第17話 勝手に見てはいけません
そろそろ本気で建築関連を書きたいと思っているのに予定している話につなぎきれないー。あともう少しなのでしばしお待ちを。
俺たちは領主であるマシイナ伯爵に誘われて、領主館に行く事になった。馬車に乗せてくれるとの事なので一緒に向かう事に。何がどうなって領主館に誘われる事になったんだ?そう考えを巡らせていた。相変わらずレナリアさんは俺の腕を離さないままだ。それを別段気にする事もなくレナリアさんと話をしているマシイナ伯爵。一体彼は何を思ってレナリアさんだけでなく俺まで誘ったのだろうか?俺を罠にかけてレナリアさんと離そうとしてる?それとも、何か理由があるのか?う~ん全然わからん。いろいろ考えを巡らせている間にどうやら馬車は目的の場所に到着したようだ。
「さて、着きましたな。ではお二方私の屋敷に参りましょう。ぜひ歓迎させていただきたい。ユーラ殿は私が降りた後でお願いできますかな?」
そう言いながら馬車から先に降りていくマシイナ伯爵。一応警戒しつつ俺も降りていくが、これと言って何も起きないようだ。兵士が待ち構えてるぐらいはしてるかと思ったのだが。全くそんな事はなく逆にメイドと執事と思われる人達が屋敷の玄関へと続く道の両側にキレイに並んで待っていた。
その中から1人70代ぐらいと思われる執事らしき人が歩いてきて、マシイナ伯爵に話しかけていた。
「おかえりなさいませ旦那様、お疲れで御座いましょう。まずはおくつろぎになられますか?」
「おぉ、爺今帰った。客人をお連れしたから、案内をしておいてくれ。私は一度着替えてくる。その間の相手を頼む。」
「仰せつかりました、お客様はどちらにおいででしょうか?」
「今馬車から降りてくる、いいか決して傲慢な振る舞いをしてくれるなよ?私にとっては最高に当たる客人だ。良いな?他の者にも徹底させよ、絶対に不快な思いをさせるなよ。」
「分かりました。このセルディオ、旦那様のご期待に添えますように力を尽くさせていただきます。」
「うむ、頼んだぞ。」
そう言って屋敷に一足先に入っていったマシイナ伯爵を見送りながら、俺たちも馬車を降りる事にした。伯爵の次に降りるように言われたいた俺はすぐに降りて待っていたのだが、なかなかレナリアさんが降りてこないので、馬車の方に振り返って見てみると馬車から降りるための階段からずっと俺の事を見下ろしたままなかなか降りてこない。どうしたんだろう?そう思い本人に訪ねようと思った所で後ろから肩を叩かれた。さっきの執事…確かセルディオさんだったか?が俺に話しかけてきた。
「大変失礼ですが、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「俺…自分ですか?自分は優良と言いますが…それが何か?」
「ではユーラ様、レナリア王女様はというよりも女性全般に言えますが、馬車や階段などの段差がある場合は連れである男性が女性の手を引いてお連れするものでございます。ですので今のレナリア王女様はユーラ様がお手を引いて下さるのをお待ちしておられるのです。」
おぉそういえばよく映画とかでそういうシーンを見た事があるな。まさか、自分がその場面に出くわした上にエスコートする本人になるとは思わなかったが…。まぁこれも経験かね?ではでは王女様をエスコートするとしますかね。
そう考えながら馬車に歩み寄り、階段下まできた。一番上の段から俺を見下ろしながらニコニコと笑顔を向けてきた。そんな彼女に手を差し出して階段を一段ずつゆっくりと手を引きながら降りて貰う。ただ黙って手を引くのもつまらないので気の利いた言葉の1つも掛けておく事にした。
「レナリアさんの様な美しい女性をこうやってエスコート出来るとは光栄ですね。なんでしたらそのまま手を引いたまま屋敷までお連れ致しましょうか。」
そう言われたレナリアさんは「う、美しいって言われました、ユーラさんにユーラさんに~」を繰り返していて返事をしてくれない。あ、あの返事をしてくれませんかね?結構恥ずかしい事を言ったので周りの視線が辛いんですけど…。そんな俺を見ていたセルディオさんがレナリアさんに小声で話し掛けてくれた。
「(レナリア王女様、ユーラ様がお待ちですよ?先程のお言葉に返事をしたほうがよろしいかと。)」
「ひゃ、ひゃい、そ、そのユーラさんお願いします。」
カミカミのセリフを言うレナリアさん可愛いな…。リィサとはまた違った可愛さがある。リィサは一見するとクールな感じだが、あの心を許した俺に見せた時の笑顔が可愛らしいのだが、レナリアさんは普段から少しほんわかしてる感じが全体的に可愛らしいのだ。普段とのギャップで可愛らしさを見せてくれるリィサと普段から可愛さで包まれているのがレナリアさんって感じかな?
