第16話 ヤバイやつがあらわれた!
初めの頃より主人公がはっちゃける様になってきた。なぜ?まぁ自分的には書いてて楽しいので良いんですけどね。
「重力の楔より解き放たれよ!重力魔法『フローティング』!」
この魔法を使うのは実は初めてだ、使う機会が無かったのもあるが開発をしたのが割とつい最近だからだ。だからこそ今回の事は正に絶好のタイミングだったのだ。罪悪感も感じる必要も無いし、最高だね。さて、それはさておき今は運ぶ事に集中しよう。別に集中しないと維持できないという事は無いのだが、あまり余裕を見せすぎて変な勘違いをされたくないだけなんだけどね。なんというかレナリアさんの俺を見る目が段々と変わってきてる気がするのは俺の思い上がりだろうか?
「あ、あのユーリさん?なんかコレ浮いてるのですが…何故浮いてるのでしょうか?この様な魔法を見るのは初めてなのですが…。」
ハイッ!またもレナリアさんの初めていただきました!って2度めになるとスベった感がすごいな。誰にも聞かれてないはずなのに何故俺は恥ずかしい気持ちになったのだろうか。
「あ~そういう魔法を俺が創ったというだけの簡単な話ですよ。特に気にしなくても大丈夫です。ところでさっさと移動しましょう。これを維持するの結構きついんですよ。魔力が尽きる前になんとか街にたどり着きたいので。早く行きましょう。」
「あ、ハイ、すいません。(今創ったって言った?)そうですね、これだけの人数を浮かせてるのですから魔力消費も大変ですよね?本当にすいません。今までに見た事も聞いた事も無かったので、つい…。」
そうやって適当な事を言いながら進み出す、ハッキリ言って今の俺からすればこの魔法を維持するための魔力消費など微々たるものだ。見なくても全然大丈夫だしもっと言うなら俺が歩いていくだけで勝手に付いてくる様に出来ているのだ。基本俺が使う魔法は如何に手間を掛けずに楽して最大効率を得るか、がテーマなので一々ここでこれだけの術式が~とかこの効果を得るために~がとかは考えてない。イメージで全てが事足りると言われたので俺が使う魔法の全てと言っていいほどに「楽」をする事に重きを置いている。
第一がいくら日本で義務教育を受けてきたとは言え、いくら何でも昔に習った事を今の今まで覚えてるのは流石に無理だと思う。少なくとも俺はそうだ。なので、おじいちゃんが想像を膨らませて頭の中で何をしたいかイメージすれば魔法は簡単に使えると教えられた時に、俺はとても嬉しかったのだ。科学の知識が無いと威力を増したり効果を発揮出来ない魔法など魔法ではない。俺にとっては不思議な現象を説明できずともその力を行使できてこそ魔法なのだ。
もっと単純に言うなら「魔法は不思議な力」だから何も無い場所から火が出ても空気中の水分が少なかろうと大量の水が出せたりするのが俺にとっての不思議な力の「魔法」なのだ。と理屈をこねて見たけど結局の所、自分に学があまり無いからせめて異世界ぐらいではそんな不思議があってもいいじゃないか!という思いに辿り着くんだけどね。
そう思いを馳せながら、時にレナリアさんと適当に雑談しながら、やがて日が暮れると言う時間になってようやく街に辿り着いた。短いような長いような昨日までは空を飛んで移動が主だったので、それに比べれば長いのだが徒歩としては充分早い気がした。さて、街の中に入りたいのだが只今絶賛レナリアさんが門番に説明中なのだが、うまく入る事ができるだろうか。
「ユーリさん、街に入る為の準備が出来たのですが…その実は…彼らを連れて領主館に行って欲しいと頼まれまして…申し訳ないのですが、そのまま連れて行くのに力を貸していただけませんか?無理は承知の上なのですが…。」
申し訳無さそうに俺に頼みに来たレナリアさん。その頼みを聞き入れたいのは山々だがこれ以上リィサを待たせたくないんだよな。ほぼ丸一日あの空間に閉じ込めたままなんだよな。俺としては早くリィサとイチャイチャしたいんだよな。くぅ~は・や・く会いたいーーリィサーー。
『え~と…ね。そのあなたの声って聞こえてるんだけど、これって何なのかしら。』
ん?あれ?気の所為か?それとも早くリィサに会いたい俺の幻聴か?リィサの声が聞こえたような気がしたんだが…。
『気の所為じゃないと思うわよ。さっき急に聞こえるようになったんだけど、あなたが何かしたんじゃないの?』
