第9話 森からの旅立ち
どんどん建築をさせたいのにいきなり出来るようになるのも変かな?と思ったので徐々に進めたいと思ってます。
あれから一年がたった。今も、あの初めに来た森に拠点を構えたままずっと居着いてる。
人里を探してみようかと思った時期もあったのだが、人里を目指したとして今の自分に何ができるかを考えた時、大した事は出来ないのでは無いかと思ったからだ。
そもそも、人里を目指したとして本当に存在するのか?仮にあったとしてどこまで行けば辿り着くのか。などなど問題があったのもあったからだ。
それにここの暮らしになれてきたというのもあるから離れづらくなった。というのもあるのだが、一番の理由はせっかく建てた家(もはや小屋ではなくなった)を置き去りにするのは忍びなかったからだ。
ここ一年で自分の建築の腕も随分と上がったと思ってるし、この世界の建築と比べたわけじゃないからなんとも言えないが、向こうの世界でならかなりの腕前になってるはずだ。今の自分なら結構自信をもてる。だけどここから離れたくない。
それと自分自身にも問題がある。それは、人と関わりたくない。出来うる限りは関わりたくない。
だけど、おじいちゃん(創造神)の願いを叶えるためには、どうしても人里に行ってこの世界の建築に関する情報なり素材なり技術を身に着けたり、手に入れたりとしないといけない事がある。
そうなってくると覚悟を決めてここから離れないといけないのだが、せめてこの建てた家だけでも、どうにかしたいと思っている時に、解決できそうな魔法があった。
それは【個人結界】という完全な自身のオリジナル魔法である。ちなみに意識して創ったのではなく、いつの間にか出来てた。どうやら何かをしている時に、家を守らなきゃと強く思った際に出来たみたいだ。まぁ出来た時の話はいいとして、この【個人結界】の魔法を家を含むこのあたり一帯に掛けておけば魔物に荒らされる事もないだろう。では、さっそく結界を張っていこうかな。
はい、出来ました。おじいちゃんに教えて貰って以来順調に魔法の腕を磨き上げてきた今の俺なら然程時間は掛からない。それに、以前よりも魔法を行使する時のイメージの構築が段違いに早くなったのもあるが、魔力の制御・出力・密度は徹底的に鍛え上げた。それこそ、寝る間を惜しんで鍛えたのだ。
何故そこまでがむしゃらになったのか。その理由は、ここ一帯を縄張りにしていた魔物に原因があったからだ。そのここ一帯を締めてた魔物のボスとでも言うべきヤツはある日突然現れて俺の小屋を破壊していった。
襲撃された時は怖いと言うのはもちろんあったが、何よりもムカついたのが一番だった。まだ小屋の時ではあったが、それでも自分でもうまく作り上げれたと思って、完成祝にキラーラビットの丸焼きでも食べようかと思って調理に差し掛かろうかというタイミングだった。ヤツはいきなり現れてその大きな巨体から繰り出す一撃で小屋を壊していった。しかも、去り際にニヤッと笑った気がしたのだ。
その時は、まだ魔法も未熟でうかつに魔法を使えば森そのものを全焼しかねない状況だった。
まだその時は、魔法の種類が少なかったのも使いづらい原因になった。体術を使って追い詰めても良かったのだが、慢心して怪我をしても意味がないので深追いはしなかった。その事があってから、俺はイラつきを抑えながら必死に魔法の習得に努めた。魔法に必要な要素を必死に思い出しながら、独学も交えながら習得した。
その上で小屋を修繕しつつ、再度ヤツが現れる時期をずっと待っていた。
