第170話 基礎は大事
この場所は良い、とても良い場所だ。だからこそ自分で見つける事が出来なかったのは悔しい気もする。まぁ、あれだな。協力の一つと思って受け入れるとしよう。何でも自分一人で出来ると思い上がらないように気をつけないと。
「さて、ここから早速始めようと思うんだけど……方角はどうしようか?できたらあの山が見える方向には縁側を設けたいんだよねぇ……でも方角は大事だし、どうするべきか」
向き的に鬼門は避けないとだし、適当は許されないだろうと思っていると静梛さんと千梛さんから有り難い助言がもらえた。
「ん~……なぁ優良、ここって所謂神界ってやつだよな?」
「そうだね、それで合ってるよ」
「うん、ある意味でここ自体が全域方角としては吉なんじゃないのか?」
「えっ……それは確かに有り得そうだね」
「優良くん、私もそう思います。ここ自体がどの方角に向けても問題はなさそうです。どの方角を見ても嫌な感覚を感じませんので」
「そう言われると何となく嫌な感じがする方角を感じませんね。ん~……あまり気にしなくても大丈夫かな?わかりました。助言感謝です千梛さんそれに静梛さんも」
「いえいえこれくらいしかお役には立ちませんので」
「まっかせろ!私に出来る範囲の事だけはさせてもらうぜ。まぁ程々にだけどな?ニシシ」
性格は違うが意見はピッタリのようだ。二人に感謝をしておく。さて重要な方角の問題は解決した。次はここの社を建てるために地面を綺麗に均しておく必要があるな。
「まずは地面を均していくから皆はここから離れた場所で待機していてもらえるかな?できるだけ早めに始めておきたいんだ」
「そうなのね……たまにはユーラの働きを目の前で見ようと思っていたのに残念だわ」
「ごめんねリィサ。大丈夫だとは思うけど何かあったら危ないから」
「いえ良いのよ。離れていても見る事はできるから。これ以上は邪魔になりそうだし移動するわね。じゃあ頑張ってユーラ」
離れ際に頬にキスをして離れていく。あまりにも自然な動きに反応できずにいるとリィサが微笑みながら見ていた。くそぉ~なんかちょっと悔しい。してやられた感じだ……嬉しいけども。
「よぉ~し私も!優く~ん」
リィサを真似て俺に駆け寄ろうとしていた葉津梛ちゃんだったが、素早い動きで和泉梛さんに取り押さえられると首根っこを掴まれていった。扱いが野良猫への対処だった。
「にゃ~ん!優く~ん私にもお情けを~触れ合いを~」
構ってあげたいところではあるが、仕事が進まないのでそのまま和泉梛さんに連れて行っていただこう。
「よしっ!皆離れたな。周囲に忘れ物もなし、だな。じゃあ早速始めるか」
この土地を均している作業も手作業で始めようかと思っていたけど、モニカいわく試しに魔法で試してみて魔力の通りが悪いようであれば手作業で始めたほうが良いのではとここでも助言を受けていた。言われてみればそうだった。自分の中で勝手に魔法使用を控えなければいけないと思い込んでいた。こういうと言い方は悪いが、今回は魔法に関してはある種の道具だと思えば良いのでは?と思う事にした。せっかくの効率化ができそうなのにこり固まった思考で判断しては勿体無い。できるところでは活用していこうと思い直した。
とりあえずは作業に取り掛かるとしよう。まずは社……実質には家と変わらない気もするけどまぁ良いや。その社の範囲をある程度決めてみる。範囲が足りないようならあとで追加で足せばいいだろう。考えられる範囲の地面を均していこう。
「う~ん掘り起こしたりすると無駄に時間が掛かりそうだなぁ……よし!決めた範囲を均一に転圧してしまおうある程度平坦には見えるけど、多少凹凸があるからそれを真っ直ぐに均すイメージで魔力を拡散させて……むっ?思った通り魔力がうまく浸透していかないな……これはかなり手間だぞ」
うまくいけば一瞬で地面を均していけると思ったけれど、どうやらそう簡単に物事が進むほどうまくはいかないようだ。手作業よりはマシではあるかもしれないけど、これは気合を入れ直す必要がありそうだ。
「地面にしっかり魔力を浸透させて地面を平坦に均すイメージを崩さずに範囲を足元からゆっくりと範囲を広げていく……これはきっついぞ。重い何かを無理やり押し広げている感覚だ」
自分の足元から全方向に対して半径1mくらいだというのにすでに疲労感を感じはじめた。足元の地面に波紋を広げるかの如く外側へと魔力を押し出していく。これは中々に辛い作業だ。地道に一歩ずつ進めていこう。
わかりにくくならないように書くてやっぱり難しい……。これをスラスラと書ける人は本当に凄いですね。素直に尊敬します。いやもうマジで……。