第158話 どう言い回してもそうとしか聞こえない
素材の宛は確保できた。となれば後は皆の都合かな?早く戻って相談してみるか。
早速戻ってから皆へと相談してみたところ……。
『一緒について行きますっ!』
との快い返事を戴いたよ。なんなら俺の手伝いをしてくれるそうで……助かります。
皆との話はついたのでおじいちゃんに早速連絡を取ったところ、しばらくしたら迎えをよこすから王都から少し離れた平原で待っていて欲しいと言われたので、荷物をまとめて待機中。
ちなみにではあるのだが、関係者諸々の方々には事前に王都をしばらくの間離れることを説明し終えている。本来は俺一人での予定で話していたのだけど、急ぎ皆を連れて行く事を再度説明しておいた。いきなり俺の関係者がいなくなって余計な心配を掛けたくはなかった。
という事で王都を離れる事に際しては特に問題はない。先ほども言ったが今は待機中。皆は今この世界の人類初の神界へ行ける事にワクワクが止まらないようで、ずっと話に花を咲かせている。
たまに聞こえる「どんな所だろうね?」とか「やはり神聖な場所なのかしら?」とか「夜の営みはしていいのか?」とか聞こえる……最後のだけはどうなんだ?ツッコミをいれたい気分だけど。
皆より離れた場所でちょいとばかり真面目な事を考えている。それは……。
「向こうで住む家はどうしよう?」
である。この話が本決まりする前に色々と話をしたのだが、その話の過程で社を建てている最中は何処に住めばいいのか?と言う話になった。
俺はそこまで深刻に考えておらず、その都度戻ればいいのでは?と思いそう話したところ……。
『そうはいかないのですよ優良ちゃん』
『ふむ、そうだな。それは駄目だ』
と言われたので事情を聞いてみたところ。
『神界は常に清浄を保たれておる場所なのだ。そう何度も下界との行き来をされては道ができてしまうのでそれは困るのだ』
『ん……道?が出来るの意味がわからないのだけど、そんなに困る事なの?』
困る理由がわからない俺は聞き返したところ、返されたのは割と問題のある事だった。
『うむ、何の事なのかわからないだろうから説明するとだな。下界にはかなりの欲が蔓延しておるのだ。人間に関わる欲は様々な上にその上限は膨大で尽きることを知らない。更に言えばその欲を発している人間はかなりの数がおる。その様な状態の場所から優良が清浄を保たれておる神界を行き来すればそこには良からぬ道ができてしまうのだ。それこそ轍ができるかのようにの』
「……それは防ぐことはできないの?」
『出来るか出来ないかで言えば無論出来る。と答えるが、かと言って自ら余計な仕事を増やすのも馬鹿らしいであろう?本来せずとも構わない仕事を増やす必要はないじゃろう……ふむ、優良の……住む場所は考えておこう。おそらくどうにか出来るはずだからの』
「そうなんだ。なら手間を掛けるようで悪いけどお願いしてもいいですか?おじいちゃん」
『なに、元からこちらから頼んでおるのだから問題はない。すまぬのこちらこそ手間を掛けるがよろしく頼むぞ?』
「はい!頼まれました。自分に出来る精一杯で務めさせていただきます」
『……うむ、ではそろそろ行くとするかの。では準備が出来次第呼ぶのでそのつもりで頼むぞ?』
「わかりました。自分も準備をして待ってます」
そうして返事をしたところで気配が消えるのを感じた。
そこまでが話した一部始終だ。しかし、こうなってくると考えられるのは一つしか考えられない。それは……。
「神界に住む事になる可能性が高いだろうなぁ」
というか最早それ以外考えられないだろう。おそらくだけどどの様な方法を用いても何度も下界と神界を行ったり来たりすることに問題があるのだろう。そうでもなければ転移を用いて移動する方法を推奨するはずだからだ。それにも関わらずそう言わずに問題の提唱だけをしたと言うことはその方法ですらも道ができる可能性を示唆しているとしか思えない。となれば考えられるのは神界に仮の住まいを提供してくれる、が一番わかり易い手段だと思うのだ。
「まぁそれすらも俺の安易な考えでしかないけど……多分合ってると思うんだよなぁ」
別の手段があるというのならそれはそれで構わない。俺は自分の目的に向かって一直線に向かえばいいだけだ。変に難しく考えて自分からややこしくする必要も無いだろう。なんて事を考えている時だった。俺達がいる平原に空から一条の光が差し込んできた。どうやらお迎えが来た……いやなんか言い回しが嫌だな?天に召される?それも違うし……ともかく迎えに来てくれたのは確かだろう。
余計な考えをしない事にして俺は皆を呼び寄せて差し込む光の中へと身を投じた。
たまに小説を書いてて思うことは日本語の言い回しって難しいよなぁって思います。独特の使い方とか思わせぶりにすることがあるので、ついついそちらを連想させてしまう。本当に難しいです。精進が必要だと思いました。