そして、その時は来た!ヤツがその巨体を揺らしながらやってきたのだ。ヤツの正体は熊だった。
以前は多少暗かったというのもあってはっきりとは断定出来なかったが、やはりと思った。
この世界に来た当初の熊の4~5倍と言った感じだろうか。明らかにデカイ。最早向こうの熊とは比べるべくもない別の生き物といったほうがいいんじゃないかと思うほどだ。そんなヤツを相手に戦おうというのだから、自分も随分とこの世界に馴染んだもんだと、巨大熊を前に考える。
俺がヤツを前に余裕をかましてるせいか、もの凄い興奮してる。あれ?怒ったかな?でも、しょうが無い一年前とは全然違うのだから。それにしても、なかなか具合の良さそうな毛皮だな~。今は獣臭ただよう毛皮だが、洗って綺麗にすれば良い毛皮になりそうだ。次の冬を越すのによさそうだな。それに、肉も美味しいかもしれん。そうそう、あとから気付いたのだが、この世界の魔物食えるのは食えるのだが、魔力を多く取り込んだ個体程すごく美味しいのだ。
きっとこの個体は美味いはずだ。必ず仕留めて食ってやる。お!そろそろ来るか?よし、ここを離れる前にこいつで英気を養うとしよう。まぁ、前振りがだいぶ長くなったが、仕留めるのはおそらく一瞬だ。
使うのは大太刀だ。この巨大熊を倒すの目標に【鍛冶】を修得して、自分で作ったものだ。ちなみに長さは140㎝ある。創造魔法でも創れたが、何でも簡単に済ませると良くないかと思いやってみたのだが、やはり簡単ではなかった。当たり前ではあるが、職人と呼ばれる人たちが、一生を掛けて学ぶのを簡単ではあるはずがないのは、承知の上だったが、この世界に来て成長しやすくなったのを切っ掛けに色々試してみたかったのだ。その甲斐もあって、なかなかの一品になったと思ってる。
あ、ちなみに魔法を使わないのは単純に魔法だと体術や剣術以上に早く終わってしまうからだ。
せっかく独学とはいえ体術も剣術も鍛え上げたのだ。是非とも試してみたいのだ。
まぁとりあえず今は目の前の熊だ。ヤツも焦れてきてるみたいだ、そろそろ行くとしようか。
まずは、熊との間合いを一瞬で詰める。もちろんヤツも簡単にやられないように動くが、それを先読みしてこちらも相手を追う。
逃げようとしてる?いや、違うな。フェイントらしい動きをしただけだ。だが、それに乗るわけがない、振りかぶってきた右フックをあっさり躱してやる。ヤツの背後に回って背骨の部分に打撃を加える、脊椎にダメージを与えてへし折るためだ。そうすれば、下半身は動かなくなるあとは動けなくなった所で首を切り落とす。それが、確実でこちらも危険がない。
背中に大きなダメージを受けた巨大熊は動きを鈍らせた。今がチャンスだ!と思った瞬間、巨大熊は急に座り込んでしまった。何をする気だと思い警戒するが、どうも様子がおかしい。巨大熊の正面に回り込んでみると気のせいだろうか?汗をかいてるのか?なんで?と思ったが、直ぐに理由に思いついた。それは、俺が初めに背骨を狙った打撃だと理解した。
おそらくだが、俺は何度かダメージを与えて背骨をへし折れればいいぐらいに思っていたが、どうやら自重で背骨が折れたのでは無いかと思う。意外と呆気ない幕切れになりそうだ、と思いつつ痛みを長く続けさせるのは忍びないと思い、トドメを指すことにした。
正面に立ち大太刀を掲げる、その時に巨大熊と目があった。ヤツは俺を睨みつけていたが、容赦はしない。この森で俺が一年を通して学んだ。生き残るための最低限のルールだ。ヤツの首めがけて一気に振り下ろした。
―ヒュッ―ズバッ!