せっかくなので有言実行といこうか!手をつないだままセルディオさんの案内で屋敷の中に入っていく。気の所為だろうか?メイドさんが俺を見る目がどうにも落ち着かない。何人かは舌なめずりしてたぞ!凄く気になるが、立ち止まって聞き出すわけにも行かないのでそのまま案内に従って応接室の様な場所に連れてきて貰った。
応接室の様な場所は部屋の中心に当たる場所に縦長のテーブルが置いてあり、その両サイドには柔らかそうなソファーが置かれてある。ただ、テーブルもソファーもだがあまり質がいいとは思えない。この程度の物が貴族が使う家具なのか?俺ならもう少ししっかりとした上質な物を作れるぞ?材料ならマイバッグに入ってる。もし、この領主が俺とリィサに対して友好的に接してくれるのならば、これぐらいの家具を作ってあげてもいいかな?
「では、レナリア王女様にユーラ様こちらに掛けてお待ち下さい。しばらくしたら、旦那様が参りますので、お待ち頂いてる間にお茶をお持ちしますのでお飲みになってお待ち下さい。」
座るように勧められたのでソファーに座って待つことにした。大した時間を待つことなくすぐにメイドがお茶を持ってきたようだ。俺とレナリアさんの前に置いて下がっていった。なかなかいい匂いがするな。興味があるのでとりあえず飲んでみることにした。
「…へぇ、結構うまいかも、自然な甘みって言うのかな?クセがなくて飲みやすいな。それに後味がいいね、飲み終えた後にスッキリした感じがいいな。」
「そうですね、王城で飲んでるお茶に比べても遜色ないほどに良いものですね。美味しいです。」
俺達がお茶を飲みつつ評価をしていると、マシイナ伯爵が部屋に入ってきて、嬉しそうに語りかけてきた。
「おぉこのお茶の事をわかってくれますか!実はこのお茶なのですが、かなり前に討伐隊を編成して大森林に立ち入った時に見つけたものでしてね。その時に偶然発見した物なのですがね。私が気に入って持ち帰ってきてつい最近になってようやく安定して栽培ができるようになってきた物なのですよ。」
へぇ~そうだったのか…。全然知らなかったな。こんなに美味いお茶があるなら探してもよかったかもしれないな。あ~無理か…そもそも見つけたとしてもそれがお茶に出来るかわからないしな。伯爵はお茶に詳しそうだし、それで分かったのかもな。
「ふふ、ユーラ殿…で合っておりますかな?別段私はお茶に詳しい訳ではないよ。ちょっとしたスキルを持っているのでね。それのおかげで偶々手に入れただけだよ。」
「え、そうなんですか?それはまたすごいスキルをお持ちなんですね。それなら…。」
ん、ちょっと待てよ?何故、伯爵は今俺が考えてる事を言い当てたんだ?俺は口には出してないしかといってそれを表情に出すようなマヌケな事もしてない筈だ。まさか!伯爵のスキルは何かしらの条件で相手の考えを読み取るものなんじゃ…。
「…まさかたったそれだけのヒントで私のスキルに気づくとはね。やはり君は恐ろしい…。私は王族であるレナリア様を敵に回すのも怖いが、今の段階で言うなら君のほうが恐ろしいよ、ユーラ=アライシ殿…あなたは一体何者なんだ?いや、言葉が相応しくないか…どういった人物であらせられるのでしょうか?」
あ~これはもしかしなくても俺のステータスを見たな?どうやら考えを読めるだけじゃなく、他人のステータスを見る事も出来るようだな。それならそんな口調になってもおかしくはないのだが…仕方ないな。今はまだ俺自身の正体を明かしたくなかったが、知られた以上はしょうがない。それにしても挨拶もそこそこにいきなり俺の正体に関してぶっこんできたせいで、俺の隣に座っているレナリアさんがフリーズしている。なんか俺を見る目がキョトンとしてる。そんな顔も可愛いのか…。頭をなでたくなるような可愛さだな。やらないけど。
