第104話 行け!わんダー!
馬車は空を行く。本来ならありえない光景、だけどまぁ……異世界だし問題ないという事で。
ようやくスルトさんの準備も整ったので出発する事が出来た。かなり時間が掛かったが、問題は王都だけではないので仕方ない。スルトさんが領地を留守にしてる間に敵対者が襲撃を仕掛けてこないとも限らないのだからそれを見越して行動をしておくのは当然とも言えるだろう。
「それにしても……スルトさん?一緒に来るのは本当にスルトさんだけで良いんですか?てっきり他にも兵士の人たちを集めているものかと思っていたんですけど」
「ん~?あ~まぁ確かにそれはそうなんだが……ユーラお前が領地に攻めてきた魔物の襲撃を沈めてくれた後にちょいちょい事件があったんだがな?その時に街に潜んでいた裏切り者がいたんだよ。で、そいつらをとっ捕まえて色々吐かせてみたんだが……俺が纏めている派閥に結構寝返って間者になってるヤツが多くてなぁ。洗い浚い探して掃除したつもりではあるんだが、まだ居そうな感じだったんだよ。それなのに街から少しとはいえ兵士を連れ出すのもマズイかとな」
「もしかして兵士にも裏切り者がいたとかですか?」
「まさにその通りだよ。俺が病気で動けなくなっている間に兵の3割は向こう側に寝返ってたらしいんだよな~。少なくなった所為もあって余計に動かせなくなったんだよなぁ~。あぁッ!クソ!計画がすっかり駄目になっちまったぜ!どうしてくれようか!」
だいぶ不機嫌だな……。計画というのはよくわからないけど、考えていた物を駄目にされた時の苛立ちはわからないでもない。うん、これは思いの外スルトさんがいい活躍をしてくれそうだな!
「ん?なんだユーラ?俺を見てニヤニヤしてるが……何か変な事でも考えてるのか?一応言っておくが俺はソッチ系じゃないぞ」
「いや!ちょっと!ニヤニヤなんてしてませんよ!それに俺もソッチじゃないですし!変な事言わないでくださいよ!」
「えぇ~ユーラさ~ん?ユーラさんってお父様を見てとってもニヤニヤしてましたよ~」
「まぁ、そうね。うん、ニヤニヤしてたわね」
『してた、してた!ニヤニヤしてた!』
「ちょっと皆!こういう時は俺の味方になるべきでしょ!なんでスルトさんの肩を持っちゃうの!」
「それとこれはまぁ……別の話?」
「そうそう!それとこれは関係ないもんね?」
『ねぇー!』
ひどい裏切りを見た!これは後で制裁が必要だな!俺の考えが漏れたのか女子一同身震いしているが、まぁこれは王都でのすべてが終わった後のお楽しみだな。狙い撃つぜ?
「うぅ!なんだろう?なんか一瞬寒気を感じたような?風邪かな?」
「大丈夫?モニカさん。気になるようなら少し休んでいたほうが良いわよ?」
「うん、そうしようかな?何かあったら呼んでね?」
フフ!風邪だなんてそんなチャチな物で終わらせる気はないぞ?特にモニカは念入りに手を掛けよう!さっき皆を煽っていたのに気づかないとでも思っているのだろうか?甘いな!よって思いつく限りの手段を用いて饗してあげよう。
終わった後の祭の計画はここまでにして外の様子を伺うと少し離れたところに村が見える、そこから何やら火の手でも上がっているのだろうか?煙がもうもうと立ち上っている。
少し速度を落として様子を伺うとどうやら村の人に混じり甲冑を纏った兵士達が村を囲っている柵の隙間から外にいる魔物と戦っているようだけど、その魔物に混じっている人型の姿が見えるけど……あれは人間か?おそらく間違いはないはずだけど、何故人間が魔物の群れに混じって村を襲撃しているんだ?そんな俺の疑問を足早に近寄ってきたスルトさんが教えてくれた。
「ユーラ!すまないがあの村を助けることは出来ないか?あそこは俺達の派閥に協力して食料を融通してくれた農家の人達が住んでいる村なんだ。俺達が兵士の糧食を維持するのに困っている時に力になってくれた人達なんだ!頼む!後で俺に出来る事ならするから彼らを助けてくれ!」
