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第173話 骨組みも重要

 明けて翌日。

さぁ今日も朝からしっかりと食事も取った事だし、本日の作業内容の確認とともに昨日から始めた朝礼を行うことに。


「おはようございます。今日も一日よろしくお願いします」


『お願いします』


 朝の挨拶を終えて早速作業へと。そして本日の作業内容はこちらです。


【壁、柱などの大まかな骨組みの設置】所謂棟上げである。


 壁の基礎はすでに神光石で準備済み設計図を確認しながら設置していく予定である。勿論柱や基礎、土台もあとは梁などもある。予定としては今日一日での予定である。


 本来棟上げなんて職人の人数を集めて一気にやるものであるが、そこはまぁ異世界だ。魔法という埒外の力を行使する予定だ。一日を予定しているが魔法を行使しての作業となるとおそらく……いや始める前からの憶測は止めておこう。世の中には万が一という言葉もあるのだから。


「じゃあ始めていきます。長さのある物を取り回すので作業範囲内には近づかないでね」


 その時々で周囲を確認しながら作業をするべきなのだろうが作業に集中し過ぎて見てない可能性もあるので各々で注意してもらう。規格外な能力を持っていても俺自身がちょいちょいやらかしているので絶対安心です!などとは到底言えない。不甲斐ないけどこれもまた事実なので仕方ない。


 まずは足元からと基礎から始まり土台を設置していく。設置箇所に関しては設計図を見ている静梛さん達に指示を出してもらう。何でも一人でやってしまう事は出来るかもしれないが、せっかくなのでお願いしてある。無理に一人でやる必要もない。作品として自分の力だけで成し遂げたいが、俺自身職人としてはまだまだなのである。力を借りる事は恥でもなんでもないはずだ。出来ない事を出来る振りをしてやってしまう方が厄介だ。


 せっせと作業を繰り返していき予定していた箇所全ての設置を完了ここで一時ストップ。10時休みだ。葉津梛ちゃん達が準備していたお茶とお茶請けで一休み。此処までは順調だ。


 さて作業再開である。基礎と土台に関しては問題無し。お次は柱や梁と言った部分と細かい箇所へとかかる。


「え~と?こことここで合ってるよね?」


「えぇそうです。そこへ柱を建ててください。あっ優良くん!そこは待ってください。後回しでお願いします」


「了解です。次の場所お願いします」


 お互いに掛け声を掛けつつ作業を進めていく。それにしても魔法は便利である。今俺は柱を自身で設置しているのではなく、魔法を行使して仮設置を行っている。完全固定ではなく魔法でその部分に動かないようにしている。


 順調に進む作業に何処かで詰まったりしないかと心配していたが、どうやら問題は発生しなかったようだ。よくある何処かで躓く様な事態になるのでは?と心配していたが杞憂だったらしい。


 黙々と作業を続けているとここでまたストップが掛かった。いつの間にか昼食の時間になっていたようだ。キリが良いとこまでは続けたかったが、皆に止められてしまった。どうにもあまりにも喋らずに作業していた様子を見て心配になったようだ。……ただ集中していただけなんだけどね。


 まぁ心配を掛けてしまうのは本意ではないので、大人しく休む事にした。そして話は作業内容……というよりも作業の仕方についてだ。


「ねぇ優くん?あのやり方見てるとなんか職人っていうよりも手品師みたいだよね?」


 ウグッ!何気に気にしていたことを言われてしまった。まぁ確かに普通でない事は間違いないよなぁ。この世界でも俺みたいなやり方をしている人が居るとは聞かないし……居たりするんだろうか?でもまぁ……。


「まぁ俺もそう思っていたんだけどね?でもほら使えるものは使わないとできないから」


「ふぅ~ん……まぁそれもそっか!出来ないことを無理にする必要はないもんね!」


 現実主義者リアリストだねぇ。まぁ葉津梛ちゃんは昔からそうだったから今更かな?


「そうだね。さすがに一人であれもこれもやるのは無理があるからね。無理して怪我でもしたら大変だからね」


「あぁ~それもあったねぇ。まぁそれでも手品師みたいに見えるのは何も変わらないけどね!」


 うん……まぁそれは確かにそうだけどね!これ以上反論の余地がない気がしたので、そのまま受け入れる事にした。無事に完成すれば良いという事にしておこう。


 昼食を終えた俺は午後の部を開始した。この調子でいけば当初の予定通り大まかな骨組みを組み終える事ができそうだ。気合をいれいていこう。


 またも黙々と作業を続ける、途中何度か静梛さんに声を掛けられて意識を取り戻すかのようにハッとなる。どれだけ夢中になっているのか……ちょっと自分が怖い。


「此処までは良い。問題はここからなんだよ……失敗しないようにしないとなぁ。今日のメインと言っても過言ではないかも?」


 今日最後の大仕事棟上げである。実は一度も関わった事がなかったりする。何度も話には聞いては居たけれど何となく話の雰囲気でしかわからない。それならなぜ俺が棟上げだと気づいたのかというと、最後に組む棟木の準備をしていると横からきた静梛さんが……。


「とうとう最後のお仕事棟上げですね。気を引き締めていきましょう」


 といったからである。う~ん勉強不足である。俺ってよくこんなんで家を建てようと思ったなぁ。自分でも不思議だった。まぁやる気がある分には良いのかな?事故や怪我と倒壊の危険に気をつければ良いか!


 少しグダってしまったが、ここは気合を入れる所だろう。深呼吸をひとつして棟木を魔法で持ち上げていく。目標のサクリ部分にしっかりと噛み合わせる為にしっかりと位置調整をして……ゆっくりと降ろしていく。本来なら木槌で叩いたりしてタイミングを見ながらはめ込むらしいが、こちらはそれを魔法でゴリ押していく。思いの外抵抗もなくスッとサクリが組み合わさりはめ込む事ができた。


「よっし!これで骨組が完成だぁー!」


「お疲れ様でした優良くん。これだけのものをひとりで成し遂げられるなんて凄いですね。これは立派な職人芸と言えるでしょう」


「おぉ!優!お前中々やるじゃねぇかっ!これは連枝に負けない仕事振りだぜ!いやぁ~壮観な眺めだなぁ~」


 静梛さんと千梛さんからのお褒めの言葉だが、でも……。


「いえさすがに此処まで皆に手伝ってもらっておいて一人で成し遂げたなんて恐れ多いですよ。それこそここに連枝さんがいたら調子に乗るんじゃねぇぞ!って言われちゃいますよ」


「ん?……あぁまぁ連枝なら言いそうだなぁ。オメェ一人で仕事してきたのか?あぁん!ってな!」


「さ、さすがにそこまで言葉は荒くはないでしょうが……まぁ似たような事は言われてしまいそうなのは確かかもしれませんね」


 言葉が荒っぽいのは否定しないんですね?静梛さん。まぁそれも仕方ないかもしれないくらい荒っぽい人だからしょうがないと言えばしょうがないのかも。


「まぁとにかく変に調子に乗らないように気をつけますよ。……ただまぁ今だけはこれだけの事を成し遂げる事が出来た事を喜んでいようと思います」


 ともあれ今日は此処まで!お疲れ様でした!!





えぇ~一応ですが、これらの知識は絶対ではありませんのであまり深く気にしないでください。なんとなくフィーリングでこんな感じなんだ、ふ~ん程度で認識して頂けると幸いです。

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