こうなってくると厄介だな。伯爵だけの専用スキルの可能性もあるが、それ以外にも鑑定スキルみたいな物を持ってるやつがいないとも限らん。それを考えたらそういうスキルをブロックするかもしくは隠蔽スキルを開発したほうがよさそうだな。しかし、俺もマヌケだね。今まで人に接する事自体が無かったせいもあるが、まさかそういう対人に置けるスキルを何も開発してなかったとは…。今すぐにでも創っておいてすぐに無効化しておくか。どうやら肝心な部分はまだ見られてないようだしね。
伯爵は俺の返答を待ってるみたいだな。もう少し待って貰うか。目の前でいきなりステータスが見れなくなったらとても怪しまれるだろうが、これ以上見られる事の方が俺にとっては面倒なのだ。
なので、ここは自重をせずに目の前でスキルを創っていく。
創るのは慣れているのでさっくりと出来るだろう。まずは【閲覧不可】と【完全隠蔽】でいいかな?そしてスキル発動!これでもう勝手にステータスは見られる事は無いだろう。次は考えを読み取られないようにするスキルかな?これでいこう【思考読取禁止】っとこれも発動!この3つのスキルは常時発動型にしておいた、使った感じ魔力消費無しだな。相変わらずチートだな。さすがおじいちゃんから貰ったスキルだ。ありがとうおじいちゃん!
『気にせんでえぇぞ、存分に使うといい。』
ぶふっ!まさかの心の中のお礼に返事をくれるおじいちゃん。もしかしてずっと見てたのだろうか?だとしたら俺がさっきレナリアさんに取っていた行動も見られてた?それってとても恥ずかしいのですが…。
『とても男らしくてよかったですよ、優良ちゃん。』
やはりというかおばあちゃんも見ていたようだ。はぁ…もういいか。見守ってくれてると思えばこれほど心強い事は無いだろう。そう思う事にしよう。
「!ユーラ殿…一体何をされたので?さっきまで見えていたのに見えなくなってしまわれたようなのだが…。」
「何処まで見たのか知りませんが、これ以上は禁則事項ですよ。伯爵様?」
それと同時に軽く魔力を込めた威圧を掛ける。するとみる間に伯爵の顔が青ざめていくのがわかる。ほんの少しでも脅しを掛けておかないと、与し易いと思われるのは些か不愉快だ。権力に屈するのは2度と御免だ。あれ?それを考えたらおじいちゃんとおばあちゃんが俺を孫のように思ってるのって俺に配慮してくれたのかな?だとしたら本気で嬉しいな!こんな状況だが胸の真ん中が温かい思いに満たされてきた。
おっと!二人を放置し過ぎたかな?ん?二人…ってヤバッ!レナリアさんにまで威圧掛けてしまった!すぐに隣のレナリアさんを見るとカタカタと身体が小刻みに震えているのがわかる。急いで解除しないと!
「ごめん、レナリアさん!大丈夫?うっかりしてたよ…。本当にごめんね。」
俺はレナリアさんにそう語りかけながら彼女をギュッと抱き締めてあげた。そうすると少しずつではあるが、震えは収まってきたようだが大丈夫かな?と顔を確認して見ると今度はもの凄く真っ赤になっていた。しまった!これはいくらなんでもやり過ぎた!勝手に女性に抱きつくなんて殴られてもしょうが無いだろう。ところがそんな俺の考えとは裏腹に彼女は俺に抱きしめられたまま顔を俺の胸に隠すようにくっついてきた。おぉ…彼女を支える俺の腕にお胸様が…やーらかいな~、フヘヘって違う!そうじゃない!勘違いを解かないと。だがそれは、レナリアさんの言葉で必要がなくなったようだ。
「いいんです…。ユーラさんがこうしてくれてるので全然平気です。だからもう少しこのままで…。」
俺はこのままでも結構いやかなり嬉しいのだが、目の前に座っている伯爵は真っ青な表情で俺をずっと見ている。なんだろう?自分がした事ではあるのだが、居た堪れなくなってきた。さすがにやりすぎちゃった?でもなぁ面倒に巻き込まれたくはないし、これぐらいはしないといけないかな?と思ったんだけど…う~ん比較対象がいないからどうしてもやりすぎてしまう傾向にある気がするなぁ。
『優良よ、それぐらいなら大した事ではない。お主を利用しようとしたり陥れようとするような輩などに配慮する必要はないぞ。お主自身が気にする事はない。民があってこその貴族だとわからずに己の地位に驕り高ぶるような者達などは潰してしまえばよいのじゃ。』
過激だな!おじいちゃん、おばあちゃんに怒られないかな?
