第24話 迷った末の決断
書く内容は頭の中にたんまりあるのですが、打ち込むのが遅くてなかなか進みません。もう少し早く打ち込めるようになりたい。今だにブラインドタッチができません。
ようやくゴリラ侯爵のむさ苦しい抱擁から解放された俺は癒やしを求めてリィサに近づいて行った。ハグしてもらおうと思ってたのに、またもゴリラ侯爵に邪魔されてしまった。
「ユーラ殿!してどうなのだ。ワシの家にも来て同じ物を取り付けてくれないか。ワシの一撃をものともせず傷一つつかないとは驚きの一言だ。頼む来てくれこの通りだ!」
ハッキリと言わせてもらいたい。面倒だ。とてもとても面倒だ。俺が伯爵に作って上げたのは、屋敷に泊めてくれたからというのもあるが、俺に対して貴族の後ろ盾を持つべきだ。と忠告してきたからだ。正直な話泊めてくれたお礼半分余計な忠告に対する嫌がらせが半分と言った所だ。そんな理由があって作ったのになんでわざわざなんの関係もないゴリラ侯爵の家に行って作ってやらなきゃならんのだ。
しかもだ、このゴリラ侯爵の息子である豚貴族(第15話参照)には随分な迷惑を掛けられたのにだ。しかもしっかりと謝ってもらった記憶がない。適当に流して責任は取る!みたいな感じであとはなぁなぁになった気がする。それなのに、俺に伯爵と同じ物を作ってくれ?馬鹿なの?作るわけないじゃん。侯爵という上位の地位にいるせいで礼節というものが欠けてるんじゃないの?そんな人には作りたくありません!でも、俺が言うと角が立ちそうなので早速伯爵に一仕事していただきましょうかね。
「マシイナ伯爵少しいいですか?ちょっとこちらに。あぁ侯爵は待っててくださいね。」
俺は少し離れた所で伯爵と話す事にした。侯爵の相手はセルディオさんがしてくれるようだ。あの人なら大丈夫だね!
「伯爵はっきりと言わせて貰います。侯爵のお願いは俺としてはとっても迷惑です。なので早速後ろ盾として侯爵を抑えて下さい。あの人は凄くすごーく面倒です、相手をしたくありません。自分の息子がした事に対する謝罪も無いのに、いきなり自分にも同じ物を作ってくれ?あの人は何を考えているんですか?侯爵だからとその地位に甘んじて自分の息子が仕出かした事に対する謝罪もしない、そんな礼節を欠いた人には関わりたくありませんので。伯爵の方で対処して下さい。お願いします。
あ~あと俺達はそろそろ王都に向けて旅を再開しようと思ってるので、明日にでもこの街を出ていきますので、そこもよろしくお願いしますね。俺からは以上です。それでは。」
捲し立てるように喋り反論する隙を与えずに、さっさと伯爵の元を離れた。リィサとレナリアさんを連れて部屋に戻るか。でも、侯爵の近くにいる2人を俺が呼びに行くとまたゴリラ侯爵に絡まれそうだな。よし、【ハイ・テレパシー】を使って2人を呼び出そう。侯爵に捕まりたくないので気付かれる前に屋敷に向かって歩きながら2人を呼ぶ。
『リィサそれとレナリアさん2人とも聞こえる?侯爵に絡まれたくないから気付かれないようにそこから離れて屋敷の部屋に戻ってきて、伯爵に明日にはこの街を出るって言ってあるからその準備をしよう。』
俺がハイ・テレパシーを使って呼び出した事で、リィサは普通にレナリアさんは一瞬ビクッとしたが、それでもしっかりと俺の言葉が聞こえたらしくそーっと侯爵から離れている。ほんの一瞬だけ侯爵の相手をしていたセルディオさんが2人の動きに気付いたが、何事も無かったかのように侯爵と話を再開していた。おそらく俺達が嫌がっているのに気付いていたのではないだろうか?それを見越して侯爵の相手を再開してるような気がする。さすがだなセルディオさん!
