第150話 隠し通路教えます!
レナリアさんを伴い御城関係者達に各所の案内と機能的な説明をしていった。まぁ以前と然程変わりはしないとは思う。精々違うとするなら設備等が新しくなったくらいだ。その設備も机や椅子、本棚などがデザイン含め一新したくらいのものだ。革新的な改良を施した場所なんて王族関係者が関わる場所に目立たないように仕込んだくらいだ。まぁ~その機能が使われない事が一番いいんだけど……世の中に絶対はないわけで、ね?
ほぼほとんどの場所をそれぞれが担当もしくは使用している人たちに説明を終える事ができた。説明を受けた人たちはそれぞれが配属されている場所を見ては新しくなった自身の務め場所を見渡し歓喜していた。どうやらかなりガタがきていた事をどうにかして欲しくはあったようだが、それを申請する事に心苦しさがあったようだ。少し話を聞いてみるとどうやら予算的な都合を自分たちで見積もった所……これは無理だな、となったようだ。いくら国の中枢部とはいえど実態は向こうの世界の企業と変わりないようだ。その話を聞いてどこも世知辛いなと思ってしまった。
それはともかくとして取り敢えずの説明を終えて俺の側にいるのは王族とその護衛である近衛だけになってしまったのだが、いまから説明する事を近衛を交えてしてもいいものかどうかを悩んでいた。今からする説明は場合によっては王族の命を救えるかどうかによる。まぁぶっちゃけ緊急時の避難経路とその避難場所になる。これは俺だけの判断では難しいので、王族を代表してレナリアさんに相談することに。
「レナリアさん、ちょっとこっちに」
「はい?なんでしょうか」
俺はレナリアさんに手招きを交えてここへ来るようにと伝えるとそれと一緒に近衛の一人も付いてきてしまった。
「なんでしょう?ユーラさん。まだ何かありましたか?」
「えぇ、重要な事がまだ……なんですが、えぇとそれをレナリアさんに相談したいんですけど……他に聞かれるのはちょっとまずいかな?と。できたらまずはレナリアさんだけでお願いしたいんですけど」
「一応彼女は私の専属近衛になりますが……それでもまずいですか?」
「先にレナリアさんにお伝えしますので、話すかどうかはその後レナリアさんが判断してください。今のところは取り敢えずって感じです」
「わかりました。そういう事でしたら後ほど判断しますね。フェルあなたは私とユーラさんの話が終わるまでの間はお母様の側で控えていてください」
フェルと呼ばれた頭は除く全身白銀の鎧を着込んだ女性はチラッと俺を見て一瞬睨みを利かせてきたが、すぐに表情を取り繕うと何事もなかったかのように「了解しました」とだけ言ってこの場を離れていった。
「……すみませんユーラさん悪い娘ではないのですが……今まで私の周りに碌な男性が近寄って来なかったのもあって私に近寄る男性には身分問わずあのような態度ばっかり取ってしまって……改善しなければならないのはわかっているんですが……お気を悪くさせてしまったなら彼女に代わって私が謝罪をさせていただきます。申し訳ありません」
「いえ特に気にはしてません。あの程度であればまだ可愛いものじゃないですか。今まで会った悪徳貴族に比べれば……」
「それは、まぁそうかもしれませんが……一応は」
まぁレナリアさん的にも何か思う所があるんだろうと謝罪を受け入れて話を進める事にした。
「それでレナリアさん話をしたいんですけど……あまり近くに人がいると何なのでちょっとこっちへ来てもらってもいいですか?」
「はい、わかりました。では、参りましょうか」
目的の場所へと移動しようとした所レナリアさんが俺の腕を取り自身の腕を絡ませてきた。その光景をレナリアママのそばで見ていたフェルと呼ばれていた近衛の女性がこちらに駆け寄って来ようとしていたが、その動きを察したレナリアママにブロックされていた。そのままフェルさんをブロックしたまま俺達にグッと親指を立てていた。いや……さすがに王族としてその表現はどうなのかな?
