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第172話 しっかりとした足元を

 色々無敵感溢れる入浴を体験した翌日。

昨日で地面の均しを終えてあるので、今日からは社の土台の設置に掛かる予定だ。まずは束石つかいしの設置箇所の選定と束石を設置からの固定までが本日の作業工程だ。多少トラブルも予想して作業内容が前後する可能性もあるが、それでも誤差程度に収まるはずだ。


「はい、ここで早速で申し訳ありませんがヘルプ要請です。土台としての束石はすでにこちらで作成済みですが、正直こちらの設置箇所に関してはあまり自信がありませんので知識不足を補って欲しいです」


 その要請に対して名乗りをあげたのが、まずは静梛さんこの人はほぼ全般を取り扱える人だ。知識はまず間違いなくこの中で一番だろう。その次に千梛さんだ。この人はどちらかというと知識はあるがほぼ直感型の人である。知識だけでは足りない所を補ってくれそうだ。そして最後となるのが和津梛ちゃんである。この娘はどちらかというと補佐である。補佐とはいっても俺のではなく静梛さんと千梛さん二人の補佐である。あとは向こうで経験することが出来なかった実技への対処またはその雰囲気を感じ取り学ぶ事を目的にしている。要は実技見習いが彼女の立ち位置なのだ。


 ちなみにであるが残された和泉梛さんと葉津梛ちゃんであるが、まず和泉梛さんに関してはこの人は完全な分野違い、本来の担っていた役目は適切な素材、細かく言うと材料調達と価格調整、そしてある程度の加工処理を発注するまでが彼女の担当している分野なのだ。ところがその得意分野を活かせる事は出来なかった。その理由は俺が自ら採掘&伐採してきて加工までこなしてしまったから。


 だが仮に俺がそれをしなかったとしてもこの神界においては取引先などいる訳もないので、どちらにせよ彼女の出番はなかっただろう。そして、もう一人葉津梛ちゃんなのだが……この娘意外な事に得意とする担当分野が事務全般なのである。そして事務対応に関しては母親ですらも舌を巻くほどの処理能力を持っている。だが、ことが実技になるとまぁなんだろう……壊滅状態になる。ぶっちゃけて言うならセンスが無い、の一言に尽きる。


 と、まぁこんな感じである。さて説明もそこそこに作業へと移ることとしよう。まずは作業前にすることをしておこう。


「じゃあ名乗り出てくれた。静梛さん、千梛さん、それと和津梛ちゃん。今日はよろしくお願いします。安全に関しては魔法もあるのでそこまで問題は無いとは思いますが、俺自身が作業に集中し過ぎてしまう可能性があるので一応各自で気をつけていきましょう。それじゃあ始めていきましょう」


『はい、お願いします』


 おそらく何処でもやってると思うが朝礼を兼ねた挨拶をしてから作業を始める。ちなみにではあるが設計図などはすでに粗方の範囲で俺を主軸として静梛さんと葉津梛ちゃんそれと和泉梛さんで書き上げ済みである。まぁ設計図を書いたのは基本的に葉津梛ちゃんだが……。俺はそばでこうしようと思うとかああしたいとか意見を出していただけだ。それを葉津梛ちゃんがドラフター無しで定規擬きを使い素早く書き上げていくのをそばで見ていた。ああいう精密な作業は俺には向かないとわかっているので!そういう所ではある意味俺も脳筋よりの思考なのだろうと思った時間だった。


 取り敢えずは作業だ。まずは束石を置くことから始めよう。いきなり固定していくのではなく、まずは仮置きから始める。束石の個数はかなりの数を準備してあるので足りなくなる事はないだろう。ちなみに神光石製です。


「束石の仮置きから始めていくので、場所や数に問題があるようなその都度伝えてくれると助かります。じゃあ始めていきますね」


「はい、頑張ってください優良くん」


「おう!頑張れよ優!」


「頑張ってください!優良さん!」


 そばに控えている3人から激励を受けて作業開始だ。あぁ一応残ったメンバーは途中取るであろう休憩のためにと簡易の竈門で色々作ったりしているお茶請けづくりと昼食づくりを同時進行中である。うちは意外と料理ができるメンバーが勢揃いしている。全く出来ない人は確かいなかったはずだ。