さてせっかくセルディオさんが侯爵の相手をして気を引いているのだ。後の事は伯爵とセルディオさんにまかせて俺達は部屋に戻ろう。そして、明日の為の相談をしておこう。
「さて、急で申し訳ないが明日にはこの街を出ます。これは確定事項です。この件に関する異論は認めません。侯爵の相手をする気はさらさら無いので面倒な事になる前に出ていきます。次の目的地はレナリアさんが住んでいる王都を予定していますが、何か他に寄りたい場所がありますか?」
俺が捲し立てる様に言ったので2人は唖然とした表情で俺を見ている。ごめんね、2人とも。こうでもしないと俺の様にあまり学がない人間は言いくるめられそうな気がしたから、一気にしゃべったんだ。でも少しぐらいは話を聞くよ?
「ユーラはゴリニテ侯爵の領地には行かないの?あんなに自分の屋敷にも作ってくれって声高に叫んでたじゃない?仮にも侯爵の地位にいる人間がお願いをしたのだから、それを無視して行くのはまずいんじゃないのかな?って思ったのよ。」
「そうですね…ゴリニテ侯爵がユーラさんにお願いをしてるのを周囲にいた人達が見ていたので、噂ぐらいは立ちそうですね。それなのにそれを無視して王都に向かえば侯爵のお願いを無視したならず者扱いぐらいはされそうですね。」
どうやら2人はゴリラ侯爵のお願いを無視する事をまずい事だと思ってるようだ。一応伯爵にどうにかするように頼んであるのだが、それを含めて聞き直してみるか。
「だけど2人とも俺は伯爵に無理だからどうにかしてくれってお願いしてるんだけど、それでも問題になりそうかな?」
「それだと伯爵次第かな?どう説明するかで状況が変わってくるはずよ。もし、うまく伯爵様が説明できない場合は、侯爵様がユーラに直接交渉しようとしてくるでしょうね。」
「そうですね、私もそう思います。もしユーラさんがどうしてもお嫌であれば私が無理を言わないようにと口添えしますよ?」
どうやら俺の今後の行動は伯爵の努力次第ってところか…出来るなら断ってほしい所だが、あの侯爵押しが強いからなぁ。伯爵も相手が叔父って言うのがあるから押されてそうなんだよな。例えば「お前の屋敷には付けてもらったのに何故ワシの屋敷が無理なんだ!お前も頼めば付けてくれるはずだ。一緒に説得しろ!」とかね?はぁ…あの伯爵にはあまり期待できそうにないな。
「どうするの、ユーラ?いっその事何も言わずにそのまま街を離れちゃう?私は別に構わないわよ。どうせ侯爵が追ってこようと思ってもユーラに追いつくとは思えないしね。」
「リィサさん、いくらユーラさんが強いとは言え人が歩く速度に馬車で追ってこられたら逃げられないと思いますよ?」
そう言えばレナリアさんには教えてなかったが、毎回フライトの魔法を使って行くわけに行かないので、乗り物を作っていたのだ。それを使って移動をしようと考えていたのだ。正直な話これを使った時点で侯爵どころかこの世界にいる人達が追いついてこれるとは到底思えない。そのものとは…。
「教えてあげてなかったの、ユーラ?てっきりもう教えて上げてるのかと思ったのだけど、それとも私の早とちりだったかしら?」
「いやまぁ問題はないよ。ただ突然見せて驚かせようかなぁとは思っていたけどね。」
「ごめんなさいユーラ。まさかそんな事考えていたなんて思わなかったから。」
「あぁ本当に大丈夫だから!そんなに気にしなくてもいいよ。」
「もう、2人ともずるいですよ!私にもちゃんと教えて下さいよ。」
「そうだな、伯爵がうまく侯爵を抑えて俺に無茶ぶりをしてこなければ見せて上げられるかもしれないけど、もし抑えきれてない場合はしばらく見せる事はできないだろうね。」
「見る事が出来ないなら、せめてどんなものかぐらい教えてくれてもいいじゃないですか!」
どうやらリィサが知っていて自分が知らないのが悔しいみたいだな。仕方ないな、一応サプライズのつもりだったのだが、そこまで知りたいなら教えておこうかな。
「そんなに知りたいですか、レナリアさん。」
「勿論です。私もその…ユーラさんの恋人じゃないですか。リィサさんだけじゃなくて私にも同じ様にかまってほしいです…。」