レナリアママの後押し?を受けて目的の部屋へと移動した。この部屋なら防音がバッチリなので話をする事に。
「さて話というはの……どうしました?レナリアさん?」
レナリアさんは俺の目の前でモジモジしながら上目遣いで俺を見ていた……何故?別にこの部屋が寝室だったりとか実は休憩所でベッドが置かれているとかでは一切ない。というか御城自体が設置したばかりでそこまではまだ全ての準備ができている訳では無い。そこら辺の細々とした物に関してはできればそちらで準備してもらおうという話もしたかった。と話が若干横道に逸れたが、だからこそ今レナリアさんがモジモジしながら頬を赤く染めているのかがわからない。
「えっと、レナリアさん?何故そんなにモジモジしてるんです?ちょっと状況がよくわからないんですけど?」
「えぇっとそれは……もしかしてユーラさんが我慢できなくなって誰もいない場所に連れて来られたのかなって」
キャッと言いながら頬に手を当ててクネクネとしているレナリアさん。いやぁまぁ、ね?その仕草自体は可愛いと思うし、押し倒したい気持ちがないとは言わないよ?けど、仕事は最後までしてから落ち着いてからがいいよね?っていう……どうしよう?どう説明したらいいかな?……う~ん、変にはぐらかすとよりおかしい方向へ行きそうだからハッキリと伝えておこう。後のことは……うん、まぁどうにかなるだろう。
「……レナリアさん、期待させて申し訳ないですがソッチ方面はまた後でゆっくりと落ち着いてからにしましょう。今は割と真面目な事です」
モジモジとしていたレナリアさんだったが、俺の言葉を受けて何かを考えていたが急に顔を真っ赤にさせてしゃがみ込んでしまった。両手で顔を覆いながら小声であぁ~って言っている。うん、まぁ落ち着くまで待ってあげよう。
数分してようやく落ち着いたレナリアさんがキリッとした真面目な表情で立ち上がって言った。
「ゴホンッ!さぁユーラさん、お話というのを聞かせてもらえませんか?」
……立ち直ってくれたようで何よりだ。肝心の話を進めよう。
「話というのは避難経路と避難場所に関してです。さすがに誰彼と教えていいものではないかと思って誰もいない場所へと来てもらったんです」
「避難経路に避難場所、ですか?それは一体どういう物でしょう?」
おや?避難経路や避難場所って王族にとって当たり前なのでは?と思ったが、考え込んでもしょうがないので直接尋ねる事にした。
「レナリアさん例えばですけど、万が一城が襲撃を受けたとしてその場合王族の方たちって何処から逃げるんですか?」
そう聞かれたレナリアさんは少し考え込んでからハッとした様子を見せた。
「もしかしてですが、ユーラさんの仰る避難経路と避難場所というのは王族専用の隠し通路と隠し部屋の事であってますか?」
あぁ、そういう事か。どうやら俺の言いたい事がうまく伝わってなかったようだ。それなら問題ない。
「えぇそれで間違いありません。自分の学んだものでは先程言った避難経路が隠し通路で避難場所が隠し部屋で間違いないです」
「あぁやはりそうだったんですね。……そうですね、確かにそれならユーラさんが私を一人だけ呼んだ事にも説明がつきます。隠し通路や隠し部屋は王族だけが知りうるのが一番ですから。悲しいですが人の口に戸は立てられないとは言いますからね」
へぇ~その言い回しってこの世界でも通用するんだっていうか。まんま同じ言葉としてあるんだ……何か作為的なものを感じずにはいられないが、まぁわかりやすいのは良いことだから別にこれ以上は気にする必要もないか。
「それでユーラさん?隠し通路……えっと避難経路?の場所を教えていただけるのですねよね?」
「あぁ別にレナリアさんがわかりやすいように隠し通路で構いませんよ。変に間違って覚えたりしたらマズイですよね?だからわかりやすい方で覚えてください」