 また回想になって申し訳ないがメンバーで思い出した。あの精霊’sとサキュバスさんは元気にしているだろうか?あの時申し訳ないが旅をしてみたいと言っていたサキュバスさんを思い出す。世界を旅してみたいと願っていたので泣く泣く送り出させてもらったが……元気に何事も無ければ良いと思う次第だ。……まぁ大丈夫だとは思うけどね?だって送り出す際におばあちゃんから……。


『私が見ているので何も心配はいりませんよ。絶対に二度と不幸な目に合わせないと一柱の神として誓いましょう』


 という厳かな雰囲気と共に放たれた言葉に身震いしたのを思い出す。きっと彼女たちに手を出すと……うん、まぁ手を出すような輩の心配をする必要はないだろう。さっ!回想はここまでだ仕事に精をだすとしよう!


 束石をそばに大量に準備して一箇所ずつ仮置きしていく。まずは順当に配置をしていく。途中何度か千梛さんからそこにはもう少し数を増やしておくべきだと指摘を受ける。それを聞いた静梛さんが設計図に書き足すなどしている。書き足した部分に関してはあとで葉津梛ちゃんが直していくそうだ。 

 どんどん配置作業を繰り返していく。かなりの数にはなるがそれでも仮置きなので、すぐに仮置き作業は終了した。ここで一旦休憩、静梛さんから10時休みが促された。大して疲れてはいないがリズムは大事と言われた。(リズム?)


 休憩を終えてここから固定の作業に掛かっていく。本来なら束石の下に砂利を引いた上でコンクリートで固めたり、もしくは捨てコンをしてから置いたりするのだが……そんな物は此処にはないので、ここで事前に均しを終えてるのでそのまま設置、といきたい所だが一応そのままでも問題はないのだが念には念を入れて束石の底に神光の楢から抽出した樹液、これを接着剤がわり束石の底にヌリヌリしてそれから束石を地面に置く、それを軽く「フンッ!」と地面に5~6㎝ほどめり込ませる。これで固定完了である。それと遅ればせながら束石のサイズをお伝えしましょう。


 束石のサイズは高さが20㎝の底部が15㎝角で上部が10㎝角となっています。ちなみに上辺の真ん中には床つかをはめ込むための角穴が空いており後でしっかりと固定できる使用になっております。以上説明でした。


 黙々と作業を繰り返す、途中何度か修正案を出されて変更を行いながらも時間を掛けて一個一個丁寧に設置を心がけていく。ここは世話になったおじいちゃんとおばあちゃんの住処になるのだ。出来れば少しでも長く住めるようにと願いを込めながら作業をしていった。


 昼食を終えたあとも作業をし、3時休憩をしたあともすぐに作業を再開し、ただひたすらに設置をしていく。気づけばいつの間にか日が傾いて来ていた。あれ?日が傾いている?ここってこんなだっけ?……まぁいいか。あまりそこを気にしてもしょうがない、というよりも今は。


「作業完了です!束石の設置全部終えましたーー!」


 何故か周囲から沸き起こる拍手、まぁ悪い気はしないので素直に受け取る事にした。それにしても意外と大変だった。ただ置いて固定していくだけとはいえここまで単純作業に時間が掛かるとは思いもしなかった。でも一つのことを成し遂げた感覚は悪い気分ではなかった。


「本日はお疲れ様でした優良くん。一人での作業は大変でしたでしょう」


「あ~まぁ確かに静姉の言う通りだな。設置にも手を貸したかったぞ!」


「そうですね。私もあのような力の使い方ができればよかったのですが……」


「いえいえ!ここは俺の領分なので俺に任せて頂いて大丈夫です!なのでそれ以外の事はお願いします!」


 事実かなり助かっているのだから俺としては問題はないのだ。彼女たちの言い分もわかるが俺はこれを譲る事はできない。是非とも自分の作品という形を残してみたいからだ。力は借りるが出来れば自分で出来ることは自分の力でやり遂げたい。心密かに思いながら本日の作業工程を終えたのだった。




 

ちょいとわかりづらい専門用語を使ってますが、なんとなくのニュアンスで受け止めてください。掘り下げるとキリがないので。ぶっちゃけあまり突っ込まれると困るというのもあります。そこまで詳しくはありませんので広い心で受け止めて頂けると幸いです。

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