レナリアさんカワイイーーー!もじもじしてる姿がイイね!顔をほんのり赤く染めているのもまたよし!もう少し見ていたい気もするけど、あまり待たせるのも可哀想だな。
「実はですねレナリアさん、俺が作った乗り物とは馬車の改良型なんですよ。だけどただの馬車じゃなくて、馬がいません。その代わりに魔力を利用して走ります。それを使うと普通の馬車の5倍ぐらいの速さで移動する事が出来るんですよ。」
「えぇ!それは本当ですか?流石にいくらユーラさんでも馬車よりも速い乗り物を作るなんて出来るんですか?」
「出来るというよりは既に出来てますよ。後で機会があればレナリアさんにも見せますよ。それに俺はリィサだけに見せたんじゃなくて、作ってる所にたまたまリィサが来たんですよ。だから、リィサは知ってるんです。」
何故リィサが知ってるかをちゃんと教えたのだが、レナリアさんはむぅ~とか言って上目遣いに俺を睨んでいる。どう見ても可愛いだけだから怖さの欠片も感じられないな。とりあえず頭を撫でておこう、そ~れナデナデ。
「う~こんな事じゃ誤魔化されませんからね?でも頭を撫でてもらうのは好きなのでもう少しお願いします。」
そう言いながら俺にすり寄ってくるレナリアさん。やれやれ女性というのはこんなにも気を使う生き物だったんだなぁ。と俺が思いながらレナリアさんの頭を撫でていると、俺の左手を掴む手が…。リィサだった。どうしたのかと思っていたら俺の左手を掴んでそのまま自分の頭にのせてしまった。どうやらリィサも頭を撫でてほしいようだ。はいはいわかりましたよ、そんな物欲しげな顔をしなくてもちゃんと撫でてあげますとも。
ナデナデと2人の頭を撫で続けていると部屋のドアをノックする音が響いた。一体だれだろう?と思い2人を見るとレナリアさんは首を横に振り知らない。とリィサを見ると多分セルディオさんだろうと言ってきた。仕方ないな。撫で撫でタイムは終了だ。と俺が2人の頭から手を離すと残念そうな顔をしながら俺から離れた。またいつか暇な時にしてあげるからそんな顔しないの。
とりあえずノックに対する返事をしておこう。と思ったが部屋の外に居るセルディオさんの方が話掛けてきた。
「申し訳ありませんユーラ様。今少しのお時間をいただけないでしょうか?旦那様より伝言がございます。部屋を出ないでもよろしいのでお返事だけお聞かせ願えれば非常に助かります。」
「えぇどうぞ構いませんよ、何でしょうか?」
「ではそのまま旦那様の伝言をお聞き下さい。では『ユーラ殿すまない、説得するのは難しそうだ。後ろ盾になると言っておきながらこの体たらく本当に申し訳ない。だからユーラ殿さえよければそのままこの街から出発してほしい。後の事は私がなんとか誤魔化しておくので、私が時間を稼いでいる間になるべくこの街から離れてほしい。あえて私の理想をいえば叔父上の願いを聞き届けてほしくはあるがユーラ殿がかなり嫌悪感を示していたので無理は言わない。だから申し訳ないが早いうちに屋敷を出て街からなるべく離れてくれ。そうすれば適当に誤魔化す事もできるだろう。大した力になれず本当に申し訳ない。』との旦那様のお言葉でした。」
まず今のセルディオさんが伝えてくれた言葉に対して言いたい。伯爵の声真似ウマすぎじゃね?なんでただ伝えるだけで良いはずなのに、言葉の要所要所に感情を込めたりするの!妙に伯爵の感情が伝わってきてやり辛いんですけど!何?これって断りづらくする為のセルディオさんの作戦なの?それともいつもこんな感じで伝言を伝えるの?どっち?しかも俺が断りづらいだけならまだしも一緒に話を聞いていた2人はお願い聞いてあげちゃう?みたいな顔してるし…。これが作戦なら汚い…貴族のやり方は本当に汚い。あまりにも汚いやり方なので高熱殺菌でもしてあげようかな?確か火魔法に広範囲を燃やし尽くすのがあったはずだ。それで汚い貴族を消毒して差し上げよう。
よ~し俺頑張っちゃうぞ!さてさてどのくらいの熱処理を施してあげようかな?と俺が考えていると側にいる2人が俺の腕を左右から引っ張っている。なんだよ?と思い2人を見ると若干顔が青ざめている、なんで?