どうやらあの村はスルトさんの協力者の村らしい。劣勢にあったスルトさん達の為に自分たちが危険になるかもしれない事を知りつつも協力を名乗りでてくれた親切な人達のようだ。自分たちが危険になるかもしれない事を知りつつそれでも平和の為になるならと協力をしてくれるような心優しい人達が住むような村ならば守って上げるのが正しいだろう。
よし!防衛にあたってる人達が劣勢らしいので、そんな彼らを守って上げる為の兵器を投下してあげよう。
「よし行け!俺の処女作の狼型ゴーレム達よ!あの村と村に住む人達を守るんだ!投下!」
スルトさんから人手不足を聞いていた事で開発に着手した初のゴーレム達だ。密かにステータスにあった錬金術を用いて作ったドキドキの初出しである。
馬車の底部にある格納庫からパラシュートを付けたゴーレム達をどんどん投下していく。数はあるのでほんの少しくらいこの村に投入したくらいではこちらにダメージは全くと言って良い程にないから遠慮なく投下してみた。
さっそく村の中に降りたった初期狼型ゴーレム・わんダーウルフが村に入り込もうとしている魔物に噛みつき引っ掻き喉元に食らいつき撃退していく。そして村を覆う魔物を更に覆い囲むようにわんダー達が囲い殲滅していく!人型をしていたのはどうやら本当に人間だったようで持っている武器や装備品をわんダー達に奪い取れた事で恐怖を感じ、這いつくばりながら逃げていってる。
よし!成果は上々だな!初めて製作したとは思えない完璧な出来だ!
「おいおい!ユーラ!なんだあの危険そうな狼の集団は!あれはお前がやったのか?村の人達に襲い掛かったりしないだろうな!?」
どうやらわんダー達が村人を襲わないかの心配をしてるようだが安心して欲しいものだ。なにせこっそり隠れて実働試験は何度もしているので問題はない!……と良いな?って思ってます。だって実戦が初めてだし何より人が絡むのも今回が初めてだから、まぁ問題が起きなければ良いよね?って言うのが正直なところだったりする。
ちなみに何故狼なのかというと製作段階で人型を作っては見たもののあまりにも無機質な物が出来上がってしまい、ある種のホラーになってしまったので人型を諦めて俺が好きな犬……は弱そうだったので、ちょっと大きめの狼型になったという訳だ。
「おい!ユーラ!アレの何処がちょっと大きめなんだ!明らかに立っている村人より背丈があるぞ!どう考えても可怪しい上に過剰戦力だろうが!少しは加減しろよ!?」
おや?なにやら俺はブツブツと独り言のように詳細を語っていたようだ。きっと昔から夢中になると独り言を言う癖があったせいだろう。ついつい口から出ていたようだ。
「お前はすごいヤツだとしか思っていなかったが……すごいというよりは頭がおかしい様な気がしてきたのは俺の気の所為か?」
ヒドイ言いがかりもあったもんだ。自分が手を貸してくれって言うから俺達が王都に向かった後でも護衛として守ってくれるわんダー達を貸し出ししたというのに!
「いや、な?手を貸してくれた事は嬉しいし村や村人を守ってくれた事も助かったのは確かなんだが、物事には限度ってやつがあると思わないか?」
「わからないですよ~この後俺たちが王都に向かった後に後追いのヤツらとかくるかもしれないじゃないですかぁ。俺は後々を考えて行動しただけですよ?」
まぁ自分の作った物を試す絶好の機会を得たからとも言う。
「今何か言ったか?」
「いえ何も?」
ジト目で俺を見るスルトさん。そんな目で見られる様な事した覚えはないけどなぁ。とりあえず村を囲んでいた魔物は殲滅したみたいなので、村の人達に今の事態を説明したいと言われたので仕方なく馬車を村に降ろす事になった。気にしないでも良いと思うんだけど?
この分だとまたまた王都へ向かうのが遅れてしまいそうだ。えっ?俺のせい?そんな事ないと思うよ?多分……。
時間を見てはカキカキしてたらちょうどいい感じ量を書けた気がしたので投稿します。もっと時間が取れるようになったら以前のように書けたら良いな?って思ってます。
ブクマ&評価ありがとうございます!いつも読んでくださる皆様方に感謝を!m(_ _)m