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第105話 兵士達の裏切り……を叩き潰す!

始めは村人視点から始まります。途中から主人公視点に戻ります。

 村を囲っている柵の周りには魔物の群れ、そしてその魔物の群れを村に誘導する人の姿。あれはどう考えても貴族の有する兵士達だ。まさか、我らの村が密かに行っていたフォースター伯爵様方の陣営に食料を供給していることがバレてしまったのだろうか?しかし、何処から?まさか我らの村に裏切り者がいるとでもいうのか?


 この村には村人に扮したフォースター伯爵様の兵士の方々が数人おられる。その方らはとても真摯な方々だ。よもやあの方達が裏切る訳はないはずだが、ならやはり村の者に裏切り者がおるというのか。だが、そんな私の疑問はここを襲撃する切っ掛けに至らしめた者により発覚した。



「クックック、ハーッハッハ!ようやくです、ようやくこの様な寂れた村から開放されると思ったら笑いが止まらなくなりそうですよ!」



 いきなり大きな笑い声をあげたのは本来であれば村を魔物や盗賊など或るいは敵方の襲撃から村や村人を守ってくれるはずの兵士達をまとめる兵士長だった。普段は物静かに村目掛けて襲い来る魔物を倒してくれたり、暇があれば村の手伝いをしてくれるお優しい方のはず。

 しかし今は顔を悪意に染めて抵抗する村人を押さえつけている。これは一体どういう事なのだ!



「へ、兵士長殿!な、何故で御座いますか!何故この様な事を?あなたは我らを、そしてこの村を守ってくださるためにフォースター伯爵様が使わしてくださったのではないのですか!?それが何故この様な事をなさるのですか!」



 村人を踏みつけたままの状態で村の外を見てニヤけていた兵士長は私に振り返りこう告げた。



「おやおや村長見てわからないのですか?今の状況を見て?本当に?もしそうなら目出度いですね、その平和思考ができる頭がね?まぁ所詮はこんな大した物もない田舎の村人風情では私達のような崇高なお方に仕える人間の事もわからないでしょう?ですからしっかりと教えてあげましょう。良いですか?良く聞いておいて下さい」



 今まで、それこと今日になり村が襲撃されるまでは無愛想ではあったが人の良い方だと思っていた人物は先程よりも更に顔を醜悪に歪ませた笑い顔で語りかける。



「私達は崇高なるお方で在られるシュツヘル様に仕える者なのですよ!あの御方に仕える私達があえてこの様な貧相な場所にいてわざわざ下民に手を貸していたのは全てはこの時の為!あの憎きフォースターのあらゆる手段を完膚なきまでに磨り潰してやるがためなのですよ!……フフ、私達があのフォースターに使わされた?馬鹿を言ってはいけません。あの様な小者に誰が使わされてなるものですか!私達の仕えしはいつでもいつまでも変わらない!そうこの国の王になることこそが相応しいシュツヘル様のみなのですよ!」



 何ということだ!まさか我が村から裏切り者がでたのではなく味方だと思って招き入れた兵士が敵陣営の手の者だったとは!しかも村の周囲にはその敵陣営が引き連れし魔物の群れまでいる。もはやこの村もこれまでか……フォースター伯爵様のお力になった事に後悔はない、だがその為に村の者達や小さな子ども達を巻き込んでしまった事だけは後悔せずにはおれぬ。



「おや?崩れ落ちてしまってどうしました?まだ、死人も怪我人も出てないじゃないですか!さぁ抗ってみせなさい!私達に歯向かって見せるのです!私があなた達の死に様をしっかりと見ておいてあげましょう!」



 力が抜けていくようだ、どう考えても勝てる訳がない。相手は普段から魔物や盗賊を相手に戦って生き残れる強さを持つ者達だ。挙げ句相手は鉄の甲冑を身に纏っている、そんな相手にどうやって勝てというのだ?無理に決まってる。クワや鎌で勝てる相手ではない。我らに残された道はこの兵士達に切り刻まれて打ち捨てられるか、村の外にいる魔物のエサになるくらいの道しか残っていないだろう。……いや、待て!確かフォースター伯爵様に言われて地下に避難する施設を作ったはずだ!中は狭く備蓄も全くと言いほどに足りないし村の全員が入る事は出来なくとも未来ある若者達だけでも生き残ればせめてもの救いにはなる。そう思い若い連中をまとめる者達に兵士長に気づかれないよう合図を出す。幸い兵士長以外の兵士達は外にいる魔物をどうにかして村の中に入れようと柵を破壊しようと動いている。兵士長だけであれば我ら年寄りが束になれば一時の時間を稼げよう。死に行くは辛い事だが、未来ある子ども達を守って死ぬのであればそれは名誉な事だ。そう思い立ち密かに兵士長を押さえ込もうと合図を出し、一斉に兵士長へと飛びかかる!だが、我らにはそれすらも叶わんかった。