「ユーラ落ち着いてさっきからもの凄い殺気を放ち過ぎだよ。これじゃ屋敷の人もみんな気絶しちゃうから、だから落ち着いて、ね。」
「そうですよ…ユーラ…さんどうか…落ち着いて…下さい。大丈夫ですよ?私達が…居ますから…。」
しまった!また感情にまかせて殺気を放っていたようだ。はぁ俺も相当落ち着きがないな。2人に負担を掛けるとか、もっと感情をコントロール出来るようにならないといつまでもこれじゃ駄目だな。
「ごめん2人とも。2人のおかげで落ち着いたよ、俺ももっと成長しないと駄目だな。本当にありがとうねリィサ、レナリアさん。」
「うぅん、いいの。ユーラが怒るの私も少しだけ分かるから…。」
そう言ったリィサの表情には少しの怒りを感じ取れた。きっと暗部時代になにか気に入らない事でも言われた事があるのかもしれないな。でも下手に聞き出すのはやめておこう。少なくとも自分から話してくれるまでは待っていよう。
「ユーラ様…私はただ旦那様のお言葉をお伝えしただけに過ぎませんが、一言だけ年寄りの独り言として聞いて頂けますでしょうか?人とは1人で生きていくのはいくらでも可能でしょう。人が来ない森にこもる、人里離れた山奥にこもるなど方法はいくらでもありましょう。ですが、それはただ生きるだけならそれでいいかもしれない、ですが自分以外の『誰か』に関わって生きていくなら必ずと言っていいほどにそれ以外とも関わらなければならなくなります。何故ならその人達に家族や友人、知人がいるからです。だからこそ利用されると思うのではなく己の力を貸しその対価に報酬を得る。そう考えれば今よりも少しはマシな生き方を送れるでしょう。人はいきなり生き方を変える事はなかなかできない、ですが今の私の独り言が『誰か』の生きる参考になれば幸いかと思います。では私はこれで旦那様に返事はしばらくお待ちしますので落ち着いたら私をお呼び下さい。」
この世界に来て人との接し方に随分と考えさせられるようになったな。自分じゃわからなさすぎる、少し2人に相談してみよう。
「2人とも少し良いかな?俺は今とても迷ってるんだ。もっと人間関係を築くべきなのか、それともそんな事は気にせずに俺が好きなように生きるべきか。俺はどうしたらいいと思う?」
俺の問いかけに2人は少しだけ考えて別々に意見を聞かせてくれた。
「私はユーラが思っているように生きるのがいいと思うわ。だって他ならぬユーラの人生なのよ?ユーラ自身が決めた方がいいと思うの。もしユーラが間違ったりしたらさっきのように私達が止めてあげるからユーラが自分で決めて。」
「私もユーラさんが自分で決めるべきだと思います。私達の意見でユーラさんが自分の意思とは違う事をしてしまう事になってしまえば私達はきっと後悔してしまいます。だからユーラさんの意思で行動して下さい。私達はずっとユーラさんについていきますから。」
はぁ…俺もやっぱりまだまだだな…。ここに来て18歳という年齢に若返りはしたが、向こうにいる時は一応38年生きてきたんだけどな。それを自分の半分しか生きてない子達にここまで諭されるとはな。いい加減覚悟を決めるべきだ。自分がどうやって生きていくか。俺が難しい顔をしていたからだろうか2人が俺に寄り添ってきて話しかけてきた。
「今すぐに全部決める必要はないわよ、だから今はどうしたいかだけを考えていきましょう。ユーラが私に言ったでしょう。後悔するなら行動して後悔したほうがいいってだからそうしてみたらいいじゃない。」
「それ良いかもしれないですね!ユーラさんそうしましょう!もしそれでユーラさんが困ってしまうような事があれば私達も手を貸しますよ、だからやってみましょう!」
「わかったよ。2人ともありがとう…じゃあ今回の侯爵の件は受けてみよう。その後どうなるかわからないけど、やってみて問題が起きたらその時にまた考える事にするよ。」
よし!そうと決まればセルディオさんに返事をしておこう。それに何故か知らないがやってみようと決めた瞬間何か良い事が起きるような気がしたのだが、流石に気のせいだよな?
すみませんが明日以降の投稿は2日おきにさせていただきます。ストックがなくなったので書き上げたら投稿と言う感じになりますので、どうかよろしくお願いします。




