第14話 出会った彼女は王女様でした
なかなか建築にいかないと思うかもしれませんが、これは一応必要なので書いてます。ぶっちゃけると人材確保ですね。そのためしばらくこんな感じの展開が続きます。少しは建築や小物、家具作りを書くつもりはあります。
さて女に話を聞く前に生活魔法の【クリーン】で全身をキレイにする。流石に全身肉片血まみれの状態で話はしたくないしね。おまけに臭いし。
キレイになったので話を聞く事にしたのだが、まだ蹲っている。魔物が全滅した事に気付いてないのか?仕方ない、こちらから声を掛けてみるか。
「お~い、魔物は全滅させたぞ。いい加減周りを見たらどうだ。いつまでそうしてるつもりだ。」
そう言われたからか女はゆっくりと頭を上げて周りを見渡した。もちろん周囲には死んだ騎士や襲撃してきた魔物の死体が散乱している。そのあまりの光景を見てうまく言葉にならないのか、あぁ…とかうぅ…とか言っている。まぁ気持ちはわからんでも無いが、ずっとここにいても血の匂いに誘われて他の魔物が寄って来かねない。遺品なり回収をするべきじゃないかと思うのだが、どうするか?
相変わらず動く様子が無いので、先に魔物を回収し血の跡を出来る限り焼却しとく事にした。さすがに遺体の鎧なんかについてる血痕は消せないし、かといって勝手に遺体そのものを回収するのも何か違うし。こんな状況に会うのは人生で初めてだ。どう対処するべきか、やはり彼女に話を聞いて判断するしか無いか。
「なぁ、気持ちはわからんでも無いがいつまでもここにいたら別の魔物が来るかもしれないぞ。生存者がいるかわからんが、確認したほうが良いんじゃないのか?それと、死んだ奴らの遺品とかも回収しないといけないんじゃないのか?なんなら手伝ってもいいからさ、早めに対処したほうがよくないか?」
自分でも甘い事を言ってるな、とは思うが、いくら自分が冷たくあしらわれたからとは言え自分も同じ事をする必要は無いと思う。今の所ざまぁをしてやろうとは思ってない。あまりにもふざけた事を言ったりされたりすればその限りでは無いが。とりあえず提案はしてみたが、さてどういう返事が返ってくるかな?返答次第では、この場に置き去りも有り得る。叶うなら彼女がそんな馬鹿な事を言わない事を期待するが、昨日の件があるから微妙なところだな。
「…あなたは確か昨日の…何故こんな所に?私を助けてくれたのですか?あなたを盗賊扱いしてしまった私を?」
「はっきり言うがアンタを見つけたのはただの偶然だ。たまたま次の目的地を何処にしようかとあたりを見回してたら、アンタ達がいた。それだけだよ、助けたのは…俺の気分の問題だな。アンタが気にする事はないよ。それで、さっきも聞いたけど遺品の回収やらはどうする?アンタが1人で出来るっていうなら手は出さないけど。」
「…情けないですが、私1人だと日が暮れてしまいそうなのでお手伝いをお願いしてもいいですか?こんな事を言える立場じゃないのは分かっておりますが…。」
「あぁ別にいいよ。それにそこまでアンタを恨んでるわけでもないしな。ただ助けた、は言い過ぎにしても気絶してる状態のアンタらを魔物に襲われないように見張っていた人に対してお礼ではなく、批判の声が出た時には礼儀を知らないヤツだとは思ったがね。」
「その節は申し訳ありませんでした。ただ言い訳をさせていただけるなら自分以外の者が気を失ってる状況では、冷静に物事を判断する事が出来ませんでした。もしかしたら魔物をけしかけたテイマーでは無いかと、疑ってしまいました。助けていただいのに本当に申し訳ありませんでした。」
「あぁいいよいいよ。分かったからもう謝らなくてもいいよ。それじゃあ手伝うけど、どうしたほうがいいんだ?遺品の回収をしたほうがいいかもって言ったが、正直どれを集めれば良いのかはわからないんだよ。だから教えてくれると助かるんだが。」
「そうですね…出来れば遺体をそのまま持って帰る事ができるのが望ましいのですが、馬車が壊されてしまいましたので連れて帰る事はできそうにありません。なので騎士たちの剣か鎧の一部家紋がある部分ですね、あとはそれが回収出来ないものは同じく家紋が刻まれた盾とかでしょうか?」
「髪の毛とかはいらないのか?その人の見分けが付きそうだが…。」
