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第137話 抜け目ない姉妹達

 出発する前に小屋に再度結界を掛けて、その場を後にした。


 直接するのも悪くはなかったのだが、どうせなら姉妹達に異世界の風景を見せて上げたいと思った、のは良いんだけど……。


「ふぉ~凄い!凄いね!優くん!これが異世界の草原なんだ!」


「……確かに凄くキレイな風景ですね。こう見入ってしまうと言いますか。とにかく凄いという表現しかできません」


「確かにすげぇなぁ……。アタシも海外に行ってたけど、こんな風景は初めてだ」


「そう、だね。圧倒される風景だと思う」


「見たことない、いえ見る機会がなかった風景といったところですか」


 各々が思い思いの感想を口に出している。俺は慣れてしまった風景で光景だが、向こうの世界からきたら圧倒されて当然なのかもしれない。


 姉妹達に合わせてゆっくりと歩いていく。何処かのタイミングで急ぐ必要はあるけど……まぁ今は急ぐ必要はないだろう。


 はしゃぎ回る姉妹達を横目にしながら周囲を見渡す。魔物はおらず敵意を持った反応も感じられない。今しばらくは大丈夫だと伸びをして肩の力を抜いた。知らず力んでいたようだ。




 途中見晴らしの良い場所で昼休憩を取った後にまた歩き出した。日没までに適当な場所を見つけて夜を明かすために野営の準備もしないとな。


「ねぇ優くんちょっと良いかな?」


「何?葉津梛ちゃん何かあった?」


「ううん何かあった訳じゃないんだけど、ほらもうそろそろ暗くなりそうだけどそのまま歩いていくのかなぁって気になったんだけど」


 あぁ、もしかして夜通し歩くのかと勘違いされたのか。流石にそんな無茶な事はする訳はないんだけど、まぁ何も言わなかったら流石に気になるか。


「流石に休むよ。みんなも疲れてるだろうしね。今は適度に安全そうな場所を探しながら歩いてるだけだよ。それにもう見つけてあるし。ほら、向こうに少し広場みたいに見える場所があるでしょ?そこで野営でもしようかと思ってるんだ」


「やえい?やえい……もしかして野営!うそ、もしかしてキャンプするの!?」


「えっ?ま、まぁそうだね。何かまずかったかな?」


 まさか野営は嫌だとか?テントとか冗談じゃない!って思ってたり?異世界の夜の風景とか星空とかも見てもらおうかと思ってたけど……嫌なら改良型の小屋でも出そうかな?と思ったので尋ねてみたところ――。


『それOK!』


 と満場一致の意見を戴いたので目的の場所へと移動し、野営の準備をすることにした。


 ワイワイガヤガヤと全員でキャンプの準備をする。意外とみんな乗り気だったようで、俺が全部準備しようと思ってたけど全員でサッと準備してしまった。


 食事は相変わらず俺のマイバッグから取り出した。少しだけ生肉を焚き火で焼いてワイルドな食べ方もしたりした。調理があまく若干獣臭かったけど……。


 小屋はあるけど敢えてのテントだ。そこで姉妹達は就寝中だったりする。寝る前は一緒に見張りをするんだと言っていたが、しばらく座っていると1人また1人と脱落していき、最後の最後まで粘っていた葉津梛ちゃんもコクリコクリと船を漕ぎ始めあえなく脱落、テントの中へご案内となった。


