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第132話 姉妹の告白

 あの後色々あったが、俺は自分がどういう経緯でここへ来たのかを説明した後、今度は葉津梛ちゃん達が何故この世界へと来たのかを説明してもらった。


「なるほど……謎のオッサン?の力を借りてこっちに連れてきてもらったと。それにしても不思議な事ってあるもんだねぇ」


 なお自身の体験を差し置いての発言である。そしたら案の定――。


「何いってんの優くん!優くんのほうがすっっっっっごい体験してるじゃんか!何?女神様におじいちゃん神におばあちゃん神って!めちゃくちゃビックリだよ!!」


「そうです優良さん!ただでさえあの様な酷い状態のままで私達の前からいなくなってしまったというのに――それなのに……そんなアッサリした言い方して……」


 葉津梛ちゃん達に心配を掛けてしまい悪いとは思いつつも、この世界へと来てリィサ達と行動している内に俺の考え方はわりとポジティブよりになっているので、葉津梛ちゃん達が心配しての発言だとはわかっていても以前の様に深刻には捉えていなかった。


「まぁ、なんだよ。世の中不思議で一杯って事だね」


 そんな俺の発言を聞いた皆の反応はそれぞれ違っていた。深刻そうにとらえている静梛さん、あっけらかんとして笑う千梛さん、ほぼ無表情な和泉梛さん、苦笑いする葉津梛ちゃん、そしてただひとり泣きそうな顔をする和津梛ちゃん。


「と、とりあえずこんなところで立ち話もなんだし小屋の中に入って話をしようか!ほ、ほら、ここって暗くなると魔物も徘徊するような場所だから、ね?サッサ!ドウゾドウゾ中へ~」


 深く考えさせる前に無理やり違う方向へと誘導しよう。突き詰められてもうまく説明できる気がしないし?




 小屋の中へと入り、まずは腹が減ったであろうと俺はマイバッグから今までこれでもかと溜め込んでいた作り置きの食料を放出した。俺の手作りである。本来なら手始めに王都から屋台を発展させてこの世界の料理を堪能したかったのだが、件の騒動のせいで全く進んでいなかった。



 飲み物と追加の食料を出すそばから爆食いしていく姉妹たち……あれぇ?彼女たちってこんなにお召し上がりになる人達だったかしら?




 ビックリです。一人あたりゆうに10人前くらい食べちゃったよ。あのお淑やかを絵に描いた様な静梛さんでさえ、ペロリだ。

 ま、まぁ別に食べるのは構わないんだが、意外すぎてほんの少し驚いただけなんだが……。


 さて、食事をしながら話を聞くと――向こうではかなりの大騒ぎで工務店の人達を巻き込んで俺の捜索が広範囲で行われていたようだ。


 しかし、その努力の甲斐もむなしく俺を見つける事は出来ず徐々に捜索は神楽坂家の人達だけでとなっていき、段々と情報は減り、もうすでに――となりかけていた時に、不思議な現象に見舞われたという事らしい。


 それ以外にも様々な話をした。静梛さんがストーカー気質の奴に追い回されたりとか―葉津梛ちゃんが無茶をしまくって和津梛ちゃんに迷惑をかけた話だとか―はたまた海外にいた千梛さんと和泉梛さんがちょっぴりホラーな体験をしたりだとか―まぁ色々話を聞いた。




 そろそろ食事も終わりとなりいよいよ本筋の話とばかりに静梛さんが切り出してきた。


「優良君……私達がここへと来た現状はおわかりいただけたかと思います。ここからが本題です。私達姉妹は優良君への想いを胸にここへと参りました。……回りくどい事は申しません、ハッキリとお尋ねします――私達誰か一人ではなく私達姉妹の想いを受け止めていただけますか?」


 お、おぉ……葉津梛ちゃんと和津梛ちゃんに関してはもしかしたら?と思っていたが、ここに来てまさかの全員が俺と恋仲になりたいと言い出すとは思いもよらなかった。


 嬉しいかどうかと問われればもちろん嬉しいです!と叫びたいくらいではあるのだが――。


「その……皆の気持ちがもし本当であるのなら、とても嬉しい事なんですが……えぇっと」


「大丈夫です。たとえ何を言われても驚きませんから、どうぞハッキリと申してください」


「あぁっと、え~実はすでにお付き合いしている人がおりましてですね……」


『えっ?』


 声を揃えて驚きの表情を見せる姉妹たち。う~ん、まぁ以前の俺からすれば考えられなくもない反応ではあるんだけど、あからさまにそういう態度を見せられると軽くへこむなぁ。


「ゆ、優良くん、そ、その付き合っておられるという女性は今どこにおられるのでしょう?」


 ぎこちない表情で話しかける静梛さん。俺に付き合っている女性がいると聞いてかなり動揺しているようだ。


「今はここには連れてきてません。この国の王都……あぁ、都心部のような場所で待ってもらっています」


 そう、ですか。と俯いてしまう静梛さん、と姉妹たち。あぁ、やべぇ。めっちゃ居た堪れない気持ちになるわぁ~。俺もまさか静梛さん達がこんな異世界に追ってこれるとは思ってなかったし、追いかけてくる程に俺に対して強い気持ちを持っているとは思わなかったから、かなりアッサリとここの人達と関係を持ってしまった。向こうの世界にまったくの未練を持っていなかったわけではないけど、俺の中ではもう帰れない場所だと思いこんでいたから。


 そんな事を考えてずっと黙っていると静梛さんが再び口を開いた。


「そ、そうです!どうせなら私達も一緒にどうでしょうか?その今お付き合いされている方と一緒に私達も優良くんをそばでお支えしたいのですが」


「あぁ……そ、それはぁ~」


 やっべぇ!付き合っているのは一人じゃないって言うのが遅かった!絶対俺が一人の女性とだけ付き合っていると思われてる!……えぇい!ここは誤魔化すような場面じゃねぇ!愛想をつかされるかもしれんが砕けてしまうなら早いに越した事はねぇ!行くぞぉ!


「静梛さん……」


「はい、なんでしょう優良くん」


「非常に言い難いのですが、包み隠さずハッキリとお伝えさせていただきます」


「(ゴクリ)ど、どうぞ!覚悟はできております」


 何かしらの勘違いが発生してる気がしないでも無いが、こういう事は躊躇えば躊躇うほど余計な勘違いを生むのでスパッと伝える。


「静梛さん……俺がお付き合いしている女性は――」


「は、ハイ!」


「一人だけじゃ、無いんです!」


「はぃ・・・・ハィーーー!ど、どど、どういう事なのでしょーー!」



 狼狽える静梛さん、と姉妹たち。何故か非常にやらかした気持ちになりながらどう説明しようかと悩む俺だった。



 


いつも読んでいただきありがとうございます。

以前の様な連投は難しいですが、時間を見て投下して参りますので、よろしくお願いします。

また評価をしていただけると大変嬉しいです。

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