 飛びかかり押さえ込もうとした瞬間兵士長と視線が合う、その一瞬で背筋に怖気が走る!兵士長はニタァと表現するのが的確だろう悍ましい表情だった。イカン!そう思った時には我らは地面に倒れ伏していた。何をされた?そんなのはわかりきっている……兵士長に斬られたのだろう。腹から熱い物が流れていくのを感じる、それと同時に流れていく残り僅かを生きるはずだった生命が同じく流れだしていく。



「ここ…まで…か、われ…ら…は…こ…ども…すら…まも……ないのか…」


「惜しいですねぇ?もう少し分かりにくいように合図を出さないと駄目じゃないですか。あそこまで見てくださいと言わんばかりの合図じゃあ新兵すら殺せませんよ?クフ…ハッハッハ!」



 斬りつけられた腹を空に向けその広大な光景を目に映す。どうせ死に行くならば遥か無限に広がるであろう空を見上げて死にたかった。誰も守る事は出来なかった身なれど同じ死に行くならせめてその死に様くらいは選びたかった。だが、無粋にもその美しく広がる空を遮るように醜悪な笑顔を見せつける兵士長の姿。剣を頭上に掲げているのが見える、その剣はあと幾時を待たず我が身に振り下ろされ死を突きつけるのであろう。

 

 死を覚悟しせめてもの抵抗をと醜悪な顔から目を背ける為目を閉じようとした時だった。我が目が捉える視界に空から降ってくる物が見えた。視界に映るのは兵士長が掲げる死を振りまく剣ではなく、その剣を振り下ろそうとしていた兵士長の頭上に降りかかる大型の狼の姿だった。


 「ギャァァァーー!」と大きな声が村中に響き渡る、その声は空から降ってきた狼に頭を齧られている兵士長の声だった。それを切っ掛けに村の中や柵の外にいる魔物やそれを誘導する兵士達にも狼が降り注ぐ!阿鼻叫喚の中で唯一我が村の者達だけが呆然と佇んでいた。


 そんな中辛うじて状況を把握しようと動く数名の者がいた。我が村の若者達をまとめる頭であり息子でもあるピントだった。



「親父!大丈夫か!しっかりしてくれ!いま、今薬を持ってきてもらっているからな!……くそ!なんだって言うんだ!俺たちが一体何をしたっていうんだよ!こんなの……止まれ!止まれよ!血が、くそぉ!」



 村の様子から見てあの空から降ってきた狼は味方のようだ、あの様子なら村はきっと助かるだろうが……私の傷はかなり深いのだろう、息子が泣きながら必死に血を止めようと色々としているようだが、もはや体の感覚すら無くなってきた。もう良い、私はもう十分に生きた後は頼むと声を掛けたくともその声すらもう出せない。目も段々見え辛くなってきた……そんな悪くなった視界にも関わらず私の目には光輝く少年の姿が写った。





 少し遅かったみたいだ、数人の村人が怪我をしてしまっているようだ。しかもそれは魔物によるものではなく、スルトさんがこの村を防衛する為に派遣した兵士達によるものだった。そしてその中でもこの村の村長がかなり深い傷を負わされたようなので足早にその人の元へと向かった。


 村長だと思わしき人と数名の傷ついた人達を一箇所にまとめられている場所へときた。これはひどいな……剣で斬りつけられたのか。急がないとこの村長さんは危険だな。



「すいません!少し離れてもらえまんせか?俺がこの人を治療しますから」



 早く回復をしてあげようと村長さんに近寄るとそばで必死に血を止めようとしていた青年が俺の前に立ちふさがった。



「お前は誰だ!お前もアイツラの仲間なんじゃないだろうな!そうやって治療をするフリをして親父を殺そうとしてるんだろう!それ以上近寄るな!」



 必死だ、うんそれはそうだろう当たり前だ。いきなり現れた俺を信用できないのだろう。腕を広げて近寄らせないようにしている……のを無視して、快復魔法発動!



「快復魔法ハイヒール!これでたちまち全快だぁ!」


「な、親父に何をした!この不審者め!」



 いきなり父親に何かをされた為激昂し俺の胸ぐらに掴みかかろうと伸ばすその手を……素早く躱す!残念!捕まってやる気はサラサラないんだな~これが。……ってあれ?なんか俺って意地が悪くなってね?


 何度も掴もうと躍起になる青年の手をスルッスルッと避け続けるなんか面白くなってきた!すでに青年の背後では元気に快復した村長含む村人達がスルトさんにお礼を言っている最中だ。この青年だけが必死に俺を掴みかかろうと頑張っている。


 それにしてもこの青年はいつまで続けるつもりなんだろう?すでに5分くらい経っているいる気がするけど誰も止めてくれないんだよね。なんか村長らしき人は俺と青年を見て微笑ましい様子で見守っている。流石に飽きてきたし、そろそろ止めてほしいんだけどなぁ。あとお腹が空いた。



本来は昨日のうちに投稿する手筈でしたが、日曜なのに……まさかの重要書類業務が!これを怠れば給料に影響する為泣く泣く作業をするはめに……。ですので今日仕事が終わって夕飯の前に急ぎ投稿させていただきました。少しでも楽しんでいただけると良いなぁと思ってます。

 ブクマ&評価ありがとうございます!いつも読んでくださる皆様方に感謝を!m(_ _)m

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