「髪の毛ですか?…遺品としてはあまり聞いた事が無いですね。持ち帰ったとして似たような髪色の方が居たりしたら勘違いされそうです。それに髪を持ち帰ったりしたら邪悪な儀式に使われると勘違いされないか心配です。」
ふむ、そうか向こうの感覚で言ってしまったな。この世界ではそういう勘違いをされる事もあるのか。俺も気をつけておこう。しかし、集めるのは良いんだがどうやって運ぶつもりなんだ。
もしかして、アイテムボックスみたいなのがあるんだろうか?ちょっと聞いてみるか。
「なぁ少し聞きたいんだがいいか?遺品を集めるのは構わないんだが、これだけの人数の遺品をどうやって運ぶつもりなんだ?見ての通り馬車は壊れてるだろ?どうやって運ぶのか少し気になったんだが。」
「…そうでした。遺品を集めても運ぶ方法がありませんでした。どうしましょうか。…あのなんと言えば…今更ではあるのですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
あぁそう言えばまだ名乗ってなかったな…うん…何だろう何か引っ掛かるな?何かこう忘れてるような…そうだ!俺まだリィサに名前を教えてなかった!ずっとリィサに夢中になってたから、自分の名前を教えるのを忘れるとは、何たる事だ。
それにしても困ったな。名前を教えるのは構わないんだが心情的にはリィサに先に名乗りたい。順番にさして差は無いとは思うのだが、彼女を大事にしたい俺からすればそういう事でも彼女を優先したいのだ。ここは適当に偽名を語っておくか。第一まだ目の前の彼女を信用していないからな。手伝いはするが、彼女を信じるかどうかは別問題だ。
「俺はユーリだ、俺もアンタの名前を聞きたいね。いつまでもアンタじゃ変だろ?せっかくだから教えてくれないか?」
「ユーリさんですか?私は…私の名はレナリア・プリムス・フォルティシアです。よろしくお願いしますね。ユーリさん。」
「あぁこちらこそ、レナリアさん…でいいのかな?よろしく頼むよ。」
俺が偽名なのに対しておそらくレナリアさんは本名だろう。若干の罪悪感があるがそれでも俺はレナリアさんよりもリィサを優先する。リィサとの関係は歪な始まりだったが、それでも初めての相手だし、何よりリィサも俺に好意を抱いてくれてるのがハッキリわかるのでより強く彼女を優先したい思いがあるのだ。こればかりはしょうがないと思うしか無い。それにしても我ながら安直な偽名にしたもんだ。こういうのってテレビとかで見てると単純だな、コイツ。って思ってたが、自分がその立場になると意外と出てこないもんだ。俺も単純だって事なんだろうな。
「それで、結局どうするんだ?さすがに馬車を直してくれと言われても、俺には無理だぞ。それができるならとっくに直してるからな。」
嘘だ。ハッキリ言えば俺のマイバッグにはかなりの量の加工済みの木材や原木が入ってるし、金属だってかなりの量を持っている。なぜ森の中に居たのに金属を持っているんだ?とツッコミが入りそうだが、しっかりと理由はあるが今は時間が無いので割愛させてもらう。機会があれば説明する事もあるだろう。
「そうですね…実はですね。私達はこの先にある辺境の街トライフルに向かってる最中だったのですが、先の魔物の襲撃によりそれが断念してしまいました。ですので遺品を回収して魔物に荒らされないように埋めておいて、一度トライフルに向かって馬車を貸していただけないかを聞いてみたいのですが、どうでしょうか?」
そうきたか。さすがにそれはマズイな、せっかく無事に街を脱出できたのに今ここで街に戻ったら何の為に魔法まで使って脱出したのかわからなくなってしまう。だからと言ってここで見捨ててレナリアさんが魔物に襲われてしまえば流石に夢見が悪いしな。どうしたもんか。これは考えてしまうな。
いっその事俺の事を打ち明けて見るか?そうすれば余計なトラブルに巻き込まれないで済むかもしれない。だが打ち明ける事によってトラブルに巻き込まれる可能性もある。あれ?これってもしかして八方塞がりになってる?強行手段をとれば問題なく行けなくも無いが何かしらの遺恨が残りそうでもあるんだよな。やはりあの時金貨を出したのは間違いだったか。しかし、あのタイミングで金貨を出したからこそリィサに出逢えたと思えばそれこそ値千金の価値があると思えるしな。えぇいさっきも言ったが何もしないで後悔するぐらいなら行動して後悔しよう。どうせ俺が無駄に考えてもそもそもがいい案が思いつくとは思えん。ならせめて自分の信念で行動しよう。
