共だらしないなぁ。仕方ない残すなんて論外だもんね?残りは俺がしっかりといただきますよ。
「わかったよ、じゃあ3人共俺の所に寄せて貰える?全部食べるから。」
「え~と、ユーラ?自分で食べてってお願いしておいて何だけど大丈夫?無理はしないでね?」
「特に無理はしてないから大丈夫だよ?と言うかこれぐらいなら余裕だって!じゃあいただきま~す。」
2回目のいただきますをして、かき込むようにどんどん食べていく。苦しさなんぞ欠片も感じられないので、リィサの分レナリアさんの分ユリーナさんの分と食べていき、3人分の皿の上には肉の欠片すら残さずに食べきった。ちょうどいい感じにお腹満たされたね。まぁこんなものかな?食べようと思えばまだまだイケるが、別に大食いチャレンジをしているわけではないのでここらでやめておく。
「ユーラは一応人間よね?竜人族だったりとかしない?それか巨人族とかのハーフだとか…。」
「聞いた事もない種族だね?そんなの居るんだ~へぇ~。あぁ俺はちゃんとした人間だよ。変な事聞くな~リィサは。」
「「「………。」」」
何故か絶句する3人。俺おかしな事言ってるかね?そんな事無いよね?
「ま、まぁユーラが大丈夫ならいいわ。ギールさんにお礼を言ってから部屋に戻りましょう。流石に少しゆっくりしたいわ。お腹が一杯で動きたくなる前にね。」
「そうですね、流石に食べすぎましたので、少しゆっくりしたいです。ふぅ…。」
「私も食べすぎました~。もう手伝いはできそうにないです~。」
「そうだな…部屋に戻って明日の為に早く寝るのもいいかもしれないな。じゃあ部屋に戻ろうか?」
「えぇ、そうしましょう。」
「ハイ、ゆっくりお休みしたいです。」
「は~い賛成で~す。」
ん?なんで一緒に返事したんだ?単純に自分の部屋に戻る為に返事をしたんだよね?いくらなんでもまさか…ね…。
時間を決めてるわけではないのですが、できれば20時を目処に上げるようにしております。




