第131話 やっと出会えた
懐かしい声が聞こえた。また会えたらいいなと思っていた。なにより……いや今はよそう。考える事は一杯で言いたい事は沢山あるけど今は何より言いたい言葉を。
「葉津梛ちゃん、久しぶり……元気だった?」
ほんの少し涙を溜めた瞳で俺を見上げる葉津梛ちゃん。懐かしい顔立ち……いや、以前より綺麗になった様に見える。女の子は少し見ない間に綺麗になる様な感じがするな。葉津梛ちゃんはそこら辺の女の子よりもその度合いが強い気がする。うん、いい感じの美人さんになったね。
しかし、俺の感慨深い思いとは裏腹に葉津梛ちゃんは予想外の動きを見せた。
「…クン……スンスン…はぁ~………たまらん!この匂い、やっぱりしゅてきすぎる!!」
「えっ……えぇ~ちょっと?葉津梛ちゃん?ど、どうしたのかな?何をしてるのかなぁ?」
葉津梛ちゃんが何をしているのかなんてわかっている。だが、久し振りに会ってすぐさまこの奇行を受け止めるのは勇気がいる。
「すぅ~はぁ~……優くんの匂いを嗅いでおりまする。あぁ~やっぱりこれだぁ~最高すぎる!」
そろそろやめてくれると助かる。正直な話自分の匂いを嗅がれて「でしょ!」とか言える程俺は自分の匂いが良いとは思えないので。しかし、そんな俺に更なる追い打ちが待っていた。
「ふぅ~ん……はぁぁ、よし!じゃあ交代!和津梛!カモン!」
「え!?ちょっと!って和津梛ちゃんもいるの!」
「ぬぁ~に言ってんの優くん?私達勢揃いだよ!」
「勢揃いって?誰が?」
「ぬっふっふっふ……なんと!神楽坂5姉妹こーりん(降臨)だよ!ヘイ!マイシスターズ!カ~モ~ン!」
相変わらずテンションの高い娘だ。俺は葉津梛ちゃんのテンションについて行くことが出来ずにいると小屋の中から4つの人影が小走りに駆け寄ってきた。
「優良さんっ!」「優!」「優良!」「優良君」
俺は一瞬呆然としてしまった。何故ならそこには長い間見掛ける事がなかった人達がいたからだ。
「えぇっ!静梛さんに和泉梛さん、それに千梛さんまで!どうしてここにいるんですか!?」
あり得ない人達のオンパレードである。確かそれぞれ海外勤務だったり勉学の為の海外留学だったりとはたまた工務店の為にと各地へ赴いていたはずだ。それが一堂に会しているのだ。珍しいという事もあるが何が起きているんだろう?という疑問が先立つ。
「どうしてここへとは酷いですね優良くん?大変な思いをしてここまで来たのですから私達をもっと労って欲しいです」
「いや静梛さん?労るとかの前にですね?どうやって来たのか?とかもあるんですが、それ以前に何故この世界へ?……ま、まさか皆向こうで俺と同じ様な目に遭ったとかじゃ!」
5人まとめてここへ来るとかまともじゃない。まさかとは思うが事故に遭ってしまったとかなのか?そんな……。
「お、落ち着いて優良くん、決してそんな事はありません。ここへ来たのは正規?かどうかはわかりませんが、一応安全を確認した上での方法で来ました。優良くんの考える様な辛い目に遭ったとかではありませんから安心してください」
「それは本当ですか?」
「はいそれだけは確かです。私を信じてください」
静梛さんと目を合わせる様に正面からしっかりと見ると、以前見た事のある芯のあるしっかりとした視線で俺を見ていた。ほんのり頬を赤らめているのが気になるが体調不良とかだろうか?まぁ、ここまでしっかりと視線を逸らさずにいることから嘘を言っているわけではなさそうなので信じてもよさそうだ。
「わかりました、静梛さんがそこまではっきりと言うのであれば信じます。それにしても本当に久し振りですね?以前よりもより一層綺麗になられましたか?」
意図したセリフではなかったのだが、俺の掛けた言葉でボフッと音を上げそうな感じで顔を赤くする静梛さん。こういう仕草を見ると綺麗な中に可愛らしさの存在する人だと思える。
「な、な、何を言うんですか優良くん!そ、そんな、まるで、ぷ、プロポーズみたいじゃないですかぁ……」
「え、いや、そんなつもりは――」
そこまで言いかけたところで横槍が入った。
「ちょーーっと待ったぁーー!静姉!油断も隙も無い人だよ!ここでまさかの抜け駆け行為だよ!反則行為だよ!」
「ちょっと葉津梛ちゃん!?俺の話を聞いて――」
「そうです静梛姉さん!一人だけの抜け駆けは許されざる行為です!私だってプロポーズされたいんですよ!」
「待って和津梛ちゃん!今のは別にプロポーズってわけでは――」
「静梛姉さん今のは卑怯。計算された表情だったアレは男なら大体落ちる。私も真似しよう、見る?優?」
「オーケーまずは落ち着こうか和泉梛さん。とりあえず皆落ち着こう!」
「バッカ!和泉梛お前こういう時は確認なんて取らないで押せ押せ行けば良いんだよ!そうだろ優良!ちょっと待ってろよ?アタシが大人の魅力を発揮させてだな――」
「お願いだから話を聞こうか千梛さん!収拾がつかなくなるから!」
「――(チラ)……ぽっ。良いですよ優良くん」
「いや、今のは可愛いけども!お願いだから俺の話を聞いて――」
『ダメーー!』
「お願いだから俺の話を聞いてくれぇーー!!」
突然の再会は嬉しくも面倒な展開になってしまった。この状況をどうやって収めようかと悩む俺を、溜息をつくような仕草でプランクキャットのプランが見守っていた。
これからも空き時間を見て投稿して参ります。
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