『優良ちゃん、私はこんな事程度では怒りませんよ。それよりもおじいさんの言う通りですよ。自身の地位に慢心し、民を蔑ろにしてしまような者に手加減をする必要はありません。しっかりと罰を下してしまいなさい。私達に遠慮する事はありませんよ。』
ヤバイ!おばあちゃんも過激だった!でも余程の事がない限りは、俺は悪事を働いてるようなやつじゃない限りは簡単には手を出したりはしないつもりだ…今の所。
「さて、少しやりすぎたかな?とは思っていますが、マシイナ伯爵…あなたは俺の敵になりますか?」
俺がそう尋ねると伯爵は首を横に振った。…まだ振り続けている。もういいっつーの。
「私はそんなつもりではなかったのだが、説明が足りなさすぎたようですね。本当に申し訳ない、どうか許していただきたい。このとおりだ。」
謝罪の言葉を言いながら頭を下げる伯爵。やべぇ貴族に頭を下げさせちゃったよ。やっぱりやり過ぎた?とりあえずいつまでも頭を下げさせたままなのも良くないな。さっさと話を進めよう。
「マシイナ伯爵どうか頭を上げて下さい。あなたに悪気がないなら事情を説明して下さい。さすがに話がわかりづらいです。何を思ってこの様な事をしたのですか?」
そう言われた伯爵は、ゆっくりと深呼吸をした後に、俺の方に向き直った。
「まず私が見たユーラ殿のステータスだが、実はほとんど見る事は出来なかった。実際に見る事が出来たのは名前とレベルだけでした。…私がユーラ殿を目上の者として見たのは、あなたのレベルが今まで見た事が無い表記をしていたからです。不躾ではあると思うのですが、もう一度お尋ねしたい。ユーラ殿あなたは一体何者なのでしょうか?そして、この街に何をしにいらしたのでしょうか?
私はそれが聞きたかったのです。私はこの街の領主です、この街を守らねばなりません。だから、この街の脅威になる様な出来事はできるだけ排除しなければならないのです。そこだけはどうか理解していただきたい。」
なるほど俺のありえないレベルを見たせいで軽く恐慌状態になったって事か…。という事は悪いのは俺か?でもなぁ勝手に人のステータス見ておいて勝手に人を脅威になるかもしれないからと判断したのは伯爵自身なのだ。俺が悪いとは思えない。それに俺自身は特に悪事を働いたわけじゃないし、どちらかというと貴族の横暴に巻き込まれた被害者だと思うんだけどね。この事態の解決策は俺がこの街から出ていく事かな?それならさっさと出ていきますよ?
「ユーラ殿に悪気がないのは分かっておりますが、しかし人というのは未知の脅威に対して恐怖を覚えるものです。だから私はあなたを屋敷に招いて真意を聞き出したかったのです。それともう一つ遅くなりましたが、私の従兄弟に当たる甥が馬鹿な真似をして本当に申し訳ない。2度とこの様な事が無いように地下牢に入れて置きます。今アレの父親がこの街に向かってますので処分はその時にでもさせていただきますので平にご容赦を。」
「俺の事に関してはまぁわかりました。そちらが余計な事をしなければ特に何かをするという事はありませんので。それよりも先程の豚…失礼、貴族を処分されるというのは良いのですが、その処分を親に任せるのはどうなんですかね?」
「それは甘い裁定が下されるのでは?とお思いでしょうがそうはなりません。元々アレは王都に住んでいたのですが、あの性格にあの横柄な態度なのでアレの父親が何度も注意をしてたのにも関わらず直す事もしなかったので、罰を含めてここで態度を改めて来いと言われてこの街に来たのですが…一緒に着いてきたろくでもない貴族がアレを唆して影で好き勝手してたようで…流石に今回の件は見逃す訳にはいかないので、処刑も考えております。ですから…。」
ここまで一息に伯爵が話してた所で、勢いよく応接室のドアが開け放たれた。そこに立っていたのは、背中に大剣を背負ったガッチリとした体格のおっさんだった。
あまり話しが固くならないようにしています。シリアスは苦手なのですよ。