あれ?どういう事だ?特に何もして無いはずだが、強いて言うならリィサに会いたい一心を心の中で叫んだぐらいだが…もしかして無意識にスキルでも創ったか?ちょい確認してみるか。どれどれ、え~と…あ、これか…見に覚えのないスキルができてるよ。これが原因だったか。
【ハイ・テレパシー】
新石 優良が伝えたい相手にのみ意思疎通をする事が可能な専用スキル。あらゆる存在の介入不可。同時に複数人とのやりとりが可能で距離は無制限。条件を満たす事で多次元との通話が可能。
やたらハイスペックなスキルだな。今までに専用スキルなんて見た事ないんだけど…。もしかしてさっき俺がリィサに会いたい一心で叫んだから?だとしたらどんだけだよ、俺…。
『えっと…私は…その嬉しいわ。だってそれだけ私の事を想ってくれてるって事でしょう?だから…うん…嬉しいかな。』
かーーたまらんぞ!やっぱり会いに行きたいーー!でも、渋々とは言え頼まれ事を中途半端にするのも何かかゆいものがあると言うか…どうしようか?もう、断っちゃおうか?だってどっちを優先するかなんて決まってるもんな。
『ちょっと待って!あのね匿って貰ってる私が言うのはおかしいかもしれないけど、できればレナリア王女のお願いを聞いて上げてほしいの。私が知ってる情報が正しいなら彼女は命を狙われているはずなの。だからお願い彼女を守ってあげて!』
『リィサ…いいのか?だってずっとそこに1人で居たら流石に寂しくないか?俺はお前に寂しい思いをさせてまで誰かを助けようとは思わないよ。』
『うぅん…あのね、私あなたには自分が納得できる生き方をしてほしいの。誰にも囚われない生き方を…だからね、さっき少しだけ聞こえたけど、助けたいん…だよね?なら思ったようにやってよ。私は大丈夫だから、その代わりにね、終わったらまたあなたに可愛がってほしいな。』
『優良…俺の名前だ。俺を呼ぶ時は優良って呼んで欲しい。』
『わかったユーラ頑張ってね。怪我しないようにね。ちゃんと何処にも行かないでここで待ってるから。』
『あぁ、わかった。じゃあ頑張ってくるよ、リィサ。俺の帰りを待っててくれ。』
『はい、いってらっしゃいユーラ。あなたの帰りを待ってます。』
少しの間ではあるがリィサと話せたおかげでだいぶすっきりする事ができた。ずっと何か重かったような気がしてたが、それがなくなったような気分だ。やはりリィサにちゃんと自分の名前を教える事ができたからだろうか?それとも単に俺自身が何かストレスに感じていたのだろうか?よくわからないけどこれから気分よく事を成せそうだ。さっそくレナリアさんに返事をしておかないといけないな。そう思いレナリアさんに向き直って見ると何故か妙に膨れっ面をしている。なんだ?どうしたんだろうか?返事をせずにいたから気分を害したとでも言うのだろうか?割とどうでもいいけど。
「レナリアさん確か領主館にコイツらを連れて行けばいいんですよね?なら、遅くならない内に行きましょう。こんな奴らに時間を取られたくないからね。」
「…わかりました、行きましょう。私も時間を取られたくないですから…(なんで急にイキイキし始めたのよ…私と二人の時は無愛想だったのに…私だって女なんですよ…)」
「ん?何か言いましたか?」
「何でもありませんよ!早く行きましょうって言っただけです。」
馬鹿共を領主館に連行する間は街の人々が珍しがった様に俺たちを見ていたが、使っている魔法が珍しいのか、浮いてる馬鹿共が珍しいのかわからんが、注目を集め続けたまま領主館に辿り着いた。
着いた領主館の前には、コレとは別の兵士達が待機していた。何やら兵士達は凄く険しい表情をしている。何だろう?まさかとは思うが身内がやられたから意趣返しをするつもりだろうか?それならそれなりの対処をするけどね。大丈夫!コイツらと同じ目にあってもらうだけだから。
「そこで止まってくれ!あなた方は連絡のあった人達と見受ける。出来れば捕らえたと言う人物達の確認をさせてもらいたいので、彼らを一度地面に降ろして下がって貰えないだろうか?」
ふむ、それぐらいなら別に聞いてもいいか。どうせ、邪魔なだけだし。さっそく魔法を解除して地面に落とす。鎧を付けてるからガチャガチャと大きな音がして、とてもうるさい。やれやれ気絶してても迷惑なやつらだ。
「「「………。」」」
何故か待機していた兵士達は唖然とした表情で俺を見ている。どうしたんだろう?ちゃんと地面に降ろしたし、ちゃんと後ろに下がってるんだけど。もっと下がらないと駄目かな?