一気に首を刈り取った。これで俺の勝ちだ。だが、これで調子には乗らない。きっと俺より強いやつなんてごまんといるだろうし、油断して死んだりしたら目も当てられない。 倒した巨大熊に手を合わせる。いくら倒した相手でも見下すような事をしてはいけないと思う。まぁ、人によるとは思うが…。
さぁここからは解体だ、だが解体作業はすぐ終わる。なぜなら、倒しては解体、倒しては解体を繰り返してたおかげで普通にスキルとして身につけたからだ。それが、こちらです。
【解体作業・極】
そうこれのおかげでどうやって、どの順番で、どこが食べれて食べれないか、どの部分が素材として使えるのかがはっきりわかるようになり手際よくバラしていけるのだ。ちなみにこの【解体作業・極】に至るまでに2000体以上の魔物を解体した。始めのうちは本当に苦労した。いくら過去に猪を解体した事があるとはいえ、魔物ともなると随分と勝手が違ったのだ。ここまでに至るまでかなりの素材と肉を無駄にしてきたが、努力の甲斐もあって、今やかなりの上質とも言えるはずの素材や手付かずの肉が大量にマイバッグにストックされている。
さすがに一人では食える量に限界があるから、魔物を狩るのを止めてたかったのだが魔物は常に俺を襲撃してきた。襲われたら勿論の事反撃はするわけだから、必然的に素材が集まるわけだ。捨てれば良いんじゃ?と思う人も居るだろうが、せっかく素材と食材、経験を手に入れるチャンスなわけだから、捨てることは一切しなかった。
いろんな物を作ったりするのにも凄く便利なので、素材を見ながら何に使おうかと考えながら物作りに勤しむのはとても楽しかった。そんな事もあったから魔物の素材は宝の山も同然なので、捨てるなどというのは言語道断だったのだ。
そんな事があったからこのスキルはどんどん進化して今に至るというわけだ。この説明をしてる間も、手は動かしていたので解体はもう終わっている。あいも変わらず獣臭はすごいがうまいと思うんだよな~。肉は切り分けておいて食べやすい状態にしておこう。
この大きさなら夢のマンガ肉を今度こそ成功させられるのではないか?挑戦する価値はあるんじゃないだろうか?よし、今度こそ成功させてみよう。いや、してみせる!さっそく焼き始めてみたのだが、思ったよりも火の通りが悪い。さすがに50㎝近い大きさだと難しいか?う~ん、一度蒸したほうが良かったかな?今からでも遅くないかも、やってみよう。
大きめの葉っぱを使って何枚も重ねて包んでいく、この葉っぱだがなかなかにいい匂いがするのだ。バジルっぽい匂いがして肉料理に最適なのだ。包み終えたので弱くなった焚き火の中に放り込む。こうすれば葉っぱからでた蒸気で蒸すことができるはずだ。…多分。
火力の調整をしつつ蒸すこと30分ほどたっただろうか?そろそろ取り出して見てみよう。
――おぉ~なんかもう今の時点で美味そうだ。そのままかぶりつきたい所だが、そこを我慢して今度は焼いていく。焦げないようにゆっくりと回しながら焼くこと10分。目の前には、程よく焼けたマンガ肉が!これ以上は我慢できないのでさっそくいただきます!うん、まずまずだな。ちょっと匂いがきついのと、味付けが何も出来てない事後は少し食感が固いかな?とは思うが、これくらいならどうという事はない。しっかりと食していきましょう。
味付けが足りないが悪くないと思う。さて、腹が満たされたら今度は旅支度をしていかなきゃな。
製作した数々の武器や防具、アクセサリーも回収して、マイバッグへと放り込んでいく。
家具はどうしようか?う~ん、秘密基地みたいな感じで扱うとしても置いておくほうがよさそうだな。
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旅支度は整った。しかし、今ある問題に直面している。それは、何処に行けば良いのか?という事だ。そもそも、どの方面に向かえば人里があるのか?どのくらいの距離にあるのか?辿り着くまでに何日掛かるのか?などなど色んな問題があるのだ。
もうわからん!考えててもしょうがない。なるようになるだろう。それに、いつまでもここにいるとまた動けなくなってしまいそうだ。とにかく動こう、それから移動しつつ周囲の状況を見てから、向かう場所を変えていこう。そうでないと、いつまでも動けない。
とりあえずは~うん、何となくではあるが南に向かおうかな?なんかそうしたい。そこに向かえば良い事が起きそうな気がするんだよな~。これが、何かは知らないが、この直感らしきものを頼りに行ってみよう。なんとかなるだろう。
進みだしたはいいのだが、ずっと徒歩で行くか、それとも魔法を使って一気に人里を目指すかをずっと迷っている。どっちにもメリットはあるが、デメリットも同じくらいある。
徒歩に関しては、ゆっくりと心置きなく散歩のように行けるからこれをメリットだと思ってる。
デメリットは、とても遅いという事だ。
