第117話 これも試練?
感想いただきました。返信はいたしませんがありがとうございます。
城の至る場所で修繕する音が響き渡っている。木を打ち付ける音や金属を叩いて響くキーンという音。その音を懐かしく思いながらブラブラと歩いている。
今俺達は城の復旧作業を手伝っている。その理由としては人手不足だ。傷を負った職人達は俺達が治療したのだが、ライルさんは城の復旧よりも王都の街を復旧させる事を優先したのだ。
その為、城の復旧は人手不足となり本来なら王族を窮地から救った俺達は客人として扱われるはずだったのだけど、モニカ含む戦乙女達そしてリィサ達も苦しんでいる人達がいるのに自分達だけが休んでいるのは落ち着かないという一言により何かできる事は無いかと探す事になったのだ。
「以外と損傷が少ないな……ただそれでも見た目はやっぱり良くないね。それを考えるとやっぱり修繕する箇所が多いか」
「そうね……私のような平民の感覚だとこれくらいって思うんだけど、王族ともなればそうもいかないのでしょうね」
「えぇ、そうですね。王城はその国の顔と言っても過言ではありません。他国の重要人物を呼ぶ事もあります。その様な場所が傷ついていたりというのは良くありませんので」
「それもそうか。でも、あまり長い事そのままで大丈夫なの?早めに修理しないと……ってそういえば街の復旧が優先だから遅れてるんだったね」
「どうにかできれば良いのですが、当ては無いので。職人の方々が街の復旧を終わらせてくれるのを待つしかないのが現状ですね」
「そっか……まぁ厳しいよね」
そんな風にレナリアさんと話していると、その会話をそばで聞いていたユリーナさんが何かを閃いたかの様に切り出して来た。
「それなら~ユーラさんがお城を直しちゃえば良いじゃないですか~。それなら万事全てまるっと解決ですよ~」
ユリーナさんのその言葉に皆が一斉に俺へと視線を向けてきた。
「ん?……いやいや――いやいやっ!ちょっといきなり何を言い出すのかな!?いくら何でもそれは無謀だよ!さすがに城はレベルが違いすぎるって!」
否定的な俺の意見に対して、そんな事は無いとばかりにレナリアさんは身を乗り出してくる。
「いえ!きっといけます。なにせあの侯爵邸はとんでもないほどの完成度でした。ユーラさんであればきっと私達のこのお城も直せるはずです!」
拳を掲げて城を見上げ興奮しだすレナリアさん。いくら何でも一人で城を直せる訳はない。俺を過労死させる気なのだろうか?頼むから素直に職人さん達を待っていてほしい。いくら褒め称えられても俺は一個人なんだよ。
「ユーラさん、大丈夫です。きっとイケます!だからユーラさんのお力を貸してください!」
「い、いや、だからね?俺は―」
レナリアさんのあまりの迫力に後ずさりしてしまう。マジで怖い……いつもなら俺にこんなに押し掛けてこないのに。ただ修理を急いでして欲しいとい理由だけでここまでの迫力で迫ってくるか?