「レナリアさん…言いにくいんだがな。俺はその街から逃げてきたんだよ。だからさその街に行くなら悪いが俺は行けないんだ。街が見えるギリギリまでなら送ってもいいんだが街に入るのは無理だ。それでもいいならそのまま手伝うがどうする?」
「逃げてきた…ですか?それは理由を伺ってもいいですか?昨日会った時は確かトライフルを目指してるように見えましたが、今日になって逃げ出したとなればそれなりの理由があると思うのです。ユーリさんがお嫌でなければ教えていただけませんか?」
これは…本気で困ったな。ここまで純粋な人だったのか。昨日の俺に噛み付いた人と同一人物とはとても思えないな。さて、どうするべきか、本当の事を教えるかそれとも嘘をつき続けてごまかすか。
俺の本音としては本当の事を伝えて上げたいのだが、如何せん彼女の正体がイマイチはっきりしないからな。どうするのが安全か判断が難しいところだな。!考えが閃いた…のはいいが、若干躊躇うな正直アホか?と自分で思ってしまうぐらいに、だが他に思い浮かばないし当たって砕けろの精神で言ってみるか。
「その前に聞きたいんだがいいか?質問に質問を返すようで悪いが、レナリアさんは一体何者なんだ?ただの良家のご令嬢ってわけじゃないんだろ?見た限り馬車の中に荷物も大してないから、商人の娘ってわけでもなさそうだしな。それにあれだけの騎士を連れていたんだ。もしかして結構な貴族の出なんじゃないか?」
「…私が何者か…ですか?できれば聞かないで欲しいと思っていたのですが、流石にそういう訳にはいきませんか…。聞かれてしまうと困ると言ったらどうしますか?」
「特にどうもしないけど、対応は少し変わるな。街の近くまで案内したらそれで終わりだな。それ以上は関わらない。俺も自分の身が大切だからな。俺も知らない、レナリアさんも知らない、で終わらせるかな。だから言いたくないなら言わないでもいいよ。ただ俺も自分の事をこれ以上は何も喋らないけどね。」
「…少し考えさせて下さい。」
「あぁ少しぐらいなら別に構わないよ。だが、あまり時間を掛けないでくれ。日が暮れるとさすがに厳しいからな。」
「はい、さすがにそこまでは…では少しだけ…。」
さ~てどうなるかな?俺の気のせいじゃなかったら、とんでもない地位にいる人物だと思ってるんだよね。名前がな~それっぽいんだよな。ただの気のせいならいいんだけどね。もし俺が思ってる通りの地位の人間なら面倒の塊と言ってもいいぐらいの人だが、どうなるやら。
「ユーリさん、考えがまとまりました。私の事をお話します。聞いていただけますか?」
おっと意外!まさか、自分の正体を明かすのか?俺はてっきり隠すんじゃないかと思っていたんだが、もしかしなくてもかなりアグレッシブな性格なのかね?これは波乱を呼びそうだ。
「いいのか?俺の予想だと話すとマズイ立場の人だと思ってるんだけど。さっきも言ったが別に話さなくても街の近くまでならちゃんと護衛も兼ねて送り届けるぐらいはするけど。」
「いえいいんです。ただ幾つかお願いがあります。それを聞いて貰えればになりますが。」
「ん~そのお願いの内容によるな、それによっては俺は話を聞くこと事態を拒否する。」
「いえ変な言い方にはなりますが、大した事ではありません。まず1つが私が話す内容を誰にも話さないで下さい。そして2つ目が私の事を話したらちゃんとユーリさんの事も話して下さい。今はこの2つだけです。あとは話し次第になりますが。」
ん~別段変という程でもないが、どうなんだろうか?当たり前といえば当たり前なんだがこれはどう捉えるべきか。俺が警戒しすぎてるとも言えるのだが、安全とも言い難いな。俺だけならなんの問題もないが、俺にはリィサもいる。彼女を巻き込むことはしたくないから、場合によっては見捨ててもいいと思っている。とりあえずはそれで行こう。考えすぎてもあまり埒が明かない。
「わかった。とりあえずはそれでいい。聞かせてもらえるかな。」