「それなら隠し通路でってそれは良いとしても……あれ?ということは……もしかしなくてもですけど、以前の隠し通路と変わっていたりします?」
「そうですね、全然違います。以前の隠し通路はかなりの人数に知られていたようなので。それともう一つ」
「もう一つ?なんでしょう?」
「意図的なのか、それとも経年劣化なのかはわかりませんが要所々々で通路が崩落していたんです。これはそこだけならまだしも他がこれから先も崩落しない可能性がないとも限らなかったので安全性も考慮してより堅牢な通路にさせてもらいました」
「なるほど……そういう事なら、まぁ仕方ないですね。お話はわかりました、では今から案内していただけますか?」
「いえ案内は必要ないかと」
「えぇ!?流石に案内無しに手探りでというのはちょっと……」
どうやら勘違いされてしまったようだ。そうではないので訂正しておこう。
「レナリアさん実はここに隠し通路の地図があるんです。だから案内は必要ないって言ったんですよ」
地図があるという俺の一言でレナリアさんは顔を真っ青にしながら俺に掴みかかってきた。
「ち、ちちち地図ですって!駄目です!ユーラさん!隠し通路の地図だけはいけませんっ!隠し通路は形に残してはいけないんです!万が一何かあってそれが敵に渡ってしまわないよう歴代の王族は自身の記憶だけを頼りに口伝だけにしてきたんです!だから隠し通路の地図なんてあってはいけないんです!」
なんとなくそれは予想できていたなので俺はこの地図に細工を施してある。それを今からレナリアさんに説明しよう。
「まぁまぁ落ち着いてくださいレナリアさん。大丈夫そこら辺はしっかりと考えてありますので心配しないでください」
俺は両手を前に出してどうどうと落ち着ける仕草をする。はぁはぁと息を荒げるレナリアさんが落ち着くのを待って説明を始めた。
「実はこの地図なんですが……まぁ説明するよりもまずは見てもらったほうが早いですね。これを見てもらえますかレナリアさん」
そうして俺は地図をレナリアさんに見せる。だが今の段階ではレナリアさんにはこれが地図ではなくただの白紙にしか見えないだろう。ここにちょっとした細工がある。
「どうですか?何か見えますか?」
白紙を見せられたレナリアさんはムスッとした顔で俺を見た。
「ユーラさんさすがに真面目に話をしている時にこんなイタズラはどうかと思います。イタズラなら後で付き合いますから今は真面目にしてください」
どうやらイタズラと勘違いされたようだ。さして長引かせる事ではないのでさっそく種明かしをした。
「実はこれある承認手順を踏まないとただこれだけ見ても白紙にしか見えないんです。これを使わないといけないんです」
そうして出したのは俺特製の魔道具であるこれに登録したい人の血を一滴垂らす事で登録が可能でそれをしない限りはたとえ地図だけ手に入れて全く意味がない代物になってしまう。なので、一番重要なのはこっちの方だったりする。という説明をレナリアさんにして登録をしてもらい再度地図を見てもらう、すると。
「確かに見えますね……なるほど、これはまた凄いものを作っていただいたのですね。ユーラさんありがとうございます。では、早速お父様とお母様に話して参ります。もし、よろしければ先程の説明をもう一度していただいてもよろしいですか?」
「大丈夫ですよ。では、そのままここで待っていても?」
「はい、そのままお待ちになっていてください。今呼んで参りますので」
そうして去っていくレナリアさんはウキウキとスキップをしていた。上機嫌になる理由はよくわからないけど、まぁいっかと思いつつ適当に準備した椅子に座り待つことにしたのだった。
おぉ……朝6時半から書いててようやく書き終えました。超眠いので投下したらちょい寝ます。
ではでは今回はこれで。