 プランを膝に乗せ周囲を警戒するものの、どうやらこの周辺は敵はおろか獣の類もいないようだ。まぁ安心できるのでそれはそれで助かるんだけど。


「さすがに話し相手もいないとなると暇だなぁ、なぁプラン?ん?プラン?」


 プランも寝てしまったようだ。仕方ない静かに見張りを続けるか。どうせあと数時間程度だろうしな。



 どうやらそろそろ朝のようだ。空の向こうが白んできている。さほど寒くはないが念の為火を起こしておくか。


 更に日は昇りだいぶ明るくなってきた頃ぞろぞろと起きてきた。起こすまでもなくみんな自然と目が覚めたようだ。


「おはよ~~優く~ん。ムニャムニャ、う~まだ眠い~」


「うぅ、おはようございます優良さん。朝は強いと思ってたんですが……」


「おはよう!優良!いい朝だな!さすが異世界だ!」


「おはよう優けっこう早起きなんだね?」


「おはよう御座います優良君。もしかしてずっと起きてらしたんでしょうか」


「あぁみんなおはよう。それと静梛さん合間を見て仮眠は取っていたので大丈夫ですよ。あぁそれと朝ご飯のあとみんなに話があるんだ」


 俺が話があるというと今だに眠そうな顔をしていた葉津梛ちゃんもシャキッとした表情に変わり、マジメそうな顔になった。


 さっさと朝食を取り時間を掛けず本題に入る事にした。


「話っていうのは今日から馬車で移動しないかって言う提案をしたかったんだ。昨日まではみんなに異世界の風景を見せてあげたくて徒歩で移動をしていたんだけど、さすがにずっとってわけにはいかないからね。俺も頼まれごとをされてる身だからそっちもそろそろ片付けたいおこうかと思ってるんで」


「……なるほど。そんな事情が優良君にはあったんですか。優良君時間は掛けないので少し私達だけで話をしてもよろしいですか?」


「良いですよ。今すぐどうこうって訳ではないので、ただゆっくりし過ぎが無理というだけなので」


「では少し向こうで話してきますので……申し訳ないのですが優良君はテントを片付けていただいてもらえますか?」


「そうですね。テントだけじゃなくて諸々の後始末をしてますので、焦らなくても大丈夫ですよ」


「ご配慮感謝します。ではお時間を戴きます」


 綺麗な所作でお辞儀をして離れていく姉妹達。離れていても聞こえるのだが敢えて離れて話すくらいだから聞かれたくない事なのだろう。意識的に姉妹達の箇所だけ範囲の対象外にして周囲の警戒だけは怠らずに後片付けをしておくとしよう。



 時間にして30分くらい経過した頃に姉妹達が再度俺のもとへと集まってきた。どうやら何事もなく話し合いは終えたようだ。


「優良君先ほどの件全員了承しました。あと聞きたい事があるのですが、よろしいでしょうか?」


「聞きたい事、ですか?なんでしょう」


「馬車での移動との事でしたが、優良君の目的の場所までにどれくらいの日にちを予定してるのでしょうか?」


「移動時間ですか?そうですねぇ……う~ん何事もなければ一週間もあれば着くと思います」


「一週間ですか……でしたらそれ以外の方法であれば?」


「それ以外の方法ですか?」


「はい、もし間違っていたら申し訳ないのですが……優良君は移動に関しても不思議な力を使えるのでは無いでしょうか?もしその様な力があるのであればそれを用いて移動時間を短縮してはどうでしょう?」


「ふむ……できるかどうかで言うなら出来ますけど、良いんですか?せっかくの異世界なので色々体験したいかと思って馬車での移動を提案したつもりだったんですけど」


「優良君の配慮は嬉しく思いますが、途中でやり掛けの作業を放置するのはどうも落ち着かない気持ちにさせてしまうんです。たとえそれが自分が手掛けてないものだとしても、というのが私達の意見です」


「えっと?みんなが同じ意見で?」


「そうです皆同意見です」


 ちらっと全員に視線を向けると一様にうなづいている。


「そりゃそうだよ優くん。だって私達が何処で働いていたかわかるでしょ?」


「ですね。中途半端は許されません」


「だな!半端をするようなら優良でも許さねぇよ?」


「半端な事をするなら初めから何もしないほうが良い。優も、だよ?」


 大樹さんや連枝さんも似たような事言っていたな。さすが家族思想は一緒って事か?まぁそういう事なら俺もあの工務店に勤めていた者としては答えるべきだな。


「わかりました。それなら予定を変更して俺の魔法で一気に行きましょう。でも、良かったんですか?今を逃すと俺しばらくは時間を取れなくなるかもしれませんよ?」


 俺の問い掛けに対して姉妹達は声を揃えて――。


『もちろん後から時間をちゃん取ってね!』


 だってさ。抜け目ないのは母親譲りなのかな?なんて思いながらこの後の予定を考える俺だった。

だいぶ先送りにしていたお祖父ちゃん神についてそろそろ触れようかと思っております。いい加減物語の進行しないと……。

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