第103話 王都へ向かう前に
お久しぶりでございます。
王都への対策・侵入をどうしようかと思案していたのだが、たまたまそばにいたスルトさんがいたので少しでも何か切っ掛けになればと思い話を掛けたら思いがけない答えを聞かされた。
「いや侵入も何も割と簡単に入れるぞ?」
「それは貴族としてのスルトさんの立場でとかですか?」
「そういう権力云々の話じゃないさ。単純に以前と比べて格段に入りやすくなってるんだよ。どうやら何処かの公爵様が本来なら王都を守る為の兵士達を自身の身を守る為に集めてるらしいからな?その所為さ」
「……それって良いんですかね?」
「まぁ本来は良くない事だが、その指示を出す王族がどうなってるのかわからないからな。さすがにこんな離れた地では情報の鮮度にもどうしても陰りが出る、新鮮な情報を的確に素早く手に入れたいのなら王都へ行く以外ないってわけだ」
「いい加減王都へ移動する事を考えたほうが良さそうですね。一応俺の方は準備が出来ていますが、スルトさんの方は?」
「あ~少し手間取っているな。急いでいるつもりではあるんだが、こっちにも戦力を残さないといけない上に王都にもあまり大軍で向かう訳にもいかないんだよ。下手したら俺が王に対して反旗を翻したと取られかねない。相手に隙を与える切っ掛けになるしな?」
「また面倒な事になりそうな展開ですね?まぁ俺もそういう事に詳しい訳じゃないので助言は出来そうにないですけど」
「そこは俺の仕事だからお前が気にするような事じゃない。気にしないでいいさ。ただ、俺がお前に望むのはほんの少しの手伝いだけだよ。一応な?」
「政治や軍事、あとは統治とかは無理ですよ?そんな経験ただの一度もないんですからね。俺ってただの職人なんですから」
俺のただの職人発言に違和感を覚えたのか首を捻って小声で「お前みたいな職人見たことないわ」と言ってるが完全に聞こえてるからね?
「ま、まぁ何はともあれ手伝いが必要な時はお願いすると思うから頼んだぞ?俺から大事な娘のユリーナを貰っていくんだ、ちょっとくらい義父の手伝いをするくらい安いもんだろ?」
「何度も言いますけど俺で出来る範囲でお願いしますよ?無理なものは無理なんですから」
「あ~わかったわかった!大丈夫だって!ちゃんと聞いてるさ(一応な……)」
「スルトさん……」
どうやら何かを企んでいるらしい、面倒を起こさないか心配だ。言っておくけど俺って本当にただの一般人ですからね!この力も貰い物なんだから過度な期待は遠慮したい。程々の知識はあれどもそれを活かせる自信はないのだから変な企みは辞めて欲しいものだ。
そしてジト目で見ていた俺の視線に耐えられなくなったのか、準備をしてくると言って逃げたスルトさん。面倒に巻き込まれないように気をつけておこう。
スルトさんは何処かへと行ってしまったので、リィサ達のもとへ向かってみることに。
「お~いリィサ~いる~?そろそろ王都に向かうから準備ができてるか確認しにきたんだけどぉ~」
呼びかけに対して開くドアからリィサが出てきた。あれ?若干呆れたような表情?どうしたんだろう?
「とりあえず中に入って話をしましょう。その顔からするにどうして私達がこんな態度なのか気づいてないようだし」
「?じゃあ入らせてもらおうかな。お!全員勢揃い?皆で何かしていたの?」
ドアを閉めて椅子に座るリィサに問いかけると全員が揃って呆れた表情になった。何かを仕出かした記憶はないつもりだが、一体なぜそのような表情なのだろう?
「あのねユーラ……私達はユーラが王都へ行くって行ってたから皆急いで準備して待っていたのよ。レナリアさんだって自分の家族が心配だからようやく王都に行くことが出来るってずっと待っていたのよ?それなのに……」
「それなのに?」
息を深く吸い込んでいるリィサ。あ、もしかして!