「えっとユーリさん?降ろしてほしいって頼んだのに落としたからびっくりされてるのだと思うのですが…。」
「あぁ!そうだったんですね。いや~すいません。苛立つ事ばっかりしたり言ったりしてたからそこらへんの配慮が欠けてましたね。すいません。」
「いえ、別に私は構わないのですが…(ムカついていたので。)彼らは気にしてるようなので一応。」
「いやいやすいませんね。兵士の皆さん次からは気を付けるんで。あ、それとレナリアさんはちょっと…。」
レナリアさんに手招きをして近寄り耳元に話し掛ける。俺の本当の名前を教えるためだ。今のうちに手を打っておかないとあの【破魔の水晶】ってやつを持ち出されると後で面倒な事になる。それなら今の内に訂正しておけば言い間違いですむからね。
「(実は俺の本当の名前は優良っていうんです。さっきはレナリアさんの事がよくわかってなかったので、偽名を使わせて貰いました。なので次からは優良と呼んでくださいね。)」
ひゃうっと変な声を上げながらも俺の言葉に耳を寄せて聞いてくれてるレナリアさんに何事かと視線を向ける兵士達。一瞬ギョッとしていたが、話をしているとわかったのか。訝しげな目で俺を見ながらも何も言わずに見守っている。何見てんだよ、仕事しろよ。こっち見んな。
「(そうだったんですね。何か隠してるような気がしていましたが、偽名だったんですね。あと特には私は気にしていませんので、気にしないで大丈夫です。)」
「(それは、ありがとうございます。さすがに森の中から出てきたばかりなので見知らぬ人をすぐに信用する事はできなかったんです。だから偽名を使っていたんですよ。でも今回は破魔の水晶を使う可能性があったので、正体を隠さずに明かしてくれたレナリアさんにはちゃんと伝えておこうかと思ったんです。)」
「(分かりました。これからはユーラさんって呼ばせてもらいますね。これからよろしくおねがいしますね、ユーラさん。)」
「(こちらこそ、よろしくレナリアさん。)」
お互いに小声で話し合っていたら、何やら1人の貴族っぽい人がこちらに歩いてくる。まさかまた豚貴族みたいなヤツじゃ…と俺がほんの少しだけ身構えていたら、俺の前にレナリアさんが出て挨拶を始めた。
「ご無沙汰をしております、マシイナ・ノウェム・トライフルです。この街の領主を任せて頂いております。第一王女のレナリア・プリムス・フォルティシア様とお見受けします。我が街へようこそおいで下さいました。」
「マシイナ伯爵でしたか。前に姉さまの誕生会にいらした時以来ですか?久しぶりですね、お元気でいらしてましたか?」
「ハッ!心配のお言葉ありがたく思います。恐れ多くも今回は如何様なご用向きで…。差し支えなければ何故この街にいらしたのかお聞きしてもよろしいでしょうか。」
「実は用があったのはこの街にではなく、国境に置ける隣国の干渉による影響と大森林からくる魔物の影響の視察だったのですが…行きは騎士団を伴っていたのですが、帰りに一度盗賊の襲撃を受けたのです。」
「な!なんとでは騎士団の方達は、もしや盗賊達に?」
「いえその時は盗賊をギリギリまで追い詰めた所、盗賊の1人が自爆をしたのです。その被害で盗賊は全滅。騎士団は死者こそでませんでしたが、怪我人が出た状態でした。しかし、もうすぐこの街に辿り着くという時に、魔物の襲撃を受けたのです。その時に騎士たちは怪我を負った状態で立ち向かってくれましたが、魔物の数があまりにも多く騎士たちの奮闘も虚しくジャイアントグリズリー2匹を残して倒れてしまいました。」
「なんと…では騎士団の皆様は…」
「はい…奮戦虚しく皆が亡くなってしまいました…。」
「遺体はどうされたので?」
「馬車も壊されてしまったので、魔物や盗賊に荒らされないように遺体から遺品になる一部を回収し、遺体と遺品を別に埋めて来ました。」
「そうでしたか。それと話に出たジャイアントグリズリー2匹はどうなりましたか?もし、討伐がまだであれば街に脅威になる前にこちらで討伐隊を編成して送り出さなければなりませんので。」
「それには及びません。ジャイアントグリズリーならここにいるユーラさんが討伐致しました。なので問題ありません。」
「何と!この者がですか?俄には信じられませんな。あれは10人からなる討伐隊を2部隊編成して討伐が出来るかなりの大物です。1匹でそれなのに、それを2匹もですか。」
「正確には2匹同時でしたね。側で見ている私自身も信じられない思いでしたから…。」
おいこら。何を勝手に人の事をバラしてるんだよ。めっちゃ文句を言いたいんだけど、横で「教えてやりました!」と言わんばかりの表情をしている。いや、余計なことを言いやがってと言いたいのに可愛らしくそばでずっと俺の左腕を抱きしめる様に寄り添っている。柔らかいじゃね―かこの野郎(野郎?)