「レナリアさん、もしかしなくても俺に何かを隠していませんか?例えば、こう何らかの成果が必要だとか」
成果が必要の部分でビクッと反応を示したレナリアさん。やはり何か隠している事があるようだ。
「何を隠していますかレナリアさん?」
ゆっくりとレナリアさんに詰め寄る俺、後ずさるレナリアさん。そんな俺達の間にリィサとユリーナさんが入ってきた。
「まぁまぁ落ち着いてユーラ。きっとレナリアの事だからどうしても必要な事だと思うわ。でしょレナリア?」
「そうですよ~ユーラさん。落ち着いて話を聞いてみましょう~」
「……二人がそういうなら先に話だけでも聞いてみるよ。話してくれるんですよね?」
それとなく話をしなければいけない方向に持っていかれてしまったレナリアさんは無駄な抵抗を諦めてくれたようで話始めた。
「……という訳でして、ユーラさんと離れたくない私としてはユーラさんには是非ともこの話を受けていただきたく思いまして……ですが、もしも普通に話して断られてしまったらどうしようという不安もありまして」
レナリアさんが話してくれたのは要点をまとめて言えば、俺と婚姻したいのならばそれなりの成果が必要だけど俺にそれができるのか?という事らしい。
しかし、それならば王都を混乱から救い王族含む貴族家を救出したのは成果にならないのか?という問いに関して言えば、それだけでも充分な成果と言えるが後ひと押し欲しいとの事だった。では、何を成果とすれば良いのかとレナリアさんは王様に問うた所……。
『そこも含めて……レナリアよお前自身が考え決める事だ。自身の考える道を進むのであれば己自身で答えを導き出すのだ。そして、その答えを私達に見せてみなさい』
『レナリア私もそう思います。貴方自身の想いを貫き通したいという強い意志を示す時ですわ。……あなたの頑張りを私達に見せてください』
と、言う事なのだそうだ。でも、それってレナリアさんは考えて俺に提案するだけで、実行に移すのは俺なのでは?とそんな事を考えてレナリアさんを見ていたら。
「うぅ……なんとなく言いたい事はわかります。ですが、勝手な事を言っているのは重々承知の上でお願いしますユーラさん!このお城を直してお父様とお母様に結果を示す為にお力を貸してください!」
おぉう!思っている以上にガチのお願いだった。まぁさすがに俺も嫌だとは言わないけど……この城を俺一人で、か。出来るのかなぁ?そこが不安だったりするんだけど……恋人のお願いを無下にする訳にもいかないし、いっちょ気張ってみるとしよう!
「わかりましたレナリアさん。俺頑張ってみますよ!けど、一つ質問があるんだけど良いかな?」
「は、ハイ!どうぞなんなりと!」
俺が願いを受け入れてくれた事で歓喜してか、勢い余って俺の顔とレナリアさんの顔が急接近した。近い近い!
「ちょ、ちょっと!レナリアさん少し落ち着いてください。嬉しいですけど落ち着いてください」
声を掛けられて自分がどういう状態にあるかを確認したレナリアさんは、顔を真っ赤にしてズザザァーッと離れていった。……そんな勢い良く離れんでも、ちょっと残念。
それはともかくと思いつつ、妙に静かな周りを見るとリィサやユリーナさん、モニカや戦乙女達が俺とレナリアさんのやり取りを見てニヤニヤしながら状況を見守っていたようだ。
それに気づき更に顔を赤くして俯くレナリアさん。うん、これこのまま放置しておくと堂々巡りになりそうだわ。さっさと話を進めよう。
「レナリアさんさっきも言った質問ですが、城の復旧に工期じゃわからないか……えっと期限はどれくらい猶予があるんですか?」
恥ずかしがっていたレナリアさんだったが、俺が真面目に話しているのを察して表情をキリッと締めて答える。
「ユーラさんには難しい事をお願いするとは思いますが期限は早ければ早い程ユーラさんの実力を示すのに有効かと思ってますので、できるだけ早くお願いしたいです」
「できるだけ早くですか、具体的にはどれくらいの期間を目安にしてますか?例えば1ヶ月とか」
「いえいえ!さすがにこれだけの規模の城を直すのに1ヶ月とか絶対無理ですよ!そうですね……私としては1年、は流石に無理があると思うので2年程を見ていただけたらと」
2年か、悪くはないと思う期間だと思う。俺のスキルをフル活用すればいける気はする。ただ問題は……。
「期間に関してはわかりました。それと城を直す材料なんかはどうなるんでしょう?まさかそれも自身で調達しろという事ですか?」
材料の事を聞いた瞬間、レナリアさんが勢いよく視線を反らした。これはまた何かを隠しているな?
「レナリアさん?洗い浚い吐きましょうか、ね?何を……隠してます?」
「えっとぉ~その、ですね」
「はい」
「実はユーラさんの説明をする際にですね?」
「はい」
「マシイナ伯爵家の事やゴリニテ侯爵家での事を交えて説明をしたら……」
「したら?」
「なら材料もお願いしようかなって言われまして……その、ほっんとうにごめんなさい!」
「あぁ、それを言っちゃいましたかぁ」
「はいぃ~本当にごめんなさい……」
これは俺が思ってた以上に気合をいれて行動をしなければいけないようだ。……後悔はしてないが、性欲に負けて行動してはいけないなと思う俺だった。
少し調子がいい状態なのでほんのり文字数多めでお送りいたしました。