「一体いつになったら王都へ行くの!皆を待たすだけ待たして置いて何も伝えてこないなんてどういうつもりなの!説明しなさい!」
「うひゃい!えぇっとそれはそのぉ~ですね?」
「えぇ……何かしら?」
怖っわ!リィサのコメカミがめっちゃピクピクしてる!今までにないくらいすげぇ怒ってる!ヤバい!どうしよう?ご、誤魔化しておこうかな?
「言っておくけど下手に誤魔化すような事言ったら……すりつぶすわよ」
「ナニを!発言が怖すぎるんですけど!ちょっと想像してヒュッてなったよ!怖い事言うのはやめて!」
「なら正直に言いなさい?下手に誤魔化したり嘘をついたら全員で殺るわよ?」
11人の視線に耐えることなど出来ようはずもなく正直に話す事にした。だって怖いんだもん。
「そのぉですねぇ~。ふ、普通に忘れてました!すいませんでした!」
素早く土下座と移行し頭を下げる!ここは謝ったもん勝ちだ!下手に言い訳をすると殺られる!間違いない!いくら俺が強くともこの視線に耐えるだけの精神を持ち合わせてなどいないんだよ!
「はぁ~……なんとなくそうじゃないかと思っていたのだけど、本当に忘れているなんて。ユーラ?私達が言えた義理じゃないのかもしれないけど……もう少し私達に目を向けて?ユーラがそんなんだとまるで……まるで私達が必要ないかの様に思えてしまうから」
「!!ち、違うから!必要だから!今の俺があるのは皆のおかげだから!次からは気をつけるからいなくならないでください!」
ヤバい!ヤバい!俺の気配りが足りないせいで皆を不安にさせている!何度同じ事を繰り返すのか!俺は本当にアホだな!
「落ち着いてユーラ。ユーラが私達を要らないって言わない限り私達から離れていく事なんてないから大丈夫よ?今のも脅しとかじゃなくてお願いなの?ユーラ一人で何かをしようとするんじゃなくて私達にも手伝わせて欲しいのよ。ユーラ何かしていたんじゃないの?」
「えっと、はい皆の武器とかを準備してました。あと色々必要になりそうな物とか?」
「そうそれを手伝わせてほしいのよ。ただ自分たちの物だけを準備して待っているだけじゃなくて一緒に何かをしたかったの」
どうやらただ伝え忘れた事だけを叱られているだけじゃないらしい。良かった~。とはいえ自分に落ち度があったのもまた確かなので日々の気配りには十分配慮しなければ!
「それと……せっかくユーラが頑張って色々準備していたのに文句ばっかり言ってしまってごめんなさい」
『ごめんなさい!』
え?いやいや!俺がしっかりと連絡していれば良かっただけの事なのだ。謝られるとそれはそれでこう、ね?むず痒いといいますか。
「ユーラは気にしないかもしれないけど、私達が気にするの。経緯はどうあれユーラは私達の為に頑張っていたんですもの。それに対して知らなかったからという理由だけで不平だけを垂れ流すのは人としてどうかと思ったの。だからごめんねユーラ」
「はい、なら俺もごめんなさい。え~と色々これからもやらかすとは思うけど呆れずについてきてくれると嬉しいです。よろしくお願いします!」
俺も愛想をつかされないようにと謝罪とこれからをお願いしたつもりだが、なぜか皆が一斉に笑い出した?
「ユーラらしいといえばそうなのかもしれないけど、それはこっちも一緒なのよ?だからそんなに畏まって頭なんか下げないでも大丈夫よ。こちらこそ色々あるとは思うけど捨てたりしないでね?」
「そんな!俺が捨てられる事はあっても俺がリィサ達を捨てたりなんてするもんか!じゃあこれからもよろしく!」
またもトラブルを起こしてしまったが、ようやく王都へ行けそうだな。さぁ~て久々の空飛ぶ馬車の出番だ!一気に王都を目指すとしよう。
かなり間が空きましたがなんとか投稿できました。まだまだ投稿を安定してできない状態ですが、間は空いてもできるだけ投稿を続けたいと思っております。それでも構わないよ?という方は是非お待ちいただければと。
ブクマ&評価ありがとうございます!いつも読んでくださる皆様方に感謝を!