第149話 習得した技術を褒められるのは素直に嬉しい
走り去っていたレナリアさんにすぐさま追いついた。顔を赤らめながらチラチラとこちらの様子を伺うレナリアさん。可愛らしさが増した気がするね。
「どうしました?レナリアさん俺の顔になにかついてますか?」
レナリアさんがどのような状況にあるのかを知ってて敢えて知らないフリをして聞いてみた。そうするとどうだろう見事なまでに顔を更に真っ赤にさせて俯くレナリアさん。うんうん良いねぇ~。だがしかし!これ以上からかうとそろそろ反撃がきそうなので止めておこうか。
レナリアさんと共に並んで城内へと足を踏み入れると中の様子を見ていた国王夫妻とその他家臣一同が呆気に取られた様子で立ち尽くしていた。どうやらこの世界には無いデザインや造りを見て固まっているようだ。
その様子を見て俺は嬉しくなった。なぜならこの技術は大樹さんや連枝さんの二人から学んだものを活かして作り上げたものだから。まず柱や階段などの配置や造りなどは連枝さんの得意とする迫力のある見せ方を採用させてもらった。連枝さん仕込みの技術は如何に材料を駆使して下品にならないように且つその素材の持つ魅力と存在感を見せるかが肝だ。完全に真似ができた訳ではないが、俺が教われる範囲で学べた事はこの場にしっかりと表現できたのではないかという自負はあるつもりだ。
続いて大樹さんから学んだ技術は繊細な彫刻や緻密な造りを再現してみた。大樹さんの技術は本当に素晴らしいの一言に尽きると思う。階段や柱にひっそりと添えて見たが、俺の未だ未熟な技術でもある程度はいい出来に仕上げたつもりだ。少なくとも超一流の大樹さんには及ばないまでも一流に足を掛ける程度の見せ方は出来てるのではないかと思っている。
実際は入る前である正面の入口の門にはかなり気合を入れて王家の家紋を彫刻しておいたのだが、そこで少しやらかしてしまった。折角の見せ場である正面の門を開けっ放しの状態にしていたせいで皆が皆そこへ注目することなくすぐに城内へと入ってしまったのだ。痛恨の極みである。
そこに関してはかなり悔しさがあるが、それでも中の造りを見て感動していたり迫力に圧倒されている様を見て少しは気分が良くなった。後でしっかりと見てもらおう(やっぱりどうにか見てほしいのだ)
数分ほどして、ようやく皆が元に戻った。呆気に取られたりしていた自分に気づきハッとした面持ちで俺をみると何かこうキラキラ?したような視線を向けてきた。あまりに馴れない視線なので感謝なのか何なのかわからず曖昧に笑って返しておいた。
そんな俺の様子を見て呆れた様子でレナリアさんが話しかけてきた。
「ユーラさん、もしかしなくてもなぜ皆様がユーラさんに視線を集めておられるのかご理解しておられませんでしょう?」
「そう、ですね?よくわからないです。こういう視線を受けた事無いもので」
そんな俺を見てレナリアさんはこの人はもう……みたいな感じで見てきた。いや、ね?しょうがないんですよ。以前の俺は自分に欠片も自信がなかったのものでね。
「皆様はユーラさんに尊敬の念持って見ておられるのですよ。ですのでそれを受け入れてください。どうせなら手を挙げて自慢気に振るわれてもよろしいんですよ?」
「それはちょっと……自分のキャラじゃないかなぁ~」
「もぅ本当に……まぁいいです。ただ卑屈にならずに今受けた評価を受け止めてください。ユーラさんはそれだけの偉業を成したのですから」
「うん、まぁそこに関しては受け止めますよ。そうでなければ俺にこれだけの技術を教えてくれた人に申し訳が立たないですから」
「ユーラさんにこの凄まじい技術を授けた方ですか。それはなんとも凄い人がいるものですね。この造りはなんとも言い難い迫力と繊細な技術が綺麗で美しさと雄大さを感じます。そんな技術が生かされた御城が私達の物だなんて……とても素敵な事です」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。俺も十全に教わった技術を活かしたとまではいきませんが、それでも今の自分にできる限りの事はしたつもりですから」
「さぞかしご高名な方たちに教わったのですね……そういえばその方たちはどちらに?もし、お会いになることができるのであればお会いしてみたいです」
「それは……流石に無理ですね。ここにはいない方たちですから」
そこまで言ってつい遠い目になってしまった。懐かしいなぁ大樹さんや連枝さんは元気にしているだろうか?……あれ?ちょっと待てよ?葉津梛ちゃん達は当然の如く向こうからきた訳で、そして向こうには勿論のこと大樹さん達が残っている……えっ?工務店の経営って大丈夫なの?意外や意外と思うが葉津梛ちゃんと和津梛ちゃんはかなり経営に力を貸していたはずだ。特に事務関連は結構任されていたような……ま、まぁ俺が気にしてもしょうがないか。
「もしかして私失礼なことを聞いてしまいましたか?」
おっと?俺が勘違いさせるような言い方してしまったからさも大樹さん達が亡くなったかのような感じになってしまったので、しっかりと否定をしておかないと。
「あぁ勘違いしないでくださいレナリアさん。俺が教わっていた人達は生きていますよ。ただそう簡単に会えない場所にいるのでつい感慨深くなってしまっただけで」
「そ、そうでしたか。てっきり私はうっかりユーラさんの心の傷に触れてしまったのかと思いましたので……良かったです」
「まぁそれはともかくとして。他にも案内をしておきたいので行きましょうか」
「はい!では行きましょうユーラさん」
この後俺はレナリアさんを引き連れて王族と貴族の人たちに王城を案内と説明をしていくのだった。
さて物語的に収める所に収まってきたかな?と思いつつ書き上げております。そろそろ着地点を決めなければと思っております。