第123話 恐ろしきは勘違い
申し訳ないっす、今回も少ねぇです。
「え~と、ここをこうして……そんでこれは……こうかな?いや、あえてこうかな?……ん!良さげな感じにできたな!で、次は~っと」
ただいま絶賛建築中。まぁソレは良いとしてよ。
「一人は寂しいなぁ~、まぁ確かに?俺が頑張るから任せてって言ったけどさぁ?全く誰も来ないとは思わないじゃん?もしかしたら誰か一人くらいは「何か少しくらいは手伝おうか?」みたいな感じで来ると思ってたんだけどなぁ?」
だが現実はそう甘くなかったようで、俺が任せて!と言っちゃった後、お仲間さん達は――。
「そう?じゃあお言葉に甘えてちょっとお出かけしてくるね!みんなで!」
という今この状況で思い出すと切なくなる言葉を残してお出かけしてしまいましたとさ。とほほ。
「確かにそばにいてもすることはほとんどないかもしれないんだけどね?やっぱりこうすぐ近くで応援してくれたりしたらね?それだけで働く為の活力になると言いますか、えぇ」
一人グチグチと呟きながら城の建築に勤しんでいると、ふと自分が組み上げてる最中の城を見上げて思う。
「自分で作っておいてなんだけど……普っ通のお城だねぇ。いやまぁ当然といえば当然とは思うが、こう面白味がないというか。そういえばよく連枝さんにもいわれったけなぁ。もう少し遊びがあっても良いんじゃねぇかって。俺もそういう感じの遊びを取り入れてみるべきだろうか?」
悩むこと数分、どうせ誰かに指示を仰ぐことも出来ない以上は自身で考えて遊びを取り入れても良いのではないかと思うに至った。
「よし!そうだな!下手な考え休むに似たりって大樹さんも言っていたし、考え込むよりも行動するべきだな!うし!頑張ってみるか!」
俺はそう思い直して一度完成した部分にも遊びを取り入れて作り直していった。
着々と完成へと近づいていく城を見上げては、その都度遊びの部分を取り入れては組み立てていくという作業を続けていった……盛大な勘違いをしたまま。
そう既にお気づきの方はいるだろうが、連枝さんの言っていた遊びとはどちらかというとユニークな手法を取り入れても良いのでは?という解釈の方が正しかったと言えるのだが、その時の俺は何を勘違いしていたのか本来の意味での遊びを取り入れてしまったのだ。
それはもう城の随所に到るまで……城の全体に及んだ。しかし、この時の俺は気づかなかったのだ。自分の仕出かした失態に。そして、そばには止める人も居なかった。
俺がその事に気づくのはずっとずっと後の事。それこそ俺自身が綺麗さっぱり忘れてしまった頃になってからだった。
「なんか段々楽しくなってきたぞ!この調子でどんどん作業を進めていこう」
勘違いしたまま進む作業、しかもそういう勘違いしたままの作業に限ってやたらとうまく事が進み、やたらと丁寧に仕上がってしまうという事が起きていた。妙に歯車が噛み合ってしまい起きるトンデモ作業。
そして完成に近づくヤバい城。見た目は普通、しかしいざ本性を表すとその中身は風雲的なお城に変貌してしまうというヤベェ城になるという物だった。
勿論というとどうかと思うが、ネタ元は葉津梛ちゃんだ。あの娘は面白いと思えばそれが昔の物であれ最近の物であれ取り入れていくスタイルだ。俺は、その影響をモロに受けてしまったのだ。
そして、作業は続いていく……遊びを面白味のある事だと勘違いしたまま……。