「はい、では私の正体というか身分になりますが、私はこの国ツイスタニア王国の王族です。王位継承権は低いですが、これでも第一王女です。それとこの辺境の地にいる理由ですが、一応は視察ですね。隣国の干渉がどれだけの脅威があるのか?また、昨日にお話に上がった大森林の影響がどれほどの物なのかを実際に見て確認するためです。単純ですが私がここにいる理由はそれになります。」
「差し出がましいようだが聞いてもいいかな?」
「答えられることなら…。」
「そんなに警戒しなくてもいいよ。疑問に思った事を聞きたいだけだから無理なら別に答えなくてもいいよ。なんで第一王女なんて身分の人がこんな辺境のましてや危険な場所とわかっててこんなに少ない人数で来たんだ?俺が思う普通ならもっと騎士の人数がいてもいいんじゃないか?もっと言うならレナリアさんが来る必要があるのか?って事さ。」
「それは…わかりません。私はただ王位継承権第一位の兄の命令に従ってここに訪れただけですので詳細はわからないのです。騎士の人数もこれだけいれば充分だろう。と言われてろくに準備もせずに王都から出発したので。」
「それは…また何というか。」
おいおいこれってよくラノベとかで見るアレじゃないの?ほら、王位を継ぐのにお前が居たら邪魔だから遠くの地に行かしてそこで…みたいなのじゃないの?うわ~関わりたくねぇ!厄介事の匂いがするやつじゃん。まさかとは思うが本人がそれに気付いてません。とかないよな?こんなに露骨な死刑宣告ってあるかね?ってぐらいなんだが。ちらっとレナリアさんの表情を見てみる、ひじょ~に微妙な顔をしてらっしゃる。これ本人も気付いてますわ。分かった上で来ちゃったんだね!どうすんだよ、この人王都に帰還したら殺されるんじゃないの?大丈夫?
「…気づきましたか。おそらくですが、私はこの地で死ぬ事になってたんじゃないかと思います。多分私の存在が邪魔になったのでしょう。最近、父の…王の容態が優れないと聞いてたので、もしかしたら継承争いに巻き込まれたのでしょう。私に王位を継ぐ意思なんて無いのに…。兄上は私を嫌いになってしまわれたのでしょうか?」
聞きたくない、聞きたくな~い!俺を巻き込もうとするんじゃねぇ!誰もそこまで込み入った事は聞いてないんだよ!俺が知りたかったのはどうして来たか?であってそこまで細かい事は聞いてないの!俺はアンタ以上に王位なんてものと無縁の存在なんだよ。知りたくない事まで教えないでくれー。
「あの…ユーリさん?どうかしましたか?なにやら複雑な表情をしてらっしゃいますが。」
ア・ン・タ・ノ・セ・イ・ダ・ヨ!と言ってやりたい!だが流石にこの状態に追い打ちを掛ける程俺も鬼じゃない。そこは飲み込んでおこう。とりあえずこの場は誤魔化して適当に俺の事を話しておくか。立ち入りたい話じゃないもんでね。
「いや…なんでもないよ。それよりも今度は俺の事を話そうか。俺は昨日も言ったとは思うが、大森林の中で生活してたんだが、祖父母が居なくなったからいつまでもここにいてもしょうがないと思って旅を初めたんだよ。幸いにも祖父母が金貨1枚っていう大金を残してくれたから、旅の資金は潤沢だったんでね。魔物に襲われないように隠れながら徒歩でゆっくりと移動を続けてきたんだよ。1ヶ月程掛かってここまできたんだが、レナリアさんも知ってるとおりに昨日の件に出くわしたと言う訳だ。旅と言っても始まったばかりだしね、俺が言えるのはそれだけだね。」
「そうですか、大変でしたね。それなのに私と来たら助けて頂いたのにあんな無礼な振る舞いを…昨日は本当に申し訳ありませんでした。ここにもう一度謝罪させていただきます。」
「いや昨日のことは本当にもう気にしてない、これ以上謝られても困るからもういいよ。それよりもどうするんだ?今はまだ明るいから良いが、もう少しすれば日が傾き始めるぞ。急がないとまずいはずだが、結局どうするんだ?」
「はい、それでしたら決めています。街の前までで構わないので送っていただけませんか?お願い致します。」
それなら街の近くでお別れだな。厄介事に巻き込まれないで助かりそうだ。とその時は思ったがどうやらどの世界でもそうは問屋が卸さないってのは定番のようだった。
トラブルの匂いをさせてますね?とりあえずどうなるかは決まってますがね。