「んん!えーレナリア様まだお聞きしたい事がありまして、よろしいでしょうか。」
「はいどうぞ、構いませんよ。」
今だに俺の腕を離さないレナリアさん。逃さない!と掴んでいるのか、それとも1人ではまたさっきの馬鹿がしでかした事態になるかもと怖くて掴んで離さないのか。はたまたそのどちらでもなくただ掴んでいるだけなのか。理由は知らないがただ1つだけ言える事がある。さっきまでは気にしてなかったが、兵士達が俺を見る目がめっちゃ鋭いのだ。「何だコイツは」とか「何様のつもりだ」とか「羨ましい」とか「あの子いい筋肉してるわね」とか聞こえてくるのだ。最後のヤツを除けば大して気にならないが、いい加減鬱陶しいのだ。お胸様の柔らかさは役得だが、いつまでも黙って聞いているのも限界に近いそろそろどうにかして欲しい。あの一部の視線に耐えられない。怖いんだよ!
「討伐したというジャイアントグリズリーですが、どうされたのでしょうか?あれは素材としても食材としても使えます。騎士の方たちが亡くなっておられるのにと思われるかもしれませんが、この辺境の地では、手に入る機会の少ないものですので、出来れば我々に譲っていただいてもらえないでしょうか。もちろん無料とは言いません。適切な価格で取引させて頂きます。」
「それに関してはユーラさんに聞いていただけませんか?あのジャイアントグリズリーを討伐したのは、私では無いので…。それ以外の魔物に関しては構いません。ぜひ引き取ってください。騎士たちの家族に分配したいと思いますので。」
「そこの彼はレナリア様の従者ではないのですか?それとも別で雇った冒険者でしょうか?でしたら、彼と取引させて貰いますが。」
「ユーラさんは冒険者ギルドに登録してますか?それとも別のギルドに登録されてるとか?」
「いえ言いにくいのですが、俺はどこのギルドにも登録してませんよ。それともギルドに登録してなければ魔物を狩っても権利が無いとかあるんですか?」
「いえ、ありませんよ。ただどこのギルドにも登録してないと買取価格が凄く低くなってしまう上に解体も自身で手配しなければなりません。その上に、ギルドに解体をお願いしようとしても登録してる方たちが優先なので、どうしても無理が出てくるのです。ですから、いざ買取をお願いする頃には魔物の遺体が腐敗してるという事になる事が多いのです。」
その話をレナリアさんに聞きながら周りを見てみると、ニヤニヤしながら小声で「きっと買い叩かれるぜ」とか「あんな貧相なヤツがジャイアントグリズリーを倒した?倒したのを盗んだ。の間違いだろ?」とか聞こえてきた。へぇ兵士の奴らはそういう考えか…領主はどうかと思い見てみると、ん?何故か引きつった顔で俺を見ている。笑いを堪えているというよりは怖がっている。というのが正しい気がするんだが…どうしたのだろう?俺はまだ何もしていないのだが…。
そう思いながらどうしようかな?と悩んでいたら領主が俺に話しかけてきた。なんだろうね?
「申し訳ないのだが、ここではなんだから是非レナリア様とともに屋敷にきていただけないだろうか?こやつらの後始末はこちらでしておくので、ぜひともきていただけないだろうか?頼む!」
あれ?一体に何がどうしたんだ?まったく状況が読めないんですが…。
気付いた方もいると思いますが、タイトルにあるヤバイやつは途中に出たオネエです。