魔法なら空を飛んで行く事になる、早く探す事ができるが、ひと目に付きやすく悪目立ちしそうなんだよな~。人は探してるが、目立ちたいわけじゃないからな。
結果どうしたか?ハイ、空を飛んで行くことにしました。だって、迷ってたら帰りたくなったから、急いでいこうって事で、空を飛んで見ました。それで、思った事は結構見晴らしが良いという事だ。今までここまでの高度で飛んだ事はなく、高くても4~5m程度がせいぜいだったから気づくことはなかった。こんなに景色がいいならもっと早めに飛んでおけば良かったよ。
空を飛び続けて10分ほどでようやく森を抜ける所まで来た、おぉ~この森ってこんなにデカかったのか~とんでもない大きさだな。俺が、探索した範囲は森の大きさからしたら半分程度かな?まぁ多分それくらいだと思う。それにしても、上空から見てて思うが、魔物が本当に多いな。こんなに群れるようにいたら、そりゃ毎日のように襲われるわな。中にはやっかいな魔物もいたからな。しばらくは、そいつらに関わることもないだろう。
それにしても、何もないな~。今は草原らしき場所を飛んでいるが、俺がいた森よりは少ないが所々に居る程度だな。建物らしきものは何処にもない。いい加減村とか街とか見えてきても良さそうなんだがな。まったく、見えてこない。
どれだけ人里から離れてるんだろう?それとも、来る方角を間違ったか?でもな~なんかここに来たほうが良いことが起きそうな感じがしたんだが、ただそう感じただけの希望的観測だったのだろうか?俺の運はそんなに悪いのかーー。ちくしょう。
それから更に30分ほど飛んできた。ただの草原だった場所に少しずつ木々や泉、川などが見えてくるようになってきた。泉などは、さほど大きなものではなくせいぜい直径にして2~3m程度で、深さも上空から見ても浅いのがわかる。川はだいぶ大きくて幅は、およそ20~30mはあると思う。
かなり大きいな、長さは…わからないかなり遠くまで続いてるとだけ。
そろそろ降りて休憩でもしようかな?腹も減ってきたし、必要なら一度仮拠点を作ってもいいかもな。とりあえずよさげな場所を見つけて降りていこう。ん…お!いい場所発見!あそこにしよう。
ここがいいな。小高い丘になってて見晴らしもいいし、何かあった時の為の木々もある。これくらいの木々があれば俺一人ぐらいなら充分に隠れられるし見張りをするにも最適だろう。
よし、飯の準備だ。まずは、火を起こそう。薪は森から充分な量を持ってきてるからそれを使うとして、食材も…う~ん現地調達が良いかと思ったが、今周囲を見渡す限り大した獲物は居そうにないな。
食材もマイバッグからだそう。だいたいの肉が、その時の気分に合わせて食べれるように切ってあるから、それでいいだろう。う~ん今は腹は減ってるのだがガッツリって感じでは無いんだよな。
今回は、少なめでいいかな?とりあえず1kgもあればそこそこ腹は満たされるだろうし。(本人はこの量が異常だと気付いてない)
肉を適度な大きさに切って、枯れ枝を削って串にした物に刺していく。バーベキューもどきをする為だ。肉串を焚き火の前の地面に刺していく。適度に離して置けば焦げる事もないだろう。学生の時に、一人でキャンプをしに行った時を思い出すな。あれはあれで楽しかった。
焼けるまでもう少し掛かりそうだな。ちょいとそこら辺を見渡してみるかね。
ちょっと向こうに魔物?らしき生き物がポツポツといる程度か~。人里はまだまだ遠いのかね?
どの方角を見てもやはり村や街が見当たらない。まだまだ、先に進んで行かなきゃダメそうだ。
肉が焼けたようなので、ちょいと遅めの昼食を食べる。う~んいい感じに肉に火が通ってるね。
よく焼きするよりは、ほんの気持ちの分だけ半生感をだすのが好きな焼き方なのだ。肉汁も滴っていいね。これで調味料があればさらにいいんだけどな。
さーて、食べ終えたのでこの後の行動を考える。一度ここで野宿をするか、それとも少しでも早く村なり街を探すために、移動を再開するか。日はまだそんなに暮れてない。時間的に言えば2~3時ぐらいじゃないかと思う。ちょっとでも先に進んでもいいとは思うが、ここみたいに条件の良さそうな野宿ができそうな場所が果たしてこの先にあるのか、う~ん悩むなぁ。
決めた!進むことにしよう。安全を取るばかりじゃ不足の事態が起きた時の対処ができなくなる可能性があるしな。さっそくあと片付けをして移動しよう。
移動する事にして、飛んでいると何やら音が聞こえてきた。金属がぶつかり合うような鋭い音が響いていた。
周囲を見渡して見ると、その原因と思われる場所を見つけた。あれは馬車か?また随分と豪勢な感じの馬車だな。だが、どうも様子がおかしいな。襲われてるのか?よくわからないから、もうちょっと近づいて様子を見てみる事にしよう。
誤字脱字が無いように気を付けてますが、もしもあった場合は申し訳ないです。